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Kontroll / Control

Nimród Antal

2003 Ungarn 105 Min. 劇映画

出演者

Csányi Sándor
(Bulcsú)

Kulka János (Feri)

Mucsi Zoltán
(教授)

Bicskei Kis László
(Doki)

Pindroch Csaba
(Muki)

László Zsolt (K)

Badár Sándor
(Lecsó)

Mihályfi Balázs (Gonzó)

Nagy Zsolt (Tibi)

Tóth József
(Róbert)

Mátyási Bence (Gyalogkakukk)

Nádasi László (Laci)

Szabó Gyõzõ (影)

Scherer Péter (Fõnök)

Balla Eszter (Szofi)

Kovács Lajos
(Béla、地下鉄の運転手)

Horváth Károly (Tamás)

Cserhalmi György
(ボス)

Eszenyi Enikõ
(酔っ払った女性)

Derzsi János
(最後の客)

Lázár Balázs
(大男)

Völgyi Melinda
(胸の大きな女性)

Bence Mátyási

Levente Tôrköly
(ゲイの男性)

見た時期:2004年8月

2004年 ファンタ参加作品

出演者が多いのですが、地下鉄の検札ティームがいくつか登場し、駅に大勢の乗客がいるからです。地下鉄の構内が舞台というのは珍しいですが、今年のファンタにはこの他にも地下、あるいは地下鉄駅や線路のシーンが使われている作品が出ました。筋にはあまり関係ないものを除くと 0:34 レイジ34フンがよく似ています。

ストーリーを理解するにはハンガリーの地下鉄のシステムをちょっとだけ知っておいた方がいいです。パリなどでは切符をチェックする機械があり、切符を持っていない人は構内に入れませんが、ドイツやハンガリーでは、地下鉄に乗るのに切符のチェックはありません。危険を承知ですと、無賃乗車はいとも簡単にできるのです。そこへこの映画の主人公のような仕事をする職員が現われ検札をするのです。とっ捕まると罰金。結構値が張るので、無賃乗車は私もお薦めしないのです。それに外国人だとその国の言葉が分からず、手続きもややこしいのです・・・。

しかし果敢にもそれに挑戦する日本人乗客もいるらしいです。その様子は映画の中でご覧になって下さい。これはしかしあくまでも劇映画、フィクションです。

舞台は最初から最後まで地下鉄の駅、職員のいる部屋、線路だけで、普通の町は全然出て来ません。それでどうやって105分持たせるのかって?見終わると、もっと長く見ていたくなりますよ。ここはブダペスト。

冒頭ドイツのホームレスの方がよっぽど清潔な服装をしていると思ってしまうような薄汚い、人相の悪い男たちがゾロゾロ出て来ます。この姿で主演が務まるのはインディペンデンスの映画ぐらい。しかし Kontroll はハンガリーでブロックバスターになり、国の記録を全部更新して回ったのです。作った人はアメリカにいたハンガリー人。数年前から国に帰り活躍している人です。こんな凄いヒットになると考えたかどうかは分かりませんが、国際映画祭で大評判を取り、ファンタではオープニングに来ました。

解説を読んでもあまりわけが分からず、ハンガリーなどという映画産業ではかなりメジャーから遠い所に位置する国から来ています。ファンタのオープニングに駄作が来たことはないと、ただただ主催者を信頼して見に行きました。無論知っている俳優などというのは1人もいません。

始まって最初の20分は苦労しました。ハンガリー語は日本語と親戚ではあるのですが、私は《こんにちは》という単語すら知らないのです。文法は日本語とかなり似ていますが、使われる単語は全然違います。ですから予備知識ゼロに加え助けになる他の言語もなし。字幕を読むしかありません。映画祭初日はまだ肉体的にそういう条件に慣れていないので、大変。他の人はもう笑っているのに私は笑えません。隣に座っている人に聞いたら、冒頭俳優でない人が出て来て、この映画の撮影の許可を出した理由を色々言い訳しながら話していたそうです。本物の地下鉄の職員です。この部分は映画祭が終わって考えてみると、ベスト・イントロ賞に値します。

それから暫く登場人物の紹介のようなシーンが続きます。えええっ、まさか?と思ったのですが、薄汚い姿の男たちは全員地下鉄の職員。無賃乗車をする客を追う人たちです。で、この作品はアクション映画という降れこみです。確かにアクション・シーンは多いのですが、こういう話の設定でこういうアクションというのは珍しいです。出て来る人たちはいったいどんな生活しているんだろうと呆れてしまいます。休憩時間に食べ物に頭を突っ込んで居眠りしている男や、ここ何年1度も地上に上がったことがない男などです。クールなチームと落ちこぼれのチームというのがあって、クールな検札チームは揃いの服を着ています。でも、そんな服着ていたら、無賃乗車の常習犯にはすぐ見破られてしまうと思ってしまいました。ティーム同士に競争させるというのが上司の方針で、対抗するグループというのが出て来ます。これが決闘のようなことに発展し、対決。勝負の決め方というのがめちゃくちゃ。ミッドナイト・エクスプレスという戦いです。これは見てのお楽しみ。ばらしません。スリル満点。これもアクション映画だという証拠です。

職員は薄汚く変な男ばかり。その上、熊のぬいぐるみのような格好をした美女が登場。加えて欧州では皆がピンと来る《死》も登場。死というのは日本語では出来事ですが、欧州では手足があり歩き回れる、人間のような姿をした男。その辺を徘徊して、人間を死の世界に引きずり込むのです。昔は修道士のような頭巾つきの長い服を着て、長い棒のついた大きな鎌を持っていました。現代の《死》は頭巾だけは昔のままで、他は現代風のアウトフィット。これが(人間とそっくりの格好なので《人》と呼ぶべきなんでしょうか)駅の構内、線路をふらついているのです。

変な人はそれだけではありません。地下鉄の運転手も変わっています。運転席をキリストの絵や蝋燭で飾り立て、小さな部屋のようにしています。この人の名前はベラというので、ついベラ・ルゴシを思い出してしまいました。とにかく登場する人物は皆変。その上殺人事件も起きます。殺しを得意にしているのはもちろん《死》。彼が犯人です。

その他に無賃乗車の常習犯におちょくられへたへたになる職員、ゲシュタポのような上司など、これでもか、これでもかと妙な人間が登場します。で、観客は笑い続けますが、それでもシリアスなドラマなのです。そして最後にはこの汚らしい駅が素晴らしい所に思え、メルヘンのようなファンタスティックな終わり方をします。ですからファンタのオープニングにはぴったりなのです。いつになるかは分かりませんが、恐らく日本にも行くでしょう。ぜひ見て下さい。

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