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2003 USA 90 Min. 劇映画
出演者
John Cusack
(Ed - 昔売れていたテレビスターの運転手、元刑事か)
Ray Liotta
(Rhodes - 刑事か)
Amanda Peet
(Paris - 元娼婦か、彼女のハイヒールがジョージのパンクの原因を作った)
John Hawkes
(Larry - モテル管理人か)
William Lee Scott
(Lou - 新婚の夫、新婦は妊娠中か)
Clea DuVall
(Ginny - 新婚の妻か)
John C. McGinley
(George York - パンク修理中に妻を車に轢かれて大怪我をした妻をモテルに運び込む男か)
Leila Kenzle
(Alice York - ジョージの妻か)
Bret Loehr
(Timmy York - ジョージとアリスの息子か)
Jake Busey
(Robert Maine - 護送中の殺人犯か)
Rebecca De Mornay
(Caroline Suzanne - 女性を轢いた車に乗っていた元テレビ・スターか)
Stuart M. Besser
(凍死体 - 誰か)
Pruitt Taylor Vince
(Malcolm Rivers - 精神鑑定が進行中の連続殺人鬼、死刑判決後処刑前夜証拠が出て精神病院送り)
Alfred Molina
(精神分析医)
Carmen Argenziano
(弁護人)
Marshall Bell
(検事)
Matt Letscher
(検事補佐)
Holmes Osborne
(判事)
Joe Hart
(Jenkins - 執行官)
Terence Bernie Hines
(執行官)
Frederick Coffin
(Varole - 刑事)
見た時期:2003年8月
良く考えると映画を見る前から全部ばれているのです。ポスターは映画が終わってから見ましょう。ティケットに写真が刷ってあったら、見ないようにしましょう。パンフレットの表紙はあまりじろじろ見ないことにしましょう。タイトルについて深く考えるのは止めましょう。映画を見るという人はこの先読むのを止めましょう。
時々数人が1箇所に閉じ込められたような閉所恐怖症的状況の中で事件が起こる映画があります。連続殺人事件がよく起きます。アガサ・クリスティーがこういう話を得意としていました。この作品もその手の話。孤島ではありませんが、大嵐で送電も止まり、携帯のネットからも外れ、外部と連絡が取れません。集まって来る人たちは、10人のインディアンでもなく、欧米人が好きな12人や不幸を招く13人でもなく、11人。日本人はしかし6とか8とか10とか安定してしまった数は畳の数だけで、あとは 7、5、3 のように半端な数の方が好きですから、11人と言われても困りません。日本人が半端な数を好むのにはれっきとした理由があるのです。4 とか 6 とか 12 のようにきれいに収まってしまう数字ですと、一件が落着してしまい、後が続かず、退屈だというのです。確かに。ミステリーは退屈では行けません。
話はこの典型的な、《最後に誰もいなくなる》式のストーリから大転回をして、別なミステリーの典型的なストーリーに乗り換え。ですから半端な数の方がいいです。連続殺人をその先の別なジャンルと組ませるというところが独創的です。演じている俳優がこれまたいい顔ぶれ。ポスターがまた凝っていて(あっ、見ちゃだめ!)、じっと眺めていると映画を見ないでも筋が想像つくという代物(だから、見ちゃだめだと言ってるでしょ!)。そのいいアイディアと、いい顔ぶれで、ミステリー・クラブのメンバーを「凄い!」とうならせるところまで持って行けるだけの素材を備えていながら、あと一息のところでシャープさに欠けるのです。血も凍る驚愕の結末にできたと思うのですが。
監督は作品数は少ないながら順調なキャリア街道を進んでいるジェームズ・マンゴールド。すぐポシャってしまって惜しかった、出来は全然悪くなかったコップ・ランド、オスカーに輝いた17歳のカルテ 、この2つに比べると全然ぱっとしなかったニューヨークの恋人(主演女優が全然乗っていなかったからでしょう)、その後に来たのがこのアイデンティティーです。5本撮ったうちの4本見ていますが、平均値を取ると、ニューヨークの恋人は例外的に出来が悪く、他は平均点以上です。ですからスタッフ、キャストが普通に乗っていれば、今後もいい作品が期待できそうです。
