映画のページ

レスラー /
The Wrestler /
El luchador /
Le lutteur /
O Lutador /
O Wrestler

Darren Aronofsky

2008 USA/F 109 Min. 劇映画

出演者

Mickey Rourke
(Robin Ramzinski/Randy Robinson - 20年前に有名だったプロ・レスラー)

Kid USA
(Randy Robinson、スタント)

Evan Rachel Wood
(Stephanie - ランディーの娘)

Marisa Tomei
(Cassidy - 子持ちのストリッパー、ランディーの友人)

Mark Margolis (Lenny)

Todd Barry
(Wayne - マネージャー)

Wass Stevens
(Nick Volpe)

Judah Friedlander
(Scott Brumberg)

Ernest Miller
(Ayatollah - 最近名の知られている悪役レスラー)

John D'Leo (Adam)

Ajay Naidu (Medic)

Gregg Bello
(Larry Cohen - プロモーター)

Scott Siegel (Greg)

Maurizio Ferrigno (Spotter)

Donnetta Lavinia Grays (Jen)

Andrea Langi (Alyssa)

Nick Berk (レスラー)
Brolly (レスラー)
Billy Dream (レスラー)
The Blue Meanie (レスラー)
Claudio Castagnoli (レスラー)
Eric Cobian (レスラー)
Bobby Cruise (レスラー)
Bobby Dempsey (レスラー)
Tommy Farra
(Tommy Rotten)
The Funky Samoans (レスラー)
Ref Hanson (レスラー)
Nate Hatred (レスラー)
Havoc (レスラー)
DJ Hyde (レスラー)
Danny Inferno (レスラー)
Ron Killings (レスラー)
Jay Lethal (レスラー)
Nigel McGuinness (レスラー)
Johnny Mangus (レスラー)
Kevin Matthews (レスラー)
Mike Miller (Lex Lethal)
Mike Mongoose (レスラー)
Devon Moore (レスラー)
Pete Nixon (レスラー)
Paul E. Normous (レスラー)
Jim Powers (レスラー)
Giovanni Roselli
(Romeo Roselli)
Sabian (レスラー)
L.A. Smooth (レスラー)
Sugga (レスラー)
Dylan Keith Summers
(Necro Butcher)
Chuck Taylor (レスラー)
Johnny Valiant (レスラー)
Whacks (レスラー)
John Zandig (レスラー)

見た時期:2011年6月

★ レクイエム・フォー・ドリームの監督

長編はまだ5作の監督ですが、レクイエム・フォー・ドリームには気合が入っていました。次に楽しみにしているのは日本のパーフェクトブルーを参考にしたと言われているブラック・スワンπ も見ましたが、周囲の知り合いほどは感心しませんでした。しかしレクイエム・フォー・ドリームを見る限りは才能に恵まれた人です。

★ キャスト

元々は監督ご指名のルークが主演の予定でした。スタジオはニコラス・ケイジに主演をやらせたかったようです。監督とスタジオはどうしても意見が合わず、「ルークを使う」と監督がごねたら制作費を大幅に削られてしまったそうです。それ以上にきつかったのはロードショーの館数を極端に減らされてしまったこと。これでは殆ど観客の目にとまりません。にも関わらず予算の元はたっぷり取り返し、外国の映画祭で上位の賞を取っています。

私もニコラス・ケイジなら見なかったかも知れません。確かに努力家で、レスラーの役をやるのなら体をそれに合わせて作って来るでしょうが、ケイジだとどことなく「いかにも」という雰囲気が漂い、特別に見たい気持ちにならなかったのではと思います。

主役を射止めたルークはオスカーにノミネートされましたが受賞は逃しています。グローブは受賞。ラジー賞からは無視されています。後にも先にもオスカーやゴールデン・グローブに名が出たのは初めて。しかし出演のオファーが増えたり、規模の大きい作品に誘いがかかったりしており、オスカーを逃してもいい影響が出ています。

制作側とは揉めたようですが、業界からは援助が得られたようで、本物のレスラーが多数共演し、本物の会場も使えたようです。私はザ・デストロイヤーやミスターX程度しかアメリカのレスラーは知らないのですが、子供の頃毎週日本の有名選手とアメリカの悪役レスラーが出る番組を見ていたので、レスリングにはなじみがあります。

★ あらすじ

筋は非常に簡単で、20年程前大スターだったプロレス選手の落ちぶれた生活を描いた作品です。現在は年を取り、収入が激減し、家は買えずトレーラー生活。収入は時たま行われるレスリング関係の仕事と、フリーターとしてスーパー・マーケットで稼ぐ僅かなお金だけ。体をプロレスラーらしく保つためにステロイド系の薬を取るため体はがたがた。家族は娘1人で、娘からは嫌われていて殆ど音信不通状態。なので仕事の合間にお気に入りのストリッパーを訪ねるのが唯一の楽しみ。

