〜エピローグ〜


夜、祐巳から両親の承諾が出たとの電話が入った。
『全然大丈夫でした』
「ほらみなさい。やっぱり私の普段の行いがいいからだね」
『それはないと思いますけど』
「ははは」
『で、両親が、聖さまに挨拶をかねて、マンションを見させて欲しいといっているんです。
週末、連れて行きたいんですけど、大丈夫ですか?』
「今週末?土曜日は用事が入っているから無理だけど、日曜日だったら、いつでもオーケーだよ―ん」
土曜日だけはどうしても無理。前々からの約束が入っていて、
それだけはどうしても外せない。ま、蓉子と会うだけなんだけど。

『それじゃぁ、日曜日の日にまたうかがいます』
「うん。あ、そうそう。その日に合鍵を渡すから、もし、その後、
すぐ引越しするようなら、勝手にやってもらっていいからね」
『わかりました。両親の方に、そう伝えておきます』
「おやすみ、祐巳。愛してるよ」
『お、おやすみなさい聖さま』
戸惑っているのが声だけでわかる。
思わず苦笑したら、祐巳に聞こえてしまったらしく、
『聖さまのバカ』と小声で言われてしまった。


その後は、あっという間に終わっていった。
祐巳そっくりのご両親がマンションに来て挨拶を済ませると、
祐巳とお母さんが引越しを終らせた。
長い間だ待ったわりには、現実のあっけなさに、
ちょっと物足りなさも感じたけれど、
これから祐巳と過ごすであろう充足の日々を思えば、
それは高望みというものであろう。

引越しが終った日の夜、やっぱり引っ越し祝いは欠かせないと、
近所にあるそば屋に二人で歩いて食べに行く。
その帰り、歩いていると、祐巳は引越しの最中に、
母親が私と祐巳の関係に気づいていることを話してきた。

「さすが祐巳ちゃんのお母さんだね。勘がいい」
勘も遺伝するものなのかもしれないな。新発見だ。
「普段はそんなことないんですけど」
「だから、祐巳ちゃんのお母さん」
二人して、笑い声を上げる。
「でも、これで二人での生活がスタートできます」
「そうだね。お母さんじゃないけど、お互いだけを見ないで、
他のことも幅広く見ていこうね。でも、なるべく、私を見て欲しいけど」
「それはもちろん私だって」
「さっ、二人の新しい生活の始まりだ!」


祐巳との再会から始まった二人の同居生活。
この後、色々な人たちとの再会があることを、
今の私達はまだ知らなかった。



【第二部 おわり】



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