映画になった本のページ

ボーン・アゲイン・アイデンティティー 2 /
The Bourne Again Identity 2

Robert Ludlum

1980 USA 640 ページ (ドイツ語版)

出演者

Jason Charles Bourne
(記憶喪失で地中海から助け上げられた男)

Dr. Marie St. Jaques
(フランコ・カナダ人経済学者、カナダ政府財務省に勤める女性、たまたま欧州に来ていた)

Dr. Geoffrey R. Washburn
(地中海の島の医者、
大酒飲み)

Carlos (ベネズエラ出身、
プロの殺し屋、強力な組織を持っている、現在殺し屋ランク No.1)

Cain (正体不明のアメリカ人らしき殺し屋、現在カルロスを No.1 の地位から引きずり落とそうと画策中)

読んでいる時期:2002年9月末から

詳しいストーリーの説明あり。

読むつもりの方は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

これまでの話を忘れた人はこちらへ。(1)

こんな企画始めるんじゃなかったと反省しているところです。まどろっこしくてだんだん忍耐の限界に近づいて来ます。中間まで来ました。よその国の言葉で推理小説読んでいると困ることがあります。なにせ使われている文字がアルファベットの52文字だけ。漢字なんか出て来るとぱらぱらめくっていて大体そこに何が書いてあるか思い出せますが、文字が52、いえドイツは59文字ですが、それでも少ない、これっきりだと、どのページ見ても全部同じに見えてしまいます。登場人物の名前にペンで色をつけて読んでいますが、それでも分かりにくいです。

★ 件のケインの偽物

ジェイソンはケインという名前にこだわります。CIA の会議でも出ていましたが、ジェイソンを追いかけ回している殺し屋の方からもこの名前が出ます。そしてジェイソンもこの名前が何か重要な鍵を握っていると感じて探り始めます。それで大胆にもカルロスが連絡事務所にしているファッションの店から女店主ラヴィエールを連れ出します。

そこから現在読んでいる箇所まで延々と彼女との会話が続きます。内容の一部は CIA の会議で出たものと一致。割愛してもいいかと思います。このシーンは映画には、全くありません。カルロスのフリをして殺して回るケインの目的が女店主から語られます。アントニオ・バンデラスが暗殺者でスタローンの地位を奪おうとしたのと似ています。劉徳華 と反町隆史も似たような事をやっていました。 業界ナンバーワンの地位争いです。

ジェイソンは記憶がないのでラヴィエールからケインについてあらゆる事を聞こうとします。ラヴィエールは記憶喪失だなどとは夢にも思っていないので、話がちぐはぐになります。ジェイソンが口実として持ち出す理由は説得力に欠けます。半分まで読んだところでの感想ですが、マリーとの会話にしろ、ラヴィエールとの会話にしろ、言葉が多過ぎ、こじつけのような話になってしまっています。映画でそういうものを全部ばっさりやったのは非常に賢明な判断でした。

それでもまあ CIA の会議で出たジェイソンの履歴はおもしろいかもしれないので紹介しておきます。

記録の類は全て盗まれたり、消されたりしているので、ほとんど何も残っていません。ケインというのもただの暗号名です。ケインの本当の出身についてははっきり分かっていませんが、噂ではアジアに住む破門されたイエズス会の信者だという説まであります。長い間東南アジア(ベトナムらしき地名タム・クワンという地名が挙げられています)に住んでいて、そこの言葉にも堪能なアメリカ人とされています。殺しの名人でメドゥーサ作戦に参加しています。

CIA の話で出たように金のためならどんな危険な任務でもやる集団の一員です。参加しているのはアメリカ人、フランス人、イギリス人、オーストラリア人、現地の人で、元の身分は海軍のベテラン、フランス人の元植民地の持ち主、アメリカの将校、犯罪者などです。活動の範囲は北ベトナムの支配下にある地域で、補給路の切断などが主な仕事。時には捕虜になったアメリカ人の救出作戦などもあります。報酬は高いですが、危険な仕事で死亡率も高いです。

ジェイスンはいつかアジアを去り、2年前には東京での政治家暗殺も含め短時間にアジアを縦横に飛び歩き殺して回っています。これがカルロスの怒りに触れたとラヴィエールは言います。CIA はジェイスンが少し前から活動の根拠を欧州に移したと言っています。(アイデンティティー1)会議の参加者は首位争いをしているケインとカルロスの両方を捕まえたいと考えています。

会議が終わり解散。皆帰り始めます、アボットがその時目にした書類に犠牲者リストというのがありました。ボーン:最後に分かっている居所は Tam Quan となっており、その後は行方不明。

まだ300ページに入ったばかりなのであと340ページもあります。作者は女性の描き方が下手。男性もチェスの駒のようになってしまってキャラクターという感じがしません。唯一印象に残ったのは英国人の医者ですが、彼は随分前に退場しています。映画では途方にくれたような表情を見せるマット・デイモン、自分の知らないうちに指名手配されていて怒るフランカ・ポテンテとキャラクターの肉付けが上手でした。観客が話に入りやすいようにできています。ハリウッドにはどうしようもない出来の脚本を救う(書き直す)職業があると聞きましたが、どうしようもない小説を救う職業もあるのかも知れません。

