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月に囚われた男 / Moon / Moon - O Outro Lado da Lua / Lunar / En la luna / Luna / Moon - La face cachée

Duncan Jones

2009 UK 97 Min. 劇映画

出演者

Kevin Spacey (ロボット)

Sam Rockwell
(Sam Bel, Sam Bel, Sam Bel - 採掘会社の社員、現在月で勤務中)

Robin Chalk
(Sam Bell)

Dominique McElligott
(Tess Bell - サムの妻)

Kaya Scodelario
(Eve Bell - サムの娘)

Rosie Shaw
(Eve Bell - サムの娘、赤ん坊時代)

Benedict Wong
(Thompson - 採掘会社の男)

Matt Berry
(Overmeyers - 採掘会社の男)

Malcolm Stewart
(技術者)

見た時期:2009年8月と2012年6月

要注意: ネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

2009年ファンタ参加作品

2009年のファンタに参加、その時見たので早速9月に原稿を書き始めました。出来のいい作品なのですぐ記事を出そうとしたのですが、何かが引っかかってその時は出しませんでした。2012年6月にもう1度見て何が引っかかっていたのかが分かりました。

ファンタで見た時は即座に「この日のハイライトだ」、「ファンタ全体のハイライトだ」などという評価をしていて、その後月に囚われた男を越える SF は見ていません。「2001年宇宙の旅ブレードランナーを越えたレベルだ」などと2009年の時点で書いていましたが、その印象は2度目見ても変わりません。2009年ファンタの所で書いた感想はそのまま生きています。

★ サッカー欧州選手権と重なった

野外の無料映画館では金曜日と土曜日の夜同じ作品を上映することが多いです。たいていは金曜日がドイツ語版、土曜日がオリジナル版。私はファンタでノーカットのオリジナル版を見ていたので、今回はドイツ語版を見ようと思っていました。ところが何とこの日、サッカー欧州選手権準々決勝、しかもドイツ:ギリシャ戦と重なってしまったのです。ウクライナをボイコットする意味で首相が試合は観戦しないと言っていたのに、会場が共同主催のポーランドはグダニスク。なので首相も出かけて行って観戦。

映画館に行く直前に試合が始まったので家のインターネットで見ようとしたのですが、アクセスが難しく、映画館に行く時間になったので諦めて出かけようとしたその時、近所から花火が上がる音が聞こえました。と言うことはドイツが先制点を入れたと言うことでしょう。ギリシャは平均成績を見るとドイツより弱い国ですが、それでも2004年初優勝をした国。油断はしない方がいいでしょう。ドイツも時には総崩れすることがありますし。後ろ髪を引かれる気持ちで映画館へ。

到着したのは上映開始の15分前。映画館の真横の飲み屋が毎回国際サッカーの時は店に大型スクリーンを出して中継を放送するので、私は開始まで飲み屋に忍び込んで試合を見ようとしました。その時は1:0で休憩中。映画が始まるかと思って映画館に戻ったのですが、まだ暫く時間がありそうでまた飲み屋へ。その直前にギリシャが 1点入れたらしく、同点になっていました。また映画が始まるだろうと思って映画館へ。毎回本編が始まる前に短編と予告が上映されるのでまた飲み屋へ。というより、また花火が上がったのでドイツが1点入れたのだろうと思い、飲み屋へ急行。入っていました。もう1度映画館に戻るとまだ始まっていないので、また飲み屋へ。もう諦めて飲み屋で最後まで見ようと決心した時にまたドイツが1点。4:1になったので、もう大した変化は無いだろうと思って映画館に戻ったら、ちょうど出演者紹介の所でした。そのまま映画を見ているとまた花火。

後で家で確かめたら、ギリシャがもう1点入れて、平和的に4対2でドイツの勝ち。

とは言うもののギリシャが1点入れた時はまるでドイツがギリシャに点を入れさせてあげるような感じで、普段のドイツなら相手に渡さないような時に何度もボールを渡していました。その後も何度かまるでドイツがギリシャに「点を取りなさいよ、いい玉送っているんだから」と催促をしているようなシーンがあり、私は映画館に戻って「あれは外交試合だ」と言いました。4対1ですとドイツは溜飲が下がっていいのですが、そうするとギリシャで公務員一揆が起きてしまうので、平和的な4対2。選手が帰国して顔が立つようにと気遣ったのか、「あの強豪ドイツから2点をもぎ取った」というジェスチャーを勧めていました。しかしこの日はどう見てもドイツは絶好調で、8対0とか10対0もあり得ました。

