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ティム・バートンのコープスブライド /
Tim Burton's Corpse Bride /
Tim Burton's Corpse Bride - Hochzeit mit einer Leiche

Tim Burton / Mike Johnson

2005 USA/UK 76 Min. アニメ

声の出演者

Johnny Depp
(Victor Van Dort - 新興の裕福な家の息子)

Paul Whitehouse
(William Van Dort - ビクトルの父親、Mayhew - 肺癌で死んだ御者他)

Helena Bonham Carter
(Corpse Bride - 殺された花嫁)

Emily Watson
(Victoria Everglot - ビクトルの婚約者)

Albert Finney
(Finis Everglot - ビクトリアの父親)

Joanna Lumley
(Maudeline Everglot - ビクトリアの母親)

Christopher Lee
(Galswells - 牧師)

Tracey Ullman
(Nell Van Dort - ビクトルの母親役他)

Jane Horrocks
(未亡人の黒蜘蛛役他)

Enn Reitel
(Maggot、町のニュース男)

Richard E. Grant
(Barkis Bittern - エミリーの元婚約者)

Danny Elfman
(Bonejangles)

見た時期:2006年4月

死の世界を大々的に扱っていますが、ゲゲゲの鬼太郎を子供と一緒に見るご家庭なら、お子様に見せても大丈夫かと思える作品。

古いロシアの民話をアニメで再現した物語。欧州風にできあがっています。バートンはスリーピーホローの時もまだ欧州のフレーバーの残るアメリカを描いていました。現在は奥方が英国人だということと、英国に居を移したこともあり、今後も欧州の雰囲気が作品に反映される回数が増えるかも知れません。お気に入りのジョニー・デップもフランスに住んでいることが多いようなので、打ち合わせに駆けつけるのも簡単。

バートンが深く関与したナイトメアー・ビフォア・クリスマスに似たブラックな雰囲気を持っていますが、作っている側の雰囲気がいくらかナイトメアー・ビフォア・クリスマスより明るく、バートンの人柄の変化を感じます。声の出演は大スターの大盤振る舞いで、主演はもちろんジョニー・デップ。そのため全体の雰囲気が非常に楽しくできあがっています。バートン無しのデップ、デップ無しのバートンでは出ない特徴がこのアニメでは良く出ています。同じ頃同じくデップ、バートンで作られたチャーリーとチョコレート工場はまだ見ていませんが、予告だけの雰囲気では、デップの顔が直接スクリーンに出なくてもティム・バートンのコープスブライドの方ができが良さそうに思えます。いずれチャーリーとチョコレート工場の方も見るつもりでいますので、そのあかつきには報告を入れる所存でおります。

監督はその時のガールフレンドを映画にちょっと登場させるのが好きですが、今回は奥方のヘレナ・ボナム・カーターが何と主演。特別にいい役が回って来なくても文句を言わない人らしく、今回も彼女でのハッピーエンドにはなりません。彼女がバートン作品に出たのはこれが初めてではありません。前に見た作品では醜い魔女に扮していました。世界を救おうと大活躍している某米国女優ほど強引ではありませんが、彼女はバートン作品に猿の役で出演した時に、以前のガールフレンドからバートンを強引に奪ったという噂の人だったので、バートンが映画に使う時は可愛い役で出るのかと思っていたのですが、醜い魔女に続いて今度は分の悪い立場に立たされた幽霊役です。ベテランの女優ですので、おもしろい役の方に興味があり、美しい得な役でなくてもいいようです。

全体はスリーピーホローと似た幽霊物。デップ演じるビクトルが生と死の世界の両方に足を突っ込んでしまうという筋です。監督は2人いて、1人は当然ながらティム・バートン。私は以前から彼のファンで、いずれは全作品を見てやろうと張り切っています。ティム・バートンのコープスブライドが私の見た最新作で、その他に
ビッグ・フィッシュ
猿の惑星
スリーピーホロー
マーズ・アタック!
エド・ウッド
シザーハンズ
ナイトメアー・ビフォア・クリスマスを見ています。バットマンがまだ欠けています。

