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Survive Style 5+

関口現

2004 J 120 Min. 劇映画

出演者

浅野忠信
(石垣昌広)

橋本麗香
(ミミ - 石垣の妻)

小泉今日子
(洋子 - CMプランナー)

千葉真一
(会社社長 - スポンサー)

阿部寛
(青山 - 催眠術師)

岸部一徳
(小林達也 - サラリーマン)

麻生祐未
(美沙 - 小林の妻)

貫地谷しほり
(小林の娘)

神木隆之介
(小林の息子)

三浦友和
(山内 - 小林家の医者)

津田寛治
(津田 - 泥棒)

森下能幸
(森下 - 泥棒)

Jai WEST
(J - 泥棒)

Vinnie Jones
(ロンドンから来日した殺し屋)

荒川良々
(片桐 - 通訳)

見た時期:2005年8月

2005年ファンタ参加作品

この作品に期待していたのは有名人を1度に見られるという点で、それ以外はあまり大きな期待をしていませんでした。現在売れているスターをこれだけ集めてどんな話を作るのだろう、しかも別々な話が5つも出て来て、お互いをどう関連させるのだろうという好奇心はありましたが、スター・オン・パレードでまとまりの無い仕上がりになる覚悟はできていました。

その不足気味の期待は見事裏切られ、驚いたのなんのって。最近日本はコメディーがテレビ方面で良くなって来ているという情報は入っていました。落語という確立された笑いの世界を持つ国、その前に狂言という形でもお笑いを知っている国、人を集めて見せる芸能でなくても川柳という形でからかい、笑いを楽しむ国、そして定期的にどっとお笑いブームが起こる国ですので、ユーモアを解する人が住んでいる国だというのは分かっています。私も自分にはユーモアが無いと自覚していながら、人の作るコメディーには大いに感心があり、良い作品、良い芸を堪能することもあります。

しかし映画界にはあまりそういうのが上手に生かされず、日本のコメディー映画にはどこと無く《低め》というイメージがこびりついています。シリーズ化されていて、これを見に行く限り笑えると保証つきの作品は多々ありますが、その作品を引っさげて世界に問うことができるかと聞かれると、やはり観客層は日本国内に留まってしまうなと思わざるを得ません。日本の映画界はよその国のために映画を作っているのではなく、くたびれ切ったサラリーマンが憂さを晴らせるように作っているのですから、世界に対する配慮が二の次になるのは別にかまいませんが。

海外に出すとなると現在のところは北野武に限られてしまったりして、彼のユーモアのセンスに波長が合わない人にはあまり大きな選択肢はありません。秘密の花園がベルリンに来たことがあり、暫く受けていましたが、その後が続いていません。同じくベルリン映画祭にマンデーとかいう作品も来、私は大いに笑ったのですが、ベルリン一般に受けたかと言われると、やはり続きませんでした。

それに比べ Survive Style 5+ はベルリン人だけでなく、巾広く欧州の人達にも通用するのではないかと思えるユーモアを満載しています。マーケティングに失敗すればこれも単発に終わってしまうでしょうが、上手に宣伝するなり口コミでうまく乗せれば、こういうユーモア、こういう作品のスタイルは受け入れられる巾が広いと思います。

ここから先危険地帯。
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ストーリーは5つ別々に進行し、尋常で無い話ばかり並んでいます。日本の映画で、日本ではすでに公開されているので、詳しい説明は省きます。テーマはざっとこんな具合。

・ 妻を何度も殺す夫の話
・ 催眠術ショーで観客に催眠術をかけてから催眠術師が殺し屋に殺されてしまう話
・ CM 作りが商売の女性がおもしろい CM 作りに励む話
・ 催眠術ショーで催眠術にかかり鳥だと思い込んでいるサラリーマンの家庭の話
・ 空き巣3人組の話
・ ロンドンから来た殺し屋と通訳の話
・ イメージに合わない CM 企画を出され断わる会社社長の話

どうやってあんなにうまくこじつけられるのか分からないのですが、こういうエピソードが最初ばらばらに進行していたはずなのに、終わりの方でジグゾー・パズルの絵のようにきっちり噛み合ってしまいます。

メンタリティーが違う人にも受けると思えた理由は、主人公の態度がはっきりしていて、言語、文化が違ってもやはり「変な人だ、変な事が起きている」と理解されやすくできているからです。その上派手な色彩、調度品、分かりやすいセットばかりで、観客が誤解する余地が少ないというのが利点。出来事は不条理の連続で、例え観客の誰かが流暢な日本語が分かっても、流行語を知っていても、日本人と同じ程度にしか理解できないでしょう。なぜ石垣が妻を殺すことになるのか、なぜ小林が元に戻らないのかなど、日本人が大勢集まって知恵を寄せ合っても説明できないことは、欧州の学者が寄ってたかって考えても分からないままだろうということです。

ちょっと比較してみたくなったのは去年のファンタに出てきたナタリ監督のナッシング。あれもいかにもカナダだという特徴は無かったですが、話は分かりやすく、しかしなぜそうなるのかはさっぱり分からず、色が派手で、ユーモアが良く伝わって来ました。いろんな映画をどんどん作って下さいと言いたい私は、こういうタイプの映画も大歓迎。日本が海外で勝負をするつもりなら、こういうカテゴリーの開拓が良いかも知れません。

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