映画のページ
参加作品
開催:2003年8月
というわけで今年も終わりました。コマが1列増えたので、体力的にはかなり大変、その上今年は猛暑が続いている時期だったので、体調をキープするのが大変でした。ところが話はさらにエスカレートして、主催者は「来年は24時間体制で行く」などと、マジか冗談か分からないような事を言っていました。油断ならないのは、この主催者、いいかげんな事は言わない人だから。本当にやりかねないのです。「来年は毎日1コマ増やす」と去年言っていたら、今年は本当に増えちゃった、などという実績があるのです。で、私たち常連は食事・飲み物サービス、簡易ベッド付の休憩用控え室、シャワー、フィットネス、マッサージ、荷物置き場を用意しろと、早速この異常事態が発生した場合の対策を提案しておきました。我々もとことん根性で行きますから、映画が上映されるとなればその場にいたい。となると家に帰ることは泣く泣く断念し、映画館に泊まり込み体制で行かなければならないわけです。最悪の場合、映画館のフロアにテントを張って・・・と話はどこまでもエスカレート。
映画祭が終わったので、実況記事は下に回し、映画のリストと短いコメントを上に持って来ました。一部は今後記事にしますので、そのタイトルをクリックすればジャンプします。また、下の方に原題、邦題なども含む全タイトル・リストをつけておきました。
オードブル(2003年3月)
ベルリンでは見られない参加作品、その後一般公開。
オープニング
ジョン・キューサック、レイ・リオッタ主演、アガサ・クリスティー風の物語 + 意外なショーダウン。
後記: キューサックは善良な青年、リオッタはちょっと崩れた人間を演じている作品を見る機会が多かったのですが、アイデンティティーでは2人とも上手にそのイメージを生かし、かつ期待をはずし、いや、待てよやっぱり、いや、いつもと違う・・・という風に良く分からなくしてあります。2人ともこの役を楽しんで演じているかのように見え、なかなか決まっています。2人とも黒い髪で個性のある目をしているのですが、この作品では貰った役の職業も似ているし、仕草も似ています。筋はアイディアが良いのに、ちょっと早く種をばらし過ぎたような気もします。もう少し観客を欺いても良いのでは。
最近新式のコメディーのスタイルが生まれたかのようで、これも去年私がクソミソにけなしたチル CHILL と似たスタイルです。結末は全然違いますが、前半は至る所にブラックなユーモアが盛り込んであり、去年は私にはアホにしか見えなかったのですが、今年もう1度こういうスタイルの作品を見てみると、考え方を改めた方が良いような気持ちになります。会場ではこれはスリラーだと考えている人がほとんどでしたが、あれ、キューサックとリオッタがグルになってドタバタをやっているんだ、と感じる人いないんだろうか。笑えるシーン続出。
初公開の前の上映
ベルリン・ファンタでは見られない参加作品、8月7日よりドイツ一般公開。
後記: ファンタ開催の数日前に見る機会がありました。コリン・ファレルは最近世界的に注目の俳優。しかしこれまで彼のどこがいいのか全然分かりませんでした。この作品では彼の実力を見ることができます。とにかく1人で上映時間中しゃべりっぱなしです。ドイツでは割に好意的に受け入れられているものの「この人演技しているんだろうか」といつも不思議に思っていたフォレスト・ウィタカーも今度(私が見た作品の中で初めて)よく決まっています。筋は電話ボックスに入った男を狙撃犯が狙うというスリラー。狭い場所を舞台にしているのにそこから話が広がるのは脚本と監督の腕。81分ほとんど2人の人間の会話だけで通すのですが、見ていてはらはら。飽きる時間はありませんでした。81分見て120分見たような気分になります。
Bride of Chucky の監督。
前半は事件が起き、若者が殺されていく事件と、過去の事件との関連を探すストーリー。後半は延々と続くフレディーとジェーソンの一騎打ち。筋は単純でつまらないと言えばつまらないですが、タイミング良く次々事件が起き、前の作品を知らない人でも飽きる暇はありません。前の作品を知っている人には分かるジョークもあちらこちらに。
注目作品
主演 William H. Macy
ウィリアム・H・マーシーのファンだったら彼に一生に1回きりでもいいからこういう役をあげたいと思うような役を本当に貰ってしまいました。役ではせっかくのチャンスもふいにする男を演じていますが、マーシーはその役でまた男を上げました。このところ冴えなかった アレック・ボードウィン、今回は冴え切っています。という風に俳優陣はみな気合入ってれて作っています。カメラもジャンルの雰囲気をぴったり決めていてすばらしいです。基本になる筋は去年のファンタに出た10億分の1の男とほとんど同じで、キャラクターを変え、深みを増したような作品。カジノと比較した人がいますが、それは的外れ。オスカーがだめでもゴールデン・グローブは総なめにしそうな力作。
