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アンダーワールド:エボリューション /
Underworld: Evolution

Len Wiseman

2006 USA 106 Min. 劇映画

出演者

Kate Beckinsale
(Selene - 吸血鬼)
Lily Mo Sheen
(Selene、子供時代)

Scott Speedman
(Michael Corvin - 元人間の狼男)

Tony Curran
(Marcus - 吸血鬼のボス)

Derek Jacobi
(Corvinus - 特殊部隊を持つ謎の男)

Bill Nighy
(Viktor - セレンの仲間、吸血鬼の以前の王)

Brian Steele
(William - 初代狼男、マルクスの兄)

Steven Mackintosh
(Tanis - 軟禁されている歴史学者)

Shane Brolly
(Kraven - 吸血鬼のリーダー)

Sophia Myles
(Erika - 吸血鬼)

Andrew Kavadas
(セレンの父親)

Kayla Levins
(セレンの妹)

Michael Sheen
(Lucian - 狼男のリーダー)

見た時期:2006年3月

暫く古い作品が続いたので、少し新しい作品も加えます。

大々的に「ネタばれするぞ」と言うとちょっと大口の叩き過ぎになりますが、鍵を握る親戚関係に触れますので、見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

2003年にほぼ同じメンバーで作ったアンダーワールドが予想外にいい売上だったので作られた続編。私はアンダーワールドを見ていません。アンダーワールド:エボリューションの冒頭にざっとこれまでのいきさつが文字で出ますが、早いので、というかドイツの横文字には漢字が入っていないので読むのに時間がかかり、予習していないとちょっときついです。漢字混ざりの日本語ですと、パッパッと漢字の間をベッキンセールのアクロバットのように飛び抜け、さっと意味が分かるので、便利です。あれ、全部漢字だとまた文章の切れ目が分かり難くて読むのに時間がかかるかも知れません。

聞くところによるとアンダーワールドは狼男族と吸血鬼族の戦いと、その間に入ってしまったロミオとジュリエットの物語なのだそうです。監督は安定していたベッキンセール家に波風を立てたレン・ワイズマン。吸血鬼が日光を嫌うため、主人公たちが行動するのはほとんどが夜。そのため画面は非常に暗く、小さな家のモニターで見ると醍醐味が減ってしまうかも知れません。何がどうなっているのかをちゃんと見るためには映画館で真中の3分の1のゾーンかやや後ろに座った方がいいかも知れません。

この手の話は見る人が話に入っていけるかで評価が分かれます。うまく入れた人には醍醐味のある作品にうつると思います。私は Ночной Дозор (Nochnoy dozor/ナイト・ウォッチ) を見てしまったので、どうしてもそちらの規模に圧倒され、アンダーワールドは小粒に見えますが、一応ナイト・ウォッチに似た作品と言えます。もっともナイト・ウォッチの今後の展開が分からないので、話が進むにつれ全く違う所に行きついてしまうかも知れません。その辺を考慮して、私の予想を今から鵜呑みにしないで下さい。

ナイト・ウォッチは意味無く引き合いに出したわけではありません。画面が暗い、妖怪が登場するというというだけでなく、話の始まりが中世で、騎士が出て来るというところも似ています。しかし上にも書いたように、似て非なるものになる可能性もあります。もう1つ引き合いに出すとすればドッグ・ソルジャー。最初はまさか狼男の話だとは思わない展開から入る変形狼男話ですが、ドッグ・ソルジャーに出て来るダイナミックで生々しい狼男の路線を踏襲しています。ちょっとその辺の手足に毛が生えて来るなどと生易しいものではなく、狂犬、狂狼そのもの。凶暴性ではかなりのレベルに行きます。スピードマンは私の頭の中ではイメージがヒュー・ジャックマンと重なり、そういう関連で X−メンのジャックマンもチラッと思い浮かびます。ただ、彼は狼男ではなく、狼男にされてしまった男らしいので、これも似て非なる男かも知れません。

