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2008 F 100 Min. 劇映画
出演者
Clovis Cornillac
(Solal - 詐欺師)
Jean Dujardin
(Ca$h - 詐欺師、ソラルの弟)
Jean Reno
(Maxime - 犯罪の大ボス)
Valeria Golino
(Julia - ユーロポールの有能刑事)
Alice Taglioni (Garance)
François Berléand (François)
Caroline Proust (Léa)
Samir Guesmi (Fred)
Cyril Couton (Mickey)
Eriq Ebouaney (Letallec)
Jocelyn Quivrin (Lebrun)
Mehdi Nebbou (Vincent)
Ciarán Hinds (Barnes)
見た時期:2008年8月
同じ事をやってもアメリカよりフランスの方が上手なんだと確認した作品です。ネタをばらしてしまうと、ジョージ・クルーニー一家が作ったオーシャン・シリーズとほとんど変わりません。10人ちょっとの詐欺師の集団が大きな計画を立てて、最後にあっと言わせるコメディー。深刻な暴力シーンも無く、大きなモラル論争も起きない、軽いお笑い映画です。
しかしアメリカ版と比べると歴然とした差が出ます。
俳優の魅力の出し方です。
ご覧のように最近飛ぶ鳥を落とす勢いのジョンとちょっと前飛ぶ鳥を落としまくっていたジョンの共演。まずこの2人、全く手を抜くこともなく、相手を潰すことなく見事に役に納まっています。ジョン・デュジャルダンは女たらしの詐欺師を演じますが、女が引っかかるのも分かるという見事な魅力のふりまき方です。去年ファンタに来たOSS 117 カイロ、スパイの巣窟式の笑顔をふりまいています。クルーニーの人工的な魅力に比べデュジャルダンですとふらっと引き込まれそうです。
その彼に関わるルネ・ルッソ風の女性も非常に魅力的で、ルネ・ルッソとカトリーヌ・ドヌーヴを混ぜたような女性です。臆面も無く大量に花を贈ったり、いかにもフランス人といったサービスをするデュジャルダンにしっかり応えています。デュジャルダンの気障もここまで来ると脱帽。
もう1人のジョンことジョン・レノーはオーシャン・シリーズではガルシアやパシーノ的な役割で登場。60歳になったばかりですが、ちょうど今これまでの実行犯や刑事で犯人を追う役から、管理職、ボス的な役に変わろうとしているように見えました。そのボスぶりは堂々としているだけではなく、男性としての魅力もふりまいています。枯れているだけに見えるパシーノと差がつきます。
そこにもう1人いくらか女性的な魅力では落ちる女刑事が出て来ます。彼女があと一歩魅力に欠けるのは役柄上必要。普段は女の魅力で勝負をする世界でない職場にいるからです。手柄を立てて上司に認められないと行けない世界にいた彼女を女性として目覚めさせてしまうのが暗黒街のボス。
★ オーシャンをパクッテいる
元からオーシャン・シリーズをパクるつもりで作られたのではないかと思います。高級な保養地コート・ダジュールが舞台になっていて、身なりのいいギャングのボス、美女などが登場しますし、他のメンバーは皆役割分担がしっかり出来ていて、カメラなど小道具も駆使して計画に取り組みます。狙いはダイヤモンド。
ユーロポールの有能刑事ジュリアと暗黒街の親分マキシーンの間をかいくぐり大きな計画を立てているのがキャッシュ。
計画が狂うのはジュリアとマキシーンの間が怪しくなって来るから。ジュリアがマキシーンを捕まえると大手柄で昇進できるのですが、ジュリアの前に現われたマキシーンは闇の世界で権力をもち、且つ魅力的な男性。犯罪捜査の世界から足を洗って・・・と考えたくもなります。
ここで重要なネタバレ情報。どうしてもご覧になりたい方は、マウス(左)をクリックした状態のカーソルでたどって下さい。
情報はここから・・・冒頭のシーンが重要な役割を持っています。映画に出て来る詐欺師は通常殺傷とは無縁。ある詐欺師がそういうつもりで出て来るのですが、なぜか射殺されてしまいます。これが Ca$h の兄。因縁が生じます。・・・ここまで。
★ おしゃれな犯罪映画
私がこれまでに見たおしゃれな犯罪映画の中で1番良かったのは黄金の7人。シリーズが進むに連れ劣化しましたが、最初はとても良かったです。Ca$h はその黄金の7人と優劣つけ難い魅力をふりまいています。新版オーシャンがクルーニーやデーモンやピットなどアメリカが誇る最も魅力的な現役俳優で作ったのに非常に違和感があったのに対し、Ca$h は「オーシャンもこういう風に作ってもらいたかった」という出来です。
オーシャンも Ca$h もプロットだけが重要なのではなく、演じている俳優に旬の人を連れて来て、舞台はお金があったら行ってみたいようなバカンスの町。
★ 時代が変わった・・・
・・・なあと思ったのは現金。これまでフランスの犯罪映画を見ていていくらか現実味を欠いていたのはお金の計算が原因。フランスには旧フランと新フランがあり、その換算はフランス人でもちょっと混乱を来たします。そこへ新しくユーロに変わったので、フランス人は近年計算に忙しかったと思います。
俄然助かってしまったのはドイツ人とドイツに長く住む私。ドイツはユーロに変更になった時1番混乱を来たさなかった国ではないかと思います。今でも私は時々ドイツ・マルクに換算し直して「うわっ、高い!」と悲鳴をあげる時もありますが、その計算は2倍するだけ。1ユーロは大体2マルクだったのです。
通貨統一の後主要国は全部ユーロ。外国映画を見ても同じユーロで話をしているので、100万ユーロ盗んだと言われれば、ドイツでもそれは100万ユーロ。地元の物価が多少違うので体感温度にいくらか差が出るかも知れませんが、フランスの100万ユーロをドイツに持って来てもやはり100万ユーロには違いありません。ドイツ国内でもうちの近所のように日常品が安い地域と、安くない南部のようにスーパーで同じ物を買っても多少地域差があり、それは外国でも同じでしょう。とは言っても同じ会社のシャンプーが他所の国で倍ということは無いでしょう。
こんな事情でフランスの犯罪映画が身近になりました(笑)。
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