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ダイ・ハード4.0 /
Live Free or Die Hard /
Die Hard 4.0 /
Die Hard 4 /
Stirb langsam 4.0

Len Wiseman

2007 USA 130 Min. 劇映画

出演者

Bruce Willis
(John McClane - 警察官)

Mary Elizabeth Winstead
(Lucy McClane - トーマスの娘)

Justin Long
(Matt Farrell - ハッカー)

Kevin Smith
(Warlock - ハッカー)

Cliff Curtis
(Bowman - FBIの指揮官)

Timothy Olyphant
(Thomas Gabriel - コンピューターの専門家)

Maggie Q
(Mai Lihn - ガブリエルの恋人、配下で働く)

Jonathan Sadowski (Trey)

Andrew Friedman (Casper)

Yorgo Constantine (Russo)

Cyril Raffaelli (Rand)

Chris Palermo (Del)

見た時期:2007年6月

要注意: ネタばれあり!

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★ 始めの一言

おもしろい。

★ 監督はどんな人

ダイ・ハード4.0 以外は奥方主演の2本のアンダーワールド(←このページは続編)しか作っていない監督です。ことアンダーワールドでは初回、2回目と進み、3作目も彼の所に仕事の依頼が入った様子です。

★ アンダーワールドダイ・ハード4.0 しか比べようが無い

アンダーワールドは行きがかり上両方とも見たのですが、ダイ・ハード4.0 の方がずっといいです。アンダーワールドは作者や監督が自由に飛び跳ねることの可能なファンタジーでありながら、どちらかと言えばバンパイヤ規則に縛られ閉塞的になっているのに対し、ダイ・ハード4.0 はほとんどが現実の物語というルールで話を進めています。現実なのだから法律や道徳に縛られファンタジーよりやりにくいだろうと思いきや、はちゃめちゃにマクレーンを活躍させ、どこから何が飛び出すか分からないおもしろさがあります。話の展開はまたしても間違った時に間違った場所にいた刑事マクレーンが事件に巻き込まれ(ドイツのキャッチフレーズ)、結局最後には1人で悪に立ち向かわなければならなくなる、災難、巻き込まれ型。

★ 16ブロックと比べたくなる主人公

今回のウィリスの役目は元々 16ブロックとほとんど平行するような任務で、犯人と断定もされていないハッカーらしき若者を(恐らくは任意で)事情聴取のために警察署へ引っ張って来いというもの。マクレーンは離婚しており、娘には嫌われ、時々アルコールにも手を出すという、16ブロックをほんの少し緩めただけの、家庭が崩壊している中年男です。当局は大型サイバー・テロを捜査しているところだったのですが、当のマクレーン刑事はデジタル系が苦手なアナログ派乱暴刑事で、物事は自分の体と頭で解決するのが本筋だと思い込んでいるややレトロな男です。

★ 事件が始まる

冒頭警察、FBI、役所などがサイバーテロで混乱し始めるシーンがあり、マクレーンは上司に言われて真夜中にハッカーのマットをしょっ引きにアパートに向かいます。その時点までに観客だけにはマットが危険な状態にあることが分かっています。当局対サイバー・テロリストという対立になっているのですが、テロリスト側がすでにハッカーの間で名の通った者を6人ほど24時間の間に殺し回っています。マットもちょうど狙われている最中で、軍の特殊部隊の訓練を受けたように見える殺し屋が出動して来ています。マットがコンピューターのエンター・キーを押しさえすれば空中に吹っ飛ぶ準備ができてたのですが、マクレーンがやって来てあれこれ言うので、まだエンター・キーは押していませんでした。マットは自分はマットではないと言い逃れを試みている最中。

ところがマクレーンがマットに誤魔化されず連行することになったのに気づいた殺し屋は発砲して来ます。とにかく身のこなしがプロフェッショナルでマットのようなコンピューター・オタクでは全く手も足も出ません。そうなると都合良く(テロリストにとっては運悪く)そこにいたのがマクレーン。マクレーンとマットは一瞬にしてしょっ引く男としょっ引かれる男だったのが、助ける男と助けられる男になってしまいます。この転換はアンダーワールドの監督から全然期待していなかった切れの良さです。

