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2006 J/USA/F 127 Min. 劇映画
出演者
Jodelle Ferland
(Sharon DaSilva - ローズとクリストファーの養女/Alessa Gillespie -
サイレント・ヒルの少女、ダリアの娘、子供時代、2役)
Radha Mitchell
(Rose Da Silva - シャロンの母親)
Sean Bean
(Christopher DaSilva - シャロンの父親)
Laurie Holden
(Cybil Bennett - サイレント・ヒルの隣町の白バイ警官)
Kim Coates
(Thomas Gucci - サイレント・ヒルの近隣の小さな町の警察官)
Lorry Ayers (Alessa)
Deborah Kara Unger
(Dahlia Gillespie - サイレント・ヒルの住民、アレサの母親)
Alice Krige
(Christabella - サイレント・ヒルの住民、教祖的存在)
Tanya Allen
(Anna - ダリアを攻撃する少女)
Colleen Williams
(ブラームス市資料保管所の職員)
Roberto Campanella
(Red Pyramid - 怪人/管理人/Colin - アレサを虐待する男)
見た時期:2006年5月
ホラー色が強く、小さなお子様向きの作品ではありません。
実話が絡んだ物語のようです。
英米的な作りの作品なのになぜ日本やフランスが関わっているかと言うと、日本発のコンピューター・ゲームからのスピン・オフの作品で、劇映画版の監督がフランス人だからです。ゲームはヒットしているらしく、シリーズのラインがいくつかあります。音楽などにも日本人が携わっています。
劇映画の監督はかの有名なクライング・フリーマン、そして最近ではジェヴォーダンの獣で成功を収めた人です。日本びいきの人。
フランス人が作った作品、アメリカが舞台のはずなのに、英国の作品と言いたくなるような雰囲気を持っています。オーストラリア、英国、カナダなど所謂ハリウッド的でない雰囲気を持った人が参加しているからでしょう。参考にされている土地はペンシルベニア州。
私はコンピューター・ゲームには凝っていないので自分では判断できませんが、雑誌などは「いかにもゲームからのスピン・オフに見える」という書き方をしています。元がゲームと言いますが、その先を更にさかのぼると、ペンシルベニアで起きた地下大火災事故。インフェルノという呼び方はまさにこの事件のためにあるといった規模の大きな出来事です。
春のファンタにラインアップされていたのですが、フィルムが開催に間に合わず、中止になった作品。5月には一般公開されました。ちょうどその時にマーケティング関係の人が町中に大手映画館で使える無料ティケットをばら撒いてくれたので、それを利用して見に行きました。クリストファー・ガンスの作品だと思って見るとやや退屈な出来ですが、ファンタに出して遜色ないホラー映画に仕上がっています。
ストーリーは子供の失踪から始まります。幼い養女を迎えた金持ちの美男美女の夫婦、ローズとクリストファー・ダ・シルバ夫妻なのですが、養女シャロンが夢遊病、記憶喪失、人格分裂などの症状を示すため、心穏やかではありません。夫婦で娘をどう扱うかの見解が違うため亀裂も生じそうな気配。母親のローズはインターネットで娘が口にしていたサイレント・ヒルという町のことを突き止め、夫を振り切って娘と2人車でその町に向かいます。
サイレント・ヒルの隣町ブラームス辺りまで到着。サイレント・ヒルを探し、町に入ろうというのがローズの計画ですが、町は簡単に見つからず、人に聞いても積極的な情報は貰えません。そこで初めて会う白バイ警官のシビル・ベネットはシャロンを見て何か言いたそうにしますが、きっかけがつかめずそのま まになります。
やはりローズたちを怪しいと思った警官シビルが追い、ローズたちは1度停車しますが、結局シビルを振り切ってさらにサイレント・ヒルに近付きます。しかし路上に子供が突然現われたので、轢くまいとして小さな交通事故に。暫く気を失った後、気付いたらシャロンが消えていました。ここから長い娘探しが始まります。
シャロンと似たような年頃の少女の影を追って、ローズは町に入って行きます。というか深入りして行きます。町に人の影は無く、空からは白い灰が雪のように舞い降りて来ます。そして時たま空襲警報のようなサイレンが鳴ります。昼間も雲がかかりどんより。日は照りません。何だかイヤ〜な雰囲気です。
出会う人間はごく僅か。後を追って来た白バイ警官のシビル、ホームレスのような姿の中年女性ダリア。見たのか自分でもはっきり分からないような、逃げ水のようにどんどん去って行く少女アリサなど。
その代わりに人間かどうか疑ってしまうような皮膚が溶けたり破壊された人体には頻繁に出会います。ま、ゾンビのようなものです。一緒に大量の昆虫や鼠も。気味の悪いことといったらありません。
シビルとローズの間は対立していて、手錠をかけられたりします。ローズが「娘を探している」と力説しても最初は取り合ってくれません。しかし一緒に妙な人体や動物に出くわすようになり、やがて協力体制が成立。
出会った中年の女性ダリアは発狂しているのかと思える形相ですが、話を聞いていると、シャロンと似たような娘について何やら言っていました。その子の名前はアリサ。シャロンの写真を入れたロケットを見て、自分の娘だと騒ぎ出します。
娘を連れて消えた妻に苛立っていたクリストファーは、ローズから「助けが必要だ」というかろうじて聞こえる電話を受け取り、自分もサイレント・ヒルに向かいます。彼も町の入り口で刑事グッチに止められ、「町には入らない方がいい」と言われます。しかし「妻と娘を探している」と言うと、ちょうど白バ イ警官を探していた警察と話が合ったため、その後一緒の行動を取り始めます。
