映画のページ

死亡写真 /
死亡寫真 /
Sei mong se jun /
Ab-Normal Beauty

死亡した野菜の写真は撮らないのか

彭順/Oxide Pang Chun

2004 HK 101 Min. 劇映画

出演者

黄 婉伶/Race Wong
(Jiney - 美術学校の学生)

黄 婉君/Rosanne Wong
(Jas - ジニーの友人)

梁俊一/リョン・チョンヤッ

Michelle Mee
(ジニーの母親)

Ekin Cheng

Anson Leung

見た時期:2005年8月

2005年ファンタ参加作品

双子の話に続き、今度は双子の監督が撮った作品。

井上さんが詳しく説明してくれているので、詳しい話はやめにして、それ以外の話を。例えば井上さんが寫真(こんな字を使うと今にも幽霊が出そう)をアップしてくれているポスターですが、私はこれを見ると夢野九作の文庫本にある有名な俳優がつけていた表紙の絵を思い出します。夢野も映画化すれば怪奇、ホラーのジャンルに入るような作品を書いています。

アジアの作品、カメラ、写真が中心に進むという意味では取り敢えず思い浮かぶのが鬼影。今年のファンタの初日に出ました。似ているのはそこまで。その後は死にたくない人が中心で話が進むのが鬼影、死に異常な興味を示すのが死亡写真です。

死亡写真のジニーは死に興味を持ってから動物が殺されるシーンを撮りたくて、鳥屋の親父さんにカメラの前で殺してみてくれと頼んだりします。このあたりからドイツでは強い批判を受けそうな展開になって来ます。動物愛護運動が盛んで、動物を殺す話になると声を高くして叫ぶ人が現われます。

かねてから矛盾を感じていた私はこの映画を見てまた考え込んでしまいました。動物愛護と肉食はどのように折り合いをつけて行くのか。ドイツにはゆるい菜食主義から極端な菜食主義までさまざまな運動が広がっていて、厳しくルールを守る人は卵やチーズすら受けつけません。

私は菜食主義ではなく、日本にいた頃家計の許す程度、ごく平均的な量肉を食べていました。魚も食べていたので、肉の絶対量は欧米人に比べるとかなり少なめ。それでドイツで暮らし始めてから私を菜食主義と取り違える人もいました。ごてっとした肉料理はほとんど無し、ハムやソーセージも肉と考えて食べていたので、肉屋さんに売っている大きな塊を食べているシーンというのは確かに無かったです。

最近健康上の問題を抱え、栄養素の一部が大巾に不足するという事態に遭遇しました。こうなるとある程度肉を食べなければだめ。でなければ錠剤責めの世界が待っています。以前食べていた肉の量もドイツの平均からするとかなり少なめだったのにバランスが取れていたので、私の場合はここで急に大量の肉を食べる必要はありません。少量を定期的にという形で増やすのがいいようです。

ドイツには食用の肉を得るために殺す動物と、動物愛護のために殺さない動物の間に何か大きな区別があるらしいのですが、動物愛護運動家が自分たちの活動と食用の家畜を殺す話にどういう折り合いをつけているのかがどうも良く見えて来ません。菜食主義を人に薦めるのはインテリ層の人たちで、大学の教員などに多いです。医者もいます。ところがそういう人たちの肌の様子を見ているとやけにかさかさしていて、顔を見るとどうも生気に欠けます。肉を食べて元気をつけろとは言いませんが、研究報告や専門書に1番近い所にいる人たち、もう少し栄養のバランスの研究を重ね、一般に情報を流してもらいたいものだと感じることもあります。

肌の生気というのは肉を食べれば出るというものではなく、ビタミンCとか水分なども大きく影響します。植物から摂れるビタミン、動物を殺さなくても手に入る乳製品にも肌に良い影響が出る種類があり、そういう事に気をつけていればあんなに萎びて見えるはずはないのにと思ったこともありました。ですからこの現象には一体どんな謎が潜んでいるのだろうと訝ったこともあります。

キリスト教の影響なのかも知れませんが、ドイツ人というのは人間とそれ以外の動物を区別し、さらに肉と魚を区別するのです。私には「動物を殺すな」と言うのなら、魚を殺すことにも罪悪感を感じるのではないかと思えるのですが、そのあたりは食用の肉と食用の魚が一緒くたにされているのかも知れません。死亡写真ではそこは東洋的と言うか、主人公のジニーは公平に死んでいく鳥の写真も死んでいく魚の写真も撮ります。

色々肉食反対意見がありますが、このリストはドイツだけの意見を反映しているのではなく、一般的なものです。ドイツではなぜかこのようにほとんど宗教色の無い菜食主義が、自転車道の話にも似て《菜食主義道》化しています。《・・・道》化すると、賛同している人たちは宗教に対するように真面目で、その姿はまるで僧のように見えて来ます。本もたくさん出版されていますし、会もあります。実践している人も多いようです。さて、菜食主義の人たちは主として

