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2010 USA 103 Min. 劇映画
出演者
Sylvester Stallone
(Barney Ross - チーフ格の傭兵)
Jason Statham
(Lee Christmas - 傭兵、元 SAS - ギャグ・ネタ: 髪が少ない)
Jet Li/李連杰
(Yin Yang - 傭兵、格闘技専 - ギャグ・ネタ: 背が低い)
Dolph Lundgren
(Gunner Jensen - ストレスから麻薬に手を出した傭兵、狙撃手)
Randy Couture
(Toll Road - 傭兵、爆発物専門 - ギャグ・ネタ: なぜか心が優しい)
Terry Crews
(Hale Caesar - 傭兵、火器専門)
Mickey Rourke
(Tool - 元傭兵、現在刺青屋)
David Zayas
(Garza - ヴィレナ島の将軍)
Giselle Itié
(Sandra - レジスタンス、将軍の娘)
Eric Roberts
(James Munroe - 元 CIA、麻薬取引の黒幕)
Steve Austin
(Paine - 元 CIA、モンローの手下、得意技: 拷問)
Gary Daniels
(The Brit - 元英国海兵隊、モンローの手下、得意技: 拷問)
Charisma Carpenter
(Lacy - クリスマスのガールフレンド)
Arnold Schwarzenegger
(Trench - 元傭兵、傭兵の仕事を斡旋する会社をやっている、今回の仕事は断わる - ギャグ・ネタ: 大統領になる)
Bruce Willis
(Church - CIA 系の依頼主)
見た時期:2011年2月
★ 珍しくスキャンダル、1度出れば爆弾級の大きさ
この作品を見たのは今年の2月で、私はまだアーノルド・シュヴァルツェンエッガーの隠し子スキャンダルは知りませんでした。シュヴァルツェンエッガー家ではその前に話し合いが始まっていたようですが、メディアが騒ぎ始めたのは5月頃です。ですのでエクスペンダブルズが撮影されていた頃は、まだ公的には州知事を今期で辞めることだけしかはっきりしていなかったと思われます。
シュヴァルツェンエッガー自身はその後の道をまだはっきりさせておらず、芸能界復帰も視野に入れていたようです。エクスペンダブルズはそのための観測気球だったのかも知れません。同時に政界でさらに一歩前へ進む道も当時は閉ざされていなかったらしく、登場するシーンで政界ギャグも飛び出します。
ただ、このギャグのような大統領への道は本人は考えていなかったかも知れません。オバマ大統領にすら外国で生まれた疑惑で雲がかかったことがあるぐらいですが、シュヴァルツェンエッガーははっきりとした外国生まれ。ですので大統領への道は閉ざされます。副大統領は、大統領に何かあったらすぐ入れ代わる地位なので、副大統領への道も同時に閉ざされます。行くとすれば大臣まで。キッシンジャーなど政界の大物でも、出生地が外国の人は大臣が最高の地位でした。
シュヴァルツェンエッガーを推薦する向きが、法律などは改正すればいいと言ったことはあります。どんな法律でも永遠に続くわけではないので、そういう話は可能性としてはあるでしょう。ただ、シュヴァルツェンエッガー自身はオーストリーの国籍を持っているので、本人がそこまで大統領の地位に固執するとは考えにくいです。普通の上院議員やニューヨークの市長のポストなどは狙っていたかも知れません。大統領ギャグの出るエクスペンダブルズの出演時間は短く、観客はシュヴァルツェンエッガーがどちらの方向を目指していたのかはこの時点では判断できません。
皮肉なことにその後例のスキャンダルで両方の道が閉ざされました。私の目にはこのスキャンダルはいずれ出ざるを得なかった、関係者には州知事の任期が終了するまで待ってもらったと映ります。そういう点はきれいに収めており危機管理能力の強さを伺わせますが、女性からの批判は強く、今後も政界はもとより、芸能界への復帰も危ぶまれます。
★ 女性を怒らせてファンはどのぐらい減るか
シュヴァルツェンエッガーのファンは男性の方が多いのではないかと思います。日本ではしかしシュワちゃんと黄色い声を上げるのはむしろ女性の方。ドイツでは女性はあまり大きな関心を持っていないようです。しかし今回の事件では女性が読みそうなゴシップ雑誌に頻繁に取り上げられています。
