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T3、がんばった

ターミネーター 3 /
Terminator 3: Rise of the Machines /
Terminator 3 - Rebellion der Maschinen

副題: アーニーはコメディーに向くか

Jonathan Mostow

2003 USA/D 125 Min. 劇映画

出演者

Arnold Schwarzenegger
(Terminator - T-800型、古い)

Nick Stahl
(John Connor - ケイトの高校時代の同級生)

Claire Danes
(Kate Brewster - 獣医の診療所に勤める女性)

David Andrews
(Robert Brewster - ケイトの父親、軍人)

Kristanna Loken
(Terminator - T-X型、新型)

Mark Famiglietti
(Scott Petersen - ケイトの婚約者)

Earl Boen
(Peter Silberman - 警察の心理分析医)

見た時期:2003年7月

あらぁ・・・当選しちゃった。その上法律を変えようかなんて話まで。私、シュヴァルツェンエッガー氏個人は良く頑張る上に、新しい事にどんどん興味を示す人なので嫌いではないのですが、そういうキャラクターが好きだというだけで、彼の支持している政党も、反対の政党も好きではないんです。クリント・イーストウッド程度に、その辺の市長かなんかやるのならいいですが、1つの国を変えようなんて事になると、日本も煽りを食ってしまいます。そこまで行かれてしまうと、好きだ、嫌いだってな感覚ではなくて、日本はどうなるんだろうと心配になってしまうのです。

そこをはずして考えると、シュヴァルツェンエッガーもスタローンも実は非常に頭のいい人なんですね。ドイツでは筋肉マンで頭空っぽというイメージができてしまっています。気の毒に思います。シュヴァルツェンエッガーについては当選する前まで雑誌に何を言った、何をやったなどとゴシップが載り、本来はドイツ語を話す人なのでわりと身近に感じていました。スタローンはずっと遠い存在に思っていましたが、2人とも人をまとめ動かす能力があるようです。そして仕事を始める前にもう自分はどこに行きたい、何を完成したいというプランができているようです。そういう人だから政界に入っても、目の前のこのプロジェクトを完成したいと考えて、そこだけはきっちり仕上げてしまえるのかも知れません。

ああ、出ちゃった、止めておけばいいのに。カリフォルニア州知事アーノルド・シュヴァルツェンエッガーですか。夫人が対立する党の有名な親戚を持つ人。オーストリアの小さい町から出て来てアメリカン・ドリームを実行するのはいいですが、他の方向もあっただろうに・・・。頭のいい人なのだから、・・・。それに究極までがんばってみても、外国生まれの人はアメリカ国籍になっていても国務長官止まり。あのキッシンジャー、オルブライトがいい例です。大統領にはなれないんですよ。その上対抗馬がラリー・フリント他大勢の有名人、無名人合わせて400人。井上さん、競馬コーナーだったらどちらに・・・。周囲が出ろ出ろとうるさいから出るのかなあ。T3 のプロモーションの仕事が片付いたら結論出すと言っていたけれど、T4 にも出るんでしょ。州知事が休暇中にロボットになるんですか。カリフォルニアは最近人口が減り始めているから、納税者も減っているんですよ。大丈夫かなあ。当選してもその後どうやってお金の都合をつけるか目算あるのかなあ。これまでいろいろな候補から荒唐無稽なアイディアは出ているけれど、足が地についた政策発表した人まだいないし・・・。大丈夫かなあ。

T1T2 は評判を聞いているだけで、見ていませんでした。T3 はいろいろな意味でやりにくかっただろうと思います。ドイツではマトリックスの続編が先に公開され、もうでき上がっている3作目公開との中間に入っていたため、比べられるのは分かり切っています。若い、みてくれの良い男性が主演のマトリックスに比べ、もうアクション・スターとしてはよれよれの老境に入りかけている T3 は不利です。

ブロック・バスターをいくつか作り、儲けるだけ儲けるととんずらしてしまったジェームズ・キャメロンも当初企画に名前が出ていました。シュヴァルツェンエッガーが T3 出演の条件として「キャメロン監督でないとやらない」と言っているからです。しかしキャメロンは結局降りてしまいました。

