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オーシャンズ13 /
Ocean's Thirteen

何じゃ、これは。

Steven Soderbergh

2007 USA 122 Min. 劇映画

出演者

Brad Pitt
(Rusty Ryan - 詐欺師、香港の中国語に堪能)

George Clooney
(Danny Ocean - 詐欺師)

Matt Damon
(Lenny Pepperidge と見せかける Linus Caldwell - すり)

Bob Einstein
(Caldwell - FBIエージェント、ライナスの父親)

Don Cheadle
(Basher Tarr, Fender Roads - 爆発物専門)

Shaobo Qin
(Weng と見せかける Yen - サーカスの男)

Casey Affleck
(Virgil Malloy - タークの双子の兄弟、スピード狂、メカに強い)

Scott Caan
(Turk Malloy - ヴァージルの双子の兄弟、スピード狂、メカに強い)

Carl Reiner
(Kensington Chubb に見せかける Saul Bloom - 詐欺師、胃が悪い)

Bernie Mac
(Frank Catton - 強盗)

Eddie Jemison
(Livingston Dell - 盗聴、盗撮、情報関係のメカに強い男)

Michael Mantell (Stan)

Elliott Gould
(Reuben Tishkoff - 羽振りの悪い元実業家、以前はオーシャン一味の財政面担当、現在病床につく)

Ray Xifo
(リューベンの執事)

Andy Garcia
(Terry Benedict - カジノ所有の実業家、過去にリューベンと確執がある)

Al Pacino
(Willie Bank - 羽振りのいい実業家)

Ellen Barkin
(Abigail Sponder - バンクの1の子分)

Adam Lazarre-White
(バンクの事業の重役)

Eddie Izzard
(Roman Nagel)

Vincent Cassel
(François Toulour)

Margaret Travolta
(バンクの秘書)

武蔵丸

見た時期:2007年6月

偶然ソダーバーグ監督の

・ アウト・オブ・サイト
・ エリン・ブロコビッチ
・ トラフィック
・ オーシャンズ11
・ ウェルカム トゥ コリンウッド(制作)
・ インソムニア(制作)
・ スキャナー・ダークリー(制作)

を見ており、

・ オーシャンズ12
・ ソラリス
・ イギリスから来た男
・  ミミック(脚本)
・ コンフェッション(制作)
・ グッドナイト&グッドラック(制作)
・ シリアナ(制作)

を見ようと思っていました。これでお分かりのように私はこの監督の作品には興味を持っていました。偶然と言うのは、ソダーバーグが関わっていると知らずに見たり、見ようと思っていた作品もあったからです。オーシャンズ12オーシャンズ11を見てがっかりしたので途中でリストから外していました。

ところが最近急に懸賞に当たってしまい、オーシャンズ13を見ることになりました。急遽オーシャンズ11オーシャンズ12のおさらいをしてから行ったのですが、結局《がっかりだよ》でした。

ご覧のように1人で主役を張れる俳優がぞろぞろ。ブラッド・ピットは最近ぱっとしませんが、本人がやる気になり、いい作品に恵まれるとすばらしい才能の出る俳優です。ベン・アフレックと似て周囲から持ち上げられてしまい、スターだ、セレブだと騒がれる人ですが、役者としての才能も十分で、数分の出演でもその気になれば物凄いインパクトを残すことができます。

クルーニーに俳優としての才能があるか私は今もって分からないのですが、彼は押しも押されもせぬ大スター。彼1人で1本撮れば、客は集まります。間違いありません。本人が目指さなくてもケーリー・グラントに匹敵する押し出しの良さがあると私は以前から思っています。変に社会物などに出ず、スターのために作られた作品だけに出ていても、十分儲かると私は今でも思っています。

マット・デイモンは自分の努力が無ければ大スターにはなれないと思いますが、努力したので、ちゃんとスターになっています。演技もまあまあ。彼1人主演という作品もありますし出来のいい俳優とのコンビでも上手く行っています。

ドン・チードルとソダーバーグ監督の縁は深く、あれこれ出ているうちにチードルは主演級の役者になっています。ソダーバーグ作品ばかりに出ていたわけではありませんが、ソダーバーグが要所でチードルを起用したことは大いに役に立ったと思います。 青いドレスの女やブルワースの時にはどこに出ていたか今では覚えていませんが、ブギーナイツアウト・オブ・サイト(いい俳優が色々出ています)ではばっちり覚えています。トラフィックではオムニバス形式の1エピソードで主演とも言える地位でした。その後ミッション・トゥ・マーズソードフィッシュラッシュアワー2(なぜか1を見ずに2だけ見ています)と階段を上り、オーシャンズ11では11人の1人。私は見ませんでしたが、ホテル・ルワンダは大いに話題になったものです。

有名人の身内で、自分が主演というほどではない人としては、アフレックとカーンが今回も出ています。有名人の身内というのはなかなか苦労の多い地位ですが、マイ・ペースでやっているうちに認められるという道もあるので、長期的に見ましょう。そう言えばトラボルタの姉か妹も出ています。

後記: アフレックは最近兄弟でゆっくりと地味にブレークし始めています。弟にかなりいい役をふって、兄が監督という作品や、弟1人で重要な賞にノミネートされるようになっています。(2010年)

有名人の身内という意味ではカール・ライナーも仲間に入りますが、自分が有名で、後から息子がついて来たケース。俳優もやりますが、50年代から脚本、監督、プロデュースにも関わっている大ベテランです。