特別上映
筋はそれほどおもしろくありませんでしたが、全編音楽を流し、台詞無しというアイディアはおもしろかったです。フランスではドイツに比べこの種のアニメがずっと普及しているそうです。私がこういうタイプの映画を見たのは初めてなのですが、観客の層は予想外。一般のファンタ・ファンに比べ年齢が下がり、ほとんど男性のみ。
午前中上映
今年はスケジュールがきついので、この作品をパスした仲間が多いです。この作品は無料で、事前にチケットをただでもらえるようになっていました。時間帯も週末の午前で親子連れで来られるようになっています。ファンタは普通は子供入場禁止です。
ファンタのベスト
私は他の作品を見たので逃しましたが、仲間内では評判のいい作品です。
2003年のベルリン映画祭に出ました。
仲間内では一部「いい」と言っている人もいました。
フィルム・ノワール。どういうわけか仲間内でも、その辺を歩いている人の間でも、主催者からも全然コメントが出なかった作品。見る人が少なかったんでしょうかね。
コンビを組んだ作品共々ぱっとしないように思え、選ぶのが難しかった作品。ところが見てびっくり。国際女優も含むスカンジナビア・オールスター・キャスト、至る所ジョークだらけ、その上スカンジナビアの作品ではこれまで1度も見たことの無い派手なカースタント、ヘリコプター登場、水中撮影あり。主人公は現地のマフィア。「いったいどうなっちゃってるんだ」と大喜びしながら 不思議がっていました。それでいて作り方はいつものように典型的なスカンジナビア風の乾いたとぼけたユーモアの連続。必見。
後記: 2005年のファンタにオランダのリメイクが出ています。
アジア映画特集
Versus の監督、 あらすじだけを読むと状況設定は2001年ドイツの Vortex、es[エス]、カナダの Cube によく似ています。どういう風に展開するか・・・。
人気絶頂の時に謎の失踪事件を起こしそのまま引退した有名女優を追う。
私はアニメは好きな方ではないのですが、これは楽しかったです。登場人物はルパン三世風で、筋はSF、テンポの速い展開で、音楽はサウンドトラックを買いたいと考えてしまうぐらい素敵です。ソウルもブルースも出て来ます。
フィナーレの作品と重なったので見ませんでした。
殺し屋 1 の監督、出演者にはスターがぞろぞろ。
去年の殺し屋 1 が凄かったので今年GOZU 極道恐怖大劇場 牛頭を避けた男性もいました。この日最終の回で、上映時間が長いので、早く家に帰りたい人も避けたようです。しかし超満員の「超」はつきませんが、会場はよくうまっていました。大きい方のホールです。私は大スターが多く出るので見てみました。
殺し屋 1 と比べ笑いのシーンは軽めで、楽しく笑えました。登場人物の所属する団体がやくざ、舞台が名古屋ということで、やくざと名古屋が集中的にテーマとして取り上げられています。日本人でないと笑えないシーンもありますが、全体としておちょくっている部分は結構良く観客に伝わっています。主演の曽根英樹の戸惑いぶりが上手で、彼が常識を外れた状況に遭遇するたびに大笑いしました。オーストラリアのコメディアン総出演映画 You can't stop the murders、ドイツの有名監督兼俳優デトレフ・ブック、パンチ・ドランク・ラブのルイス・グルマンに負けるとも劣らぬおとぼけぶりで、国際レベルに達しています。
ちょっと変態っぽいシーンも出ますし、最後はイレーザー・ヘッド式に変な展開になるのですが、去年の作品を見ていて覚悟ができていた観客も多く、あそこまで行かないのでほっとしたのか、あまり文句も出ず見ていました。私にとっても「うわっ、こんなの見たくない」と思うようなシーンもありましたが、幸いすぐシーンが変わり別な話になったりするので、生き延びました。時々命懸けで見ないとだめな映画があります。そういう作品に大物スターがぞろぞろというところ、スケールが大きい・・・。ドイツでカット無しの一般公開無理だろうけれど・・・。
サイコ。井上さんに先を越されています
やはり腹立った!しかし謝らなくてもいいんですよ。これを選ばざるを得なかったのは井上さんのせいではないんですから。仲間全員困ってしまって苦渋の選択だったのです。結局映画館に出たり DVD を買うチャンスが少ない方を選ばざるを得なかったのです。しかしアンチ・リング・ファンにとってはこういう結果になるのは目に見えていました。
これは絶対に見ないぞ!
