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S.W.A.T. /
S.W.A.T. - Die Spezialeinheit

Clark Johnson

2003 USA 117 Min. 劇映画

出演者

Samuel L. Jackson
(Dan Harrelson - ホンドと呼ばれる巡査部長)

Colin Farrell
(Jim Street - 武器の掃除と靴磨き担当の元S.W.A.T.のメンバー)

Michelle Rodriguez
(Chris Sanchez - シングル・マザーの警官、何百回もS.W.A.T.に応募しているが、まだ採用されていない)

Ladies Love Cool James
(David Kay)

Josh Charles
(T.J. McCabe)

Jeremy Renner
(Brian Gamble - 前はジムと組んでS.W.A.T.メンバーだったが現在は首になっている)

Brian Van Holt
(Michael Boxer)

Olivier Martinez
(Alex Montel - フランス人の悪党、世界十ヶ国以上から麻薬取引で手配されている)

Larry Poindexter
(Thomas Fuller - 策略家の警部、ホンドとはそりが合わない)

Steve Forrest
(SWATのトラックの運転手 - TV版ではホンド)
Rod Perry
(デビッドの父 - TV版ではデビッド)
Clark Johnson
(デビッドのパートナー)

見た時期:2003年12月

最近たて続けに3回券が当たり、それが順序良く並んだので運が良かったと喜んでいます。皆さんもこの3本見るようでしたら、順番はこういう風にした方がいいです。

  • マスター・アンド・コマンダー
  • 微笑みに出逢う街角
  • S.W.A.T.
  • 3本ともいい作品なのですが、S.W.A.T. はパリっとしたアクション。マスター・アンド・コマンダー もアクションに近いシーンがありますが、海が荒れるシーンの方が多く、人間の方はわりと地味な描写です。微笑みに出逢う街角は3作の中で1番地味、アクションは全くありません。3人の女性の人間関係のみ。しかし狼煙を上げ、鐘や太鼓で宣伝しためぐりあう時間たちよりずっとメリハリのある、そして見終わって下向きの気分にならない佳作。ですからどの作品も誉めたいのですが、順番が狂うといい作品が色褪せて見えたりするかも知れません。で、この順番をお薦めします。

    S.W.A.T. はテレビ・シリーズ特別狙撃隊SWAT の映画版で、私もチラッと見たような記憶があります。当時はまだ S.W.A.T. (Special Weapons And Tactics) という存在自体が珍しく、そういう興味で見た人も多かったと思います。映画化で使われている音楽にも聞き覚えがあるので、私もある期間毎週見ていたかも知れません。それにしては主人公の名前の1つも思い出せず、チーム・ドラマなので注意が1人に集中しなかったのか、その辺も思い出せません。映画の役名はテレビ時代とほとんど変わらず、映画の最後に生き残る人はテレビではレギュラーでした。ということは続編ができるはずですが、それは将来テレビ送りになるようです。ドイツの報道によるとこの作品をテレビでリメイク続行という企画があるのだそうです。

    上映時間は長く、2時間弱ありますが、前半は5人のメンバーがどういう風に集められて来るか、どういう訓練を受けるか、普段の仕事はどういうものかというストーリーです。いわば導入部ですがそこに半分近く時間を使っています。テレビ化が予定されているのでしたら、土台をきっちりしておくというのは無駄ではないでしょう。

    S.W.A.T. という警察の特殊部隊は、テレビ化された70年代中頃には珍しかったですが、現代ではもうあたりまえという設定になっています。しかし現在ある S.W.A.T. の中から最新鋭のエリート集団を養成するということで、親分ホンドにベテランのサミュエル・L・ジャクソンがぴったり決まっています。

    その下に5人の若手が集められて来ます。時代が変わったのでしょうか、強気の女性も入っています。これがボクシング映画で名を挙げたミシェール・ロドリゲス。すでにトレーニングのできた人なので、いいキャスティングですが、演技はまだ日が浅く今一。しかしアクション映画には今後も欠かせない人です。笑顔がきれいです。