女性が怒るのはちょうど実子を妊娠中の妻の目を盗んで同じ時期に非嫡出子を作った点、わざわざ美人でない女性を選ぶにあたって、女性が美人でないと彼に注意が集中するから(こちらのゴシップ報道)という打算があった点などです。そして1つ不思議なのはシュヴァルツェンエッガーがシュライヴァーと元のさやに収まると確信しているらしい点。確かに交際期間は長く、結婚してからも25年になろうという長い関係で、子供も家庭内で4人ですが、シュヴァルツェンエッガーには他にも非嫡出子がいるとの噂が流れています(知られている4人の子供 + 今回出て来たもう1人 + 噂の子供たち = 合計で彼はバレーボールのチーム + 補欠 が作れます)。なので良くても発展的家族崩壊ではないかと考えるのが平凡人。ドイツにも子供がティーンエージャーぐらいになるまで待って離婚という家庭が結構あります。
非嫡出子が何人いても構わないのですが、B.B. キング(サッカー・チーム + 補欠 が作れるほどの数)やクリント・イーストウッド(バレーボール・チーム + 補欠 が作れる程度の数)のように相手ときちんと話をつけないと、女性からは総すかんを食います。こちらの2人は養育費はきちんと支払い、親子関係も聞かれれば否定しない、あるいは相手方が一般人なのできっちり秘密を守るなど仁義をつくしています。イーストウッドの場合、子供は欲しいけれど結婚は嫌よという女性もおり、新しい女性も彼に何人か子供がいることを承知しています。シュヴァルツェンエッガーは夫人を大切にしたいのか愚弄したいのかがはっきりせず、そのあたりに女性から反感を持たれる理由があります。こういうエゴを勲章と考える男性もいるようですが、女性からは嫌われます。
私は俳優としての彼にコメディアンの素質があり、そこは好きでした。また、政治家としては危機管理の手腕や、メディアに対するはっきりした対応などを評価していました。交渉相手としてもそう簡単に丸め込まれる人ではなく、常に目標を見失わず動く人なので、政治家に向いていると思っています。ですので今回のようなスキャンダルが外に出たのは意外でした。隠し子がいたとしてもキング、イーストウッドなどのように関係者の間でうまく話がつけば周囲もこれほど騒がないでしょう。これほど揉めているのは、相手側と話がきちんとつかなかったからなのか、彼が大統領選に出る可能性が強くなり、事前にお引き取り願ったのか・・・芸能サイドの話なのか政治サイドの話なのかも分かりません。
シュヴァルツェンエッガーに色々合わせて来たシュライヴァーですが、さすがに今回は限度を越えており、凄腕の弁護士をつけて離婚の交渉に入っています。夫人の側に取っては同じ時期に子供ができた以外にも許し難いと思える問題があります。夫人は賢い人と聞いているので2人の間では醜い争いは無いかも知れませんが、けじめはつけるかも知れません。別に離婚したからといって親子関係が終わるわけではないですし、離婚後も近所に住んでいて子供の面倒は両方で見るスターもいます。そしてシュヴァルツェンエッガーは元公人でもあり、映画ファンの他に有権者も関わる人でしたから身辺をきちんとすることは期待されてしまいます。
非常に手際のいい、頭のいいシュヴァルツェンエッガーですが、今度ばかりはウディー・アレンに似た印象を受けました。アレン/ファロー家は家族構成や条件はシュヴァルツェンエッガーと違いますが、やはり長年連れ添った女性に1番痛手になるような仕打ちをしており、非難は男性に集中しました。アレンも頭のいい人なのに、なぜと思います。私はアレン、ファローが好きなわけでもなく、全くの無関係者ですが、なぜこれほどの人が・・・と不思議には思います。シュヴァルツエンエッガー、シュライバー夫妻の方は、名門、成功の輝かしい例だと思っていたので、驚きました。成功し、長年それをキープしている人にはそれを壊してしまいたいという衝動が起きるものなのでしょうか。
というわけで、この記事はシュヴァルツェンエッガーのおかげでのっけから躓きました。それでも公人だなあと感心したのは、スキャンダルをネタにして映画をごり押しするでもなく、映画会社から追い出されるでもなく、自分の方から参加中の企画を全て降りた点。芸能界だけにいると外の世界に疎くなって、悪徳マネージャーなどからスキャンダルを糧にして稼げと言われるとやってしまう人がいます。その点、有権者という立場の人を良く知っているため、辞めろと言われる前に辞退。そういう点でも危機管理の能力はあるんだなと思います。最良の危機管理は問題の種を蒔かないことだと考えれば、彼の危機管理にも穴が空いていましたが。
★ 監督はシルヴェスター・スタローン、共演は大スター