ため賛同するわけですが、

と、肉食反対意見に懐疑的な人もいます。ドイツでは頭から反対せず疑問をはさむ程度にしておくのがいいかと思われます。

私は菜食主義にはならず、特に何も考えずに少なめに肉を取っていました。長い間その量で足りていましたが、ここへ来ていきなり健康に問題が生じ、検査の結果動物蛋白から取れる一部の成分がゼロに近くなっていることが分かりました。

自分としては倒れてしまってからでは遅いので、多少動物蛋白も取った方がいい、つまりこれまでの量より少し多めにとった方がいいという結論に達しています。

ドイツの大学で学生食堂に通っていた頃菜食主義が各方面に進出して来ていて、肉抜き、卵や野菜だけの料理も出ていましたが、数種類のメニユの中に毎日必ず肉料理があったのを思い出します。

日本の学生食堂では菜食主義などとは銘打たず、うどんやおそばと食べていました。確か高校の学生食堂でも麺類は毎日出ていました。私もよくうどんを食べていました。あれって、動物蛋白が全然入っていないですよね。ラーメンでもスープや上にのっている肉の切れっぱし程度。私はそれで満足していたので、ドイツ人から見ると立派な菜食主義なのかも知れません。結局個人個人で試し、判断するしかありませんが、私は自分の経験から完全に動物蛋白から離れるという考え方には賛成できなくなってしまいました。毎日ごてっとした肉料理を取る必要はないと思いますが。

肉食をすると攻撃的な性格になるという説は素人目にはちょっと変な印象を受けます。確かに世界的に有名な平和主義者が菜食主義だったなどという事実もありますが、大勢の犠牲者を出した世界的に悪名高い人物も菜食主義だったそうですし、結果として大勢の人が死んでしまうことになった武器の開発に関連した人も菜食主義だったそうです。作品自体は攻撃的なトーンを持った芸術家も菜食主義だったり、かと思えば繊細な気持ちを持ち生き物を慈しんだ人も菜食主義。世界記録を出したスポーツマンも菜食主義。これでは菜食主義がその人の性格に何か影響を及ぼしたかと聞かれても?????となってしまいます。

私の疑問はもっぱら何は殺して良く、何は行けないかという境界線に納得の行く説明が無いという点。それに対する1番簡単な答は《程度問題なのではないか》というありきたりなものです。「なんだ、つまらない」と遠慮無くおっしゃって下さい。最近バランスで解決する問題が多いと思うことが増えて来ました。年取ったのかなあ・・・。

食べている物の内容を聞かれて肉がほとんど無かったので菜食主義者と間違えられることが多かったのですが、ドイツの菜食主義者が食べている物と私が食べている物はかなり違います。私は野菜を買って来るとよく生で食べます。りんごや柿を食べるように適当な大きさに切って、お菓子の代わりにつまんだりします。豆腐を買ってくると湯豆腐にしてねぎを刻んで醤油と一緒に食べます。ってな具合で、そのまま食べられる物は横着をしてほとんど料理せず口の中へ。魚でも新鮮そうに見えると刺身だと思ってぶつ切り。醤油と共に口の中に消えます。できるだけ生で、その物の味の邪魔にならない食べ方を好みます。

ドイツ人の菜食主義者は複雑な事を考えるらしく、普通のメニユとほとんど同じぐらい手間のかかる料理を作ります。ケーキもありますし、スープ、シチューから、肉料理とそっくりな料理で、肉の代わりに違う物が入っているなどと、そして特にソースに手間がかかっています。

ダイエットをしたい人がやろうと思った瞬間取り敢えず菜食にしようと方向を定めることも多いです。しかし野菜だけを使ってもソースに工夫をこらした料理ですとやはり太ります。ソースにカロリーが隠れているからです。醤油のような色をした洋食用のソースを日本人が買うのと違い、主婦が手をかけて各料理にソースを作るのです。そんな時間の無い人にはマギーやクノールが山ほどインスタントのソースを用意して待っています。これは作るのが簡単で、手作りソースと同じぐらいいい味のする物もあります。ダイエットの夢はこれで脆く崩れます。

さて、映画の方ですが、ストーリーの展開は前半と後半でガラっと違い、前半は主人公の説明。本人描写、友人関係などです。それが後半に入り急に犯罪事件に変わります。ここから後はソウ他のいかにもファンタという雰囲気に切り替わります。そしてショーダウンに向けて主人公は今までの内向きの姿勢からガラっと変わり外向けになります。犯人探しをお好みの方にはやや興ざめ。簡単な算数を試みると人差し指はある人を差しています。急にそれまで出て来ていない人物を犯人として登場させたりするインチキはないので、ある意味ではフェアなのですが、犯人を名指しする点でそれまで大きく広がっていたスリル、サスペンスが萎んでしまう印象を受けます。香港はアクション、警察物、ギャング映画など佳作を次々と出していますが、まだ十分開拓されていない課題は《出来のいい推理物》かも知れません。インファナルアフェアで長い年月の間の複雑に絡み合った人間関係、 ワンナイト イン モンコックで短時間に広範囲に広がった人間関係を表現できたのですから、その気になれば出来の良い推理物も作れるのではないかと思います。

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