マットの部屋は銃撃戦でめちゃめちゃ。命からがらマクレーンと一緒に逃げ出し、ようやく FBI にたどり着きます。この種の映画では当然考え得るのですが、サイバー・テロリストたちは護衛、戦士も含め十人ちょっとの小人数。これだけで全米のネットを支配することができ、現在は東海岸に取り組んでいるところです。(実際にこんな事をやろうと思うと、もう少し人数が必要なのではないかと素人は考えます。ウィリスに大金払った分、他でギャラを節約したのかも知れません。)被害が拡大しているので、FBI、警察その他関係のありそうな官公庁が協力体制を組み始めているところでした。テロリストたちは初期段階ということで町の交通網にアタック。信号がでたらめになるので至る所に交通事故が発生していました。

FBI の捜査本部にたどり着いたマクレーンはマットを現在指揮を取っているボウマンに引き渡しますが、デジタル音痴のマクレーンには何が起きているかが理論の方では良く分からず、マットにどうなっているんだと聞きます。マットは目の前に起きている事が信じられず唖然としていますが、ハッカーの間で伝説になっている《3段階作戦》について話し始めます。「まさか本当にそんな事をやる奴がいるとは思わなかった」というのがマットの感想なのですが、まずは交通機関にアタック、次に通信網にアタック、3段階目としてエネルギー関係の施設にアタック。それによって要求を通すということらしいのです。少し前にはどこどこの情報が漏れたとか、2001年7月には 359 000 のマイクロソフト系のコンピューターがコードレッドというビールスに総攻撃を受け、ホワイトハウスもやられたなどという話が普通のニュースにも流れていたので、もしかしたらダイ・ハード4.0 はああいうのを参考にしたのかなどと映画を見ながら考えをめぐらしていました。

マットはそんな事を IT に弱いマクレーンに話しながら、自分の方は事の重大さを理解できるためかなりびびっています。

ドイツ語版では最初彼の名前がマットでなく、マックに聞こえたので笑ってしまいました。この俳優、アップルのCMに出ています。あまり有名な人ではありませんが、初期の頃から有名人が出る映画に顔を出しています。

ダイ・ハード4.0 の予告は数週間前から映画館で流れていて、公開が近づくにつれスケールが大きくなっていました。トンネルの中で2台の車の上にもう1台の車が落ちて来て、ウィリスがかろうじてその隙間で助かるというシーンを見た時は、多分これが映画のクライマックスのアクションだろうと思っていました。例えばトム・クルーズのアクションを見た時は予告に出たアクション以上に迫力あるシーンがありませんでした。ダイ・ハード4.0 は全然違います。あれは映画全体の何箇所かで起きる爆発や追いかけっこのごく一部で、映画館に足を運ぶとそういうシーンが適当な間隔を置いて何度か出て来ます。銃撃戦の方もかなり危険な様子が表現できていて、ダイ・ハードな(なかなか死なない)のはウィリスだけでなく、敵の方も同じ。そこが愉快です。実戦を担当する悪漢もしぶといのです。

★ 悪党一味

ここでちょっと悪党の方をご紹介しましょう。首謀者はガブリエルという若い IT 男で、強力なサポートをしているのが愛人のアジア人女性。その他にコンピューターに強いティームと、実戦に精通している元特殊部隊らしき国際的なティームが組んでいます。銃撃戦、爆発物に強く、ヘリコプターの操縦ができる者もいます。フランス語を話す者、中東出身者らしき男などが混ざっています。ボスの動機、目的は意外な所にあるのですが、取りあえずは全米、現在はアメリカの北東部を混乱に陥れ、後で最終的な要求を通そうというものです。脅しや要求はテレビを通じて全国に流れます。ここに悪党の遊び心が見え、凝った作りです。

★ 国を守る側がばらばら

対するは元々は別々に活動していた警察、FBI などで、表には大きく出ませんが、軍、諜報部なども組んでいるでしょう。フル回転で捜査に当たり、協力体制を組むという話にはなっているものの、各省庁のセクショナリズムがあり、最後までスムーズには行きません。マクレーンも自分をコップと呼ぶぐらいで、元来は警察官。現在は FBI のボウマンを上司考え、報告は主としてボウマンに行っています。しかし全体としては混乱の連続で、1人で全てを解決するスーパーヒーローでもいないことには、政府の機関がいくつ集まっても解決しません。ということでマクレーンの登場が必然になるというわけです。税金はウィリスに払った方が効果的に使えるということですが、普段彼の映画を支えているのはドイツ人の出資者なのだそうです