    次に本来の主演のコリン・ファレル。前にも書きましたが、最近まで評判の割にどこがいいのか分からなかった人です。ところがフォーン・ブースを見てなるほどと納得した次第。S.W.A.T. では代わりがいくらでもみつかるような役で、ミニミニ大作戦のマーク・ウォールバーグに役が回る可能性もあったのだそうです。彼にやらせるとファレルとはまた一味違ったストリートになるでしょうが、確かにウォールバーグがやってもがんばり屋さんの役ですから大丈夫でしょう。フォーン・ブースの無責任男と違い、S.W.A.T.で はその反対の役です。ここでの彼はスピードに出たキアヌ・リーヴスを思わせるフレッシュな部分と、窮地に追い込まれた男の落胆した面、疑心暗鬼に陥りそうな状況などを上手に混ぜ合わせています。ウォールバーグもブギーナイツで複雑な役をこなしていますから、どちらが良かったか言い難いですが、私個人の趣味ではミニミニ大作戦にウォールバーグ、S.W.A.T. にファレルと落ち着いて良かったように思います。というのはファレルにミニミニ大作戦は合わないような気がするからです。

    さて、これに続くメンバーにはレイディーズ・ラブ・クール・ジェイムズという恐ろしく長い名前の男性が登場します。日本では彼は何で有名なのでしょうか。ドイツでは IKEA のCMで有名です。無論ラジオに彼の音楽も流れますが(ああ、そうそう、ウォールバーグと同じく、彼は本職は著名な音楽家で、キャリアは長いです)、CMでは西部の白人のような出で立ちで納屋に現われ、クールにギターを抱えながら弾き語りをやります。周囲には白人の男女がたくさんいてジルバを踊っています。ここに黒人の彼が登場するところが意外で、最後に 'Mal 'was anders. (一味違う)と文字が出ます。これは映画館で評判のいいCMで、その後ベルリンで彼の曲が頻繁に流れるようになったような気がします。気のせいかも知れませんが。映画出演はお飾りではなく、名のある作品にたくさん顔を出しています。S.W.A.T. でも歌うシーンは無く、台詞だけで勝負。それも音楽屋さんの役ではありません。主演の1人。「ウィル・スミスに続け!」ですが、映画出演はレイディーズ・ラブ・クール・ジェイムズの方が5年ほど長い。映画で演じる警官暦は10年以上。

    さて他にマッケイブを演じるジョシュ・チャールズとボクサーを演じるブライアン・ファン・ホルト。これで5人です。

    ジム・ストリートは S.W.A.T. の正式メンバーだったのですが、コンビを組んでいたブライアン・ギャンブルと2人懲戒免職になる寸前。ギャンブルは意地を張ったため首。ストリートは恥を忍んで署内の靴磨きの仕事につきます。それが元でガールフレンドに嫌われ捨てられてしまいます。ボクサーはストリートのガールフレンドの兄。彼女はストリートが S.W.A.T. からはずされ靴磨きになったのを機に去って行きます。友達の間で S.W.A.T. のガールフレンドだと言うとかっこいいけれど、靴磨きの恋人ではカッコつかないのでしょう。ストリートは仕事中もボクサーには睨まれっぱなし。人生は楽ではありません。

    署内には以前も揉め事があり、ホンドは警部とそりが合わず、よそで働いていました。ところが署内で最新鋭の強力メンバーを募り、エリート S.W.A.T. 部隊を作ることになり、ホンドは戻って来ます。彼には若手を選ぶ権利が与えられており、上の5人を抜擢。皆喜んで訓練をします。

    そうするうちに(またかの)フランス人悪党が登場。どうやらオリビエ・マルティネスはフランスを代表して1人でアメリカの憎しみを背負って歩く運命と悟ったようで、ここでも嫌な奴。皆さん、とことん毛嫌いして下さい。アメリカ人が国をあげてフランス人を嫌っている時に、「僕が嫌なフランス人の役をやる」と名乗りを上げれば、彼の元にハリウッド中の仕事が集中するという仕掛けです。なかなか頭がいい。