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★ 携帯の無い時代、ラヴィエールの知恵

ラヴィエールからある程度話を聞いた後、ジェイソンがどうやってこの女と別れるのかと不思議に思っていました。このまま帰してしまえば、これまで秘密になっていたジェイソンの顔形が知れ渡ります。でもこの男は話の主人公、それもあまり悪人ではないという設定なので、ここで彼女を片付けてしまうわけにはいきません。

ラヴィエールは予想外の手を使います。「トイレに行く」と言って暫く姿を消します。なかなか出て来ないので変だと思っているといきなりフラッシュをたかれます。「店のお客さんの思い出のために」とか言って若い女性がジェイソンの写真を撮り、ジェイソンはそれを取り戻すことができません。写真はすぐパリに送られます。写真でラヴィエールは自分の命の保障を手にしたようなものです。

★ 人間関係を描けない作者

大急ぎでマリーの所へ戻ったジェイソンは彼女と別れる決心をします。置手紙を準備して外出。何か忘れたという口実で置手紙をホテルの部屋に置き、再び外に出ますが、そこで番狂わせが起きます。パリの有名な新聞に写真入りででかでかと記事が載っています。ジェイソンではなくマリーが銀行から大金を持ち出し、男を殺したという容疑で指名手配されています。大いにショックを受けた2人は慌ててホテルに戻ります。そこで置手紙を発見したマリーは二重のショック。この辺の描写が下手で、カナダの財務省の有能なキャリアウーマンというという設定に全く合いません。

半ばヒステリー状態で説明を迫るマリーと今すぐそこを去らないと危ないというジェイソンの間でもめます。キャリアウーマンとは思えない取り乱し方です。ジェイソンはこのあたりで記事はジェイソンをおびき出すための罠だと悟りますが、冷静さを失ったマリーとの話はうまく行きません。が、とりあえず2人はホテルを換えます。マリーは少し髪型と化粧を変えて目立たなくします。

このあたりは映画に形を変えて使ってあります。新聞記事は出ませんが、スイスの手配書がパリに回っていて、それを発見したポテンテのマリーが1度怒り出すシーンがありました。それからマリーが髪型を変えるシーン。原作に比べ2人はかなり若いのですが、映画の方がリアルです。原作を読んでいるとよく「そんなわけない」という気持ちになります。

もう諦めて読み続けるしかありませんが、ようやく話のスピードが上がって来ます。

★ ニューヨークの死者

話はニューヨークに飛びます。大統領の補佐官スティーヴンス、軍人ウェッブ、アボットが話し合っています。アボットは映画にも登場しました。ウェップは CIA の会議に出ていました。ここでケインという人間は実在しないということが分かります。架空の人間を作り、カルロスをおびき出す罠を仕掛けているところでした。3年がかりのプロジェクトで、ジェイソンはカルロスについて手口など全てを勉強し、アボットたちはケインという男がカルロスを追い抜くようなプロの殺し屋だという噂を撒き散らしてカルロスが罠に引っかかるのを待っていました。ところが半年ほど前にジェイソンに何かが起き、行方不明になってしまいました。アイデンティティー2)こんな話は映画には全然ありません。なにせ、カルロスが登場しないものですから、おびき出すなどという話は作れません。

この話が読者に分かった直後3人はプロの殺し屋に消されてしまいます。このような重要な人物が3人で話し合うにしては警備が手薄で、納得が行きません。ジェイソンの秘密をこれほど守り通した人にしてはあっさり片付けられてしまいます。犯人はアボットを恨んでいたジレットと東欧のアクセントのある男。その後ジレットは東欧の男に殺されます。現場にはヨーロッパから持って来たジェイソンの指紋のついたグラスの破片を置いておきます。この手口はボーン・アイデティティーではなく、ボーン・スプレマシーで採用されています。

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とりあえず身を隠したマリーとジェイソンはもめ続けます。ジェイソンが自分に黙って去ろうとしたことでマリーはおかんむり+ヒステリー。ここも映画では控え目で、マリーがちょっとひがんだように文句を言うように変えてあります。その時のポテンテのちょっと寂しそうな表情が生きています。

★ 素早い敵

しかしとにかくデニスに連絡をとってみようというところで話が落ち着き、実行します。ジェイソンは自分の考えが正しいかどうか確かめるためにホテルにもう1つ部屋を取り、そこに宿泊しているかのように装います。カナダのデニスへの電話が終わって間もなく、殺し屋がやって来て、ジェイソンの予約した別の部屋は蜂の巣。ここでデニス以下が2人を狙っているのか、別な誰かがデニスとマリーの会話を傍受、居所を突き止めてヒットマンを送って来たのかという問に直面。デニスがすぐ殺されてしまったことから2人は後者という結論に達します。

ワシントンではトレッドストーンで3人が殺されてしまったため、残ったトレッドストーンのメンバーが対策会議。参加したのは CIA、国会議員、軍関係者計4人。ここで再びジェイソンの履歴が紹介されます。メドゥーサ作戦参加していた男で、Delta という暗号名。アジア滞在中に夫人と2人の子供が所属不明の爆撃機にやられ死亡。ゴードン・ウェッブの弟デビッド アイデンティティー3)とまあめまぐるしく身元が変わります。アジア云々という話は映画には全くありません。そんな話を入れていたら地獄の黙示録スパイ・ゲームも入れなければならず、映画は6時間ぐらいになってしまいます。

ちょうどここで Book II 終了。こういくつもアイデンティティーが出て来ると、なるほどボーンのアイデンティティーというタイトル納得が行きます。続きはこちらです。

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