★ ここまではイントロだった

マットはハッカーではありますがテロリスト集団に命を狙われたため FBI に保護されることになります。司法取引など面倒な事をやっている暇は無く、FBI に協力するような流れになり、マクレーンはここで本来ならお役目御免。ところが FBI の建物のセキュリティーも混乱を始め、全員が外に避難。道路は大混乱しており、空を飛ばない限り動きが取れなくなっています。

マットはパトカーで移動中警察の無線から流れる女性の声が自分の知っている女性の声だと気づき、彼女が本当の警察関係者かどうか疑いを挟みます。そのとたんにマットとマクレーンの乗ったパトカーがヘリコプターに襲われ、最初の逃避行。市内のトンネルに逃げ込むと、中でも大騒ぎ。車を空中のヘリにぶつけて大破させるという形でケリがつきます。そんなバカな・・・ことが起きます。ブルース・ウィリスと一緒に逃げると。この時マットたちはヘリから狙撃されるだけでなく、逃げ込んだトンネルでは両側からマットたちの方向に車が大挙して押し寄せて来るという攻撃を受けます。最初のアクションからしてこんなありさまです。その上ここでやっつけたのはヘリだけで、乗っていた男はしぶとく生き延びます。悪党もダイ・ハードなのです。

悪党一味は2001年の事件を呼び起こさせるような形で国民に向け脅しをかけます。次の段階の攻撃としてエネルギー関係の施設が狙われます。テロリストの攻撃がハッカーたちが伝説と考えていた3段階攻撃のパターンで、すでに2段階行ってしまい、3段階目が近づいているのを知り、マットはさらにビビってしまいます。

しかし逆にマクレーンとマットには相手の次の攻撃目標の見当がつくわけで、2人は狙われていそうな火力発電所に向かいます。先に来ていたテロリスト数人は職員を片付けコントロール・センターを占拠。そこへやって来たマットとマクレーンは PC 係と喧嘩係に分かれそれぞれ相手をやっつけ始めます。女性だと思っていたら敵は手ごわく、中国人女性はコンピューター関係で切れるだけでなく、格闘技も得意。女性を殴ることにためらいを持つ欧米人は最初不利。彼女もダイ・ハードでマクレーンは悪戦苦闘。ようやくやっつけたと思ったら、それに怒ったボスが今度はガスで追いかけて来ます。市内のトンネルでたくさんの車を送って来たのと同じ戦術ですが、ガスは爆発します。もっと危ない・・・。

発電所の戦いもアクション・シーン満載で、アドレナリンは上昇します。アドレナリンに出ていたシェヴを救うためにウィリスは1年前にダイ・ハード4.0 を公開するべきだったと思います(笑)。

戦術を立て直すためもあり2人はもう1人のハッカーのワーロックを訪ねます。彼もマットに負けない物凄い PC オタク。ワーロックはこの事件の背後にいる男を知っている可能性があるのです。その結果分かったのは相手がガブリエルという元政府で働いていた男。元々は彼は国を守ろうとしてセキュリティー・システムの穴を指摘。それをカバーするシステムの提案をしたがっていました。ところが周囲の賛同を得られなかったばかりか、ひどく扱われ、ある日忽然と姿を消したというのです。

ガブリエルはワーロックの家にいるマクレーンとオンラインで話をし、娘を人質に取ったと知らせます。本当にこんな少数の人間でここまでできるかは別として、ガブリエルは娘の身元はマクレーンを手がかりにとっくにつきとめてあり、娘が現在どこにいるかは防犯カメラや携帯でしっかりつかんでおり、娘の乗っていたエレベータを止め、現在中に閉じ込めているのです。そこへ FBI のふりをして助けに来た悪党に娘はつかまってしまいます。

1人で娘救出に向かおうとするマクレーンにマットがついて来ます。これまで何度も命をかけて自分を助けてくれたのがマクレーンだと分かったからですが、ここに至るまでに2人の間には妙な友情が生まれつつありました。マットの状況分析はマクレーンの役に立ち、いざと言う時はマクレーンが拳骨とピストルで道を切り開きます。

IT ではあれほど頭がいいガブリエルですが、作戦ではマットが後に食いついて来るため、行く先々でマクレーンの妨害に遭います。ついにガブリエルたちが作戦本部にしている場所に2人が乗り込んで来ます。人質に取られている娘は人質としては図々しい態度で、父親との最後の会話だと言ってガブリエルから携帯で会話をさせてもらう時には「父ちゃん、残りはあと5人」と口走ってしまいます。