それでも何とか残ったシュヴァルツェンエッガー。脚本を練り直したり、主演の女優を取り替えたり紆余曲折があった後、現在のスタッフ、キャストに決まり、その後は順調に撮影が進んだとか。

多くのおもしろい SF、アクションが出る現在、10年前の焼き直しでは通用しないのは分かり切っています。しかし続続篇を撮るのですから、何かしら焼き直しをしないと以前のファンを失望させてしまいます。というわけで、前の作品を見た人なら知っているギャグがいくつか出ていたようです。しかしそんなことは見ていない私には分からない・・・。

前の話を知らない私が見てどうだったか。アクション・シーンが特に見応えありました。特殊効果もあるのですが、それとは別にカー・スタントのシーンが凄いです。元々特殊効果で名の売れたシリーズなのに、「特殊効果もあるのですが・・・」という言い方は変かも知れませんが、特殊効果はハルクX2 に比べ目立たないようになっています。ハルクでは巨大な怪物になるシーンはいわゆる特撮とは違う撮り方をしたようですが、親子決戦で何度も出てくる変身シーンはおもしろかったです。X2 の方はいろいろな変身シーンがとてもエレガントにできていて、荒削りな T3 とはスタイルが違います。

しかし荒削りをコンセプトと考えると上手く行ったと思います。かつて特殊効果で売れてしまった T1T2 のやり方は他の会社の映画に引き継がれてどんどん良くなっている、T3 がそういうのは目立たないようにしておいて、デッドコースター式のリアリティーあふれるアクションを前面に出したらどうだろう、という方針。

そして1947年生まれ、御年55才のアーノルド・シュヴァルツェンエッガーに派手なアクションを全部やらせるのはもう限界と見て、アクション・シーンの多い映画を見せ、観客はアクション映画を見たと感じて家に帰る、しかし実際には彼が必ずしも全部やっているわけではない・・・、アクション映画というのは撮り方によって俳優が肉体的に大変な事をやっているように見せることができ、必ずしもその人が暴れなくてもいいわけですし。というわけで時々愉快なシーンも出て来ます。

シュヴァルツェンエッガーは武器を肩から下げてマカロニ・ウエスタンの主人公のような態度なのですが、1度墓地で棺桶を肩から担いで、片手には機関銃を持って出て来ます。棺桶には青年が1人隠れていることになっているのですが、ジュヴァルツェンエッガーが撮影の時に担いでいるのは紙か発砲スティロールでできた軽いものだというのは見え見え。重さは問題ではなく、棺桶が大き過ぎるので担ぐ時にバランスを取るのに苦労しているといった感じです。

またシュヴァルツェンエッガーが運転中に後ろにいる2人に突然「頭を低くしろ」と言います。その直後彼は車に乗ったまま大型トレーラーの下をくぐります。で、3人の乗っていた車は突然日当たりが良くなり、オープンカーと化します。これは確かにアクション・シーンですが、実際に重労働をしたのはスタントのドライバーの方で、3人の俳優は直前と直後のシーンに現われればいいわけです。

そういう観客の笑いを誘いそうなシーンもしらっぱくれて堂々と演じています。彼にはその他にも時々愉快なシーンがあり、観客に「俺ももう年なんだ、あんまりマジに取るなよ」と忠告しています。そのあたりのバランスが良くて、観客は楽しく笑うシーンと、アクションではらはらするシーンを交互に見せてもらえます。しかし怠けて贅肉がついているのではないというのを証明するために冒頭全裸のシーンも出て来ます。撮影前にちゃんとトレーニングはしたのでしょう。

