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RED/レッド /
Red /
R.E.D. - Älter. Härter. Besser. /
Red - Aposentados e Perigosos /
Red - Perigosos

Robert Schwentke

2010 USA 111Min. 劇映画

出演者

Bruce Willis
(Frank Moses - 元 CIA)

Mary-Louise Parker
(Sarah Ross - カンサス・シティーの公務員)

John Malkovich
(Marvin Boggs - 元 CIA)

Helen Mirren
(Victoria - 元 MI6)

Karl Urban
(William Cooper - CIA)

Michelle Nolden
(Michelle Cooper - ウィリアムの妻)

Jake Goodman
(ウィリアムの息子)

Tess Goodman
(ウィリアムの娘)

Richard Dreyfuss
(Alexander Dunning - 武器商人)

Brian Cox
(Ivan Simanov - ロシア大使館の男)

Morgan Freeman
(Joe Matheson - 元 CIA)

Rebecca Pidgeon
(Cynthia Wilkes - フランク他を殺そうとするCIA)

Jaqueline Fleming
(Marna - 養老院の看護師)

Lawrence Turner
(ジョーを殺しに来るヒットマン)

Emily Kuroda
(Mrs. Chan - 殺されたジャーナリストの母親)

Ernest Borgnine
(Henry - CIAの秘密書庫の司書)

Jefferson Brown
(Fred)

Julian McMahon
(Robert Stanton - 副大統領)

Audrey Wasilewski
(駅でマービンに脅される女性)

James Remar
(Gabriel Singer - 飛行機乗り)

見た時期:2011年3月

原作はDCコミックスで、作者はウォーレン・エリス、カリー・ハムナー。

★ ドイツ人監督

監督はドイツ人で、ジョディー・フォースター主演のフライトプランを作った人。長編映画では最初から恵まれた人で、ドイツでもハリウッドでもスターを使っています。人脈的にも恵まれているようで、ディズニー、トニー・スコット、フィンチャーなどの名前が見え隠れします。

フライトプランではドイツのシーンが出て来ます。RED/レッドにはドイツに関わりのあるブルース・ウィリスが出て来ます。そうやって上手くドイツと結びつけながら仕事を進めているようです。

ただ、上手く使えばお腹の皮がよじれるほどおもしろくなれる俳優ウィリスの使い方にやや不完全燃焼が見られます。ウィリスはまずスター、次に俳優と考えられている人ですが、俳優としてはいくらか過小評価を受けているように思います。あまり自分の方から俳優としての面を売り込んでいないようなのですが、私には性格俳優としてもショーン・ペンの上を行く実力があるように思えます。その反面コメディアンとしても高い能力が見え隠れします。上手に使えば、軽くロビン・ウィリアムズや、ダン・アクロイドぐらいは抜けるでしょう。

★ 音楽はウィリス好み

モータウン歌手のウィリスが好みそうなソウルの曲が何度もかかります。有名なソウルを聞き慣れている私としてはどう聞いても彼の歌が上手いとは思えないのですが、ヒット・チャートでは上の方に上っていますし、あの黒人中心のモータウンで受け入れられているのはかなりの実力。私の知っている CD ではザ・テンプテーションズと共演しています。RED/レッドにはその彼にぴったり合いそうなギンギラギンのソウルが聞けます。

★ 豪華キャスト

左のリストをご覧になっても分かりますが、かなりの数有名人を集めてあります。皆かなり年を取っていて、年寄りギャグが出て来ます。中心人物で若いのはサラ役のマリー・ルイズ・パーカーと、クーパー役のカール・アーバンぐらい。

老人組はオスカー受賞者、大スター、大ベテランのパレードです。老人組はかつての秘密諜報員という役どころで、この企画はちょっと前に見たエクスペンダブルズと似ていないこともありません。あちらは肉体労働の傭兵、こちらは言わば国家公務員との違いはありますが、中心は高年齢ネタです。俳優と言う仕事はスパイとは違いますが、国家の看板を背負っている人もおり、芸能、芸術だけで動かない面もあります。そんな事を考えながらこの顔ぶれを見ると面白いです。

★ ストーリー

他愛ないと言えば他愛ないコメディー。なぜこんなにたくさんスターが集まったのかは不明。

事の起こりはオハイオで暮らしている引退したエミー賞3回ノミネート、うち受賞2回、ゴールデン・グローブ4回ノミネート、うち受賞1回の元 CIA の分析官のフランク・モーゼス。後で分かりますが、この引退した分析官という身分は偽装で、実はバリバリの実力あるエージェント。引退したと言う点だけは本当で、毎月年金の小切手を受け取っています。