その他にもエリオット・グールドなどという懐かしい人もティームの一員。青年、中年、そしてもう引退してもいいぐらいの年の人の組み合わせでできた一味です。

対するは俳優として大ベテランのアル・パシーノとエレン・バーキン。クルーニー一味の誰かが「自分たちはパシーノの演技に学ぶ所が多かった。逆に僕ら全員でパシーノの演技レベルを落とした」などと意味の分かりにくい発言をしていました。先にその話を聞いてから映画館に行ったのですが、意味が分かりました。パシーノは演技らしい演技をしていませんでした。なぜ彼を引っ張り出したのかは分かりませんが、ゴッド・ファーザー人脈の俳優が数人出ているためかも知れません。

マルチン・スコシージの作品に女性が出るとあまりいい表現にしてもらえないことがありますが、ソダーバーグ監督でも受難の女優が出ました。ジュリア・ロバーツを見た時にはそう思いませんでしたが、エレン・バーキンは損をしているなあと思いました。

全体の印象を言うと、オーシャンズ11の路線を踏襲していて、出る人は楽しいだろうけれど、見せられる側は退屈という結果でした。いくつかの特徴を言うと、クルーニーがやたら格好(だけ)を決めて来る、カジノのシーンが多く、賭け事とあまり縁の無い人間には安っぽくて退屈に見える(007/カジノ・ロワイヤルの方がカジノ・シーンはおもしろかった)、魅力を振り撒く女性が出て来ない、11人の役割や個性がスパっと決まらない(スパイ大作戦にも負けている)、上手く生かせそうなアイディアが結果として大きな笑いを取るに至らない(例: ホテルのランクを決めるおじさんのギャグ)、やられる男に悪漢としてのインパクトが無いなどで、結果としてメリハリの無い作品に仕上がっています。

ソダーバーグがだめな監督だとは言えません。トラブルになるいきさつがあり、相談の結果色々準備しておいてクライマックスに向かって行くというストーリーで観客の注意を引き付けるぐらいは軽いはずです。あれこれエピソードがあっても上手にまとめることもできるはず。しかしなぜかオーシャンズ13では風船に針を刺しをパンとはじく前に空気が抜けてしまっているような印象を受けます。

スパイ大作戦黄金の7人シリーズのように、着々と準備をしておいてまんまと・・・というコンセプト。そこでわくわくさせておいて、途中困難に出会うシーンでスリルをという趣向です。他の監督に任せたらもう少しメリハリのある作品になるのではと思います。

笑いが取れそうな設定もいくつか入っていますし、本来なら終わり近くのカジノのクライマックスはドーンと凄い印象を残すはず。私の印象に残ったのはストーリのエンディングでもなく、俳優の演技でもなく、物が壊れるシーンだけでした。せっかくアル・パシーノを呼んで来て、彼の帝国が崩れ去るシーンを撮るのでしたら、パシーノももう少し気合を入れてやってもらいたいものです。無理をしてかんぐるとすればアメリカの末路を予言する脚本で、アメリカ人のスターたちは末路にあまり気合を入れる気になれなかったのかなあとも思います。

終わりの方で、ブラッド・ピットの私生活を揶揄するような台詞が入りますが、仲間内のジョークという感じで、大したインパクトはありません。全体に起伏のある作品でしたらそれもご愛嬌ですが、全体が平板ですと笑う気にもなりません。クルーニーだったと思いますが、13で打ち止めと発言していました。やっと終わりかと思ったら、映画を見る前日あたりに14の話が持ち上がっているという情報が見え隠れし始めました。やれやれ。

ああ、そうそう、ストーリーですが・・・。

冒頭リューベンが病床に。ダニーが心配して仲間と話し合います。バンクというホテル、カジノをやっている実業家がいて、その男がリューベンに最初パートナーとして仕事を持ちかけていたのに、結局彼から身包み剥いで放り出してしまったのです。あまりのショックにリューベンが寝込んでしまいます。この作品に出て来る人は誰1人まっとうな人間はおらず、リューベンからごっそり金や権利を騙し取ったバンクも悪いですが、リューベンもやばい仕事に手を出すことがあります。心配をしている友情篤い仲間たちにも前科がぞろぞろ。粗暴犯からスリ、技術屋でも自分の能力を使って犯罪に関わったりする人たちです。

しかしダニーたちにしてみれば、自分たちの大仕事のスポンサーになってくれていたリューベンの危機。助けたくなるのが人情。それで全員に招集がかかります。

考え出した作戦は、バンクに損をさせてやろうというもの。あくどい事を平気でやり、ざっくざっく儲かっているバンクには儲け、財産という弱みがあります。そこを突くのがダニーたちの作戦の中心。カジノの儲け、大掛かりなホテルの建物、バンク所有の豪華なダイヤのネックレスなどが狙われます。カジノをやっつけるために大元をたどり、ダイスやルーレットのボールにまで細工をします。通報されたり警備装置が作動しないように IT 関係者がばっちり邪魔をします。ピンク・パンサーウォレス&グロミットの博物館のように厳しく警備されている所から宝石を盗むのが難関でしたが、変な小細工は止めにして、上からバーンと攻めることに決定。

一応 SF やファンタジーではありませんが、奇想天外の方法が通ってしまうという点ではファンタジーに等しいです。ゲスト出演と言うことで前回出て来たカッセルもお邪魔虫の役で出て来ます。誰かに頼まれたらちょっと出演させてしまえる程度の脚本だったようです。

ってな具合で、ゴッド・ファーザーほどの歴史の重みも無く、トラフィックほどの社会性も無く、ラッキーナンバー 7 ほどのトリック性も無く、集まった俳優が和気藹々でやっていてもスペース・カウボーイの例とも違いその楽しさがこちらに伝わって来ず、がっかりだよ。こういう時はフランス人の方が洒落ていますねえ。

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