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プレステージ /
The Prestige

Christopher Nolan

2006 UK/USA 130 Min. 劇映画

出演者

Ricky Jay
(Milton - 奇術師、アンジエとボーデンの師匠)

Piper Perabo
(Julia McCullough - ミルトンの舞台アシスタント、アンジエの妻)

Michael Caine
(Cutter - ミルトンの裏方、技術担当、後にアンジエの技術担当)

Hugh Jackman
(Robert Angier - 奇術師)

Hugh Jackman
(Caldlow - 収集家)

Hugh Jackman
(Roux - 酔いどれの俳優)

Scarlett Johansson
(Olivia Wenscombe - アンジエの舞台アシスタント、アンジエの愛人)

James Otis
(アンジエの裏方、盲目)

Sam Menning
(アンジエの裏方、盲目)

Brian Tahash
(アンジエの裏方、盲目)

Christian Bale
(Alfred Borden - 奇術師)

Christian Bale
(Fallon - ボーデンの裏方、技術担当)

Samantha Mahurin
(Jess - ボーデンの娘)

Olivia Merg
(Jess - ボーデンの娘)

Zoe Merg
(Jess - ボーデンの娘)

Rebecca Hall
(Sarah - ボーデンの妻)

David Bowie
(Nikola Tesla - セルビア人の発明家)

Andy Serkis
(Alley - テスラの助手)

Daniel Davis
(アンジエ殺人事件の判事)

Jim Piddock
(アンジエ殺人事件の検事)

Christopher Neame
(アンジエ殺人事件の弁護士)

Chao Li Chi
(Chung Ling Soo - 奇術師)

見た時期:2007年6月

3ページで止めるつもりだったのですが、4ページ目もできてしまいました。

★ フィクションの中のライバル

ボーデンとアンジエはとことんやり合いました。嫉妬でカリカリしていたのはどちらかと言えばアンジエで、ボーデンは売られた喧嘩を買うような形になっています。最初の出来事が事故だったことを知らないアンジエ、兄弟のうち1人だけが真相を知っているボーデン側、詳細の説明をしなかった人たちという複雑な状況もあり、事はこじれて行きました。

しかしもしかしたらそういうはっきりした出来事が無くても2人の間は嫉妬で揉めたかも知れません。アンジエはあまり手品の仕掛けには関心が無く、喝采を受けることが大事だったからです。彼は手品の仕掛けを自分で開発せず、人から買い取ろうとしています。買って自分が独占的に使うにしろ、お蔵入りさせてライバルが使えないようにしてしまうにしろ、自分ではあまり熱心に開発しません。アンジエは貴族らしく、お金があったから買えたということもありますが、自分で新しい仕掛けを工夫するほど奇術師としての才能に恵まれていなかったのかも知れません。パーフォーマンスの方が重要だったのです。

そういう人物と、色々自分たちで新機軸を考えるのが好きな人とでは仲良く行くはずがありません。才能の無い方はカリカリ。 さらに持ちたかった家庭が持てなかったアンジエとすでに子供にも恵まれているボーデンという状況が問題を悪化させています。

理想を言えば2人が仲良くしてパーフォーマンスの名手が発明の名手の機械をフルに使って演技をするという共同作戦も可能だったかも知れません。しかし同じ師匠に仕え、1人立ちの直前に話がこじれてしまっては望むべくもありません。そしてそういう平和なストーリーではスリルが生まれません。それでは小説も映画も売れないでしょう。この種の対立をテーマにする話はどちらかと言えば欧米型で、日本人だと相手をやっつけるために下手をすれば自分の人生を棒に振ってしまうという選択をしないかも知れません。あるいはやってしまった後で「虚しいなあ」とため息をつくシーンが出てくるかも知れません。そのあたりは欧州に長く住んでみて違いを感じます。

★ 現実のライバル

っとここまでは映画の話なのですが、実はこの話の元になった小説にも実話の元ネタがあるのです。

エジソンとテスラのライバル意識は小さな物ではなく、エジソンはかなりひどい事をやった様子です。

それだけではなく、2人のライバルの奇術師というのが本当にいたのです。ミルトン役の俳優は本職が奇術師で、デビッド・カッパーフィールドと仲が良くありません。

そして小説の舞台になった時代にアメリカ人という触れ込みの欧州人の奇術師がいて、一世を風靡するに至りました。フーディーニという名前で矛盾の多い人生を送った人です。日本でもいくらか知られている人です。彼の要素が小説に生かされているのではと思わせるエピソードをいくつも持っていた人です。小説ではフーディーニの要素が2人の人間に分けて描かれています。フーディーニは縄抜けを得意技としていますし、双子ではありませんが近い身内が同じ職業についています。そして人一倍ライバル意識が強く、PR作戦にも熱心でした。

このライバル意識に関してはどこまでを信じたらいいのか分かりません。20年以上徹底的にやっつけ合っていたライバルが実は身内で、半分血を分けた弟だったのです。このやり方はエラリー・クイーンが実は仲のいい従兄弟同士で、2人がそれぞれクイーンとロスという別々な作家に成りすましてメディアで大論争をやったのとそっくりです。2人のクイーンには明確な役割分担があったらしく、1人が亡くなってからは作家活動の火が消えて行きました。

★ ディーヴァーも挑戦

何事にも熱心な描写をするジェフリー・ディーヴァーがイリュージョニストを犯人として分厚い小説魔術師を書いています。ライム・シリーズはいつも分厚いのですがあっという間に読めてしまいます。小説のおもしろさに加え、読みやすい文を書く翻訳者に恵まれたのでしょう。

プレステージではエンジニアが作るような仕掛けの描写に時間がかけてありますが、魔術師ではイリュージョニストが観客を間違った方向に誘導する方法や、相手の目や耳を惑わす時に使う小道具などについて説明されています。プレステージに登場する師匠や弟子はそういう物を総合的に身につけた上でステージに立つということになっていて、プレステージでも「アブラカダブラ」と言ったとたんに何かがふっと消えてしまったりします。

プレステージが他の奇術やイリュージョンを扱った話といくらか違っているのは、非常に現実的な話を進めていった後で突然非現実的なSF部分が入って来る点です。レトロな形で、全体の歴史的な流れの中にすーっと入って来ます。メビウスの帯のようにいつの間にか観客は非現実の世界に足を突っ込んでいます。ここがもしかしたらノーラン兄弟の力の見せ所だったのかも知れません。

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