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ファイナル・デッドコースター /
Final Destination 3

黄霑/James Wong

2006 USA 93 Min. 劇映画

出演者

Mary Elizabeth Winstead
(Wendy Christensen - ジェットコースターに乗る直前にパニックを起こした高校生)

Amanda Crew
(Julie Christensen - ウェンディーの妹)

Ryan Merriman
(Kevin Fischer - ジェットコースターの事故に遭わずに済んだ高校生)

Kris Lemche
( Ian McKinley - ジェットコースターの事故に遭わずに済んだ高校生、大きな店の持ち主の息子)

Alexz Johnson
(Erin Ulmer - ジェットコースターの事故に遭わずに済んだ高校生、イアン店を手伝うのガールフレンド)

Sam Easton
(Frankie Cheeks - 事故に遭わずに済んだ高校生、ビデオカメラを持ってジェットコースターに乗った若者)

Jesse Moss
(Jason Robert Wise - ジェットコースターから降りられず死んだ若者、ウェンディーのボーイフレンド)

Gina Holden
(Carrie Dreyer - ケビンのガールフレンド、ジェットコースターの事故で死ぬ)

Texas Battle
(Lewis Romero - ジェットコースターの事故に遭わずに済んだ高校生、ボディー・ビルディングが趣味)

Chelan Simmons
(Ashley Freund - ジェットコースターの事故に遭わずに済んだ高校生)

Crystal Lowe
(Ashlyn Halperin - ジェットコースターの事故に遭わずに済んだ高校生)

Maggie Ma
(Perry Malowinski - カウボーイのフェスティバルで死んだ東洋人)

見た時期:2006年4月

要注意: ネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

黄霑監督は作品数はまだそれほど多くなく、有名な作品は過去の6年の4本に集中していますが、ファイナル・デスティネーションがスマッシュヒットになった人です。冴えたユーモアと高校生ぐらいの年齢の若者を描き、ホラーや犯罪映画を見慣れた私にも新鮮な驚きがありました。

2作目のデッドコースターの監督は他の人に譲りましたが、ホラーの2作目にありがちなたるみが無く、私やファンタの友達は満足していました。ストーリーの内容から見るとデッドコースターというタイトルは3作目の Final Destination 3 に取っておけば良かったと思います。

3作目になり黄霑監督が戻って来たので期待していましたが、やはり同じテーマで3本目ともなると種切れ。インパクトが弱くなっていました。理解はできます。筋の関係上主要な登場人物が皆殺しの目に遭い、登場人物の誰かに親近感を持っても、最後になるまでにどこかで死んでしまうのです。その人は続編には葬式の写真としてしか登場できないのです。

テーマを絞ってあり毎回主な登場人物は高校生。それも同じ高校か、トラブルのあった高校生を知っている同じ町の人などで、今のところ範囲をそれ以外には広げていません。広げないという点がプラスに作用する可能性も秘めているので、私はまだこれがだめなアイディアだと決めてかかっていません。Final Destination 3 の欠点は別な所にあり、それをうまくカバーすればまた楽しいホラー映画になるかも知れないのです。

Final Destination 3 の中で今回特に目立った欠点は高校生の間に連帯感、一体感が無く、助け合うという気持ちが伝わって来なかったところです。最初の2作は、とんでもない幻覚を見た若者が大騒ぎを始め、そのため幻覚通りの事故が起きた時に数人助かるというところから始まります。その後遅れ馳せながら死が形を変えて訪れるという筋です。不謹慎とは分かりながらも独創的な死に方が並ぶので、観客はポップコーンを食べながらつい楽しく見てしまうという趣向です。

Final Destination 3 でもこの趣向は忠実に踏襲されていますが、1つ欠けているのが生徒の間の連帯感。高校生ぐらいの若者が死んでしまう物語は私にはあまり好ましいテーマではなく、できれば死なないでほしいところ。しかし映画の筋がそうなっているのでそこは仕方がありません。一種のコメディーにもなっているので、あまり年寄りがブースカ言う必要はないのかも知れません。しかしある時点まで生き残り、どういうメカニズムで友達が死んだかに気付いた若者がお互いに連絡しあって必死に助けようとするなど、こちらが「がんばって助かれ!」と応援したくなるシーンが多く、それが本当は陰惨な話なのに明るさを保っていた理由なのではないかと思うのです。

その《好感コンセプト》が今回大幅に引き下げられていて、若者の間の結びつきが希薄になっており、その上殺しにはやや意地悪さが増えているのです。意地悪さは最近の映画の傾向らしく、もっとひどく、残酷な映画も続出しています。その上映画雑誌は観客がそういう物を求めているのだと声高々におっしゃるのです。

観客の需要が高まっているという話には反論したいです。今年春のファンタには去年と違い、人を苦しめる作品が集中した感がありました。当初は発表された6本全部を見る予定にして、時間も空けてあり、予算を組んでいたのですが、プログラムを読んでいるうちに3本に減ってしまいました。意味もなく人を苦しめるシーンが長い作品が複数出ており、見るのならその中から1作に絞ろうと思っていました。それがホステルだったのですが、ドイツで一般公開が近づいていて、情報が出始め、ますます見る気をなくしてしまったのです。