出演者は文句ありません。有名人少々とあまり有名でない人が混ざっての劇。舞台でやっても行けるかも知れません。俳優はバランス良く出たり入ったり。いくつもドアがあって出たり入ったりする芝居です。
★ ストーリー
嵐の夜。自ら好んで集まったのではない人々が11人外の世界から遮断され、安っぽいモテルに閉じ込められてしまいます。最初から女性が1人死にかけの状態。交通事故で大怪我をしています。この女性をモテルへ運び込んだ一家(これで3人)、彼女を轢いてしまった運転手と彼を雇っている最近落ち目の女優(これで5人)、警官と護送中の犯人(これで7人)、新婚なのに仲違いしているカップル(これで9人)、娼婦(これで10人)、そしてモテルの経営者(これで11人)です。ここまで増えた後、人数は減り始めます。
女優の頭がコインランドリーの乾燥機の中から見つかる、新婚なのにもめていた夫婦の夫が刺殺される、1度脱走した殺人犯が撲殺されて発見される、気味が悪くなり冷静さを失った管理人が車を発車しようとした時にタイミング悪くジョージ(妻が大怪我をしている男)が轢き殺される、1度元気が戻ったようだったアリスが死んでいるのが発見される、といった具合に1人また1人消えていく中、運転手は実は元刑事だった、若い女は実は娼婦だった、新婚夫婦が結婚する理由だった妊娠は嘘だった、子供は妻の連れ子だったなどと次々秘密が明かになって行きます。ホテルの部屋のナンバーも6のはずが9に見える・・・。
有名俳優に数えられるキューサックとリオッタの共演はこの作品では効果的に使われています。元刑事のキューサックと現在刑事のリオッタは、これまで全然違うタイプの俳優だと思って見ていたのですが、この作品で2人は良く似ているなあと感心しました。ファンタ速報でも書きましたが・・・
キューサックは善良な青年、リオッタはちょっと崩れた人間を演じている作品を見る機会が多かったのですが、アイデンティティーでは2人とも上手にそのイメージを生かし、かつ期待をはずし、いや、待てよやっぱり、いや、いつもと違う・・・という風に良く分からなくしてあります。2人ともこの役を楽しんで演じているかのように見え、なかなか決まっています。2人とも黒い髪で個性のある目をしているのですが、この作品では貰った役の職業も似ているし、仕草も似ています。アイディアが良いのに、ちょっと早く種をばらし過ぎたような気もします。もう少し観客を欺いても良いのでは・・・。
★ 別の場所では・・・
キューサックたちがせっせと人殺しを相手にしている間に、どこかよその町では殺人犯を殺人犯とするか精神異常者とするかで審議が行われています。こちらも大変で、下手をすると間違って死刑などということになりかねません。ですからちゃんと資料を検討しなければということで出て来たのが日記帳。一冊に色々なタイプの文字でいろいろな事が書いてあります。寄せ書きのアルバムか・・・と思ってしまいますが、持ち主は殺人罪で有罪を宣告されているリバース。この男を正しく裁こう(=病人として扱おう)として医師が一生懸命説明しています。
★ 元の場所では・・・
さて、モテルでは死人が出始め、残った人が恐怖にかられながら「なぜ私たちが・・・」と考え始めています。ふと出た言葉から誕生日が問題だと分かります。5月10日生まれの人がぞろぞろ。刑事と元刑事がいるのが心強いかどうかは分かりませんが、この2人が中心になって皆考え始めます。さあ、答が見つかるか・・・。
ここから後はばらすの止めておきます。話は細かい所へ移って・・・最近映画では運転中の人が携帯電話を車中で手にしようとふと下を見た瞬間に人をはねてしまうシーンが流行しているようです。最初の交通事故のきっかけがこれです。これさえなければアリスは大怪我しなかった、それさえなければジョージはモテルに来なかった、少なくともこの一家は助かった・・・という風に話は犠牲者が少なくて済みます。残りは事故があっても無くても嵐でここに行きついてしまうかも知れません。大嵐というのなら、あの3人も結局・・・。人の運命なんてなかなか先は分からないものです。この11人のうち誰が最後に残るかは大体想像ついてしまいました。しかしジョーク満載で見る価値あります。見終わってみるとそれはドタバタ喜劇だった。
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