砂漠の大スペクタクル時代劇。中国人とモンゴル人が悪者で朝鮮人が英雄的行動を取る戦士という設定で1300年頃の物語になっています。人質を取ったりするところは日本の戦国時代とも似ています。内容的には階級制度に反対する政治映画、無駄に人を死に追いやる虚しさを知らせる仏教映画、あるいはマカロニ・ウエスタンに代わる、ラーメン・クッパ・シャブシャブ・イースタンとも言えます。インディアンと砦に変わるようなシーンも出てきますし、ウマを乗り回します。それにしても158分はちょっと長い。髪型、メイク、後ろに流れる音楽がちょっとリアリズムから逸脱するのが残念でしたが、アクションたっぷりで広々した大自然をバックにチャンバラです。
翻案アンデルセン童話。
全然趣味ではないのですが台詞無しでどんな風にやるのだろうという興味からインターステラ5555 を見たので、こちらは見られないはずになっていました。ところがインターステラ5555が終わったらまだかなり時間が余ったので、隣のホールへ。それでマッチ売りの少女の再臨も半分近く見ました。 後半はアクションだらけで、なぜ少女が人を殺して回るのかなど理由は分かりませんでした。しかしかなりスピード感のあるアクションで、どうやらコンピューター・ゲームらしいということまでは分かりました。結構おもしろそうです。
ちゃんと最初から見た人の間では評判がいいようです。
臓器売買に絡むミステリー。
この選択もかなり迷ったのですが、今年はアジアが力を入れているので見ました。今までに見たアジア作品2本はやや失望という結果です。この作品の監督は JSA(ジョイント・セキュリティー・エリア)を撮った人なので期待していましたが、監督がユーモアだと思って入れているいくつかのシーンが的を外れ、腹立たしく思えました。JSA でもユーモラスなシーンを入れていますが、その数を北野武風に絞ってあったので、あちらは最後の悲劇に向かってそれなりの効果を出していました。こちらではそれが行き過ぎたのか、挿入する場所を間違えたのか。現実に時々事件になるような臓器の闇販売、手術とそれに絡む復讐劇。日本人のメンタリティーですと気の毒にと思える場面が多いのですが、設定がお涙頂戴風過ぎてドイツの観客の同情を十分に買えないかも知れません。
地下鉄人質テロ事件捜査。
アクション。韓国からシュリに匹敵するような犯罪アクションが何作も来ていますが、数が増えるにつれ、出来にばらつきが出ます。チューブはその中では良い方です。はらはらという点ではスピードに負けないどころか、スピードより上を行っています。前半は整った地下鉄網と安全システムを紹介するシーンがやや長いですが、日本でも新幹線を使った映画などでそういう風にして国が誇りに思っている物を紹介していますからお互い様。後半このシステムの知識をある程度持っていると、展開が必ずしも荒唐無稽とも言えないように思えるのでその予習です。
仲間内ではアクション物としては今年のフェスティバルのナンバー・ワンに挙げている人もいます。
チューブをシュリと比べるとすれば、イエスタディ 沈黙の刻印は 2009 ロストメモリーズと比較しなければなりませんが、イエスタディ 沈黙の刻印はちょっと評価が下がります。筋の説明にまどろっこしさがあり、さっとストーリーに入って行けないので、観客が匙を投げてしまう危険があります。あと一息という出来で、引き締めたらはらはらするストーリーになりそうです。
仲間内でも「ストーリがごたついて分かりにくい」という意見と、チューブの評判が良過ぎてこちらがかすんでしまう傾向が見られました。
真夜中の狂気
暴力野球
これは演技がどうあろうとも、特殊効果がお粗末であろうが、必ず見るつもりでいました。あらすじを読んだだけで笑ってしてしまいました。客席はガラガラですが、私と似たような事を考えて来ている人ばかりだったようで、楽しいひとときでした。出演者は作者の意図を正しく感じ取り、マジの熱演。
元が漫画らしくて、真剣に取るとアホらしくて見ていられない作品ですが、不真面目に取ると全編大笑い。私も楽しく笑いました。
Jeffrey Combs 再度登場。
ジェフ・フランコを思わせるほどの内容の薄い作品ですが、みな楽しそうに仕事しています。俳優もジェフリー・コームズ以外は芸の浅さを競っていますが、ジェフリー・コームズは「これは自分の映画だ」との自覚があるのか、勤勉に働いています。監督が会場に来ていて「10年以上経って続編を作るのは大変な任務、最初はジェフリー・コームズともども正しいトーンを見つけるのに苦労した、ステュワート・ゴードンとも会って協議した」と言っていました。結果的にはこのジャンルとしてはよくまとまったと思います。スペインのフランコ政権時代の刑務所を使って撮影したそうです。撮影期間中はスタッフ、キャスト和気藹々で楽しく食事をし、ビールを飲みながら作ったのだそうです。なるほど。