食わず嫌いはしないというのが私の方針なのですが、去年ファンタの仲間を1人失い、自分も重症を負ったため、今年は弱気路線で行こうと決めていました。体調が上向きになるまではあまり神経を逆なでするような事はせず、しっかり栄養をつけて元気を取戻そうということにしたのです。その上現実に起きて報道される話の方が映画よりひどいという事実が最近あちらこちらから漏れ聞かれるようになっています。残酷映画を見てポップコーンを食べていられたのは、「そんなはずはない」と思っていたから。それが「映画は実話の再現だ」になってしまうと行けません。俳優が赤いペンキを体に塗りまくって演じているはずの話が、実は誰かが本当に体験した話だなどというのは寝覚めが良くありません。報道の自由を守り、ひどい話を一般の家庭にも知らせてくれるのはありがたいことです。しかしそれを見た人はゆっくりでもいいからこういう出来事を減らす方向に動かないと行けません。人が飢えて大変だという映画や報道があり、その数年後にご飯を食べる時はありがたいと思って食べろ、やたら捨てるなと説教をする探偵や坊主が現われるなら、それでいいのですが、拷問のやり方を教えるマニュアルや「神経を太くせい」などというサインがが出ては困ります。

こんな事を考えるのは私1人、それも年を取ったり事故に遭ったせいだと思っていたのですが、いざファンタに行って見ると、仲間も似たような事を考え、今年の参加は控えたり減らした人が出ました。仲間の1人は心の優しい男性で、以前から残酷な話は嫌がる人だったので分かります。しかし他のメンバーは結構シビアな話にも耐え得るタフな神経の持ち主だったので、今年の結果には私も驚いています。

ではストーリーに行きましょう。コンセプトは3作とも全く同じです。まだ具体的に知りたくないという方は撤退して下さい。目次へ。映画のリストへ。

以前の飛行機事故、その後の高速道路の事故があった高校生の人脈で話が始まります。

ウェンディーが友人たちと遊園地に行き、ジェットコースターに乗ろうという時に大事故の幻覚を見てパニックを起こします。かろうじて降りたのが数人。彼女のボーイフレンドは不幸にも乗ったままで、事故に遭い死んでしまいます。

自分もガールフレンドを失い、そういう意味で共通の友人のウェンディーとケビンがよく話をするようになります。ウェンディーのカメラには事故直前のスナップ写真が何枚も残っています。それを見ているうちに写真が次に死ぬ人の予告だ、写っているのと同じ形で死ぬのではという疑問が生じます。

高校で以前に起きた話も耳に入っている2人はマジで仲間の事を心配し始めます。写真の正確な分析にかかり、関係者に注意を促そうとします。しかし青春を謳歌している人たちなので、2人の話をマジで取らない人もいます。確かに人間というのは心配してみても無視してみても結局は死んでしまうのですが。しかし死はいつ訪れるのか・・・できるだけ先に延ばしたい・・・。

最初に狙われるのがファッショナブルなブロンド美女2人。おつむはそれほどでもないのですが、時代に合ったアウトフィットをキープするのに熱心。それでこの日は屋内有料人工日焼け装置ことソラリウムに行きます。準備万端整えて機械の中に入ったのはいいのですが、悪い事が幾重にも重なり、機械から出られなくなってしまいます。その上機械に物が当たったり、あってはならない事が起き、温度調節装置が狂い始めます。結局2人は高温になってしまったソラリウムの中で焼き殺されてしまいます。

前作2つ、あるいは3作目でも他の若者の死はほとんどが一瞬に起き、苦しまずに済むのですが、冒頭起きるこの事故は残酷です。ソラリウムに閉じ込められた事に気付いてから火災が起きるまでにかなりの火傷を負い、その後で火に焼かれて死にます。しかも2つ並んだソラリウムからいきなり2つ並んだ墓地のシーンに移るので、ユーモアを通り越して悪趣味になっています。

死ぬまでにやや時間があるのは全身に釘を打ち込まれて死ぬ女の子エリン。観客には別な若者イアンが死ぬと思わせておいて、うっちゃりをかけ、イアンのガールフレンドが死んでしまいます。確かに釘をさされてから息絶えるまでにやや時間がありますが、ソラリウムほど残酷ではありません。その後の死はほとんどが瞬時にやって来て、犠牲者は自分がこれから死ぬのだと考える暇も無いでしょう。

今回趣向を凝らしてあるのは、イアンとエリンの例のように犠牲者と思われた人でない人が先に死ぬ点。予定されている人かと思ったら順番が入れ替わってしまうのです。登場人物が前2つの事件を知っているという設定になっているので、あとは順番を変えて観客を驚かすしか手がなかったのでしょう。

最後は日本に住んでいる人にはちょっときつい話になります。ちょっと前に関西で起きた鉄道事故を思い出してしまうからです。地下鉄でああいう事故が可能なのか不思議に思いましたが、地上を走る電車ですと十分に起き得る事故です。ベルリンの地下鉄にはやたら横に別な線が無く、一直線に走るので、あまり心配はありません。日本でも地下鉄でああいう事故というのはあまり考えられません。しかし地上だったら・・・。

Final Destination 3前2作の名声に助けられた形ですが、今後続編を作るのだったら、脚本をしっかり練らないとだめです。高校生の横のつながりも魅力の1つだったのですが、3作目はそこに重点が無く、ただえぐい死に方をするだけになっています。せめてウェンディーとケビンの結びつきをもう少し強い物にすれば良かったです。最終絶叫計画も5作目続投が決まったので(邦題はどうするんだろう)、Final Destination も続編が出るでしょう。その時に少し軌道修正されればと思います。

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