もう1人の監督はマイク・ジョンソンで、彼はナイトメアー・ビフォア・クリスマスのアニメに関わった人です。その他にもナイトメアー・ビフォア・クリスマスのコネで来た人がスタッフに顔を揃えています。そういう意味でティム・ティーム全体が原点に戻ってという印象も受けますが、ナイトメアー・ビフォア・クリスマスの原点に戻るだけではなく、戻った所からこれまでの経験を生かして豊かな再スタートを切ったという印象でした。バートン・ファンですとこのDVDは是非買いたいと思うでしょう。

普段はバートンのために音楽をやっているダニー・エルフマンですが、彼は今回はキャストにも名前を出しています。ティム・バートンのコープスブライドは一部ミュージカルになっていて、音楽シーンがあるのですが、そこのバンドの1人として出演したようです。

スター大盤振る舞いのキャストの方ですが、何よりもまず、バートンに欠かせないのがジョニー・デップ。彼の作品はいくつか見ましたが、バートンが使うと燦然と輝く人です。パイレーツ・オブ・カリビアンですら本人はえらく気に入っているようですが、バートンの作品より表面的な印象を受けます。

準主演はエミリー・ワトソン。以前は妙な役が多かった人ですが、パンチドランク・ラブリベリオンの頃から普通の女性も演じるようになり、ティム・バートンのコープスブライドでも生きている花嫁の役。

生きている花嫁より死んでいる花嫁の方が出番が多いので、こちらが主役にあたりますが、その役を演じているのがバートンの奥方のヘレナ・ボナム・カーター。このところアニメの声の出演が続いています。バートンを前の奥方から奪い取ったのが猿の惑星で、この時は当時の専業ガールフレンドと共演しています。その後はバートンのガールフレンドの伝統を守り、バートン作品に役が小さくても顔を出しています。以前の奥方は本職が俳優でなかったため、主演を取っていませんが、カーターは主演を張る程度の実力のある女優なので今回は主演。私は前の奥方のユーモアが好きだったので、当時カーターを好きになれませんでした。その後彼女はあまり表にしゃしゃり出て来ず、最近はイメージがややアップしています。当時のガールフレンドはバートンにインスピレーションを与える人として注目していました。その彼女が去った今、バートンにはごく僅かに変化が見られますが、幸い才能が枯れてしまうということは無かったようです。前奥方を贔屓にしていたのでやや複雑な心境ですが、まあ、今後を見守りましょう。

目立つのはバートン、ワトソン、カーターと皆中年太りをしている点。デップも顔がやや丸くなったように見えます。皆そろそろ中年なので当然ですが、ハリウッドの激痩せ路線は追っていないようです。中年おじさんと中年おばさんだけでロマンティックな話を作ったのはさすが。

アルバート・フィニーは60年代から活躍する大スターですが、バートンとの接点はビッグ・フィッシュ。クリストファー・リーとの接点はスリーピー・ホロウ。怪しげな幽霊の世界が好きなバートンにとっては怪奇映画の大スターは尊敬の対象。チャーリーとチョコレート工場にもご足労願ったようです。

ではストーリーに行きましょう。中産階級が大きく台頭したビクトリア時代に生きるビクトルとビクトリアなどと言うと別な映画を思い出してしまいますが、そちらとは関係がありません。まだ女性が床まで届くスカートをはいていた時代、新興ブルジョワの息子ビクトルが、落ちぶれた貴族の令嬢と婚約します。親が押し付けた結婚だったので、双方気乗りがしなかったのですが、式の直前偶然2人だけで会ってみると感じのいい人だったので、2人とも乗り気になります。

ところが式の予行演習の日、牧師の前で不器用なビクトルは騒ぎを起こしてしまい中止。落胆して森を歩いていたビクトルは結婚式場で言うべき花婿の言葉を練習し直します。そして枯れ枝に指輪をはめたところ、黄泉の国に引きずり込まれます。枯れ枝だと思っていたそれは、何と死んだ花嫁の指だったのです。