普段は音楽をやっている人が監督した作品。
公開が延期され修正に修正を重ねた話題作なのだそうですが誉めてあった解説に騙されてしまいました。見終わって友達全員失望。1人は途中で抜け出して、コンビを組んでいる別な作品を見に行ってしまいました。
後記: それでもしつこく2005年のファンタには新作を持ち込んでいます。
元々見る予定ではなく、実際見なかったのですが、見た人の話によると愉快だったそうです。ハリウッドで出演する時は悪役の多い(国内ではいい役もあります) Jürgen Prochnow が普段とは違う役。役はキャプテンで名前はカークなため、スタートレックのキャプテン・カークのようになってしまうのだそうです。ドイツには熱狂的なスタートレック・ファンがたくさんいて、スタートレックに合わせて人生を送っているのかと思わせるような人もいます。伝統の宗教にはまっていない人がすがる現代のバイブル的なステータス。
散々迷った挙句断念。
内容不明、2004年完成のはずだったのですが、どういうわけか来ました。
私はスプレッターのファンでないのではずしましたが、見た人はおもしろかったと言っています。
少女拉致、殺し屋養成事件。
ジョン・ウーでハリウッド・リメイクをしたらいいようなセンチメンタルなアクション映画。センチメンタルな方は会場から時折笑いが漏れましたが、アクションの方は誉めている人が多いです。この観客の反応はブラック・マスクと似ています。しかしアメリカ人と日本人を悪役にしておけば済むという作りは、アメリカの町ハリウッドで作ってアメリカで上映する時はちょっと困りそう。少女40人が6年前に世界中で誘拐され、アジアのどこかの島で猛トレーニングを受けるという筋は荒唐無稽のはずでしたが、1年ほど前から「たかが映画」とは言えない事件が報道され始め、事実がフィクションを追い越してしまいました。
この作品だけ例外的に再上映があります。実は私もう1度見ようかと現在思案中。物凄く愉快なSFスプレッター映画で、マカロニ・ウエスタン風の常に正しい判断をするクールな田舎の武器商人も登場。元の発想からして傾いでいます。必見。
公式プログラム
原題の Corps à corps の 方が内容を良く表わしています。一般公開にも向きそうな適度なホラー映画。主人公の職業は医者なのですが、俳優の態度とどうもぴったり合いません。でも、この人恐そう。
ファンタスム・シリーズの監督、ファンタスムのバニスターも出演。
ファンタスムの期待を持って見に行くとはずされてしまいますが、そういう事をしなければ楽しい作品です。コスカレリ独特のローカルな家庭的な雰囲気は良く出ています。ハリウッドばかりが映画ではない、特撮だけが映画ではない、リーヴス、ディアスだけが俳優ではない、普通の場所で普通の人も映画を撮るんだという主張が良く出ています。
南米が舞台でおもしろそうに思ったのですが、主演女優が場違いな演技をする予告編を見て止めました。仲間も同意見。1人だけ「まあ、一応見られる作品」と言った人もいました。
Cube の監督、ルーシー・リウも出演。
Cube のようなショック・シーンの連続は無し。今回は「謎また謎」という方に力を入れたようです。ルーシー・リウがこれと言って目立った特徴のない人なのに、どんどん有名な作品に出演し、どんどん出世して行くのには驚くばかり。知らないうちに9本も見ていたのです。Guy などは映画自体を知らない人がほとんど。Gridlock'd あたりからようやく有名な俳優も出ている作品になりますが、最初はほとんど端役。それが今やチャーリーズ・エンジェルズの1人ですからね。
国際的な俳優が集まって一家を成している家族物。失踪事件。
途中も後味も悪い作品ですが、出来は悪くありません。ブレア・ウィッチ・プロジェクトで腹を立てた人には口直しにいいです。似たような作りになっていながら、こちらは一応ちゃんとしたストーリーがあり、犯人なども用意されています。注文のうるさいミステリー・ファンには多少の不満も残りますが、一応筋の通った説明はあります。ジョン・レノンがノールウェイの森でどんな夢を見たのか知りませんが、この作品を見たので「ノールウェイの森には入らないぞ」と決心。
オーストラリア・ギャングの話。
これまで見た作品の中では1番だめな作品。一応体裁はバンパイア物。
スティーヴン・ドーフ出演、ウド・キアーがナチの役で出演。
