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ラッキーナンバー 7 /
Lucky Number Slevin /
Lucky # Slevin /
Lucky Number S7evin /
Slevin /
7, el número equivocado /
Asesino a sueldo /
Bonne chance Slevin /
El Caso Slevin /
Slevin - Patto criminale /
The Wrong Man /
Xeque-Mate /
Há Dias de Azar

Paul McGuigan

2006 D/USA 109 Min. 劇映画

出演者

Josh Hartnett
(Slevin Kelevra - ニック・フィッシャーのアパートに来た男)

Sam Jaeger
(Nick Fisher - 空港でヒットマンに襲われた男)

Lucy Liu
(Lindsey - ニックと同じアパートの住人、警察の検死官)

Bruce Willis
(Goodkat - ヒットマン)

Morgan Freeman
(元ヒットマン、現在町のボス)

Ben Kingsley
(元ヒットマン、元ボスの友人、現在町のもう1人のボスでラビ)

Michael Rubenfeld
(Yitzchok - ラビの息子)

Gerry Mendicino
(Benny Begin - ラビのノミ屋)

Peter Outerbridge (Dumbrowski)

Stanley Tucci
(Brikowski - 元ヒットマン、現在刑事)

Robert Forster
(Murphy - 刑事)

Kevin Chamberlin (Marty)

Dorian Missick
(Elvis - ボスのボディーガード)

Mykelti Williamson
(Sloe - ボスのボディーガード)

Darren Marsman
(Slim Hopkins - ボスのノミ屋)

Scott Gibson
(Max - 20年前に違法競馬に賭けた男)

Victoria Fodor
(Helen - マックスの妻)

Oliver Davis
(Henry - マックスの息子)

Howard Jerome
(Abe - マックスの叔父)

Victoria Barkoff
(エイブの妻)

Sacha Sojic
(イツハックの恋愛人

Danny Aiello
(Roth - 20年前殺された競馬のノミ屋)

Nicholas Rice
(20年前違法競馬に関わった獣医)

Corey Stoll
(Saul - 競馬場で働く男の息子、ヘンリーの顔見知り)

Daniel Kash
(ラビの息子のボディーガード)

Dmitry Chepovetsky
(ラビの息子のボディーガード)

見た時期:2007年3月

この後春のファンタの作品を入れる予定だったのですが、最近 16ブロックブラック・ダリアを扱ったので、先にブルース・ウィルス+ジョシュ・ハーネット共演作品を入れます。

井上さんがパンフを送ってくれたのがきっかけで見る気になる映画というのが時々あるのですが、これもその1つです。パンフが来なければ気付かなかったと思います。何とドイツではお金を出したのに劇場公開されていません。

ドイツがお金を出した最近の3作の中ではこのラッキーナンバー 716ブロックは誉めるに値する作品、ブラック・ダリアは良い人を集めたのに湿った花火で終わっています。よりによってそのラッキーナンバー 7 がいきなりDVDです。

不可解としか言い様がありません。ブルースウィリスはドイツでは大スター扱いで、彼が出るとなると大抵お金になります。ドイツ生まれでお母さんがドイツ人、その辺に買い物に出る程度のドイツ語は通訳がいなくても分かるらしいなど、本人もドイツを嫌っている様子はありません。その上(ドイツでなく)アメリカでは時々ブルーノと呼ばれています。1番最初にご紹介した映画に出て来る胡椒入れはドイツ製で、ウィリスが時々ドイツに来ていた時にお土産に買って帰ったのではないかと疑っています。

それぐらいドイツに所縁の深いウィリスを使い、ドイツがお金を出して作った作品。その上、以前のような大金出し損の出資と違い、かなり凝ったストーリー。劇場公開をすれば評判を取ったと思います。

ウィリスが出るというだけでも凄いですが、何とオスカー俳優2人も重要な役で出ています。それもただ出ていると言うだけではなく、演技のガチンコをやってくれるので、見ていてスカッとします。その上最近観客吸引力のあるハーネットもいいコンディションで主演に納まっています。これだけ人材、材料が揃っていながらいきなりDVDです。さらに不可解なのは、欧州で1番大きな映画雑誌と豪語している有名な雑誌の評価は親指が天を向いています。満点を取っているのです。

脚本家が10年かけて構想を練り、台詞を考え遂に仕上げた作品だそうです。俄かには信じ難い話ですがどうやら本当らしく、練った甲斐があり、制作した甲斐があったと思える作品に仕上がっています。

実はパクリまくりで、有名な映画の話題も登場します。ですからたくさん映画を見た方には、ただ筋を追い、ミステリーの醍醐味を楽しむ以外の楽しみ方もあります。ちょっと前にご紹介したバイオハザードもパクリまくりでしたが、あちらはオリジナリティーは無視、そんな事に時間やお金は使いたくない、大事なのは映画が伝えるメッセージだといったスタンスでした。それはそれで成功しています。

