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餃子騒動

料理した時期:2002年12月

狂気の沙汰としか思えない事を思いついてしまいました。電子レンジ買ったというので気が大きくなっていたんでしょう。餃子を自分で作ろうなどと・・・。

餃子というのは点心の1つだそうで、中国の食べ物なんだそうです。 − そんな事は知っとるわいと私も思っていました。しかしあまりよく知らなかったのはこれがお正月の料理だということ。日本人がせっせとおせち料理を作っている頃、中国人は餃子を山ほど作るんだそうです。そればかりを三が日の間食べるのだと中国人から聞き、日本のお正月に比べ食事はワンパターンなのか、と近くにありながら中国の習慣を知らなかったことに気付きました。

どういうわけか私の所で手に入る餃子は韓国製。1つは「韓国製餃子」とちゃんとネームも入っている袋入り。675g で € 3.30(430円弱)です。親指大の餃子ですが結構量が多くて、1度や2度では食べ切れません。もう1つは近所の韓国食料品店の奥さんが手作りしたもの。この人は東京か千葉あたりに住んでいたことがある人で、私が来ると日本語で話してくれます。私たちにはドイツ語という共通語があるし、他のお客さんの手前、私とだけ日本語で話すというのは困るのではと気を使いましたが、行くとたいてい日本語で話しかけてくれます。私はハングル文字に弱いのです。以前は韓国のヌードルなどを買うと、漢字が書いてあるので、内容が想像できたのですが、ハングルになってからはお手上げ。しょうゆを買う時にどれが濃い口でどれが薄口か分からなかったり、まんとうの中身が肉なのか餡子なのか聞きたい時があります。そういう時日本語で料理の細かい事が話せるというのは助かります。

この女性は時々自分でキムチをつけたりする人で、私が行くと何かおいしいものがある時は教えてくれます。ある日「餃子を作ったから」と言って袋一杯売ってくれました。大きくごろっとしていて見てくれは悪いのですが、中身たっぷりでおいしかったです。

これは夏の始めの話。それから暫くこの事は忘れていました。ところが電子レンジ買ってから急に自分で餃子が作りたくなってしまいました。彼女の餃子が良い印象を残したんでしょう。私はどこかで何かを食べると家に帰って真似をしたくなるたちで、これまでタイのトムヤンクム、アラビアのクスクス、インドネシアのサテー、トルコのアダナ・ケバップなどを試したことがあります。大体のものは一応食べられるようにできますが、アダナ・ケバップだけはトルコ人の腕に遠く及びませんでした。

・・・で、餃子。中身はその辺の料理の本にも出ているので何とかなるとして、皮をどうするかが問題です。韓国の女性は自分で皮も作っていました。出かけて行って作り方を聞いてもいいのですが、そうするとお店の餃子を買わないということがばれてしまってまずいか・・・、などと悩んだ挙句、最初は餃子の皮を中国食料品店で買おうと思いました。冷凍した餃子の皮を売っていますし、いんちきして春巻きの皮でごまかしてもいいかなどと、敵前逃亡に近い考えを持ち始めたところで、最後の頼りとばかりにインターネットへ。

ありました。写真つきの説明。作る人に男性が混ざっているようで、なかなか大掛かりです。そこの材料には白菜を使うと書いてありましたが、韓国の女性はキャベツを使っていました。ドイツはキャベツの国なのでとりあえずキャベツに決定。ちなみに白菜も最近では簡単に手に入ります。材料は大体問題なく手に入りました。

困ったのは薄力粉、強力粉というくだり。サイトの説明は分かりやすく、とんとん拍子で来たのですが、メリケン粉などの事は分からない。ケーキを作る時はその辺で安く売っている白い粉を買って来て、それに日本では片栗粉に当たるような別な粉を混ぜて作っていました。しかし餃子の皮はケーキではありません。サイトを見ているとぺらぺらの皮ではなく、粘りがなければ行けない雰囲気。井上さんはお蕎麦を粉から作る人だから、知っているかもと思ったのですが、朝人がまだ眠っている時間に起きて夜9時まで働く人に「気まぐれで餃子作るからちょっと教えて」なんて言えるわけありません。ドイツでは薄力粉とか強力粉と言わず、3桁の番号をつけています。普段買うのが確か 405 あたりです。クレープなんか作るのにちょうど良いです。餃子はどうもそれよりネバっこそう。で、ドイツ人捉まえて聞いてみましたが、男がそんな事知っているはずもなく、またインターネットへ。

日本語で薄力粉と強力粉の違いを調べてみたら蛋白質のパーセンテージなどが違うと書いてありました。それでラベルを見たら、12 とか 13 パーセントの小麦粉は番号が 900 番台。ははあ、この辺で差をつけているのかと思い、その 900 番台のを買おうと思いふと横を見ると、Vollkornmehl というのを売っています。