映画作りには普通は何年かかかるもの。この企画ができた時には2人ともスキャンダルのことは考えも及ばなかったでしょう。スタローンとシュヴァルツエンエッガーは一見ライバルのように思われますが、実はベルリンでも開業していたレストランのチェーンを共同経営していたり、仲がいいです。ホラー映画の大スターがライバルだと思われていて、実は長年の親友だったなどという話と似ています。
スキャンダルが表沙汰になる前の感想ですが、2人が特別に話題作りを特にしなくても、出演者の顔ぶれだけで十分話題になる作品です。スタローン、シュヴァルツエンエッガーを始め普段1人で主演を張るスターがぞろぞろ。ウィリス、ステイサム、李、そして最近上昇中のルーク、欧州では名が通っているルントグレン、姉が大スター、自分は最近悪役で名が通っているロバーツ。いったいいくらギャラを払ったのか気になります。普通の制作ですと、主演がドーンと制作費の一部を持って行ってしまう人たちです。
★ あって無きがごとく軽い筋
一応ソマリアということになっていますが、セットだということが丸見えのシーンから始まります。今評判の悪いソマリアの海賊が襲った船に乗り込んで行った傭兵の一団。手馴れた作業で相手を倒し、帰還。しかしスカンジナビア出身のグンナーがストレスのたまり過ぎで暴走。グループのまとめ役だったバーニーは彼をメンバーからはずす決定。
一件落着後次の仕事の話。ブルース・ウィリス演じる CIA 男が「おはよう、ブリッグス君」とテープを送って来るのではなく、「こんにちはバーニー君」と直接会いに来ます。ウィリスの役割は大平透の役。つまりアメリカが国として表立ってやったらまずい仕事の依頼です。南米小国の独裁者を消してもらいたい様子。中東やアジアの中程度の国の首相や大統領でも消してしまう時がありますが、やはりそうしょっちゅう表立ってはできないので、事業を民営化して、派遣やフリーターに頼む方がいいのでしょう。
で、バーニーは中国人イン・ヤン(何だか陰陽みたいな名前)を連れて問題の国へ下見に。ところが視察段階で既に問題に巻き込まれてしまいます。
独裁者は悪いですが、彼の背後にもっと悪い奴がいて、ただでさえ国民は幸せではないのに、さらに苦しめます。独裁者の娘はそれを忌々しき事と感じ、父親とは別な方向に歩き始めます。バーニーと陰陽、失礼、尹楊は彼女と会い、協力することになります。追っ手に追われて危ういところを助かりますが、2人が彼女を国外に脱出させようとしたのを断わって、彼女は島にとどまる決心。
独裁者の背後にいるのは元 CIA のエリック・ロバーツ。最近彼を CSI で見たばかりですが、いつも悪役をやっていますねえ。ジェームス・マンロウという役で、彼は独裁者を脅かして島でコカインの栽培を計画しています。独裁者を消すように言ったのがバーニーの依頼主である本家 CIA。CIA が表に出たくない件です。裏で独裁者を脅しているロバーツ君に取ってはここで独裁者が死んでくれると島のコカイン産業がごっそり転がり込んで来て儲かるというコカイン利権です。
何だ、あほらしいとばかりにバーニーたちは CIA の依頼を反故にしてしまいます。独裁者かも知れないけれど、国をコカイン畑にしてしまうのに反対しているのだったら、その方が正しいとの判断。ついでに娘も助けようという事になり、どたんばたん。父親は命を落とし娘はどうやら島の未来を開いていけそう。ま、他愛ない話です。現実でなければ。
★ 才能満ち溢れるラングレン
物凄く安っぽい B 級作品の路線を狙って作られています。スタローンが監督なので、どんな作風でも好き勝手やりたい放題ですが、彼は古いアクション映画の路線を踏襲。今時こんな作り方をする映画があるんだろうか − ある − 何じゃそれは − オマージュ。とまあこんな風に考え方を追って行くことができます。
各国の大物アクション・スターが出演していますが、姿が見えないのはベルギーのファン・ダムとアメリカのセガール。ファン・ダムは役をオファーされて蹴っています。代わりに入ったのはスウェーデンのドルフ・ラングレン。本当はルントグレンと言うようです。ラングレンは元々は空手をやる学生。理科系で一時はマサチューセッツ工科大学にも行っています。在学中空手をやり、世界選手権スウェーデン代表。学業、空手の次がキックボクシング。2メートルの巨体で飛び上がって蹴られたら相手は災難。(この種の武道は小柄な人が自分を守るためにやるべきもの。例えばジェット・リーのような人が自分を守るために身につける技術。)次に挑戦したのは芸能界。いきなり 007 でデビュー。続いてロッキー。スタローン監督との接点です。何をやらせてもすぐ上達するようです。そう言えばスタローン、シュヴァルツエンエッガーもかなり頭のいい人たち。何か共通するものがあるのでしょうね。