シャロンを探しているローズたちは小学校へ。そこでシャロンが残したらしい手がかりを見つけ、たどって行きます。これがコンピューター・ゲームらしい面なのでしょう。私にはなぜそこにそういう物があって、それがシャロンの残した手がかりということになるのか理解できなかったです。
学校の中を探しまわっているうちに複数の男の気配。炭坑労働者でした。死体に出くわしたりモンスターにも出くわし、これまで勇ましい女性だったラダ・ミッチェルはこの作品を機に一挙にスクリーム・クイーンに変身。1つの部屋に入ると災難、別の部屋に入るとまた災難、なるほどこれがコンピューター・ゲームなんですか。ふむふむ。
後で考えると不要なシーンもあるのですが、ホラー映画だという証明のためにはそういうシーンも必要。ストーリーの前半は、シャロンなのかアリサという名のダリアの娘なのか分からない少女を追うローズ、なぜか良く分からないけれどローズを助けようというシビル、シビルを探すグッチ刑事、ローズたちを探すクリストファーが中心人物で、その他になぜ出て来るのか分からない気味の悪い死体とまだちゃんと死んでいないようなゾンビが多数、そして時たまどこから現われるのか分からないけれどどうやら生きているらしい町の住民が登場します。
ホラーと言えど雰囲気だけでは足りないという方のために後半には謎解きが出て来ます。1つは「この町は一体どうなっているのか」、2つ目は「シャロンはなぜ母親とかくれんぼ、おっかけっこをするのか」です。そしてその裏にもう1つある事情が隠れています。
まず町がどうなっているのかですが、これは実在のペンシルベニアのセントラリアと似ていて、地下にある炭坑の鉱脈が大火事になっているのです。町は炭坑の収入で生活していたのですが、石炭に火が入ってしまい燃え続けているのです。ブラームスに住んでいる住民にも元サイレント・ヒルの住民がいます。雪のように灰が降って来るのはそのため。町がどんより曇っているのもそのためです。
本当の町セントラリアと違うのは、火事になった原因。映画ではシャロンと同じぐらいの年齢の少女アリサが30年ほど前に焼き殺されそうになり、火あ ぶりに使われた火が倒れて近くに引火、大惨事になりました。アリサを焼き殺そうとしていたのはクリスタベラという女性と町の住民多数。理由は今から30年差し引いたとして、その当時でも信じられないぐらい古臭い話、スリーピー・ホロウの時代でも時代遅れになりつつあるような話です。
その話はネタばれになるので別なページに書きます。
この辺りの事情はグッチ刑事から「もう諦めて帰れ」と諭されたクリストファーも自力で探り始め、最後にはグッチ刑事の口からも語られます。ローズ中心に進む話は超自然現象、クリストファー中心に進む話は現実的ですが、共に同じ事件の周囲を回っています。
ローズ、シビル、シャロン、アリサ、クリスタベラをめぐってフィナーレに向かって大きな対決があり、アリサの恨みは理解され、 ローズとシャロンはクリストファーの元に帰ろうとするのですが、そこで意外な展開になります。
確かに人に言われてみると、ゲームの要素が混ざっていると思える点があり、単に劇映画を見に来たつもりの観客にはちょっと無駄に思えるシーンもあります。
中心となるシーンでローズはシャロンの名前を叫び、探し回ります。ジョディー・フォスターがこういう役を気に入っているのか、最近時々そういう作品を見かけますが、ローズの役をフォスターにせずミッチェルにしたのは良かったかも知れません。形相を変えて娘を探し回るヒステリックなシーンなのですが、フォスターがやると、顔が緊張してきつ過ぎるかと思います。ミッチェルで大成功とは言えませんが、最悪でもありません。なぜ映画の中でこう何度も理性を失って娘を探しまわる母親のシーンが強調されるのかは理解に苦しみます。子供を奪われた母親は落ち込まないか、あれこれ考えるものではないかと思うのですが、映画に出るシーンはただひたすら名前を呼び、形相を変えてその辺をうろつきまわるようになっています。
もう1つ分からなかったのは、町の人がダリアよりアリサの方を苛めている様子。なぜ原因を作った人でなく、結果を苛めるのでしょう。親が何をしたにせよ、新しく生まれて来た子供には罪はないと考えるのが普通のように思えます。その上70年代だったら、未婚の母というのも火あぶりにするような問題では無いように思えてしまいます。何だか時代錯誤な上に、大きな勘違いがあるような話で、その方がホラーでした。
ファンタを何度か見ていると、ラダ・ミッチェルの役が恐ろしく女性的になっているのに気付きます。彼女の名前を聞くとやはりファンタのファンはピッチ・ブラックを思い出し、勇敢に戦う女性、エイリアンと戦うシゴニー・ウィーヴァーの後継者というイメージを抱いてしまいます。ところがサイレント・ヒルのラダ・ミッチェルは感情的になり、叫んでばかりいるスクリーム・クイーン。戦う勇者の役は白バイ警官のローリー・ホールデンに移っています。ハリウッドですと、ラダは戦う女勇者の役で固定されてしまうのでしょうが、オーストラリアの女優で、監督がフランス人、お金を出しているのが3ヶ国となると、同じタイプを押しつけられずに済むのかも知れません。
ショーン・ビーンもジェームズ・ボンドを裏切る男や、ニコラス・ケイジの宝捜しを妨害する男などが板についていましたが、今回はちょっとその路線か ら外れています。
映画のサイレント・ヒルと実在の町センターヴィル(現在の名前: セントラリア)は様子が非常に似ているのですが、特に入り口に階段のあるロシア正教風の教会が似ています。ディア・ハンターなどを見るとアメリカ北部にはロシアからの移民が多く住む製鉄の町があったりするのですが、本当に北部にはロシア系の住民が多いのかも知れません。
とまあ、ホラー映画を見るという枠から飛び出しても見ていられる作品です。
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