せっかく何人か敵をやっつけたものの、マットも人質に取られてしまいます。マットはこれまでガブリエルがやった攪乱をいくつか元に戻していたのですが、ガブリエルはそれをまた元に戻せと脅します。ガブリエルはアメリカ国民全体を人質に取ってその身代金として社会保障制度の金を取ってしまうつもりでいたのですが、その邪魔をマットが道中やっていたのです。

悪党一味はマットとマクレーンの娘を人質に取ったまま車で移動し始めます。マクレーンは悪党が使っていた大型トラックで追跡を始めますが、悪党一味は偽の指令を与えてそのトラックを政府の戦闘機に襲わせます。前にはヘリとパトカーの戦いでしたが、今度は F5 戦闘機対大型トラックの戦いになります。F5 のパイロットは国を脅かすテロリストが車に乗っていると信じているのでしつこく追跡して撃って来ます。このシーンも冗談としか思えない形で決着が着きます。

悪党の残りが人質とたどり着いた場所にマクレーンも到着。直接対決になります。ガブリエルは脚を撃たれているマットに社会保障制度の金を自分の方に移すためのコードを要求。娘にはピストルが突きつけてあり、マクレーンはガブリエルに直接ピストルを突きつけられています。

最後は IT の戦いと言うより、人間同士の体を張った戦いになり、無論ハッピーエンドです。

★ この映画を見て何を考えるか

ちょうど今日本で年金の記録が何千万件もおかしくなったというニュースが飛び交っているところです。そんな折にこんな話を映画で見ると心配になってしまいます。

16ブロックのウィリスとダイ・ハード4.0 のウィリスは鬱と躁のウィリスと言っていいぐらいの対称的な設定ですが、どこと無く似ています。周囲が皆敵になってしまう 16ブロックと、周囲を敵にしてしまった敵と戦う刑事のダイ・ハード4.0 ですが、共に1人の若者を助けなければなりません。そして事件が解決するまでにその若者との理解を深めて行きます。ウィリスはダーティー・ハリーなどと違い、1人で戦うスーパー・ヒーローではあっても、行きがかり上知り合った若い世代と理解を深めるという筋運びが多いです。

上に書いた筋は事態がどういう風に発展するかという場面の数珠繋ぎですが、この作品のおもしろい所はやはりアクションの凄さと、間にはさまれた冗談としか思えないセリフや展開でしょう。私はドイツ語で見たのですが、恐らく英語のウィリスのセリフはもっとクールなのでは。

マクレーンが代表している IT 音痴の世代、犯人やマットが代表している IT オタクの世代がぶつかるのですが、私などはマクレーンに近い世代。一応ワープロなどは扱えますが、役所などが全てオンラインにすると言い始めた頃から「そんな事して大丈夫なの」と疑いの目で見ていました。交通機関の管理でもコンピューターが狂ったら・・・という想定で作られた映画ができたりします。結局心配が本当になってしまったわけですが、なぜ皆がダーっと全てをデジタル化してしまったのかは今もって理解できません。いずれにしろ私はダイ・ハード4.0 は社会に対する忠告と受け取りました。

★ 元悪党でなかった悪党の将来

元々悪党だった人より難しい対戦相手になるのかとこの映画を見て感じました。元々良かれと思っていた事が否決され、結局自分の方が正しかった男の悲劇です。こんな風にしてお金を掠め取ってしまうのはいいですが、そんなお金どうやって使うんでしょうか。ガブリエルとしてカジノにでも競馬場にでも現われたら当然つかまってしまいますし、顔を整形してみても最近では DNA 他色々個人を見分ける技術が発達しています。どこにも顔を出すことができない大金持ち、そして愛人は死んでしまった。その上彼は事によっては仲間を全員消すつもりだったのかも知れません。そうやって大金を手にし、彼の犯罪を知るものを片付けたとして、どういう将来が待っているのでしょうか。まだかなり若いのですが。

皮肉なのは国を守ろうとした人間が国を守っている人間と対決というプロット。あれだけの事をしでかすには、セキュリティーの内部に精通していないとダメなので、ガブリエルが元政府の人間というのは説得力があります。彼を演じた俳優がちょっと弱いように思いますが、ガブリエルの立場の説明は一応理屈が通っていました。最後死んでしまうのでけりはつきますが、まんまと金を掠め取って逃げたとしたらその先がどうなるのかは想像がつきませでした。

★ マクレーンの将来

ダイ・ハード5 の話が出ています。まだ当分死なないでしょう。

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