マトリックスロード・オブ・ザ・リングのように最初から3部作を予定したものでなく、評判が良かったから続編を撮るという場合、後続の作品をどうするか、そして年を取って行く俳優をどういう風に扱うかというのは頭の痛い問題でしょう。シュヴァルツェンエッガー自身年を意識してコメディー路線に変わろうとしたこともあるようです。しかし純然たるコメディーをやるとあまり周囲から受け入れてもらえず、ロバート・デ・ニーロに比べ作品数も少ないです。私個人は シュヴァルツェンエッガーは使い方によってはいいコメディアンになれ、デ・ニーロにを越えることもできると思いますが、それを脚本に上手に盛り込める人は滅多にいないようです。そういう意味では T3 は注目に値するかも知れません。「本人はマジ」、しかし「周囲の状況に合わない」というズレからおもしろいコミックが生まれる可能性が多々あると思うのです。T3 では彼は人間でないので、人間の常識というものが無く、そのために一直線にやってしまうことが観客の笑いを誘います。そしてシュヴァルツェンエッガーは笑われたいらしく、楽しそうに演じています。

彼がブロンドの美女を正面から拳骨でぼこぼこ殴るシーンが続出するので、マッチョ・ファンは大喜び。逆に女性は「何という野蛮な男だ」とカンカン。しかし両者ともサイボーグで、人間ではないのでこういうシーンを作ることができます。トイレでの格闘シーンでは無茶苦茶な殴り方をします。怖いのはいくら殴られても彼女の方がバージョンが上なので、中古のロボット、シュヴァルツェンエッガーは相手を一気に片づけられないこと。表情を変えもせずむっくり起き上がってまたかかって来ます。この格闘シーンはシュヴァルツェンエッガーも気合を入れてやっています。

女を殴りっぱなしではポリティカリー・インコレクトで苦情が出るでしょう。それでバランスを取るためにもう1人女性を出しています。クレア・デーンズ。彼女は生身の人間で準主演のジョン・コナーとやり合う女性ケイトを演じています。観客と彼が承知している過去の話を彼女は知らないので、彼女は最初ジョンが獣医の診療所に押し入って薬を盗もうとするジャンキーだと思います。次にジョンと T-800 は誘拐犯だと思われ、彼女は相手が犯罪者だと確信しているので、徹底的に自分を守り、逃げようとします。(先日渋谷で監禁された少女の1人も根性で逃げ通報しました。「非行だ」とその時しかられても命の方が大切です。皆さん、こういう時はとりあえず根性で逃げましょう。自分が悪い時でも反省は助かってからすればいいんです。しかられて命がある方が、同情されて死ぬよりいいです。 ー これある有名な女性政治家が言った言葉をちょっと渋谷風に変えたものです。)さて、悪い事は何もしていないケイトにジョンが事情を一生懸命説明しようとしても信じてもらえません。「現代女性の常識を持った普通の人」を演じています。デーンズは元々決まっていた人の代役だそうですが、ちょっとやりにくそうに演じています。ジョンとの掛け合いがあまり上手く行っていません。

後半ご都合主義が連続します。ジョンとケイトが幼馴染だったというのが不自然。その上2人が無理やり入り込んだ軍の基地で、わりとあっさり重要な部署、設備をみつけ、この日初めて侵入したはずなのに目的の機械をみつけ、扱い方を知っているという天才ぶりを発揮します。娘を救うべく重要な言葉を言い残して死ぬ父親もまだそれほどはっきり事情を呑み込んでいないはずなのになぜか、やけに正しい指示をします。

人間2人、サイボーグ2台が中心に動くストーリーですが、最後意外な結末になります。こういうエンディングになるとは予想していませんでした。「衝撃」の結末ではありませんが、予想ははずれました。こういう結末だと T4 を作る必要性が出て来ます。80年代、90年代、00年代に1つずつ作られていますが、シュヴァルツェンエッガー御年65歳ぐらいで2010年代にもまだやるのでしょうか。契約にはサインするつもりでいるようですが。10年あればおもしろい脚本ができ、中古ロボットの再利用方法を思いつく人もいるでしょう。

1年ほど前から思わせぶりな、未来っぽい予告が映画館で出ていました。それにしては現実的な出来上がり。この日初公開の券に当たったのですが、観客はほとんどゼロ。10分前に入ると私のすぐ左に4人ほど若者が座っていました。かなり大きなホールの中央やや前よりの席に私たち全員が固まって座っていました。その後始まる頃にちらほら人が入って来ました。白髪の年金生活者夫婦のようなカップル、その他は若者。しかしガラガラでした。20時の時間帯でなかったからかも知れません。

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