スポーツと語学は万能で他の種目、言語もこなしますが、もっとおもしろいのは音楽。全盛期のティナ・ターナーのような姿の美女4人と一緒に踊りながら歌を歌い、途中からはドラムを叩きます。歌は物凄く上手いというほどではないのですが、リズム感は抜群で、踊る時のポーズはきっちりリズムと合っています。ステップは非常に優雅です。ジャスティン・ティンバーレークよりは上手いです。ショーでは空手の真似もします。アクション・スターなのでポーズをやっているだけのように見えますが、実はきちんと段を取っており、日本にも来ています。そう言えば歌はブルース・ウィリスもソウルをこなします。何か共通するものがあるのでしょうね。
★ 俳優のエクスペンダブルズ
セガールにも出演の声がかかっていますが、過去のいきさつから断わられています。そう言えばセガールもソウルを歌えます。何か共通するものがあるのでしょうね。その他にカート・ラッセルが断わっています。俳優の世界でスタローンが主なアクション・スターに声をかけ、それぞれの事情で受けたり断わったりしている姿を想像すると、CIA 男から依頼を受けている傭兵バーニーとあまり違わないなあと思います。台詞にも出て来ますしタイトルにもなっていますが、「自分たちは消耗品だ」とぼやくくだりがあります。
最初スターの顔ぶれと予告編を見た時は、この年になっても老骨に鞭打ってアクションをやらされていると感じました。ところが良く見てみると監督をやっているのがその張本人。大ヒットしないだろうと思われる平凡な脚本に当代一の1人で主演が張れる人がぞろぞろ。中にはオスカーにノミネートされた人までいます。上にも触れたようにギャラはどうやって折り合いをつけたんだろうとついさもしい事を考えてしまいますが、良く見ていると、3流映画の形を借りてあちらこちらに愚痴や皮肉が埋め込まれています。シュヴァルツェンエッガーもほんのちょっとしか顔を出しませんが、「ありゃ」と思うような台詞がそのシーンの共演者の口から飛び出し爆笑。
シュヴァルツェンエッガーはこのシーンでは顔で勝負。暫くデスク・ワークが続いたせいか、彼1人皮膚が薄く見え、皺が目立ち、年を取ったなあと感じさせます。他の老人たちは見栄を張ればそれなりに活動的に見えます。「この年になってもまだ引っ張り出される」といううら悲しいニュアンスが良く出ています。・・・ところが映画を見終わってみると、そういう風にする事が目的の作品で、本人たちは恐らく「カット!」の声がかかったら大笑いして楽しんでいるいるだろうと思います。
エクスペンダブルズではアクション映画のベテランが1940年代、50年代生まれ、若手が60年代生まれとステイサム(72年生まれ)。大物が次の世代にバトンを渡す形を取っています。しかし次の世代もアクション・スターとしてはそろそろ潮時で、性格俳優か気の利いたコメディアンに転向した方がいいのかという年齢に差し掛かっています。ステイサムやジェット・リーの次の世代がどうなるかが次の課題です。
スタローンはやりたかったのかやらされたのか分かりませんがランボーは4、ロッキーはスターウォーズと並び6までやっています。自分が監督をやっているので無理やり連れ出されたわけではないと思いますが。
自転車競技、モーター・レーシングなどの世界を見ていると、一旦引退した人がまた呼び出されて復帰しています。アイス・スケートやテニスでも、世界選手権などアマチュア(!?)の世界から引退し、暫くプロとしてアイスショーをしていた人が、どういうわけかオリンピック直前になったらまたアマチュアになっていたり、呼び出されてしまう人が時々います。本人が喜んでいるのかいないのかは微妙。
興行的に大成功したので、恐らくエクスペンダブルズは続編が出るでしょう。多分ラジー賞不要続編部門にノミネートされるでしょう。しかし監督、脚本家としてのスタローンは絶好調。
後記: 現在謹慎中のシュヴァルツエンエッガーは恐らく次は出ないでしょう。まだ噂の段階ですが、監督はスタローン続投で、今回出たスタローン、ルーク、ウィリス、ルントグレン、李、ステイサムに加え、ファン・ダムが企画に入っていて、役名も決まっています。彼は自分を笑い飛ばすこともできる人で、その男ヴァン・ダムは優秀作なので、期待してしまいます。
出演者中国語参考氏名: 席維斯・史特龍、阿諾・施瓦辛格、布斯・韋利士、傑森・史塔森、米基・洛克、杜夫・郎格、尚・克勞コ・范・達美
音読みから漢字を探すのは大変そう。日本にはひらがな、かたかながあって便利です。ちなみに中国語のタイトルは《血を浴びる任務》です。何だか主題から外れたようですが。
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