ラッキーナンバー 7 は一歩進めて、パクっておきながら消化し、さらに大きなメッセージまで運んで来るという贅沢な構想でした。普通そんな事をするとどこかで綻びができるか破綻するものですが、成功しています。それだけではありません。重量級の俳優が3人と、今後の活躍が期待できる若手が1人、そして渋い脇役2人出ていて、アンサンブルを成功させています。

最近はあれこれ禁止条例が出ていて、例えばアフリカ系の人に対してある言葉を吐いては行けないという法律が成立しそうです。そんな暴言は行けませんが、例えばアフリカ系の人同士が冗談でお互いをそういう言葉で呼び合っているのを耳にすると、それも行けないのかと考え込んでしまいます。同じようにその人種でない人や関係者でない人が話すと問題になりそうなテーマというのがあります。しかしその人たち自身、あるいは普段その人たちと一緒に仕事をしているなら言っても構わないだろうテーマというのがあります。ラッキー・ナンバー7 はその辺りの話題を扱っています。

さらに言うなら、現在の世の情勢にも関わっていると言え、例え話と考えることも可能です。以前は同僚として仲良く仕事をしていた2人のヒットマンが登場します。2人とも権力欲に取りつかれ、町を牛耳るべくがんばり、対抗の末20年後には通りを挟んで両側に勢力を誇示するべくビルを建てます。両者とも相手側の舎弟に狙われる可能性を考え被害妄想と言えるぐらい防衛対策を施し、そのビルの中に閉じこもりながら暮らしています。20年です。ある時協定違反に当たる出来事があったとかで、元々は幼馴染みか兄弟に近い仲でありながら、現在は生死を賭けるぐらいの敵になっています。

この2人を演じているのが共にオスカーを持っているモーガンフリーマンベン・キングスレイ。インド系のキングスレイですが、ユダヤ人のラビを演じています。この2人両方の仕事を引き受けるのが隣のヒットマンことブルースウィリス隣のヒットマンの乗りで演じていますが、後半になってキングスレイと2人のシーンでは皮肉を上手に語り、演技力を見せています。ウィリスの演技は 16ブロックの方が上かも知れませんが、ラッキー・ナンバー7 でも健闘しています。

大人3人組に対し若い魅力を発揮しているのがジョシュ・ハーネットブラック・ダリアに比べ10倍もいいコンディションです。お惚け、間の抜けた運の悪い青年を好演。ハリウッド的殺人事件的な乗りですが、KC より運も間も悪く、カッコ悪いシーンが多いです。小突き回され衣装はバスタオル1枚というシーンが多いです。

彼のガールフレンド的な役にルーシーリウ。これは驚きでした。私は偶然彼女を何度か映画で見ていますが、これまで1度もいいと思ったことがありませんでした。それが ラッキーナンバー 7 ではとても感じのいい現代っ子に仕上がっています。今後もこの路線で行くといい印象を残せると思います。この路線なら私も宗旨変えして応援しようかと考えているところです。

ここまでは「この俳優で無いとだめ」という印象の人達で、その他に他の俳優と交換してもいいような役にスタンリー・トゥツィーロバートフォースターが出ています。大した役ではないのですが、ここに2人をつれて来たのは私にはうれしかったです。渋いセンスの監督です。

タイトルは多分にセブンを意識しているでしょう。文字を入れ替えたタイトルの Se7en の主演の1人はモーガン・フリーマン。その他にパルプ・フィクションも意識していて、やたら時計と時間の逆流が出て来ます。パルプ・フィクションの重要な出演者だったのがブルース・ウィリス。

同じキーワードと時計が出て来る上に父親から息子へ時計が渡るという点まで一致しているのに、真似になっていません。そこが多分10年の時間を費やした結果なのでしょう。ユーモアはたっぷりです。

深読みし過ぎかも知れませんが、フリーマンとキングスレイももしかして20年前はパルプ・フィクションのトラボルタ、ジャクソンのような関係だったのではなどとも考えてしまいます。

10年前と言えばまだニューヨークのツインタワーはしっかり立っていましたし、大統領は別な人でした。その頃2派の抗争について知っていたのは内部の人か、政治学や歴史学を修めた人ぐらい。一般人の私たちにはそんな事態が進行しているなどとは想像もつかない、まだのんきな時代でした。景気が傾き始め、徐々に失業の心配が深刻に見えて来た頃ではありますが、ドイツはまだ今と比べるとのんびりしていました。

読みようによってはスケールの大きいテーマの作品に上に書いたような凄い俳優が動員されていますが、監督はそれほど有名な人ではありません。全く無名というわけではなく、いくらか名前は知られています。

俳優の方ではベン・キングスレイが凄いという点で意見が一致しているようなのですが、キングスレイ以外ではジョシュ・ハーネットが凄い名声を持つ俳優に混ざっても全く動じず、堂々と間抜けな青年を演じています。

っと、これだけでも驚くに足るのですが、さらに良いのはカメラ。観客を見事引っ掛けるという意味ではマッチスティック・メンといい勝負なのですが、軍配はラッキーナンバー 7 に上がります。俳優が気負い過ぎていない、共演する相手に対して良く反応しているという2点が、カメラに映る景色やセットともよく溶け合っています。スコットの、鮮明で美しいけれど、俳優が画面に溶け出して来るほどではない画面と違い、ラッキーナンバー 7 はすばらしく成功しています。スコットはマッチスティック・メンで気負い過ぎたのかも知れません。

