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フリーダ / Frida /
Frida - Sei bereit, verührt zu werden

Julie Taymor

2002 USA/Kanada 120 Min. 劇映画

出演者

Salma Hayek
(Frida Kahlo - 妻 No.2, No.3)

Alfred Molina
(Diego Rivera - 左翼の画家、フリーダの夫)

Roger Rees
(Guillermo Kahlo - 父)

Patricia Reyes Spindola
(Matilde Kahlo - 母)

Valeria Golino
(Lupe Marin - 妻 No.1)

Antonio Banderas
(David Alfaro Siqueiros)

Ashley Judd
(Tina Modotti - 写真家)

Mia Maestro
(Cristina Kahlo - 妹、ディエゴの不倫相手 No.x)

Edward Norton
(Nelson Rockefeller - ディエゴの絵の依頼人)

Geoffrey Rush
(Leon Trotsky - フリーダの不倫の相手 No.x)

Margarita Sanz
(Natalia Trotsky - トロツキーの妻)

Chavela Vargas (死)

見た時期:2002年12月

ストーリーの説明あり

私はジェニファー・ロペスのファンなのですが、フリーダを彼女にやらせる話があり、後にファンのサルマ・ハヤックになったと聞いてほっと胸をなでおろしました。2人ともこれまで演技派としては世間に知られておらず、どちらかと言えばそのトレーニングの行き届いた肉体、歌や踊りで名前が通っている人たちです。なのでどちらにやらせるにしてもプロデューサーや監督には冒険だったかも知れません。

★ プロデューサー、サルマ・ハヤック

出身から言うと、ハヤックに落ち着いたのは公平だったと思います。フリーダはメキシコ人、ハヤックもメキシコ人です。ハヤックが名乗りを上げているのに、他の国の人にやらせたら、なぜその国の人にやらせないのかという意見は出るでしょう。メキシコというのは映画産業が確立した国です。

ハヤックの演じるフリーダと、本物のフリーダの絵(自画像)は非常に良く似ています。彼女はかなり努力したようで、プロデュースに名を連ねています。十分なギャラが払えたのか分かりませんが、ジェフリー・ラッシュ、アントニオ・バンデラス、エドワード・ノートン、アシュレー・ジャッドが脇を固め、メキシコで有名な歌手が一曲披露しています。その他にもメキシコ音楽のシーンがいくつかあります。

これが今年のゲイ映画祭のオープニング。主催者の話ですと12年の映画祭の歴史の中で1番高い映画だそうです。それをオープニングに持って来られたので、ブエナビスタ社に感謝すると挨拶がありました。

お金のかかった映画だというのは本当によく分かります。この映画に関して資料の類が無いので、撮影に本物の絵を使っているのか、本物の家を使っているのかなどは分かりませんが、高そうに見えます。衣装もメキシコ色がよく出ていて、安易にアメリカで勝手に解釈した作品と一線を画しています。

この映画の魅力は、サルマ・ハヤックの姿(ペネロープ・クルスと同じ髪型のシーンが何度かあるのですが、サルマの方が良いです)、これまで知られていなかった彼女の演技力、脇を固める人のアンサンブルの良さ、夫を演じるモリナとのコンビの良さ(話が深刻なので、例えが悪いですが、ボケと突っ込みの度合いがマッチしています)、それに加えて、絵画がたくさん紹介され、2人が住んでいた家ももしその場で撮影したのでなければ、本物そっくりに再現されています。確認が取れていないので分かりませんが、もしかしたら、本物の家で撮影したのかも知れません。そしてもっとうれしい驚きは、フリーダとディエゴ夫婦がニューヨークへ行くシーンなどに斬新なスタイルのアニメが出て来ることです。

この物語は涙無くしては語れない大悲劇なのですが、本当にそのままフリーダの一生を映画でやると、もっと悲しくて見ていられません。映画では至る所にユーモアの趣向がこらしてあるので、救われます。

