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ドイツのコーヒー

コーヒーブレイク

文明に取り残された

ずっとファンタの話題が続きましたので、ここで1度ガラっとテーマを変えます。

2000年台に入ってテレビの無い生活をしているとなると、それだけで文明から取り残された化石のような人物だと思われても仕方ありません。今度はコーヒー・メーカーからも取り残されたというお話です。

ドイツに住むこと25年。ちょうど事故で入院していた頃、25年目に入りました。25年間にドイツで食べた物の中で何がおいしいか。じゃがいも黒パンがおいしいのです。さらに血のソーセージサワーキャベツ、そしてミュスリーと呼ばれるシリアル

来た当初からちょっと前までおいしいと思った事がなかった物をある日突然おいしく感じるようになり、今日に至っています。「そんな事を言い出すあなたはもうドイツ人だ」と言わないで下さい。今でもしっかり和食も作っています。ところで私が挙げたドイツの食べ物は最近の若い人には全然受けない物が多いです。

本題に入る前に上の登場食物についてコメントを。

☆ じゃがいも

・・・は何でもおいしいというわけではなく、おいしい種類とそうでない種類があります。豚の餌にするようなじゃがいももあるそうで、そういうのは元から人間の食用には考えていないようです。日本のお米の重要度に匹敵するぐらい重要な主食ですから色々な種類があり、中にはあまりぱっとしない味の物もあるようです。大体からドイツ人は《じゃがいもはソースをつけて食べるもの》と思っているようなふしがあるのです。そしてじゃがいもは胃の中の場所塞ぎ以外の何物でもありません。私のようにじゃがいもを野菜と考え、味わいながら食べる人ばかりではないのです。しかしおいしいのもありますぞ。

☆ 黒パン

・・・も重要な主食。黒パンと言いましたが、私が常食にしているのは灰色パン。中に入っている成分のバランスによって色が違います。普段食べているのは近所のパン屋さんで買っているのですが、パンも全てがおいしいというわけでなく、そういう種類に出会わないと行けません。また、その日買いたてはおいしいけれど、次の日になるとネコも断る《ネコまたぎ》になってしまう物もあります。クロワッサンやフランス・パン、トルコ・パンなどは元から買いたてを食べる習慣になっているので、買う側でも時間が経てばまずくなると承知していますが、ドイツのパンは枕ぐらいの大きさのを買って来て、無くなるまで数日食べ続ける事になっていますから、翌日にもおいしいはず。しかし最近はそういう高品質の物は減っている様子。良いパンを見つけるか良いパン屋さんを見つけなければおいしいパンにはめぐり会えないのです。しかしいいパン屋さんはまだあります。

☆ 血のソーセージサワーキャベツは話が長くなるのでまた別な機会に譲るとして、

☆ ミュスリー

・・・は若い人にも好まれています。名前の様子からするとスイス語みたいですが、オート麦、カラス麦などと言われる物を細かく砕いた物、あるいはそのまま乾かしただけの物です。日本でも西友ストアにオートミールという名前で売っていました。ドイツ人はたいていそれに干し葡萄や乾いた果物なども混ぜた物を買い、ミルクやヨーグルトと混ぜて食べます。非常に健康にいいです。

英語ではシリアルと呼ばれるようなので、私が「シリアルを食べている」と言うと最初母が心配して、止めた方がいいような事を言っていました。ところが実際に私が食べている物を見て、「日本のシリアルと全然違う」と急に賛成派に回っています。日本ではシリアルと言うとお菓子の一種みたいになっているようです。ドイツにも砂糖やチョコレートをまぶしたシリアルがあるにはあるのですが、普通は純粋の麦を干し葡萄などと混ぜるか、混ざった物をスーパーで買います。砂糖などの味付けは一切されておらず、それ自体は甘くもなく、とくにおいしいと感じるものではありません。私はミックスされた物を買い、自分で生の果物を刻んで牛乳と一緒に取ります。この大しておいしくない物がなぜか慣れると定期的に食べたくなって来ます。ミネラルなどもあるために舌がおいしいと感じるのではなく、体が欲しいと感じるのかも知れません。