彼に毎月小切手を送ることを委託されている部門に勤めているのがサラ・ロス。演じるはエミー賞6回ノミネート、うち1回受賞、ゴールデン・グローブ5回ノミネート、うち2回受賞のマリー・ルイーズ・パーカー。彼女は電話サービスの女性で、小切手が届いていなかったりすると苦情を受け付ける課です。フランクは最近頻繁に苦情を言っているようなのですが、小切手はちゃんと届いています。引退してする事がないので、話し相手が欲しいというのがフランクの本音。

現役時代と同じように勘のいいフランクは、ある日自分が狙われていると感じます。自宅に3人のS.W.A.T. 風の男たちが侵入し、襲いかかります。外にも待ち構えている男たちがいます。フランクは助かり、相手側には相当の被害が出、フランクの家は穴だらけ。

フランクは電話が盗聴されていたらサラも危ないと思い、カンサスに住んでいるサラを訪ねます。そしてフランクの説明を信じないサラを有無を言わせず拉致してしまいます。これで彼女が賊と同じ人たちに殺されるのを防げるわけですが、彼女がそんな話を信じるわけはありません。しかし状況はフランクの心配通りに動いて行きます。確かにフランクとサラの跡を追跡している者がいます。

フランクを襲うよう命令を出したのは CIA のシンシア・ウィルクスで、彼女の命令に従って実際に動くのはウィリアム・クーパーというイケメン男。普段は人を殺して自殺に見せかけたりする工作を担当しています。

拉致をしたサラには抵抗される上、2人には討手がかかっているので、ここからはロード・ムービーになります。まず最初にフランクが訪れたのはジョー・マシス。オハイオ → カンサス → ニュー・オルリンズと動きます。ジョーは今年80歳になる末期肝臓癌の患者で、引退し、退屈し切っている元 CIA。オスカーにノミネート5回、うち受賞1回、ゴールデン・グローブにノミネート5回、うち受賞1回、その他数限りない賞にノミネートされている、フランクに取っては師匠のような人物です。彼に自宅に押し入った賊の指を何本か届け、身元確認を頼みます。

浮かんで来たのはステファニー・チャンというニューヨーク・タイムズのジャーナリスト。最近殺された女性で、彼女を襲った男が、フランクを襲った男の1人と同じ。話を聞いたフランクは拉致したサラを連れて一路ニューヨークへ。一方ジョーの入っている養老院には CIA からヒットマンが送り込まれて来ます。

強引なフランクではありますが、サラはいくらか協力的になり、暴力でステファニーの母親を尋問しようとするフランクを止め、サラが優しく質問をして重要な手が係りを得ます。

ステファニーが死ぬ直前に母親宛てに送った絵葉書に図書館の本の置き場所が記してあり、出かけて行くとその本に紙切れが挟んであります。見ると10人ほどの名前のリスト。大部分が既に死んでいます。そしてフランクとアカデミー賞ノミネート2回、エミー賞ノミネート3回、うち1回受賞、ゴールデン・グローブノミネート3回の変人マービンの名前もあります。

2人はマービンを訪ね、徐々に分かって来たのはグアテマラの任務に関わった人たちがリストに載っていること。当時誰かが発狂してある村を完全破壊してしまい、フランクたちはその後片付けともみ消しの任務を負っていました。チャンはその事件をかぎつけ取材中だった様子。背後にいる者は、チャンだけでなく、この事件を知っている者を全部消してしまうのだろうという話が浮かんで来ます。リスト中でまだ生きているガブリエル・シンガーという飛行機乗りを訪ねて行くと、そこでもすぐトラブル。

シンガーがフランクに、チャンから連絡があり、グアテマラの事を聞かれたという話をしている最中に、ヘリコプターが近づいて来ます。やや被害妄想の気のあるオタクのマービンはそのヘリコプターの番号が、フランクたちがマービンを訪ねて来た時に近くに来ていたヘリコプターと同じ番号だと気づきます。その瞬間弾が飛んで来てシンガーは昇天。かろうじて生き残った3人はこの問題は CIA の極秘書類で確認しなければ埒があかないと思い始めます。

次に訪ねたのがエミー賞2回ノミネート、うち受賞1回、ゴールデン・グローブ1回ノミネートのロシア人イヴァン。かつての同業者です。イヴァンもジョーのように年を取り、長い間誰も殺しておらず退屈しているところ。なので協力に同意。偽の身分証明書を使って CIA 本部の資料室に潜り込んだ2人。アカデミー賞ノミネート1回で受賞、エミー賞3回ノミネート、ゴールデン・グローブ2回ノミネート、うち1回受賞の資料室の管理人はフランクを見てびっくり。グアテマラの資料を渡します。ドンパチになり命からがら本部から抜け出すとそこにいたのは死んだかと思われたジョー。