★ フリーダ・カーロ

にわか覚えですが、ここで私もこれまで知らなかった、フリーダという人の一生を紹介しておきましょう。

フリーダ・カーロは1907年ユダヤ系ドイツ人とメキシコ人の間に生まれました。子供の頃小児麻痺をわずらい、映画が始まる時点では一応健康になっています。高校から医学を目指しますが、18歳で大きな交通事故に巻き込まれ、重症。映画は事故の少し前、後に結婚するディエゴ・リベラの絵画に感心するところから始まっています。

この事故は非常に深刻な傷を残しますが、映画では事故のシーンで美術に非常に気を使い、美的に描かれています。しかし、目をしっかり開けて画面を見て下さい。フリーダがここでどういう傷を負ったかが彼女の一生を左右します。目敏い人はお分かりと思いますが、18歳になるまでにすでに2度も人生の重みを背負ってしまいます。

私にも小学校の頃小児麻痺かかった同級生にがいました。ですからそれだけでもフリーダの人生は難しかっただろうと想像できますが、そこへまたこの事故です。ティーンで医学を目指したというのもこういう経験からでしょうし、映画でも彼女は事故のあたりですでに意志の強い大人の女性に育っています。

幸い家族の愛には恵まれ、父親はベッドに悲惨な形で縛り付けられたフリーダに絵の道具を持って来ます。本格的に絵を始めた彼女は、足がある程度回復した時ディエゴを訪ね、絵の評価を頼みます。それが縁で絵を本格的に描き始め、ディエゴとも仲良くなって行きます。

やがてディエゴと結婚しますが、彼が稀代の女たらしだという事は承知しています。当時のメキシコの政治状況などをよくは知らなかったのですが、共産主義が盛んな時代だったようで、2人も共産党に入党したりしています。ディエゴとの間には子供ができますが、流産。事故が原因です。体の痛み、ディエゴの女たらしぶり、政治問題などで休む間も無く悩まされ、苦しみの連続ですが、我が道を行くという方向は失わず、ディエゴの陰で次々と絵を描いて行きます。

彼女はディエゴが一目置くだけの才能があり、また、映画では自分を前に出そうとしないため、2人の間に絵をめぐっての対立はありません。そういう意味では才能を認め合った同僚で、嫉妬心は起きていないようです。ディエゴの不倫に対抗して彼女も不倫を始めます。映画では女性とも関係しており、それがゲイ映画祭に出品された理由ですが、その他に(あの)トロツキー(!)、ニコラス・ムライ、イサム・ノグチなど芸術関係者も名前が挙がっています。トロツキーはたまたま亡命して来て、ディエゴが彼女の家を提供したのがきっかけだったようです。

一生体には悩まされ続けるフリーダですが、事故の後の痛みは一生背負っていたようで、映画ではそれに加え深酒とタバコが災いして、ある日突然足が真っ黒になります。知り合いにこういう事になった人がいましたが、その人は糖尿病でした。その人もフリーダも時間を置かず足を切断。残酷なようですが、50年前も今もこれしか命を救う方法がありません。フリーダは何度か足の手術をしていたので、更に複雑な要因が重なっていたのかも知れません。結局その後僅かで命も失います。

女たらしの夫ディエゴも有名な画家で、この人は人生を楽しんだようですが、彼もフリーダの死後僅か3年で死んでいます。もっとも彼はフリーダより2回り年が上ですから、まあ長生きした方でしょう。フリーダとは2度結婚しています。その他に女多数、子供2人。

映画はティーンだった頃から彼女の死の直前に行われた個展までに焦点を当てています。フリーダを知らない私としては大いに満足しました。撮影スタッフの中で美術係が大活躍しただろうと思われ、ドラマが劇的なだけでなく、美術的な面も並大抵の力の入れようではありません。オスカー候補と言われるに恥じません。メキシコからはそれでもクレームがついたそうですが。

私が唯一クレームをつけるとすれば、登場人物が皆へんてこりんなアクセントで話すところです。作品中で外国人にあたるロシア人はいいとして、メキシコ人がメキシコに住んでいるという設定なのだから、その国の標準語を話しているということにして、普通に英語で話して良かったのではないかと思いました。メキシコ人の出演者に多少スペイン語のアクセントがあっても、アメリカ人の出演者の英語がやけに達者でも、極端に米語やスペイン語に傾かなければ不自然さは無くなったと思います。

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