★ さて、回り道をしましたがいよいよ本題のコーヒー

以前にも書いたかと思いますが、ドイツのコーヒーはあまりおいしくありません。私は元々コーヒー党ではなく、イタリアのコーヒーもさほどおいしいと感じた事がありません。うだるような暑さの中ではエスプレッソのようなコーヒーは気分がフレッシュになっていいですが。おいしいと感じたのはフランスの安コーヒー。これもどこかに書いた事があるかも知れません。で、ドイツのコーヒーに関してはほとんど望みは持っていませんでした。

それがある日ひょんな事から大したメーカー品でもないごく当たり前のコーヒーに行き当たりました。フランスで飲んだ安コーヒーに味と香りが似ていたので、それ以来ひいきにしていました。作り方は原始的で、今時店でも売っていない瀬戸物のコーヒー・フィルターに紙フィルターを入れ、そこに挽いたコーヒーを入れ、上から熱湯をかけます。こうするとあまりコーヒーが好きでない私でも飲めるコーヒーができあがります。

長い間そうやっていたのですが、先日台所で事故が起き、とんでもない騒ぎに発展してしまい、その後やや恐怖症気味。それで生まれて初めてコーヒーメーカーを買いました。ドイツがコーヒーメーカーの国だというのもどこかに書いた事があるかも知れません。最近はエスプレッソを作るためにミルクも扱える家庭用の機械までできていて、コーヒーメーカー大国と言えます。私が探したのはごく単純な物。機能的にはコーヒーのみを沸かす機械です。それでもメーカー品から無名の商品まで山ほどあり、値段もさまざま。恐ろしく安いものもあります。安いからといって悪そうでもありません。

暫く迷った末に、伝統的なガラスポットのは止める事にしました。ガラスポットですと、沸いたあと何時間もコーヒーメーカーの床から暖めるようになっていて、電力が無駄になるのです。その上、よそで飲んだコーヒーでも1時間以上経った物はまずくて。で、やや高めの、沸いたコーヒーが直接魔法瓶に入るものを探し始めました。これにも種類があり、魔法瓶が2つついたもの、魔法瓶がステンレス製のもの、ガラス製のものなどさまざま。値段的に言えばガラスの魔法瓶の方が安く、2つついていても1つでも会社によってさまざまな値段がついているため、入り乱れています。全体的にはガラスポットより魔法瓶の方が高め、ステンレスの魔法瓶はガラスの魔法瓶より高め。

ところが探し始めて数日後そういう値段の序列が粉微塵に吹っ飛んでしまう店にぶつかりました。製造の段階でカラーのミスがあったとかで、ステンレス製のしっかりした魔法瓶がついているのにガラスポットのコーヒーメーカーより安い、あるいは同じぐらいの値段というのがあったのです。ガラスの魔法瓶の値段も吹っ飛んでいます。で、これに決定。販売予定価格の半額程度だったようです。

家に立ち戻り早速説明書に従い使い始めてみました。さすが安物。説明書の説明はほとんど役に立ちません。挿絵も無し。しかし実際に手に取ってみると安定した設計で、落としても壊れないような魔法瓶だというだけではなく、末広がり、安定してどっしりしています。ま、これで事故という事は無いでしょう。

問題はその後。便利な蓋もついていて、コーヒーを注ぐ時にいちいち蓋を開けなくてもいいようになっているため保温力も良好。しかし最後の一適を注ぐには魔法瓶を逆さにしなければだめなのです。ははあ、技術者のデザインだなと思いました。容量はたっぷりです。しかしドイツには時々消費者の話を全然聞かずに技術者の発案で作られた製品があり、でき上がってみると不便だったり役に立たなかったりするのです。飛行機の中でごみを砕く強力な機械を作った会社があったのですが、金属製で非常に重かったので、飛行機会社が戸惑ったなどという話も聞いた事があります。