タイトルのつけ方が悪く、英語、日本語とも焦点がボケています。小粒ながらしっかりしたできの、おもしろい作品です。意外性も十分。ジャンル分けが難しく、コメディー、ハードボイルド、ミュージカルなどいくつもの分野にまたがっています。スティーヴン・ドーフ、ウド・キアーの出番は少ないです。有名人の名前が無くても本来の主演、助演でしっかりカバーしています。しかしそれだけでは目立たないので客寄せのために2人の名前を使ったのは正解。私にはガイ・リッチー作品より、こちらの方が楽しめました。
最終の回、夜中23時45分からの上映開始。荒神と2LDKのダブル・プロジェクトにほとんどの人が行ってしまい、606人入れるホールには私たち20人程度が座っていただけです。椅子に横になって見ることもできそうでした。犯人探しなどが好きなハード・コアのファンタ・ファンなら見逃すのは惜しいという作品。
嫌なストーリーですが、そのテーマの範囲では出来のいいスリラーに仕上がっています。去年の作品デーモンラヴァー と類似のスナッフがテーマですが、こちらはそういうビデオを作る産業界ではなく、撮影に使われる犠牲者の方に焦点を置いています。テーマ自体の不快感を抜きに議論するとすれば処刑ドット・コムはプロットの穴が少なく、推理小説を読み慣れている人やこの種の映画のファンでない人には驚きの連続です。慣れている人にとっては伏線が引いてあって「あ、ヤバイ、危ないぞ」というシーンが次から次から出てくるのでジェット・コースターに乗っているような楽しみ方ができます。私個人の意見は、テーマが不快で、後味が悪かったです。脚本を書いた人は頭の中で筋がきれいに整理されているので、今度は別なテーマで何か書いてもらいたいものです。邦題も内容を反映して不快な命名。しかしそういうストーリーなのですから仕方ありません。
レイ・リオッタ主演、連邦麻薬取締官のスリラー。
時々映画会社の方針に驚く時があります。ナークは、カート・ラッセルのダーク・スティール同様レイ・リオッタの会心の作。長い間あまりぱっとしない役や、怪しげな人物の役を演じて来た人ですが、ナークでは本人も力を入れて演じています。ハンニバルあたりから助演とは言ってもストーリーの進行上はずせない役が来ていますが、ナークでは主演。で、絶対に見るつもりでいたら、これまた見逃せないカンパニー・マンと重なってしまい断念。出演者を見て、映画館に回ってくるチャンスが多少なりとも大きい方を諦めたのですが、ナークはファンタとほぼ同時期に DVDに回ってしまいました。ま、DVD に手が届き易いという意味ではナークを断念したのは正しい決定だったと思いますが、リオッタ、ラッセルともまじめに取り組んだ、本人も満足の行くような力の入った作品が映画館を素通りしてしまうのは残念です。
リオッタはしかしオープニングのアイデンティティーでも重要な役を演じており、最近は調子がいいようです。
アニメーションと実写の組み合わせ。
ウェールズの映画なんて滅多に見られないので見に行きました。アニメと実写のバランスはとても良かったです。イギリスの文化でもケルト系の伝説などを知る機会はそう多くないので伝わっているケルト人の生活ぶりを映像で見せてもらえてとてもおもしろかったです。欧州では圧倒的な人気のアステリックスという漫画があるのですが、それと似たようなシーンも出て来ます。アニメは大人向きに上品な色を使い、渋い画面にしてあります。この日のハイライト。
そりの合わない警官2人で麻薬事件を追う。
連続殺人鬼と命をかけてゲームをする羽目になった精神分析医。
今年はアメリカ、アジア以外の作品が少な目。それでスケジュールが合う時は言葉が分からないので苦手なフランスの作品にも行ってみました。英語で字幕が出ます。この作品は見ないつもりでいたのですが、ドタ決定。小粒ですが、90分よく間を持たせています。冒頭から犯人も動機も分かっています。しかし殺しの手口が独創的で、最初から犯人と刑事が(本人たちは知らずに)知り合いだったりと、設定に工夫が見られます。
パトリシア・ハイスミス原作、ジョン・マルコビッチ主演、デニス・ホッパー版のリメイク。
砂漠のアクション
制作国がモロッコで珍しいと思ったので見ました。しかし砂漠をトラックで走り続けるという以外これといった個性はなし。ピッチ・ブラックの景色の方が大きな印象を残します。一緒にコンビを組んでいた作品は未完成作品でそちらも見たかったので選択が大変でした。結局どちらにしたら良かったのか分かりませんでした。略奪者のストーリーは内容が薄く、アクションは T3 やデッドコースターに負けています。スリルはアクション自体ではく、神経を逆なでするような行動を取る主人公2人の方。最初1人対3人で対立するかっとなりやすい男が登場。その問題が片付いたと思ったら、残りの3人の1人で、落ち着いた男だと思っていた奴がその役を引き受け、最後までそれで通します。筋はかつてイブ・モンタンが主演した爆発性のある物をトラックで輸送する男の物語(1953年版の恐怖の報酬)と似ています。フランス人がフランス映画をパクるのは許そう。
