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ヴァン・ヘルシング /
Van Helsing

Stephen Sommers

2004 USA 132 Min. 劇映画

出演者

Hugh Jackman
(van Helsing - 教授、吸血鬼狩り歴600年ののベテラン)

Kate Beckinsale
(Anna Valerious - 吸血鬼狩りをする家族の一員)

Will Kemp
(Velkan - アンナの兄か弟)

Richard Roxburgh
(Vladislaus Dracula - 伯爵)

David Wenham
(Carl - バチカンの僧侶見習い)

Samuel West
(Victor Frankenstein - 博士)

Shuler Hensley
(フランケンシュタインが作った怪物)

Elena Anaya
(Aleera - 吸血鬼)

Kevin J. O'Connor
(Igor - フランケンシュタインの下僕)

Alun Armstrong
(Jinette - 枢機卿)

Silvia Colloca
(Verona - 吸血鬼)

Josie Maran
(Marishka - 吸血鬼)

Tom Fisher (Top Hat)

Robbie Coltrane
(ハイド氏)

Stephen Fisher
(ジキル博士)

見た時期:2004年5月

おもしろかったです。予告編が良かったので是非大きな映画館で見たいと思っていたら、公開前日のプレミアの券が当たり、夜中だというのに頑張って映画館へ。始まるのが午後11時過ぎで、終わったのは午前2時。当然帰りの地下鉄は無い。ま、徒歩でも帰れる距離だったのが幸い。聞くところによると132分なのだそうですが、ドイツでは140分とか言われています。これはチェックしてみないと分かりません。

ドイツの国営若者向きラジオ局からはけちょの扱い。けちょんけちょんとは言いませんがあまり扱いが良くない。無料タウン誌は明日から公開だというのに無視して取り上げない。欧州で1番大きな映画雑誌(ドイツ語)は今月号にテーマ紹介はしていますが、作品の評には?をつけてまだ判定ができていない。

後記: アメリカでは公開第1週目は1位ですぞ。

この作品はハリウッドの100万ドル級ブロックバスター・タイプで、辻褄めちゃめちゃのエンターテイメントなのですが、主演にあまりアメリカ人が入っていないのです。ジャックマンとロクスバーグはおなじみオーストラリア人。ウェンハムもオーストラリア人。ベッキンセールとケンプは英国人、バチカンの枢機卿も英国人、ハイド氏も英国人、黒髪の吸血鬼の女性はどうやらイタリア人、もう1人はスペイン人らしいです。撮影もパリやプラハで行なわれ、ギャラ、その他のコストをかなり下げるのに成功したのではとかんぐっています。ジャックマンは「自分に役が来るのはギャラが安いからだ」と時々文句を言っています。しかし俳優のギャラが下がり、コストの安い欧州で撮影された分余ったお金はどこへ流れたか?セット、衣裳、特撮に行ったようで、映画ファンにはうれしい贅沢な作りになっています。そして演じる俳優はザ・コアではありませんがティームワークが良く、アンサンブルとしては良くまとまっています。ハリウッドは全部をハリウッドで作ってお金をアメリカに落としてもらいたかったのだと思いますが、そうするとギャラが高い俳優を2、3人呼んだだけで予算が飛んでしまうとか、衣裳がお粗末になりかねないとか、結局虻蜂取らずになってしまうと思います。ドイツがなぜこの映画に高い評価をしないのかは分かりません。見た次の日から一般公開ですので、観客の動向が気になります。私が見た時は恐らく券に当たったと思われる人が50人ほど。ベルリン映画祭にも参加する大きな映画館の1番大きなホールでしたが、始まるのが遅かったせいもあってか、ガラガラ。見た人は私を除いては若い人ばかりで、作品が気に入っていたように見えました。

監督はアメリカ人でエンターテイメントの名手。ドイツ語タイトルで言うとミイラミイラ 2 (日本名:ハムナプトラ 失われた砂漠の都ハムナプトラ 2 黄金のピラミッド)を成功させたスティーヴン・サマーズです。日本語ではヴァン・ヘルシングというタイトルですが、どうもこれはあの有名な吸血鬼研究家のことを指しているようです。ユニバーサルは怪奇映画の版権を一手に引き受けているので、吸血鬼ドラキュラだけでなく、ジキル & ハイドとか、フランケイシュタイン、さらには狼男を登場させる余裕。スタジオから使っていいという許可を貰って、自分で脚本を書いているので、好き勝手ができたようです。しかしこういう事をすると普通はひどいことになって、結果はリーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦いのように終わることが多いです。ところが見事に期待を裏切って、とてもできのいい吸血鬼狼男二重人格人造人間・ゴシック・アクションになりました。

映画ファンからやや物足りないという意見もあったのですが、その人はホラーの方に重きを置いて期待をしていたので、もう少し気味悪いシーンがあってもいいと考えたようです。私は予告を見て、まずアクション、次に特撮という期待を抱いていたので、失望しませんでした。筋はザ・コアリーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦いといい勝負の荒唐無稽、あり得ない話。ですから、この与太話をどういう風に描くか、それだけが勝負だったのです。

ではあるか無いか分からないようなストーリーに行きます。退散する方は今のうち。 → 目次へ。 映画のリストへ。

パクれる物は全部パクってと言うと人聞きが悪いですが、参考にできる物は参考にしまくって作られています。ですから始まり方がリーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦いに似ているとか、人造人間のシーンがヤング・フランケンシュタインに似ているとか、景色がロード・オブ・ザ・リングに似ているとか、主演がクリント・イーストウッドに似ているとか、鏡の向こうに行くシーンがファンタで見た映画と似ているとか、何でもあり。

