映画のページ

チャイルド・プレイ チャッキーの種 /
Seed of Chucky /
Chucky's Baby

Don Mancini

2004 USA 87 Min. 劇映画

出演者

Brad Dourif
(Charlrs Lee Ray/Chucky、人形、声の出演)

Jennifer Tilly
(Tiffany、人形、声の出演)

Jennifer Tilly
(Jennifer Tilly - ハリウッドの二流女優)

Billy Boyd
(Glen/Glenda、チヤッキーとティファニーの子供、人形、声の出演)

Beans El-Balawi
(Glen、人間)

Kristina Hewitt
(Glenda、人間)

Jason Flemyng
(サンタクロース)

Redman
(本人役)

Hannah Spearritt
(Joan - 女優ジェニファー・ティリーのマネージャー)

John Waters
(Pete Peters - パパラッチ)

Keith-Lee Castle
(人形遣い)

Bethany Simons-Danville
(Claudia - 人形を贈られた少女)

Simon James Morgan
(クラウディアの父親)

Stephanie Chambers
(クラウディアの母親)

Guy J. Louthan
(Don Mancini)

見た時期:2006年2月

私がチャッキーのコースに乗ったのは前作のチャイルド・プレイ チャッキーの花嫁から。その前に3本ホラー作品(チャイルド・プレイチャイルド・プレイ2チャイルド・プレイ3)があります。今回は人形カップルのチャッキーとティファニー、そして2人の子供グレンあるいはグレンダが登場します。確かチャイルド・プレイ チャッキーの花嫁で子供ができたような記憶が・・・。

この種のユーモアに乗れた人は笑い、乗れなかった人はくだらないと思う作品です。私はジェニファー・ティリーを応援していることもあって、乗ってしまいました。

ジェニファー・ティリーというのは個性的な女優で、嫌悪感を持ってしまうと徹底的に嫌われるかも知れません。私は大好きという感情は持っていないのですが、おもしろい人だという風に思っていて、タイプの違う作品をいくつか見ました。彼女程度の人を太っていると言っては気の毒ですが、痩せこけて骨が見えるほどの人を普通だと言うハリウッドでは肥満系。実生活ではこの程度の太り方だと「がっしりしている」ぐらいの印象になります。少なくともドイツでは。

極端なダイエットをしていないので好感が持てますが、加えて髪を無茶苦茶に染めていないのもいい感じです。ワイノナ・ライダーのような例もあるのでティリーの本当の髪の色は分かりませんが、チャイルド・プレイ チャッキーの種では傷んでいない髪に市販のリンスを使って艶を出したような自然な感じです。彼女を使ってシャンプーやリンスのコマーシャルを作って「絹のような艶、滑らかさ」などと言ったらいいと思うぐらいです。ニコール・キッドマンやグウィニス・パートロフなどが過去の作品では生き生きした様子だったのに、オスカーを取るような地位についてからはブロンドに染め、その髪、顔に生気が無いのに比べ、ジェニファー・ティリーは自然さを失っていません。

誰かが職場で彼女を太り過ぎとか意地の悪い言葉で苦しめるとしても、チャイルド・プレイ チャッキーの種には太目の女性が大好きな映画監督が俳優として出ています。知る人ぞ知る、ジョン・ウォーターズ。現実には太目の女性が好きだという男性はいくらでもいますから、ティリー程度の太さの方、あまり急いでダイエットしない方がいいかも知れませんよ。ハリウッドが太いと言うのはカメラに写る時にレンズの関係で巾が広くなってしまう分も計算に入れての話ですからね。物事はほどほどにと言いますが、太るせよ痩せるにせよ健康が危うい時だけ気にしたらいいのです。

途中から参加した人が物語を理解するにあたって知っておくと便利なのは、主人公の2体の人形がとんでもなく危険な殺人鬼だという点。特にチャッキーのキャラクターは陰険で、殺しを楽しむという邪悪な性格。前作で花嫁衣装をまとったティファニーは狂気。

私はまだ見ていないのですが、第1作のチャイルド・プレイまで遡ると、チャッキーはまだ人間なのだそうです。呪いとか魔法が絡んで人形になってしまうのだとか(ここまでは一応ホラー映画)。それは私が見た4作目のチャイルド・プレイ チャッキーの花嫁、5作目、現在最新作のチャイルド・プレイ チャッキーの種にも受け継がれています(4作目からはコメディー性強調)。ですからちょくちょく「人間に戻る」ということがテーマになります。そして最初からずっと通しなのはチャッキーことチャールズが殺人鬼だということ。

物語は見世物小屋で人形遣いにこき使われているシットフェイス(グレンあるいはグレンダ)から始まります。自分は孤児だと思っていました。ところがある日テレビでチャッキーとティファニー主演の映画を撮影しているハリウッドの現場レポートを見ます。自分の手首に刻み込まれた MADE IN JAPAN という文字をチャッキーの手首にも見つけ、「僕と同じ人形が他にもいる、僕の親だ」と決め、ハリウッドへ一直線。

