映画のページ

ヴァン・ヘルシングの注

Stephen Sommers

2004 USA 132 Min. 劇映画

見た時期:2004年5月

小説 吸血鬼ドラキュラ(1897年)

アイルランド人(ア)ブラ(ハ)ム・ストーカーの怪奇小説。ルーマニアのトランシルベニア地方が舞台。本当に吸血鬼の言い伝えがあったもよう。主人公ドラキュラ伯爵は古い城に住む。昼夜逆転生活の元祖。ドラキュラが犠牲者に襲いかかり血を吸うと、その人物も吸血鬼となり、死ななくなる。そのため将来人口 過剰問題を起こす可能性があった。

吸血鬼の弱点は大蒜、十字架、太陽光線、鐘、聖水、木製の楔など。吸血鬼として生き続けている間は魂の安息はないので、テクノ・ファン、ディスコ通いに適している。近年大幅な遺伝子改良などがあったためか、昼間でも歩き回れる吸血鬼が出たりし、映画ファンの中には、吸血鬼の規則をもう1度きちんと 見直してもらいたいという要求も聞かれる。

吸血鬼の犬歯は一般的に鋭く長めにできている。南米にはドラキュラ伯爵と親戚の血を吸うこうもりが生息する。バンパイアの語源はトルコ語の魔女。

本物のドラキュラ ヴラド3世

ドラキュラというのは《龍の子》という意味。龍の落とし子ですか?

吸血鬼の伝説に先行して1400年代中頃にモデルとなった人物が実在。生まれたのは1430年前後。父親同様ルーマニアの領主、今風に言えばルーマニアの君主。当時ワラキア公国と呼ばれた土地を支配する家系だったが、在任中もその後も国をトルコに取られたり取り返したりということが起きる。

ヴラド3世は苦戦しながら取り敢えずトルコとの戦争に勝つ。がんばり屋の戦士で領主としては人民の間で評判が良く、敵には評判が悪い。別名 Vlad Tepes と言うらしく、ヴラド2世、別名 Vlad Dracul の息子。ドラキュラという名前の由来はこのお父ちゃん。お父ちゃん強かったからか、ドラゴンと呼ばれたのだそうです。ヴラドというのはヴラディスラフの短縮形かもしれない。

アブラハム・ヴァン・ヘルシング

ストーカーの小説に登場するドラキュラの研究家。映画や本に登場する時はアムステルダム大学教授で、精神病院長ジョン・セワードの恩師。年寄りに描かれることが多い。オランダ人だから、ファン・ヘルジンクという読み方が本当の名前に近い。専門分野は精神病学。ガブリエルというのは映画で勝手につけた名前。ガブリエルというのは人間と神の間を仲介する天使だそうで、キリスト教やイスラム教の人はすぐピンと来るらしいが、日本人にはあまり馴染みが無い。

トランシルべニア

ルーマニアのカルパチア山脈に東西と南を囲まれた谷間。アルデアール、エルデーイ、ジーベンビュルゲン(ドイツ語)などというと同じ場所を指す。大昔にはローマ人、ゴート人、後にはハンガリー人、ルーマニア人などが住んでいて、土地の起源についてはそれぞれ勝手な事を言っている。はっきりしているのは1540年頃にはハンガリー公国になっていたこと。国の持ち主は時々変わり、トルコやオーストリアも登場。最近では地域がルーマニア人とハンガリー人の住む地区にまたがるので、ハンガリー人の一部がルーマニアに住んでいたりと、ややこしい。

 

ジキル博士とハイド氏(1886年)

ロバート・ルイス・スティーヴンソンの怪奇小説と主人公。

ジキル博士が、飲むと自分の中にある邪悪な心が体を得られるという変身薬を発明。同じ人物ではあるが、姿ががらっと変わるので、警察に身元がばれにくい。変身中のジキル博士はハイド氏になり、普段できなかった邪悪な事をやり放題。調子に乗って繰り返しているうちに薬品が無くてもハイド氏になっていられるようになる。

多重人格のアイデンティティーに比べると2人の人間になるのだからまだ分かりやすいが、薬が効き過ぎてジキル博士はジョン・シューターになって元に戻れなくなったジョニー・デップのようなことになる。怒ると巨人になってしまうハルクなどもハイド氏のようなもの。フロイトが生まれたのが1856年、研究の成果が公に認められ始めたのは1900年以降。1886年と言えばまだ他の人の本を翻訳していた頃だと考えると、その時にもうこんな小説を書いたスティーヴンソンはかなり斬新。

ロバート・ルイス・スティーヴンソン

スコットランド系英国人作家。技術肌の家の出身で、本人も技術系。のちに法科に転じる。弁護士になった後作家に転じる。多作だが有名なのは宝島(1883年)とジキル博士とハイド氏(1886年)。文学では色々な所へ行ったり、他の人物になったりと動きのスケールが大きい。

 

フランケンシュタイン(1818年)

英国人マリー・ウォルストーンクラフト・シェリーの怪奇小説と主人公。

文学仲間で夫のシェリー、バイロンとスイスにいる時に「同じテーマで小説を書こう」という話になり生まれた作品。ケネス・ブラナーの作品がかなり原作に忠実に映画化している。

キリスト教でない日本人にはあまりピンと来ないが、神以外の者が人間の生命を作り出すというのは西洋人にとっては重大な罪で、それを犯したケネス・ブラナーは大悪党。モンスターでなく、博士の名前がタイトルになっている。モンスターの名前がフランケンシュタインだと勘違いされたのはボリス・カーロフの功績。気合の入った演技だった。気の毒なモンスターには名前が無い。

シェリー夫人

父親は政治評論家、母親は女性解放運動家。母親はマリーの生後すぐ死亡。マリー・ウォルストーンクラフトは16才で作家シェリーと不倫。シェリーの妻ハリエット(彼女も若くしてシェリーと駆け落ち結婚)が自殺した後、18才か19才で結婚。50才代の半ばで死ぬと聞くと早く死んだように思えるが、夫のシェリーは30そこそこで事故死している。

 

狼男

ビッグ・フィッシュに出て来た、ダニー・デ・ビートの真実の姿。昼は普通の男、夜な夜な狼になる。夜満月でないと活躍できないはずだが、ドッグ・ソルジャーのような変種もいるのでご注意。ここでも映画ファンは狼男の定義をきちんと守れと叫んでいる。 X−メンのヒュー・ジャックマンは普通の伝説版狼男ではなく、腹黒いブライアン・コックスが作った人工の狼男。

ドラキュラ同様、噛まれると普通に死なせてもらえず、自分も狼男になってしまうケースが多い。夜な夜な出回って肉を食べまくっていればそれで本人は満足かと思うのだが、苦しんでいる人/狼の方が多い。野菜・果物や木の実も食べて栄養のバランスを取るべきだった。

ドイツ語 Werwolf の日本語訳としては、人狼、男狼の方が元の言葉に近い。Wer というのは男、人間という意味。Wolf は英語と同じように狼。男女両方いる吸血鬼に対し、狼男は名前の通り男性が多い。

この後どこへいきますか?     次の記事へ     ヴァン・ヘルシングのメイン・ページに戻る     前の記事へ     目次     映画のリスト     映画一般の話題     映画以外の話題     暴走機関車映画の表紙     暴走機関車のホームページ