Mehl というのは小麦粉という意味ですが、その前についている Vollkorn が問題。「粒全部」というような意味で、精製し過ぎていない麦などをいいます。ドイツでは何でも Vollkorn とついていると水戸黄門様のお墨付きをもらったようなもの。栄養、ミネラルなどが万点という意味です。その代わり色が悪いです。Vollkorntoast などというのを買うと白いトーストではなく、茶色いのが来ます。Vollkornbrot というのを買うとこれまた薄茶色。パンは白いと思ってドイツに来る外国人はここでカルチャー・ショックに陥ります。しかし健康にはいいです。

というわけで私もついふらふらと Vollkornmehl を買ってしまいました。その後格闘すること5時間。餃子は無事できあがり。

・・・これでは割愛の度がはな甚だしくてどうなっているのか分かりませんね。

大体から餃子 100 個なんて献立を選んだのが行けなかったわけですが、まずは中身。豚ひき肉 500g、キャベツ4分の3個だけでかなりの量。大きなボールが一杯になってしまいました。その他にもねぎ、生姜などを入れます。えび、竹の子なんか入れても良いんだそうです。えびは高いから止めて、竹の子だけ採用。

次にもう1つ大きなボールを出して来て、そこにこの Vollkornmehl なる強力粉の代わりを入れました。ラードを溶かしたお湯と混ぜてこねると書いてあるのでそれを始めたのですが、ここからが苦難の始まり。悪い例えですが、白い粉のドラッグ鼻から吸う人の気が知れないということを身を持って知りました。1キロの小麦粉が粉のまま山になっていて、そこにお湯を入れて手でかき混ぜると、埃のように粉が舞います。それが目に入り、鼻に入り、くしゃみ、涙。中断しては鼻をかみ、手を洗い、またこねる。これを暫くやって、ようやく適度な柔らかさになったので、サランラップに包んでその辺に置いておきます。常温で寝かせろと書いてありました。やれやれ。井上さんは毎日どうやってお蕎麦の粉をこねているんだろう・・・くしゅん。

泣いている時間はありません。その辺に散らばっている、最初の大騒ぎに使った食器を洗い、場所を作っている間にタイムアウト。そろそろ寝かした粉がいい具合になっているはず。これを棒状にこねて、直径 3cm、長さも 3cm に切ります。それを Pinguinschläger で平たく皮にします。Pinguinschläger というのはウォレス&グロミットで悪党のペンギンを殴るためにグロミットが持っていたローラー。普通はあれでパイやピザの皮を作ります。Schläger というのは「殴る物」という意味で、Pinguinschläger は「ペンギン殴り器」。私が勝手につけた名前です。料理の道具はもらった物も多く、滅多に高級品は買わないのですが、Pinguinschläger だけは重い大理石のを買いました。これであの悪党のペンギンを思いっきり殴り倒そうと思ったのですが、確かグロミットはその直後にペンギンにピストルで脅されて、洋服ダンスの中に閉じ込められてしまいます・・・。

話がそれてしまいました。餃子の皮の話でした。この Pinguinschläger を使うと皮を極限まで薄く伸ばすことができます。100枚という触れ込みでしたが、120枚ぐらいは行きそうです。皮は片手よりちょっと小さめのサイズに決めました。作る時にその辺に張りつかないように薄力粉をまぶします。これがまた大変。粉が飛んで鼻に入ります。全部作り終わった時には「一生ドラッグはやらないぞ」と固く決心。ルールズ・オブ・アトラクション の1シーンを演じた俳優たち、さぞかし大変だっただろうなあと思いました。手作り餃子をアンチ・ドラッグのキャンペーンに使ったらどうだろうなどとマジで考えそうになります。とにかく鼻の中の中央の壁のあたりが痛くて仕方ありません。今度餃子を作る時は西部劇のギャングのようにスカーフで口と鼻を覆ってやらないとだめだ・・・。

でき上がった皮に肉などを詰め込むと、これを熱湯の中へ。最初下に沈み、浮き上がったところで出来上がり。ところが調味料が辛過ぎて大変。塩、しょうゆなどを大さじ3杯ということだったのですが、これは行けません。次回作る時は半分にします。塩気は足りなかったら後からしょうゆをかけたっていいんだから。

大量だと思ったのですが、皮が結構大きく、その中にたっぷり肉を入れたので、皮が半分ほど余ってしまいました。これは冷凍。ちなみに皮は餃子ができた時は薄いのですが、煮ると太く厚くなります。それで韓国の女性の餃子も見てくれが悪くなっていたんです。しかし食べでがあります。

実は最初自分でもなぜ餃子なんか作る気になったのか分からなかったのですが、頭の隅に電子レンジという言葉が浮かんでいました。この段になってその意味が分かりました。たくさん作って保存しておいて、後で電子レンジで温めて食べようと無意識に思ったんでしょう。お正月まで持ちそうなぐらいで、皮もまだあるので、そのうちまたひき肉を買って来て作ります。5時間かかったけれどこの餃子2ヶ月ぐらいは持ちそうです。

冒険は家でもできる 水餃子

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