★ ストーリー

20年前の出来事が現代に影響を及ぼすという話です。現在では敵対している大ボス2人は20年前ヒットマンの同僚でした。町にやって来てデビュー代わりに大量殺人をやらかします。競馬で不正情報を元に確実に勝とうとした人たちと、その八百長に関わった人たちが殺戮されます。本人だけでなく、家族にも犠牲者が出ます。

この事件、あてにしていた馬がゴール寸前に脱落し、負けてしまったので、事件の動機がはっきりしないまま、ただ大勢死んだというだけでほとんど忘れ去られています。がらんとしたバス・ターミナルで車椅子に乗ったブルース・ウィリスが、その辺で1人座っていた青年に語って聞かせます。その後なぜかウィリスがいきなり立ち上がってその青年を殺してしまいます。

何だか良く分からないけれど謎を残す展開で始まるラッキー・ナンバー7 は、主人公をバッド・ラック青年ことスレビンに移します。彼はよそからやって来て、ニックという青年を訪ねて来ましたが、ニックのアパートにたどり着く前に顔をガーンと殴られています。アパートのドアが開いていたとかで、勝手に入り、ちょうど鏡の前で殴られた顔をながめています。そこへ飛び込んで来たのが隣の検死官。彼がニックではないことはすぐ分かりますが、仲良くお喋りをした結果親しくなります。

2人の掛け合い漫才が愉快です。リウが今まで出したことのない味を出していて、私の評価もグーンと上がりました。これまでの彼女は無理にテンションを上げ、筋肉を強調し過ぎた感がありました。それをぐっと押さえて、軽い乗りの現代っ子を演じています。1つ気を抜いたのがよかったのだと思います。

ハーネットがコメディーも行けることは知っていましたが、この路線は続けるべきだと思います。キアヌ・リーヴスに似たおもしろさが見え隠れします。リウとハーネットのアパートのシーンは舞台劇に似た手法で、台詞が飛び交い、脚本家が気合を入れています。

これと最初のブルース・ウィリスの暴力シーンとどういう関係があるのかはまだ謎。しかし顔をガーンとやられただけでは足りず、今度はニックのアパートに2人の賊が押し入って来ます。またもや殴られ拉致。2人のボスの所へ連れて行かれます。

ここまでで観客にはスレビンがニックと間違えられていることが分かります。それでもこの町のやくざのボスから3日以内に片付けろと殺人の仕事を押し付けられてしまいます。巻き込まれ型の典型のように事件に巻き込まれてしまうスレビン。逃げようとはしないのですが、すぐに殺人の準備に取りかかるわけでもなく、リウ演じるリンゼイとデートをしたりルンルンになったり。そういう事が進行する中、通りのこちら側のボスに呼びつけられたスレビンは、今度は通りのあちら側のボスにも呼びつけられます。小突き回され、何かあるたびに殴られます。

最初のボスに依頼されたのは、通りの向こう側に住んでいるボスの息子の暗殺。ニックが借金をしていて、スレビンが暗殺をすれば帳消しにしてやると言うのです。通りの向こう側に住んでいるボスはスレビンにニックに貸した金を数日以内に返せとこれまた脅しをかけて来ます。どうやらニックは両方から大金を借りて、そのままトンズラしたようなのです。これだけでも映画にできる筋ですが、毎回スレビンが脅されてから出て行った後、そのボスと話をするのが隣のヒットマンシックス・センスアンブレイカブルの時のような顔をして一生懸命真面目さを出そうとしていますが、どう見ても隣のヒットマンのシリアス・バージョン。私はまだマジで取っていませんでした。

ここまでを簡単にまとめると、両方のボスから5桁の借金をして消えたニックに代わり、2人のボスはそれぞれ自分の借金をスレビンに払わせようとしているのです。通りのこちら側のボスは現金でなく、暗殺という手段で払っても良いと言い、あちら側のボスはいつもニコニコ現金払いがご希望。その2人の背後にいつも顔を出す隣のヒットマン。どうやらフリーランスで依頼があると仕事を引き受ける人らしいのですが、ここ10年以上この町には顔を出していなかったとか。それがなぜ・・・?

これでストーリーの約半分をご紹介しました。この後スレビンがこちら側のボスに依頼された暗殺を試み、あちら側のボスに金を渡しに行くのですが、そのあたりから観客の予想がどんどん外れて行きます。結末を上手に隠したという点では 16ブロックといい勝負で、タイプは違いますが、あっと驚きます。後で考えてみると実はという伏線もいくらかあります。

この先をばらすと映画を見る楽しみが無くなってしまうので伏せますが、俳優のアンサンブルが楽しめる作品なので、是非映画館でもDVDでもいいですからご覧になって下さい。日本ですと劇場公開もあったようなので、小さな映画館でその後も上映するかも知れません。

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