サイコ・ショッカー。日本語のタイトルインプラントの方がオリジナル・タイトル They より良いです。画面をきれいに撮ってある一般向けのホラー映画ですが、ファンタのファンにはちょっと弱い。
失踪事件
Edward Furlong 主演、WWW 犯罪。
俳優の演技が弱くて損をしています。テレビっぽい仕上がりで終わってしまいました。筋は上手な俳優にやらせればもうちょっとおもしろく表現できたかと思います。本人は個性のつもりでやっているのでしょうが、エドワード・ファーロングのしゃべり方が逆効果。本人は全然乗っていません。
WWW の中でスナッフ・ビデオを流す組織と、巻き添えを食った容疑者、警察で Web 犯罪を担当する刑事が協力して犯人を探すという筋。数年前ベルギーとフランスで広がっていた子供ポルノ組織の話をスナッフに置き換えたような展開になるので、原作を書いた人の意欲は見え隠れします。舞台を欧州にしたのも落ち着きが出る上、何でもありの国でないというバックグラウンドが効果的に使えるので、やりようによってはすばらしいミステリーになったと思います。惜しい。
作品の出来はそれほどぱっとしませんが、実際に社会で問題になるようなインターネットのテーマを扱うフランスの意欲は買います。去年のファンタでも今一という出来ながら、デーモンラヴァーという作品で同系列のテーマを扱っていました。
シャレードのリメイク。
一般映画館向きの作品。ファンタとしてはちょっと弱いです。オードリー・ヘップバーンのシャレードを抜くのは無理と最初から分かっていたのかとも思えます。一応音楽には気を使ってバラエティーに富んでいますが、シャレードのように印象に残るメロディーは無し。ハリウッド・スターを登場させながら欧州が舞台で、フランスで撮っています。主人公が一応さまになったフランス語を話しているというのはいいのですが、時々必要も無い所で英語に切り替わったりするのが凄く変。とは言えマット・デーモンのドイツ語に比べると、ニュートンとウォールバークのフランス語の方がましでした。
スリラー
キャー、ギャーというスリラーでなく、静かなスリラー。スペインはこういう渋いトーンを特色としています。チェイキー・カリヨはフランスにいる時はサディスティックな刑事がお得意ですが、外国に出ると善良な市民に変身するようです。今回は悲劇の夫、悲劇の父、盲目の刑事。ええっ、あの人が・・・と驚いてしまいます。友達は全員アレキサンドラの企て を見に行ってしまいましたが、私はユートピアで満足。
サイコ・ホラー、海洋版イベント・ホライゾン、ラダ・ミッチェル主演
撮影技術などを問うと失望します。目立った特撮はありませんし、海の話ですがほとんどをスタジオで撮っています。サイコ・スリラーとしてもそれほど新味はありません。ナオミ・ワッツなどを起用したらこけたでしょう。ラダ・ミッチェルはそういう難しい条件の中で健闘しています。ほとんど彼女1人で100分持たせなければ行けないのです。で、ある程度若くてかわいい顔をした俳優が必要になりますが、それだけで100分持たせるのもまず無理。何となく謎っぽい雰囲気を出す恋人役、主人公と仲のいい父親、悪い母親も助演でがんばっていますが、主人公に100分持たせる気合が入っていないと成立しない映画です。彼女にはピッチ・ブラックと同じぐらい気合が入っています。
ラダ・ミッチェル主演
この作品は見逃しましたが今年はラダ・ミッチェル特集の様相を呈しています。
ウィッシュマスターをひねった作品、スタッグの監督(スタッグとそっくりの作品がベリー・バッド・シングス)
軽いティーン向きの作品。雰囲気はファイナル・デスティネーション(1、2)やザ・シャドー 呪いのパーティ と似ています。筋はちょっとウィッシュマスターから拝借。プロットが甘いので私の評価はちょっと低め。
丁寧に作ったリメイク、クリスピン・グローバー主演
クリスピン・グローバー、気合入れてかかっています。ストーリーなどにはちょっと物言いもありますが、グローバーの熱演、セットの力の入れようがこの変な映画を見られるものにしています。元の映画を良く覚えている人は「このリメイクの方が出来がいい」と言っています。
デスモンド・ハリントン主演、ホラー。
私は見ませんでしたが、仲間内からはいい評判を聞きました。
