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Mr. ブルックス 完璧なる殺人鬼 /
Mr. Brooks

Bruce A. Evans

2007 USA 120 Min. 劇映画

出演者

Kevin Costner
(Earl Brooks - 成功した実業家)

William Hurt
(Marshall - Earl Brooks)

Marg Helgenberger
(Emma Brooks - アールの妻)

Danielle Panabaker
(Jane Brooks - アールの娘)

Demi Moore
(Tracy Atwood - 刑事)

Jason Lewis
(Jesse Vialo - 離婚係争中の夫)

Reiko Aylesworth
(Sheila - 離婚裁判の夫側代理人)

Michael Cole (トレーシーの弁護士)

Matt Schulze
(Thorton Meeks - トレーシーに復讐を誓う脱走犯)

Yasmine Delawari (Sunday - 殺人鬼のガールフレンド)

Dane Cook
(Smith - 目撃者)

Ruben Santiago-Hudson
(Hawkins - トレーシーの同僚刑事)

Aisha Hinds
(Nancy Hart)

Lindsay Crouse
(Captain Lister)

Megan Brown
(殺人の被害者)

Ross Francis
(殺人の被害者)

Kanin J. Howell
(狙われる運転手)

見た時期:2007年8月

2007年ファンタ参加作品

1つ前の傷だらけの男たちと同じく去年のファンタに出た作品です。その時に見たのですが、間に他の作品が入ったので記事を出すのが半年以上遅れました。

普段ファンタには出ないような大スターが出るので、一般公開されて中ヒットぐらいはするかと思いましたが、意外と早く消えてしまいました。

★ コスナー

ケビン・コスナーは恐らくはブラッド・ピット級のスターとして企画された人でしょう。原則として主演、ドル箱スター路線です。本人は端正な顔だけでなく、頭もいいらしく、色々やりたい事があった様子。ところが周囲の方針と合わない時もあったらしく、ギクシャク。それでもケネディー事件を扱う作品に出たり、がんばってみたようです。

絶頂期は1990年前半。監督業でも成功しています。ところがその後坂を転げ落ちるように不運続き。致命的な事件と思われるのはウォーターワールドで生じた損害。噂によるとかなりの負債を抱えたそうです。離婚の慰謝料も高かったとか。いずれにしろ、1度人生をリセットしなければならなかった様子です。

コスナーの様子を見ていると理想主義で夢を見ているのかと感じることがあります。私は彼がそれほど好きではなく、「この俳優が出るから」と狙いを定めて見に行った作品はありません。そのためもあって以前の作品は4本しか見ていません。いずれも主演です。

Mr. ブルックス 完璧なる殺人鬼では珍しく悪人を演じています。2007年のファンタではトニー・レオンもそういう役を試みていますが、いずれも失敗と言えます。本人の体から染み出るような悪が漂わないのです。例えば Out of the Blue で犯人の役をやった俳優は全身から怒りと「腹いせをしてやるんだ」という強い意思が感じられ、狙撃犯としての信憑性ばっちりです。その辺りがコスナーやレオンですと「まだどこかに良い面が残っているのでは」と思えてしまうのです。スターでありながら演技派かも知れず、ニタリと笑うとこちらがぞっとしそうなのは、ジョン・トラボルタとトム・クルーズ。トラボルタが悪役をやったのは見たことがありますが、結構良いセンスをしています。恐らくはクルーズにもそういう実力があるのではないかと思います。たまにはドル箱スターに気合の入った悪役を振るのもいいかも知れません。

俳優の将来を考え徹底的に悪い奴を演じさせない周囲にも問題があるのかも知れません。コスナーの役ではコスナー自身に傷をつけないために本当の悪は別人の姿で出しています。脚本上同一人物の善と悪の性格を具体的に別な俳優を使って表現するというあのデビッド・リンチのスタイルを踏襲しています。この手法はその後人格が分裂している犯人を描く時によく使われるようになりました。

Mr. ブルックス 完璧なる殺人鬼では実業家のコスナーが自分に悪い面がある事を自覚しているという設定になっています。それで1人でいる時にしょっちゅう自分の中の悪の部分と会話をします。その男にマーシャルというあだ名をつけています。本人が自分の負の面と直接向き合っているのですが、たいていは誘惑に負けてしまいます。もしこの作品の主題が《誘惑に負ける男》なのだとすると、コスナーの演技は悪くないです。監督がここに重点を置いていたら、コスナーの演技は際立ったと思います。端正な顔の大スターではありますが、ハリソン・フォードほど不器用ではなく、決して大根役者ではありません。監督がここに焦点を当てなかったのがちょっと残念です。

★ あらすじはやめた

実はあらすじを書いてみたのですがどんどん長くなる上、結局はネタばれ。全体がスパっと決まる推理物にまとまっていないため、《驚愕の・・・》というにはいくらかふにゃけているし、俳優で楽しむにはちょっと実力が出切っていないのです。で結局あらすじは消してしまいました。

スパっと決まらない理由は原作者にあるのではないかと考えました。ケビン・コスナーはスター路線に置かれてしまったとは言え、結構俳優としての深さは持っていると思います。葛藤などを演じるとそれなりの雰囲気がかもし出せる人のように思います。ですからブルックスとマーシャルの葛藤などもあと一押し、二押しできたのではと思います。

逆にコスナーをスターと定めて、おしゃれな贅沢ミステリー路線にしてもそれなりの形が整ったのではないかと思います。それでしたらデミ・ムーアと組ませるのはいい考えだったと思います。ところがそうなるとマーシャル役で出て来るウィリアム・ハートが渋過ぎます。

そしてお洒落ミステリー路線ですと、デミ・ムーアの離婚係争の部分がちょっと邪魔。プロットとしてはムーアがまだ夫の男と争う必然性があるのですが、刑事の私生活が重要な役目を負っていると観客の注意はそちらに向き、コスナーの葛藤、そしてそれよりもっと驚きの家族の問題の重量が減ってしまいます。

要素としてはおもしろい物を盛り込んであるのですが、組み合わせと重量が良くありません。ジェフリー・ディーヴァーですとそのあたり上手にこじつけて、ストーリーが流れながらエピソードが登場し、後になってみると実はそれも主題に深く関わっていたなどという話に落ち着きます。そのあたりの腕が足りなかったように思います。

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