題灞池 其一 | |
盛唐・王昌齡 |
腰鐮欲何之,
東園刈秋韭。
世事不復論,
悲歌和樵叟。
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灞池 に題す
鐮 を腰にして何 くに之 かんと欲 する,
東園 秋韭 を刈 る。
世事 復 た論ぜずして,
悲歌樵叟 に和す。
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◎ 私感註釈
※王昌齢:盛唐期の詩人。700年?(嗣聖年間)〜755年?(天寶年間)。字は少伯。京兆の人。七言絶句に秀で、辺塞詩で有名。
※題灞池:灞池(はち;ba4chi2●○)に題す。長安にある灞池の傍らで詩を作る。二首あってこれは其一。其二は「開門望長川,薄暮見漁者。借問白頭翁,垂綸幾年也。」。 ・題-:…を詩題にして詩を作る。 ・灞池:池の名。長安にある。転じて、長安を謂う。
※腰鎌欲何之:鎌(かま)を腰に帯びて、どこに行こうとしているのか?(と問うと)。 ・腰鎌:鎌(れん;jian2○)(かま)を腰につける。鎌(かま)を腰に帯びる。 ・欲何之:どこに行きたいのか。*作者・王昌齢と同時代の王維(盛唐701年(長安元年)?〜761年(上元二年))『送別』に「下馬飮君酒,問君何所之。君言不得意,歸臥南山陲。但去莫復問,白雲無盡時。」 とある。 ・之:行く。
※東園刈秋韭:東の畑で、秋ニラを刈(か)る(という答が返ってきた)。 ・東園:東の畑。 ・刈:刈(か)る。 ・韭:〔きう(現 きゅう);jiu3●〕ニラ。ネギ属に属する多年草。群生して秋に白い花をつける。茎や葉を食用とする。=韮。
※世事不復論:俗世間の出来事は、もう二度とは論(あげつら)わない(で)。=俗世間のことは何も言わないで。 ・世事:〔せじ;shi4shi4●●〕世の中の事柄。俗世間の出来事。王維の『藍田山石門精舍』に「落日山水好,漾舟信歸風。玩奇不覺遠,因以縁源窮。遙愛雲木秀,初疑路不同。安知清流轉,偶與前山通。捨舟理輕策,果然愜所適。老僧四五人,逍遙蔭松柏。朝梵林未曙,夜禪山更寂。道心及牧童,世事問樵客。暝宿長林下,焚香臥瑤席。澗芳襲人衣,山月映石壁。再尋畏迷誤,明發更登歴。笑謝桃源人,花紅復來覿。」とあり、韋応物の『寄李儋元錫』に「去年花裏逢君別,今日花開又一年。世事茫茫難自料,春愁黯黯獨成眠。身多疾病思田里,邑有流亡愧俸錢。聞道欲來相問訊,西樓望月幾迴圓。」とある。 ・不復論:もう二度とは論(あげつら)わない。前出・王維『送別』に「但去莫復問」 とあり、南宋・陸游の『書憤』に「早歳那知世事艱,中原北望氣如山。樓船夜雪瓜洲渡,鐵馬秋風大散關。塞上長城空自許,鏡中衰鬢已先斑。出師一表真名世,千載誰堪伯仲間。」とある。 ・論:あげつらう。論じる。動詞で○/●。
※悲歌和樵叟:樵夫(きこり)と悲しげな歌を一緒に歌った。 ・悲歌:悲しげに歌う。『史記』・項羽本紀に「項王(項羽)軍壁垓下,兵少食盡,漢(劉邦)軍及諸侯兵圍之數重。夜聞漢軍四面皆楚歌,項王乃大驚曰:「漢皆已得楚乎?是何楚人之多也!」項王則夜起,飲帳中。有美人名虞,常幸從;駿馬名騅,常騎之。於是項王乃悲歌慷慨,自爲詩曰:「力抜山兮氣蓋世,時不利兮騅不逝。騅不逝兮可奈何,虞兮虞兮奈若何!」歌數闋,美人和之。項王泣數行下,左右皆泣,莫能仰視。」とある。 ・和:和す。調子をあわせる。韻をあわせる。また、…と一緒に。…と和して。 ・樵叟:〔せうそう(現しょうそう):qiao2sou3○●〕樵夫(きこり)のおやじ。漢詩では、樵夫(きこり)のように山の中での仕事をする人たちを、半・隠棲の人=半分の仙人とする見方がある。
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◎ 構成について
この作品の平仄は、次の通り。韻式は、「aa」。韻脚は「韭、叟」で、平水韻上声二十五有。
其一は:「腰鎌欲何之,東園刈秋韭。世事不復論,悲歌和樵叟。」。 なお、其の二は:「開門望長川,薄暮見漁者。借問白頭翁,垂綸幾年也。」となる。
○○●○○,
●●●●●。(韻)韭
○○○○●,
○○○○●。(韻)叟
其の二は
○○◎○○,
●●●○●。(韻)者
●●●○○,
○○●○●。(韻)也
となる。
2021.10.30 10.31 11. 1 11. 2 |
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