〜11〜

「また、昔を繰り返しているのかな、私…」
それを聞いてハッとする。(栞さんとのこと!)
詳しくはとても聞くことが出来なかったが、
聖さまと、栞さんとの間で、何かあったことだけは知っている。
きっと、見かけとは違い、心の熱いかただから、
思いが、全てに優先されたことがあったのかもしれない。

「毎日…は無理ですけど、いいですよ、聖さま」
「祐巳?」
「私、好きだから、聖さまのこと」
自分から、聖さまの隣に近づく。
ソファーの上に置かれた手をとり、
自分の胸の前にもってくる。
鼓動が早くなっているのは気付いている。
そんな祐巳を聖さまに知ってもらいたかった。

「だから、こんなに鼓動、早くなっています」
「無理しなくていい、祐巳!」
手を振りほどき、叫ぶ聖さま。
「私は結局、距離を一歩置くなんて関係を築けない!
自分の思いに流されて、全てをめちゃくちゃにしてしまう!」
自暴自棄ぎみの聖さま。めちゃくちゃに見えて、心が繊細な方だったんだ。
「全ての人に同じように接する必要は無いんですよ、聖さま…」
私の思いを総動員させて、発した言葉。思いよ、届け。

「聖さま、私、言いました。『火傷してかまわない』って。
ぶつけてください。聖さまの気持ち。確かに、私では力不足ですけど…
でも、好きなんです、聖さまのこと。私の全てを愛してください!」
しばらく、固まったように動かない聖さま。
「聖さま?」心配になって、声を掛けてみる。

「ふーっ」と大きなため息をつく聖さま。
「やっぱり、祐巳ちゃんだ。私の気持ちを楽にしてくれる」
「二人とも、完全人間じゃないんですから、欠点見せていいんですよ」
「そうだね。祐巳、こんな私だけど、本当にいい?」
「だから、いいんです。そんな聖さまが大好きなんですから」
「私も、そんな祐巳が大好きよ」
二人で顔を見合わせ、大声で笑った。きっと、きっと大丈夫。
これから、いろいろとあるかもしれないけど、
私、聖さまのこと、大好きだから。

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