しかしここで分かるのは、アンダーワールドがそれほど独創的でなく、見ているとあれこれ思い出してしまう作品が続出することです。

対する吸血鬼の方ですが、これはやはり最近の作品ではヴァン・ヘルシングなどと比較するのがいいかと思います。ヴァン・ヘルシングは明るい画面で、吸血鬼も明るい所を飛んでいましたが、アンダーワールド:エボリューションでは吸血鬼らしく活動は夜中心。ヴァン・ヘルシングに出て来た女性吸血鬼を男性にして、数倍グレードアップしていますので、怪奇映画を見慣れた方でもちょっとびっくりするかも知れません。迫力です。この吸血鬼を見るためだけでも大スクリーンの方がいいと言えます。このシーンは亜流という感じがせず、素直に驚きました。

あれこれ比較できる作品も出ますが、もう1つ個性が出ていたのはロシアの軍隊風のイメージで、戦艦と戦闘用ヘリが出て来る点です。そこに乗っているのは特殊部隊。これが御伽噺の狼男と吸血鬼の間に入っても違和感が無く、上手に組み合わせています。雰囲気はやや唐突な感のあったルパンの船よりずっといいです。

弱いと思えるのはベッキンセール。出で立ちは同じ頃宣伝されているシャーリーズ・セロンのラッテックス姿と似ています。バットマンスーパーマンをぶつけようとしたり、他が類似品をすぐ出して来るのはこの業界、仕方ありません。この作品を楽しむ層というのはあるのかも知れません。例えば戦いのコンピューター・ゲームなどが好きな人たちにはいいのかも知れません。しかしコンピューター・ゲームで数独などをやっている人にはちょっと合わないでしょう。

さてやや弱いストーリーですが、ベッキンセール演じるセレンが吸血鬼、スピードマン演じる恋人のマイケルが狼男です。他の吸血鬼と狼男は宿敵として対立しています。セレンが子供の頃はまだ幸せな家族がありました。吸血鬼族には狼男退治のエリート戦闘員というのがいて、セレンもその1人です。

ドイツ人がまだ中世のドイツ語を話していた頃幸せだった彼女の家庭は、宿敵のライカン狼族に襲われたと彼女は長年信じていました。ところが犯人は自分の側にいた前王。親の敵は命をいただく・・・のが習慣らしくバッサリ。協力してくれたのは元人間、その後狼男、その上バンパイアと化したマイケル。

自分の側の人間を殺ってしまった上、狼男とできてしまうと、敵からも身内からも恨まれ逃げるしかありません。ですから私たちが見せられるのは逃避行のシーン。ところでアンダーワールド:エボリューションでは時間の流れは数百年の単位で考えた方がいいようです。

事態がこじれて来たため、セレンはバンパイアの現在のボスのマルクスと交渉をしようと試みます。それは飛んで火に入る吸血鬼。マルクスには兄ウィリアムというのがいて、どこかに閉じ込められているのでマルクスは探しています。閉じこめたのは2人の父親。ウィリアムは初代の狼男で、非常に危険な存在です。凶暴で自分をコントロールすることができません。マルクス自身は天使のような大きな翼を持つ恐ろしい、危険なバンパイアに変身していました。マルクスはセレンからこの兄の行方を聞き出したいのです。ですから羽を広げて待っています。

マルクスとウィリアムの父親のアレクサンダーもセレンを探しています。彼は初代狼男と変身中の超ハイパワー・バンパイアのおやじさん。それにしては初老の物静かな分別もありそうに見える紳士。最初バンパイアのボスのマルクスが1番強いと思っていたセレンはこのアレクサンダーの方が力があると知ります。結局この男を倒さないと埒が明かないと分かり、いざ戦いへ。

バンパイアや狼男が出るのでファンタジーの世界と思って見ていると、時々やけに現実的な S.W.A.T. のような特殊部隊が登場します。特殊な訓練を受けたとは言え普通の人間の特殊部隊を操っているのが、バンパイアや狼男の生みの親なので、エアポケットに落ちるようなめまいを感じてしまいますが、この作品、理屈だの科学だのは最初から忘れて入る方が分かりやすい作品。そういう事は気にしないのがコツです。

ところで気になってしまうのが狼男マイケルの苗字。コービンと言われると、ラテン語に聞こえるコルビヌスの現代版なのではとかんぐってしまうのです。こんな謎を残しておくのは柳の下にアンダーワールド 3を作る余地を残しておきたいからなのかと思いますよねえ。それにしてもアンダーワールドは人類と平行して存在する大きな別の世界と思っていたら、意外と小さな家族関係の争いだと分かり、ちょっとしぼんでいるところです。

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