結婚の準備を万端整えたところで花婿に惨殺されたエミリーというこの花嫁はその後死の世界で失意の日を送っていました。そこへビクトルが結婚指輪を持って現われ、誓いの言葉を言ったので、それを正式の結婚とし、彼女は花嫁の地位に納まってしまいます。

ビクトルが女性といるところを他の人に見られたりしたので、ビクトリアの耳に噂が入ります。式をやり直してビクトルと結婚する予定でいたビクトリアは失望しますが、ビクトルがやって来て説明をしようとします。しかしエミリーが自分は正式の妻だと主張するので、ビクトリアはやはり失意。

エミリーは親の反対を押し切ってある若者と結婚するつもりだったのですが、家の宝を持ち出して男と落ち合ったところでその男に殺されてしまいました。それでビクトルと結婚できて幸せではあるのですが、問題が起こります。結婚の誓いは「死が2人を分かつまで」となっていて、ビクトルは生きているので、言葉通りですと矛盾が生じるのです。で、ビクトルにも死んでもらわないとだめだと言う事になります。

黄泉の国で暫く解放された生活を送ってみたものの、ビクトルはやはりビクトリアの元に戻りたくなります。最初は絶対阻止のつもりでいたエミリーですが、彼女は偶然自分を殺した犯人に出くわします。

彼女を殺して宝石を奪った男はその後エミリーの家に取り入っていました。エミリーの家は元は栄えていたのですが、現在は没落していて、両親は金持ちの家に嫁がせるつもりでした。ビクトルとの縁談が破談になったところへタイミング良く立候補したのがこの男。彼は愛情ではなく、エミリーの家の財産を目当てにしていました。エミリーの両親はこの男の財産を当てにして娘を嫁がせることに決め、結婚式の準備が始まっていました。いよいよ間違ったカップルが2組誕生というその少し前、エミリーはビクトリアに自分の場所を譲らなければ行けないと悟り、退陣を決意。ちょうどその時、自分を殺した男がビクトリアの婚約者として登場。そのため事情を知っているビクトルとこの男の対決になります。後は期待通りのハッピーエンド。

かわいいキャラクターも出ます。ビクトルの飼犬スクラップ、小さな子供などが骸骨になって登場。メイキング・オブにはどうやって撮影したかが示されていて興味深いです。簡単に言うと、人形のポーズを少しずつズラしながら普通のデジタルカメラで撮影したアニメ。人形はウォレス&グロミットのようなクレー・アニメでないので、作るのも動かすのも比較的簡単です。手製だ、手間がかかっているという点ではウォレス&グロミットの方が上です。しかし全体の構図、登場人物の表情などを見ると、ニック・パークと同じぐらい愛情を込めて作られています。原案はバートンがデップと出会うより前にできていたそうなので、デップがビクトルと似ているのは偶然かとも思いますが、その逆にバートンが思い描いていた人物にデップが似ていたから重用されたという考え方も成り立ちます。しかし事情がどうあれ、デップとバートンが組み合わさると、ただ気心が知れているから、呼吸が合うからと言うのでは説明のつかない良さが出ます。

この2人の共同作業が成功するのは分かっていますが、乱発せず、適度な年数間を空けるのも賢明だと思います。これまでの仕事にはおよそ5年ほどの間隔があり、その間にそれぞれ別な仕事をこなし、前回の共同の仕事を1度きれいに忘れて次の企画に入っています。ですから前の作品に似過ぎたりすることがありません。ティム・バートンのコープスブライドにはいくらかナイトメアー・ビフォア・クリスマス的な面がありますが、ナイトメアー・ビフォア・クリスマスにはデップは参加していません。2005年にはいきなり劇映画とアニメの2本をぶつけて来ました。まだ見ていないので断定的な事は言えませんが、予告を見る限りチャーリーとチョコレート工場ティム・バートンのコープスブライドと全く違う雰囲気です。

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