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マージン・コール /
Margin Call /
Der große Crash /
El precio de la codicia /
O Dia Antes do Fim /
Margin Call - O Dia Antes do Fim

J.C. Chandor

2011 107 Min. 劇映画

出演者

Stanley Tucci
(Eric Dale - 首になったリスク・マネージャー)

Zachary Quinto
(Peter Sullivan - ジュニア・トレーダー)

Penn Badgley
(Seth Bregman - ジュニア・トレーダー)

Paul Bettany
(Will Emerson - シニア・トレーダー)

Kevin Spacey
(Sam Rogers - トレーダー主任)

Ashley Williams
(Heather Burke - 人事)

Demi Moore
(Sarah Robertson - リスク・マネージャー)

Simon Baker
(Jared Cohen - 重役)

Jeremy Irons
(John Tuld - 最高経営責任者)

見た時期:2012年3月

ストーリーの説明あり

ストーリを紹介しますので見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

2011年ベルリン映画祭コンペ参加

★ PC の机で起きる事件

日本の円や株が買い漁られるという意味では日本も金融界では重要な役目を担っているのになぜか日本では公開されないそうです。日本人が貯めた郵便貯金も狙われているので、こういう作品に目を通しておくのは無駄では無いと思うのですが。

マージン・コールはフィクションでリーマン・ブラザーズがモデルに使われています。監督は長編は初めてで、力量は未知数。脚本も自分で書いており監督の父親が30年間メリル・リンチで働いていたそうです。もしかすると冒頭首になる勤続19年のスタンリー・リッチは監督の父親がモデルなのかも知れません。

この作品はあまり盛り上がる所が無く、金融界に関心の無い方には退屈かも知れません。話を盛り上げるためには、ドキュメンタリーのインサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実キラー・エリートなどを見るといいかも知れません。

癖のある名優を集めて作られた作品ですが、話がほとんど全て会社の勤務時間外、コンピューターの置いてあるデスクと会議室だけで進むため、監督の力量不足が目に付きます。ベテランの性格俳優数人に加え、将来大きく育ちそうな若手が2人。そのちょっと年上ですでに中堅性格俳優に育ちつつあるベタニー、この作品の後離婚騒動になってしまったデミ・ムーアも以前と違う種類の作品に出始めるきっかけを作っています。今後容姿で売る作品以外にこういう作品に顔を出せばまだこの先長くやって行けるのではと思います。彼女が元夫と揉めている間、ブルース・ウィリスが子供の面倒は見ているようなので、ここで心機一転、新しいジャンルに進出してもらいたいものです。

★ 退屈な作品ではあるけれど

話の展開か演出にもう少し工夫が欲しいところですが、冒頭スタンリー・トゥツッィー演じるエリックが解雇されるところから始まります。少ない人数でガンガン稼ごうということで、8割近くが首になります。

セキュリティーの問題があるので、外国では首になる当日に言い渡されることが多く、エリックも不意打ちを食らいます。ガードマンが張り付き、会社の物を盗まないように見張っています。彼と親しくしていた後輩ピーターが同情して声を掛けますが、こういう会社の事を知っているエリックは大して文句も言わず去ろうとします。「そのうち連絡するよ」とピーターが言っても、「外交辞令に過ぎない、どうせ電話なんかして来ないさ」と覚悟もできています。

やり残した事があるらしく、エリックは社外に出る前にシニア・トレーダーのウィルに何かを伝えようとします。ウィルはいくらか察しがついているようですが、ややこしい事に巻き込まれたくないと思い、話に取り合いません。エレベーターに乗ったエリックは最後に礼を言いに来たピーターに USB スティックを手渡し、注意深く扱うようにと言い残して会社を去ります。

大勢が首を切られた中、残ることができたピーター、セス、ウィルは取り敢えず祝杯をあげようとバーに行くことにしますが、ピーターはエリックに渡されたスティックのことが気にかかり会社に残ります。ファイルを開けてみて唖然。

会社は自社の資産をはるかに越えるジャンク債、サブプライム商品を抱えており、非常に危険な状況にありました。金融の話を長々として皆さんを退屈させては行けませんが、ざっと言うと実態(値段に見合った資産)の無いまま債権をバンバン発行しているため、どこかで換金が始まると破綻する、ネズミ講的な運用をしていたのです。翌朝にも破綻しそうな状態のため、ピーターが飲みに行ったセスとウィルを呼び戻し、モニターに映った数字を見せます。

あまりのことにダブル・チェックが必要だと思ったウィルは重役に連絡を取ります。飛んで来たのがリスク・マネージメントから最高責任者まで数人。上も事の重大さを理解、さらにマネージャーが呼び寄せられます。同時に首にしたエリックから事情を聞こうと連絡を取ろうとします。しかしエリックの携帯をオフにしてしまったのは会社の方。連絡がつきません。

私はエリックが自殺でもするのではないかとハラハラしましたが、彼は失意の中外を散歩していただけ。エリックは会社でこの問題を少し前からチェックしていて、バブルの膨らみ方が非常に危険な領域に達していることを理解していました。会社にその話をしても取り合ってもらえず、挙句にリストラで首にされてしまいました。ところが今は会社がエリックのアドバイスを必要とする状況。このまま何もせずに夜が明けると1929年以上にもの凄まじい暴落が始まります。

この後は会議に次ぐ会議。エリックは高給で呼び返されますが、応じない場合は・・・という脅しも行間に含まれています。断わったらキラー・エリートに出て来るような男たちがエリックを事故か病気のように片付けるのでしょうか。ここではそこまで深くは読まないことにしましょう。

★ あと一息の脚本

この作品の趣旨は、あの悪名高いヘッジ・ファンドの男たちも一人一人は悩みも抱えた普通の人間なのだと言いたかったかのような印象を与えます。となるとガス抜き映画。しかしそうでないのかも知れません。キャラクターに変化を持たせており、名優を集めてあるので、あと一工夫があれば映画としてはかなりいい作品になったと思います。

ぽしゃった作品ですが、それでも光っていたのはエリックを演じたスタンリー・トゥツッィー。彼にはどうしようもない脚本をもらってしまい、中堅と若手の出来のいい共演俳優とつるんでとても愉快な SF に仕上げた前科があります。

若くて前途洋々だったはずの若手、ちょっと前だったらベン・アフレックが演じそうな役ピーターを演じたのがクイント。暫く会社にいて、余計な事には首を突っ込まない、自分の事は自分で気をつける方針でシニカルになりつつあるウィルを演じるのがベタニー。仕事のストレスとフラストレーションを怒りで表わすジャレッド役にサイモン・ベーカー。テレビ・シリーズでおとぼけのザ・メンタリストを演じている人です。仕事のストレスとフラストレーションをうまく処理できず、離婚してしまい、人間的な感情を表わせるのは犬に対してだけ、ところがその犬が死んでしまうという惨めな男サムを演じるのがケビン・スペーシー。そして裏も表も知り尽くし、ストレスとフラストレーションを生き抜いた、人間をやめたような男ジョンを演じるのがジェレミー・アイアンズ。薄い方から濃い方まで順番に色見本を見せられているように、人間性を持った若手から、悪魔に近づいた最高責任者まで揃っています。俳優は皆やれと言われればこのニュアンスをしっかり演じることができる人たち。脚本があと数歩というところで止まっています。

この作品はリメイクする価値があるでしょう。

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