とは言え、ここまで落ちぶれても住んでいるトレイラーはそれなりにきちんとした町のきちんとした住まい。見ようによっては惨めなスーパーでのアルバイトですが、きちんと働いています。なじみのストリッパーは気立てが良く、家計を支えるためにこういう仕事をしていますが、お金の使い道は子育て。きちんとした生活の女性です。そして仲間のレスラーとは仲が良く、舞台裏では好かれています。そして何よりも20年経った今でも彼を英雄とあがめるファンがいます。

なので、しがない落ちぶれレスラー生活ではありますが、これまでそれなりに順調に行っていました。ところがある日ついに体がステロイドに耐えられなくなり心臓発作を起こして意識不明になってしまいます。医者から今後レスリングなどという体を消耗する事はダメだ、命が助かっただけでもありがたいと思えと、引退を命令されてしまいます。

悩み事を打ち明けところストリッパーはやや冷淡に、自分の家族と話をしてみろとのこと。弱いところを話せるいい友達ではありますが、彼女はそれ以上の交際は避けたい様子。うすうすそれを感じる程度の繊細さは持ち合わせているので彼は言われた通り娘との関係を修復しようと試み、少し成功します。

しかし物事はそうそう上手く行くわけは無く、行き違いが起き、せっかく上手く行き始めた娘との間は破綻してしまいます。ストリッパーに接近を試みたものの、結婚、同棲などはダメと急に冷たくされてしまいます。その上身分を隠して働いていたスーパーに彼がかつての有名選手だと気づいた客がいて、切れてしまいます。その結果スーパーは辞め、間もなく行われる大きな試合に出ることに決めます。このまま健康を気遣いながら静かに余生を暮らせたはずですが、娘、ストリッパーの両方からつながりを持ちたくないと言われ、自分の居場所はプロレス界しかないと思いそこで恐らくは最後の試合に出向きます。

★ 見せ場

お涙頂戴映画なので、ハンカチを持参してご覧になるのがいいですが、この作品の見せ場は主人公が意外とまともな考え方の人間で、娘になじられるとその理由が理解できる程度の繊細さを持ち合わせている点です。商売のプロレスのイメージと普通の人間の間に大きな差があるわけです。同僚の様子からもそれが分かります。皆稀代の悪役やスーパーヒーローを演じて見せますが、舞台裏ではとんでもなく仲が良かったり、新米の若造が先輩にちゃんと敬意を払っていたりします。ところが周囲からはプロレスのイメージの色眼鏡で見られるため、普通のおじさんが英雄ランディーを演じなければ行けません。

また、彼の羽振りが悪そうに見えるため、娘やストリッパーは彼が近づこうとすると、出て行ってくれというスタンスになります。頼られて居座られては困るという態度がありあり。観客だけは彼が仕事にあれこれ注文をつけず、地味な仕事を黙々とやる男で、普段は周囲と揉め事も起こさず、酒もほどほどの男だと分かっていますが、そういう風に周囲は見てくれません。

よく考えてみるとスポーツ選手なので、あまり無茶苦茶な食生活や飲酒はできないのでしょう。ステロイドを取る以外は意外なほどまともな生活をしています。稀代の悪役として颯爽と登場した実在のザ・デストロイヤーが意外なほど普通の人物だったことを考えると、レスラーの舞台裏はこういうものなのでしょう。

もう1つの見せ場はある催しに集まった往年のスターの様子。ランディー自身心臓の調子がおかしく、無理なトレーニングはできない身ですが、集まったほかの選手も杖や車椅子が必要だったり、限界まで体を使った結果身体障害者になっていたりします。

★ 冷たい映画の後、思いやりのある映画

レクイエム・フォー・ドリームが普通の人が崩れて行く家庭を冷たく描いた作品だったのに対し、レスラーは普通の人間が集まって偽の醜い戦いを演じてみせる作品です。血みどろの殺し合いをしているふりをしながら相手の健康を気遣う様子は笑いを誘いますが、よく考えると厳しい現実でもあります。泣き笑いのコメディーと言えるようなシーンが多いです。脚本は観客をぞっとさせるために作られてはおらず、見終わると殆どの人がレスラーに親近感を持つようにできています。そしてここにしか人生が無い悲しい男の姿も見え隠れします。

監督がルークに親近感を持っていたのか、プロレスに親近感を持っていたのかは分かりませんが、両方が上手くミックスされ、上手く収まっています。ルークは2010年にアイアンマン 2にプロレスの悪役かという姿で登場していますが、もしかしたら、レスラーの成功で出演のオファーがあったのかも知れません。

この後どこへいきますか?     次の記事へ     前の記事へ     目次     映画のリスト     映画以外の話題     暴走機関車映画の表紙     暴走機関車のホームページ