まずは1887年のトランシルベニアフランケンシュタイン博士が白黒の画面で人造人間を作っていますが、屋根裏の研究室にどういうわけかシェリー夫人の作品には出て来なかった吸血鬼が立っています。博士は脅かされている。

ところでフランケンシュタインは人造人間の名前と誤解されることが多いですが、シェリー夫人の原作では科学者の名前。そしてこの名前はドイツでは普通の苗字です。このシーンではセットがいいなあと思いました。ここで登場するのはフランケンシュタイン博士、イゴール(マーティー・フェルドマンのアイゴールよりはマジ)、大柄な人造人間と吸血鬼ドラキュラ伯爵

1888年、パリ。顔が見えにくい衣裳をまとった男がハルクの変身した姿を思わせるような男と喧嘩の最中。これがジキル & ハイドで、今はハイド氏に なっているところ。これをマトリックススパイダー・マンかというザイルさばきで追いかけるのが、マカロニ・ウエスタン風、でかい態度のファン・ヘルジンク。ドイツに来るとそういう風に読むのですが、ご存知主演のジャックマン。1888年には使いそうもない装備で、脱線は意に介さず大格闘。勝ちます。セットがいいです。

シーンが変わって、どういうわけかバチカンの MI6 本部のような場所。インド人、ティベット人などを思わせるさまざまな宗教の専門家が地下室で何やら研究の最中。ここはまさに 007 の乗り。Q を思わせる発明品を紹介する男 C(arl) が登場。時代の矛盾などへとも思わず、当時絶対に無かった発明品を次々に披露。ファン・ヘルジンクはまるでジェームズ・ボンドで前の作戦のミスについて文句を言われたり、次の作戦の準備で新しい武器を貰ったりしています。大蒜の首飾り、銀の弾丸の入ったピストル、引きがね式のアーチェリー等々。武器を提供する男は研究家、発明家、学者肌ですが、ファン・ヘルジンクは嫌がる C を次の任務に伴います。

またトランシルベニアへ向かいます。ドラキュラフランケンシュタイン博士を使って勢力を伸ばそうとしているので阻止しろというのが命令。以前トランシルベニア出身だという人がクラスにいたのですが、その人は普通の人間。人を襲ったりはしませんでした。どうやら出身地を言うたびにドラキュラの話を持ち出されるらしく、話し慣れたもの。きっとうんざりしているんでしょうね。

映画ヴァン・ヘルシングドラキュラ伯爵のファースト・ネームは Vladislaus、ヴラディスラウスとでも読むんでしょうか。これがそれほど与太ではないのです。ドラキュラ伯爵というのは架空のバンパイアですが、元ネタになっているヴラド3世という方が実際におられまして、由緒ある家系なのです。

トランシルベニアではある家族が何百年も吸血鬼退治に命をかけていますが、分が悪く、残っているのは姉弟(兄妹?)2人だけ。相手のドラキュラリーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦いでは悪役の M、M:I‐2 でも確か悪役だったリチャード・ロクスバーグ。彼がただの悪でなく伯爵。リチャード・ロクスバーグは気合いと気品を込めて力演。ムーラン・ルージュでは嫌われ役の貴族をやっていました。ドラキュラ伯爵には3人の妾がいて、皆吸血鬼。子孫を効果的に増やす方法を実行に移そうと科学者フランケンシュタインを脅かしているところです。吸血鬼退治の姉弟のうち弟はガブリとやられてしまい、これがどういうわけか狼男に変身。時たま時間に隙間ができ、正気に返るのですが、その時姉に重要なメッセージを届けようと試みます。上映時間が長いのであれこれエピソードが挿入されていて、途中ドラキュラ伯爵にばれてうまく行かないようになっています。

ロバート・デニーロ演じるモンスターも悲劇の人物でしたが、ヴァン・ヘルシングのモンスターも心が優しい。しかも彼はドラキュラの壮大な計画の鍵 を握っています。ベッキンセールが助けてもらう場面で「ありがとう」と言うと、その言葉にモンスターが感動するシーンなど、大男に木目細かい演技をさせています。

この作品で特に株を上げているのは台詞。ベッキンセールの「ありがとう」に喜ぶモンスターにはほろりとさせられますが、「ちょっと痛むぞ」 と言われると、「痛みには慣れている」と、ずっと虐げられていた気の毒なモンスターの本音が出たり、武器調達係だったのが外勤にされてしまい文句たらたらの C の台詞も愉快です。逆に株を下げるはずだった 時代に全く合わない武器、時代に全く合わない言葉遣いが全然気にならなかったのは、セットが良く、ストーリーの展開が早く、アクションが美的だったためで しょう。

コンパクトにまとめて言うと、誰もが知っている話をモンスターのようにつぎはぎし、最近飛ぶこうもりを落とす勢いのジャックマンと、タイタニックのウィンスレットの次を狙ってお姫様役に据えられそうだったベッキンセールが根性出してアクションに挑み、東ヨーロッパの伝説などが多いので、欧州フレーバーを出すため欧州に来て撮ったゴシック・ホラーです。できれば大きなスクリーンで、それが無理なら小さくてもいいですから、暗い映画館のスクリーンでご覧になって下さい。欧州の雰囲気たっぷりです。

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