「文学横浜の会」

 エッセー


3月「2000年Y2K」

4月「警察の不祥事とオーム問題」に思う

5月「ゴールデン・ウィーク」

2000年6月


 「仕事について」

 最近、たてつづけに二つのドキュメンタリー番組を観た。一つは沖縄が舞台で、 障害者が仕事を求めて苦悩する様を描いており、 もう一つは大企業の社内リストラで苦悩する中高年を描いていた。

 東京オリンピックの開催された年、沖縄では風疹が流行って、その影響と思われる 多数の聴覚障害者や聾唖障害者が生まれた。甲子園への地方予選に障害者チームとして 出場する程の数だったと言う。

 その人達が今まさに三十代半ばを過ぎ、それぞれの人生を歩んでいる様を映像は丁寧に描いていた。 困難な状況にも係らず、南国育ちらしく、明るく前向きに人生を送っているように思われ、 声援を送りたくなった。

 と同時に沖縄に残った障害者には(多分、本土でも)、仕事を見つける事さえ困難な事実もある。 どんな仕事でもしたいと言う本人の意欲にも係らず、時給700円の仕事でさえ、中々就けないのが現実だ。 それでも彼等或いは彼女等は、仕事をしたいと、本来の明るさを失わないで頑張っている。

 一方の中高年のリストラを扱った番組では、大企業のサラリーマンが関連企業にリストラされる と言う、企業の生き残りを掛けた、働く者にとっては厳しい現実を追っていた。

 確かに、長年馴れ親しんだ職場を離れ、関連企業とは言え、別会社への移籍となれば辛い事だろう。 内示を受けて移籍するかそれとも退職するか、まず決断を迫られる。 移籍したくとも通勤事情で単身赴任を余儀なくされ、やむなく退職を決断せざるを得ない人もいる。 移籍しても新しい仕事に適応出来るか心細いし、潔く退職しても次の仕事がすぐ見つかる保証はない。 いずれにしても厳しい現実である事に変りはない。

 沖縄の障害者が、例えば時給700円でもいいから 仕事がしたい、と言う切実な番組を観た後では、何か複雑な思いがした。 何故なら、大企業でリストラされても一応仕事は保証されている。 それに時給700円よりは遥かに高給だろう。 無論、うちの会社のリストラはそんなに甘いものじゃない、と言う声もあるかも知れない。

 いずれにしろ、これが今の日本の一面である事は確かだ。

(K.K)


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