次に訪ねたのは優雅な邸宅に住む アカデミー賞ノミネート4回、受賞1回、エミー賞ノミネート10回、受賞4回、ゴールデン・グローブ・ノミネート10回、うち受賞2回ののビクトリア。引退生活を満喫しているビクトリアは、時々アルバイトをしているとか。恐らくはそのたびに世界の人口が1人減っているのでしょう。

CIA の書類とこれまでの経過を演繹的に考えると、誰かが CIA を使ってフランクたちを消しにかかっている、つまり CIA に命令を出せる立場の人である、そしてグアテマラの事件に関わっている人物という話になって来ます。リストに載っていてまだ生きているもう1人の人物がアカデミー賞ノミネート2回、うち受賞1回、ゴールデン・グローブノミネート4回、うち受賞1回のアレクサンダー・ダニングという武器商人。訪ねようということになります。

ジョーが武器を買いたがっている外国の軍人になりすまし、兵器の商談のふりをしてダニングに近づきます。そこで聞き出したのはゴールデン・グローブ・ノミネート1回の副大統領が黒幕だということ。グアテマラで殺戮に走った1人が彼で、間もなく大統領候補になろうとする今、当時の事を知っている人は全員消えてもらいたいというのが彼の意向。

話は分かったものの周囲をエージェントに囲まれていたため脱出が難しく、ジョーがこの場で犠牲になってフランク他を助けます。しかしサラがエージェントの側に取られてしまいます。そこでフランクはクーパーとの間で取引を試みます。クーパーの自宅に近づきサラに何かあったら、お前の家族も無事じゃ済まないぞと脅してみます。フランクたちの目的はサラを無事に取り返すこと、クーパーに CIA が個人的な目的で使われていることを知らせること、そしてグアテマラの問題の真実を伝えることです。クーパーに書類は渡ったもののサラは帰って来ない・・・。

ショーダウンは関係者が全員集まり、サラと交換をするシーン。事が動かないので年金生活者一味は副大統領が大統領に立候補するためのパーティーに乗り込み、副大統領を拉致してしまいます。ようやく人質交換にこぎつけた一味。ここで副大統領側の計算が狂い、クーパーが思ったように動いてくれなかったため、事件は観客が満足する形で決着。

★ エクスペンダブルズの方が多少まし

RED/レッドを同じように年寄りのベテラン俳優を集めたエクスペンダブルズと比べるとエクスペンダブルズに軍配が上がります。

どちらも CIA をおちょくった作品、俳優のデフレをはっきり感じさせるキャスティングで、RED/レッドの見せ場は年を取って窓際族になってしまった元大物スパイの様子。仕事が仕事だけに、十分な年金を貰っているはずで、英国は MI6 のビクトリアは優雅な生活をしています。主人公のフランクは中流階級の人の住みそうな住宅に1人で住み、健康に気を使った規則正しい生活を送っていましたが小市民的な生活に実は辟易しています。彼の師匠に当たる最年長のジョーは養老院に入り、若い看護婦をからかう毎日。テレビを見るだけの日々では退屈過ぎるようです。フランクのライバルで技術オタクのマーヴィンは今ではすっかり被害妄想に執りつかれ、念には念を入れた防衛体制の中で暮らしています。

さらに笑えるのは冷戦時代にロミオとジュリエット状態になってしまったイヴァンとビクトリア。2人とも筋金入りのプロなので祖国を裏切るわけには行かず、しかし狙撃や銃撃戦も潜り抜けることのできる実力者。で、命をかけて大博打に挑み、そのため2人ともめでたく老人になるまで生きています。しかし老人となった今イヴァンも時間を持て余しており、ビクトリアは退屈しのぎにこっそり殺しのアルバイトをしている様子。

もう1人引退はしていませんが、資料室の管理人という諜報関係者の中では1番アクションの無い職に就いている老人ヘンリー。彼のおかげで老人一味はグアテマラの任務とちょうど今起きている事件の関係を明確に結びつけることができます。

エクスペンダブルズのメイン・テーマは「俺たちは消耗品だ、こんな年になってもまだ引っ張り出されてこき使われる」であり、RED/レッドは「まだよぼよぼになってもおらず、頭もしっかりしているのに年金生活で退屈だ」です。同じデフレでもかなり違います。どちらの方が本人に取っては辛いのか、素人には分かりません。エクスペンダブルズのメンバーは皆体を使う仕事だけをしているように見えますが、実はかなり頭のいい人たちの集団。実際に映画監督や政治家として活躍した人もいます。スポーツで何かの代表に選ばれた人もいます。なので私はエクスペンダブルズの方に軍配を上げました。

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