後記: この年のファンタではなく2006年に見たのですが、デスモンド・ハリントンらしくない作品で失望。彼はポール・ウォーカーのように売り出せるタイプの俳優なのですが、その路線を選ばず、もっぱらB級のホラーの主演を演じています。不思議と彼の世代の有能そうな俳優はインディペンデントに行ったり、B 級の主演で地味に行ったりする人がいます。ハリントンは地味路線ではありますが、作品の主旨には気を使って選んでいるようで、クライモリはちょっといつもの路線から外れます。
オーストラリア最高のスタンドアップ・コメディアン集合。
全く予想をはずされました。こんなにおもしろいとは思いませんでした。オーストラリアの田舎の村で起こる連続殺人事件を、国で最高のスタンドアップ・コメディアンを集めて作ったそうです。誰1人知っている俳優はいませんでしたが、笑いを取る才能は最高。演出が良くて、俳優が笑いのタイミングを絶対にはずさないので、観客は笑いっぱなし。観客の中にはこの俳優を知っているらしい人も結構おり(オーストラリア人か?)、他の観客が笑わないところでももうキャーキャー悲鳴を挙げて笑っていました。出演俳優の1人がメガホン取っているのですが、1番それらしくない人だったのがまた驚き。役であんな態度取っていたら人に嫌われるから監督などできないだろうと思うような人です。それだけ演技が凄いということでしょうか。しかし他の出演者も実に協力的、自分の役をしっかり理解し、貰った時間は自分のためにフルに活用して観客のあごの骨が外れるほどに笑わせてくれます。翌日はあごの筋肉痛に悩まされそう。ファンタにはこういう番狂わせがあるからいいです。
無理に想像すると、やしきたかじん、上岡龍太郎、坂上二郎、ドンキー・カルテット、加藤茶、志村けんなどを集め、それぞれ観客お馴染みのギャグを飛ばしながら、殺人事件が進行する映画を作ったようなもの。最近は芸達者な若手も多いので、日本もやる気があればこういう作品、作れるのではないかと思います。
後記: 絶賛。2011年にスターを使って作られた The Guard はストーリーの枠の部分リメイク(パクリ)と言えますが、失敗。
短篇
10分を越える作品もありますが、秀作は10分以内ですばらしいストーリーを語ってくれます。120分の長編よりずっと良いものもあります。
ドイツ人はこのジャンルには才能があるようです。丹念に作ったクレイアニメ。
低予算ですが、アイディアがある程度成功しています。他よりは負けていますが、Das Schloss よりはおもしろかったです。
努力は認めますが、他の作品が良過ぎた。それに他の年にはドイツからはこれよりもっとおもしろい作品も出ています。
Ritterschlag が無ければ1番に選ぶところ。監督の美的なセンスが成功をもたらしています。
クリスマスだというのでその辺でツリーの木を切ってうちにもって帰ると、自然界から仕返しをされるぞという警告の映画
「オランダ人は頭がおかしい」と言った仲間もいますが、このジャンルの作品としてはいい出来です。子供の時から肉に興味を持った少年が全米一のハンバーガー屋になるまでの伝記。他の作品が自然保護などを訴えているのと同様これは逆説的な肉食反対、動物保護を訴える作品と取れない事もありませんが、そういうお説教的なトーンははずして、ただただクレージーに作ってあります。
アニメ。駐車場の管理人に降りかかる自然界からの災難。ショーダウンではパーキングがパークになる。
アニメ。本日の最高作品。「Ritterschlag」 というのはナイトの称号を貰うこと。しかしそれを監督独特の解釈で・・・。いつか暇があったらもう少し詳しく説明します。
「Ritterschlag」でユーチューブ検索をすると実際のフィルムを見ることができます。
アードマンの作品にあるようなタイプのモダンなアニメ。個性がない代わりに国民が皆同じ容姿という中、個性的な顔をした人はどういう目に遭うか・・・。ところがそれが流行になると国民全員がフリークと同じ顔になりたがる・・・。
フィナーレ
主演ヒラリー・スウォンク
輪舞の現代、田舎、ブラック・コメディー版。
問題:
結局何人死んだのか。
殺人はいくつあったのか。
事故は何件あったのか。
刑事事件が成立するケースはいくつあったのか。
まだ生きているのは何人か。
ヒラリー・スウォンクは田舎娘を演じる時なぜエクスタシーを感じるのか。
後記: 長い間音沙汰無しでしたが、スウォンクが2つ目のオスカーを取ったためか、2005年のファンタの頃に公開されます。
作品リストへジャンプ
以下開催中のコメントなど。上が最新。