    彼は殺しても死なないような嫌な奴。自分の叔父を殺して平気でシマを奪います。ところがつまらない事で御用。捕まえてみたら世界中から手配されていた大悪党と分かり、留置所や刑務所への護送が大変。このガラガラ蛇はつかまっても平気な顔で、部下が助けに来るのをちゃんと知っています。新編成 S.W.A.T. が活躍してしまい、助かりそこなうと、報道カメラに向かって大胆にも「俺をここから出してくれた奴には大金を払う」とのたまいます。これが、その後仕事を棒に振っても一生食べて行ける、使い切れないような額。ですからミニミニ大作戦のようなプロのグループが山分けしてもかなりの取り分です。

    それでロサンジェルスは一瞬にしてロドニー・キング事件の真っ最中のような状況になってしまいます。フランス男は冷血なだけでなく冷静で、部下も頭が良く、しっかり計画を立てて責めて来ます。どうせ悪役をやるのならアホ男は演じないというマルティネスの根性、意気込みが感じられます。で、S.W.A.T. もバンバン撃ちまくるだけではだめで、頭の良さが要求されます。

    アメリカ人のアクション俳優は頭空っぽかと思うと、そうではありません。この5人は融通もききますし、判断力に富み、仲間の配置もしっかり頭に入れるような人たち。(アメリカ人ということになっているけれど、本当はアイルランド人の)ジムはそれだけでなく想像力に富み、独創的な事も考える人物。ホンドはそういう点を大いに認め、彼の作戦にも耳を傾けます。肉体的に大きい男と小柄な女が適度に混ざっているという利点もあります。前半で皆射撃の腕だけでなく体力、知力、落ち着き、素早さなど多くの面が紹介されているので、観客は安心して見ていられます。

    さて、フランス人の一味はミニミニ大作戦に負けるとも劣らぬ陽動作戦でボス奪回に来ます。地下鉄も使います。さらに飛行機も登場。こうも善悪がはっきりしていると、こちらもその明確さにシャッポを脱がざると得ません。マルティネスは悪いイメージに悩むことはせず、悪に徹するという鮮やかな割り切りよう。

    さて結末ですが、この後テレビに引き継がれるので主要メンバーを殺すわけには行きません。それで重症止まり。軽傷も出ます。しかしまあ何とか悪に手を貸した人間を除いては生き残り、問題は解決。めでたし、めでたし。

    アクション・シーンはなかなかの迫力です。これ、最近引退するまでチャールトン・ヘストンが代表していた産業のコマーシャル映画に使えそうです。訓練ではとにかくバンバン撃ちまくります。あんな武器が都会生活に持ち込まれたのではかないません。本当に恐くなります。超長距離でも当たる超望遠レンズつきのライフルから、恐ろしい数の弾丸が恐ろしく短い時間に飛び出す銃。あんな物浴びたら防弾チョッキなんか着ていても役に立たないなあと思います。最近は防弾チョッキにも不良品があるようで、「部下が怪我をした」とアメリカの警察が今メーカーに文句をつけているところです(マジ)。S.W.A.T. はいつもヘルメットかぶっているものだと思っていたら、意外とかぶらないことが多いのにも驚きました。首とか頭を狙われると致命的だと思うのですが。しかし何よりも感心したのがコリン・ファレルの足の速さ。良く訓練したんでしょう。ご苦労様でした。

    70年代のテレビ・シリーズから目立たないように呼べる俳優を呼んで来ています。ホンドを演じたスティーブ・フォレストが S.W.A.T. のトラックの運転手。 デビッドを演じたロッド・ペリーが今回デビッドを演じたレイディース・ラブ・クール・ジェイムズの親父さんの役で顔を出しています。ジムを演じた二枚目俳優は残念ながら昨年癌で亡くなっています。私はこういう粋な計らいが好きです。ピンク・パンサーのリメイクにジャッキー・チャンが加藤の役で出るのなら、バート・クウォークを親父さんの役で登場させてもらいたいものです。

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