人形でないグレンとグレンダについて

1953年に作られたグレンとグレンダは1994年にティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演で作られたエド・ウッドで取り上げられていましたが、元ネタはエドワード・D・ウッド・ジュニア監督の作品。映画史上1番下とお墨付きのついた名作(= 迷作)です。監督、脚本、主演を引き受けています。と言うか、買って出ています。

50年代に性転換で話題になった人をテーマにし、どうやらその本人を映画に担ぎ出そうとしたらしいのですが、断わられて自分で全部引き受けた様子。この本人の名前は私も記憶に残っていますが、興味本位で取り上げては気の毒だとの印象を持ったことがあります。監督がエドワード・D・ウッド・ジュニアでは、断るのが正解だったのではないかと今でも思っています。

この元男性には恐らくトランスアメリカのスタンリーと同じような直接の肉体的な悩み、精神的な迷い、結論、そして社会的な受け入れなど数々のハードルがあり、1つずつ乗り越えて行ったのではないかと思えるからです。そして彼・彼女と共通の問題を全然抱えていないのがエドワード・D・ウッド・ジュニア監督。これでは本人は迷惑するだけではなかったか、出なくて良かったと思えてしまいます。

グレンとグレンダは最初に追求していたはずのテーマからどんどん逸脱してしまったらしく、何を描いているのか分からないという評が聞こえて来ています。まだ見る機会が無いので、現在のところはジョニー・デップとマーチン・ランドウの名(≠ 《迷》)演技で我慢。しかしグレンとグレンダが男性が女性のアイデンティティーに目覚める映画だったことは確かなようです。いずれにせよそのテーマをチャッキーとティファニーの間にできた息子グレンに重ねてあります。グレンの顔を見ていて目ぱっちりのジョニー・デップを思い出してしまいましたが、きっとそれは偶然なんでしょうね。

せっかく感激の親子対面をしたものの、チャッキーとティファニーは子供が娘か息子かで対立。自分が男の子グレンなのか女の子グレンダなのかは本人にもこの時点でははっきり分かっていません。話はチャッキーがいつもの癖で殺人を続けること、(実在の)女優ジェニファー・ティリーが絡むこと、パパラッチがティリーにはりついていることでややこしくなります。

周囲はドタバタし、血がどろどろ流れ、チャッキーのグロテスクな笑いが時々出、父親の殺人趣味、母親の狂気を受け継いだグレン(ダ)は混乱期を経て確信を持った狂った殺人鬼に成長して行きます。これはグレン(ダ)の成長と自分探しの映画なのです。

人形から人間に変わりたいチャッキーとティファニーは女優ジェニファー・ティリーを妊娠させて利用しようと思いつきます。

女優ティリーは自虐ネタの連発。さすがに存在感があります。この作品は人形の姿、行動があまりにもユニークなので、人間の俳優はかすむ危険があるのですが、そこにジェニファー・ティリーとジョン・ウォーターズという個性では誰にも引けを取らない2人を添えて頑張っています。ティリーはそれだけでなく、主演ティファニーの声優。ですから自分が自分を食ってしまう危険のある映画に出ているわけです。

人間ジェニファー・ティリーが演じているのはランクアップを狙っている二流の女優。必要とあらば体を売ってでもジュリア・ロバーツに迫るつもりで、演じたい役は処女マリア。落差が愉快です。ティリーはコメディーでない殺人犯の役や、裕福な家庭の主婦も演じたことがあるのですが、コメディーの才能はたっぷり。ホラーとコメディーを混ぜたチャッキー・シリーズですと才能を生かすチャンスがダブル。

5作も続くと作品はだれるものです。最初の3作を知らないので、知っている2作を比べるしかありませんが、両方ともファンタに出せるレベルを保っています。脚本家が5作通しで書いているので、統一が取れているのかも知れません。その脚本家が今回は監督業にも乗り出しています。

殺人鬼と狂気の女性の夫婦でこれまでも何度も人を殺めているのですから怖い話であるはずなのですが、2人の間に諍いが生じ、それが子供の教育方針の違いだったり、ティファニーが意外としっかりした物の考え方をしていたり、かと思うとミーハーだったり、観客は時々フェイントを食います。

設定は奇想天外で、現実味は全然ありませんが、人形の親子3人が映画監督のレッドマン、女優のティリー、そしてティリーから生まれる子供に成り代わろうと画策するというのが大筋です。監督に扮するのがレッドマン本人、女優ティリーも本人、女優ティリーに張りついてスキャンダルを漁るのが本職監督のジョン・ウォーターズ、そしてなぜか本職はプロデューサーだというのにドン・マンシーニを演じる俳優までいます。エイリアンVSヴァネッサ・パラディのジェイソン・フレミングもサンタ役で顔を出しています。

そしてオープニングのクレジットでも分かりますが、下品です。では皆さん、品良く笑いながらお楽しみ下さい。

この後どこへいきますか?     次の記事へ     前の記事へ     目次     映画のリスト     映画以外の話題     暴走機関車映画の表紙     暴走機関車のホームページ