さて、その次は一体誰の責任か分かり難い問題。これまで満足して飲んでいたコーヒーがコーヒーメーカーで沸かすと全然おいしくないのです。できたてのホットなコーヒーなのにです。瀬戸物のフィルターで沸かすと、熱湯を注いでいる間に温度が下がり、100度の湯を注いでもコーヒーは90度や85度に下がってしまいます。2杯目はもっと下がっています。その上私は1時間ぐらいして冷たくなった3杯目を飲む事もあります。しかしそれでもその方がおいしいのです。最新の機械を使って沸かしたコーヒーがなぜおいしくないのか、大きな謎です。

このコーヒーメーカーはコーヒーができ上がっても自動的にスイッチが切れたりしないので、そばについていて自分でスイッチを切らなければなりません。やはり消費者は忘れられているなと思いました。ところが長所を発見。物凄いパワーでお湯を沸かすので、1リッター以上の量でもあっという間にできあがるのです。その場についていて沸き上がるのを待つとは言っても、非常に早いので、ちょっとその辺でコップやミルクを出しているうちに終了。1000ワットと書いてありました。技術者の発案なのかも知れませんが、このパワーにはちょっと感心しました。

技術者の発案と実力

家庭電気製品はどう見ても日本の家電メーカーの方が優れているように思えてしまいますが、ことパワーとか規模になると時々ドイツにびっくりさせられる事があります。話が全然それてしまいますが、先日うちの近所で駅を作っている時に日本人が思いつかないような出来事がありました。考え出したのは技術者。

全面ガラス張り、カーブの途中に作らるの駅の工事は大分前からやっていて、ガラスの注文量を間違えたなどとポカもやっているようなのですが、建設途中ユニークな方法が取られ呆気に取られてしまいました。本来水平方向に使われる鉄骨を工事中は場所節約のために2つに分けて垂直に作ったのです。2ヶ所で半分ずつ。建設場所はきっちり計算してありました。垂直方向に半分ずつできあがったというので先日それを横に倒す工事がありました。それまでタワーとして立っていた鉄骨をその場で横に倒すと2つがドッキングという仕掛けです。この駅には私も時々出向いていたのですが、てっきりショッピングセンターか何かのタワーを作っているのだと思い込んでいました。今度行った時にはもうその鉄骨は立っていないでしょう。(後記: 本当にありませんでした。)

もう1つ驚いたのは、ベルリンの郊外にある船の起重機。井上さんには紹介したかも知れませんが、東ベルリンの2つの川が交差する(!?)場所にエレベーターを作り、高い方の川から船を水門の中に入れ、その水門全体を低い方の川まで下ろしてしまうのです。無論下から上にも運べます。普通川の高さに差があると、滝ができてそれでおしまい。船を上から下へ、あるいは下から上へ運ぶなんて事は無理だと諦めてしまいますよね。川が重要な交通手段に使われているドイツではそう簡単に諦めなかった様子です。これはかなり古い時代に作られた物のようで、技術的には単純そのもの。しかししっかりとした作りで、当分壊れそうにありません。ドイツの技術というのはこういう所で思い切った事をしでかします。ですからコーヒーメーカーのような小さな事にはこだわらない方がいいのかも知れません。

さて、そのコーヒーメーカーで沸かしたコーヒーの味ですが、結局単純な解決を見ました。知り合いの会社に毎朝朝食、昼食の休憩時間があるので、そこで人に聞いてもらったのです。「コーヒーメーカーで沸かすコーヒーと漏斗で作るコーヒーのどちらがおいしいか」そして「コーヒーメーカーで沸かす時においしくする方法はあるか」。

答は簡単でした。《コーヒーメーカーのコーヒーはまずい》、《対策は無い》。

敗北した私はすごすごと引き下がり、できのいい魔法瓶の上に漏斗を置いて、紙フィルターを置き、そこにコーヒーを入れ、恐る恐る熱湯を上から注いでいます。事故に懲りた私はお湯がまだボコボコ言いながら動いている時は湯沸し器に手をかけず、静かになるのをじっと待っています。

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