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2002 USA/D 110 Min. 劇映画
出演者
James Van Der Beek
(Sean Bateman - 主人公、アメリカン・サイコのベートマンの身内)
Shannyn Sossamon
(Lauren Hynde - ショーンに気に入られた女学生)
Jessica Biel
(Lara Holleran)
Ian Somerhalder
(Paul Denton - ショーンを気に入った青年)
Faye Dunaway
(Eve Denton - ポールの母)
Russell Sams
(Richard Jared)
Swoosie Kurtz
(Mimi Jared - リチャードの母)
Kip Pardue
(Victor Johnson - ローリーンのボーイフレンド)
Clifton Collins Jr.
(Rupert Guest - 学生に売るドラッグの元締め)
Eric Stoltz
(Mr. Lance Lawson - 教師)
見た時期:2002年12月
この間のゲイ映画祭では数ある作品の中から2本だけ見たのですが、これが2本目です。ドイツではアメリカよりは受けそうな気配ですが、アメリカでは2週間でつぶれ、けちょんけちょんに批判されました。ですからドイツでも劇場公開がされるか分かりませんし、大ヒットはなさそうです。
いわゆる学園物で、大学の学生寮の友人が中心となるストーリーです。簡単に言えば誰が、誰を好きで、その人は誰か他の人が好きで、その人がまた更に誰か他の人を好きで、というストーリーです。出演者はほぼ全員若い無名の人たちで、脇をチラッとエリック・シュトルツやフェイ・ダナウェイが固めていますが、固めるというより、カメオ出演という感じです。
タランティーノ・コネクションでエリック・シュトルツが出ているほか、台詞にチラッとタランティーノという名前が出て来ます。
けちょんけちょんにされてしまった上、あっと言う間に劇場から消えてしまった理由は、コカインを大量に吸い込み、セックス三昧、そしてまずい台詞が至る所に出て来るためではないかと思います。画面を見ているとそれほどハードなシーンはないのですが、台詞や状況を合わせて考えると、行間にワイルドな話がちらつきます。
カメラが上手で雰囲気があり、実際にはほとんど暴力らしきシーンも、丸見えのセックス・シーンも無いのにこういう話を未成年禁止に仕上げてしまう腕はなかなか。監督とカメラには敢闘賞。もっと誉めるべきはあちらこちらに見え隠れするきつい冗談。
アメリカで話題にもならなかったのは残念ですが、原作はあのアメリカン・サイコの Bret Easton Ellis。というわけであの殺人鬼パトリック・ベートマンの身内らしき青年ショーン・ベートマンが出て来ます。これが俳優の功績なのか、おもしろい人物に出来上がっていて、コカインのディールをやる嫌な奴。その彼がどういうわけか紫色の便箋に銀色の文字で書いたラブレターをもらうことになります。それがきっかけで急に心のやさしさに目覚め、黒い髪、目のパッチリしたかわいい女の子ローリーンに恋をしてしまいます。この部分だけが純情、他は乱暴なとんでもない男。この落差がおかしいです。
そしてその彼に恋をしてしまうのがゲイの青年ポール。この手の顔は私の趣味と全然違いますが、それでも美少年だと言わないとフェアではありません。恐ろしくパッチリした目をしています。しかしいくらこのポールがモーションをかけてもショーンは全然なびいてくれません。当時はまだゲイだと告白すると、襲われることもある時代。ですから英国ではそれほどでもないけれど、アメリカで言われると恐ろしい侮蔑の言葉になる F で始まる言葉を目の前で直接言われたりします。ショーンになびいている女の子も1人いますが、ショーンには全然相手にしてもらえません。青春の甘酸っぱい思い出を作っている最中の若者集団です。これ全部が80年代の話なので、エリック・シュトルツの演じている、女学生と寝るヒッピー風の先生も、今だとダサいと笑い者にされますが、当時はそれで通ったわけです。
ショーンにほれられてしまったローリーンは現在ヨーロッパを旅行中のヴィクトールに惚れていて、彼の帰りを待っています。にっちもさっちも行かないショーンはローリーンの事を頭に浮かべながら、彼女の女友達と寝てしまいます。その現場をローリーンに押さえられ、多少好意を持ってくれていたのもこれでおじゃん。そんな出来事がどんどん輪舞のように続きます。それだけの話。最後に誰がラブレターを書いていたかが明らかになりますが、それ以外の大きなドラマは無く、アメリカン・サイコのような殺人事件もありません。
それでも背景には同じような哲学があります。80年代の人間のやっていたむちゃくちゃを皮肉たっぷりに描いています。私は両作品とも原作を読んでいません。凄くえげつないと聞いています。読んだ知り合いは、映画は両作品ともいい出来だと言っています。
アメリカン・パイがハイスクールの健全版だとすれば、こちらはカレッジの不健全版。
ローリーンが帰りを待っている恋人役の Kip Pardue。彼はスタローン主演の Driven で主役を務め、才能はあるが、世間知らずの FI レーサーという役をやっていました。この時はまだ新人で、ただそこに立っているだけ、残りのキャストとスタッフで何とか辻褄を合わせているといった感じでした。今回はローリーンの話に何度も出て来る役で、最後に本人が姿を現しますが、その演技がまた演技力の無さを確認するような出来。ブラッド・ピットにやらせたらかなりインパクトがあっただろうと思えるようなシーンです。
逆に似たような悪い役をとことん生かし、観客に強い印象を残したのが、リチャードを演じたラッセル・サムズ。金持ちの悪餓鬼の役で、彼とポールがそれぞれの母親と4人高級レストランで食事をするシーン。母親に恥をかかせるためにありったけの悪知恵を絞ります。
こういう新人ばかりを大勢集めた作品は俳優の見本市みたいなもので、短いシーンでもうまくやればそこから道が開けるでしょう。大勢ががやがややって、1人が目立たない映画でも出ておいた方がいいようです。
いつの間にかベテランになりつつあるゴンザレス・ゴンザレスが今回 Clifton Collins Jr. という名前で出ています。この人の祖父がアメリカ映画で初めて名を成したメキシコ人なのだそうで、俳優としては由緒ある家の出身です。私は
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