昨日はスケジュールがきつくて何のコメントも入れずにタイトルだけを書きましたが、5本のうち最後の1本を除く4本が佳作でした。さて、本日は選択が非常に難しく、友達共々大いに迷いました。その結果以下のようになりました。
何が困ったかと言うと、この日に予定されていた日本の映画を3本見るべきかという点。サイトで評判が良くない作品が多かったので、当初全然見ない予定にしていたのです。ところがコンビを組んだ作品の方も私が特に見たいと思っていない俳優が出ていたりして、呪怨は結局選ばざるを得なくなりました。井上さんは推薦していましたし、主催者の1人も強く推薦していたのですが、私はリングで頭に来た経験があるので、これはパスの予定だったのです。荒神と2LDKもパスの予定にしていました。こちらはコンビを組んでいた映画の方に興味があったから。その判断は良かったようで、代わりの アンデッドと処刑ドット・コムは ファンタらしい楽しい、あるいは恐怖におののく作品でした。
「今日のハイライト」に選びたい作品が複数登場。昨日のフレディ vs ジェイソンは全米の興行成績では目下トップ゚。ファンタは米国の公開とほぼ同時でした。
後半に入り急に選択が難しい日が続きます。本日は短篇集と
最初に非常に珍しい作品を見ました。ウェールズからの参加。監督、俳優とも一生に一度という力を発揮したのがザ・クーラー。まだ半年以上ありますが、オスカーに数人ノミネートされても不思議はないという力作。本日のタイトルは
ブライアン・ユズナ監督が訪ねて来ました。本日も5本のはずでしたが、6本目を半分ほど見ることもできました。タイトルは、
本日は5本。今日の最高作品は意外や意外、1番地味な You can't stop the murders でした。期待していた Bubba Ho-Tep にはあまり乗れませんでした。米語が分かりにくくジョークを理解できなかったからなのかも知れません。しかしこれ1本だけゆっくり見ると楽しそうな作品です。その他 略奪者、 マーダー・ネット、 復讐者に憐れみを。
いよいよ今日から本番。前菜と偶然が重なって4本すでに見ていますが、これまでのところ不満な作品はありません。猛暑がまだおさまらない中、本数が20%増えているので今年はかなりハード。では、いざ。
主催者の公式発表ですと、73本の長編と9本の短篇、合計20%これまでより増えたそうです。ベルリンでは見られないことになっていたフォーン・ブース。 「ファンタ開催よりベルリン一般公開の方が早いのでベルリンのファンタでは見られないことになっている」という仕掛けでした。で、ファンタ開催前の昨日見ました。なかなかの力作です。
ベルリンで見られないもの、代わりに見られるものなど一部変更があります。今年の春先に主催者が言っていたように4列を5列にするということになりました。ですから1本2時間の単純計算で38本76時間、去年より数本増えています。120分を越えるものもいくつかあるのでかなりの量です。
最初のリストに比べ16本増え、チリ、英国とフランスの合作、スペインなどが入って来ました。
今年もファンタの季節に近づいてきました。とりあえずは発表になった作品のリストをご紹介します。今年は国が偏っていて、アメリカ映画が多く、その次を追うのが日本と韓国です。スペイン語の佳作がたくさん来る年、韓国が力を入れた年などもあったのですが、今年はアジア特集では日本がやや力を入れ直し、韓国が僅かに譲ったという感じ。中国があまり健闘していません。それ以外のアジアの国は姿も形もありません。欧州ではドイツとフランスがチラッと顔を出し、英国が後退。代わりにいくつかオーストラリアから来ています。国別に見ると生彩のない年と言えます。
年代的には今年の作品が多く全体的にかなり新しいです。大スターの出る作品が減っていますが、それはファンタでは全然問題ではありません。むしろ俳優は無名、新人でもストーリーがおもしろければ満足。監督がデビューなどという作品も結構あります。却ってその方がユニークなものが見られていいです。また、世間的には知名度は今一でも、ファンタのファンにはおなじみの監督の新作が見られます。
短篇は去年も数が半減し、1つしか枠を取っていませんが、今年も本数から見るとまた枠は1つのようです。短編だと言って馬鹿にしない方がいい、凄く才能を感じる作品も前はよくあったのですが、最近は振るわないようです。
会場はベルリンで1番音響のいい映画館。先日前菜(前夜祭)がありましたが、間もなく本番が始まります。今年もまたプログラムを追いながらレポートを入れます。
タイトルのリスト
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