ちなみにギリシア人は負けて帰って来た選手をケチョンケチョン、ボコボコにするような野蛮国ではありません。欧州にはもっと柄の悪いティームもあります。ま、イエロー・カード2枚はこういう状況の中ではおとなしい方です。トルコ系ドイツ人の選手をボールと間違えて蹴っ飛ばすようなこともありましたが、ラフ・プレイと呼ぶほどひどい事はしませんでした。

試合も終わり気もそぞろだった私はこの後落ち着いて映画に集中。

★ 月世界のあらすじ

北陸地方に月世界というおいしいお菓子があります。ウォレス&グロミットを見ると、英国人は月に行けばチーズが食べ切れないほどあると信じています。日本人は月にはうさぎが住んでいて、毎日餅つきをやっている、だからつき立てのほかほかのお餅が食べられると信じています。

ところが現実の月はお菓子も無く、チーズも無く、お餅も無く、レアメタルやヘリウム3など、資源があるようなのです。そしてもしかしたらナチが住んでいるかも知れない・・・。ナチの話は別なページに譲って・・・。

年代は特定されていませんが、月に囚われた男が始まる頃までに人類は月に人を送って採掘作業をやらせるまでに発展していました。それも NASA のような国家プロジェクトではなく、私企業。民営化がどんどん進んだのでしょう。そして人件費節約のため、人間を1人送り、その他の用事はロボットにやらせています。グローバリゼーションの極みで、韓国が力を入れています。

単なる劇映画ではありますが、そのうち現実になりそうな気配がする設定です。例えば海上や外国の油田で働く労働者と似たような設定になっています。ただ場所がずっと遠い遠い月。本当にあの時アームストロング氏が月に人類初の1歩を踏み出したのかはともかく、今後再び誰かが月に行くことは十分あり得るでしょうし、月を何かしらの形で利用することも十分考えられます。

ケビン・スペーシーがロボットの声をやっているのですが、出て来るロボットは日本のレベルからするとそれほど高い性能ではないと見える代物。江戸時代からからくり人形のあった国日本から見ると、月に囚われた男の ロボットはちょっとねえ。時々日本が発表しているロボットのモデルの方が進んでいるのではと思えて来ます。ってな具合で、SF とは言え、それほど非現実的ではありません。間もなく手が届きそうな近い未来に思えます。

☆ 本題

登場人物は主人公サム。少なくとも3人登場します。声だけの出演はロボットのケビン・スペーシー。2001年宇宙の旅の HAL みたいなものです。加えてサムの家族、サムの会社の上司、サムの幻覚に登場する女性。

サムは高給を条件に3年間家族の元を離れ月で採掘作業をすることに決めます。仕事は極限まで自動化されていて、重労働は機械がやり、サムの役目は取れた物、主としてヘリウム3をロケットで地球に送るだけ。毎日居住している基地からローヴァーに乗って採掘場へ出向き、取れたヘリウム3を基地に運び、基地から地球に送るだけです。

基地内には色々な設備が整っていて、食住の他にスポーツ、ゲームもできるようになっていて、ゲームの相手とサムの健康管理はロボットがやっています。会社との仕事上の連絡はサムがやることになっていますが、現在機械の故障で直接の連絡ができなくなっており、ビデオ・レターを送っています。家族との交信もビデオ録画。技術に強いサムは「無線の機械の修理に行く」と何度か提案をしましたが、ロボットは「優先順位から言うと採掘の方が重要だ」と言っているため、まだ修理ができていません。しかしあと2週間ほどで契約の期限が来て、サムは地球へ帰還、次の作業員と交代するので、その前に直しておきたいと考えます。

帰還をとても楽しみにしているサムですが、最近幻覚を見るようになり、体調も不良。コップに湯を注いでいる時取り落としてしまい、手に火傷を負います。ロボットに手当てをしてもらい、「大丈夫か」と聞かれますが、詳しく説明しないまま帰る日を待っています。

ある日ローヴァーに乗って外で作業中に女性の幻覚を見たため運転を誤り、立ち往生。気を失う直前に宇宙服のヘルメットをつけますが、そのまま意識不明になってしまいます。

暫くして基地の手術台の上で目を覚ますサム。ロボットが「仕事中に事故に遭って頭を打ったようだ。記憶が怪しいかもしれない」と教えてくれます。観客はその時「手に火傷の跡が無い」と思い、撮影のミスかなと思ったりします。

まだ体がふらつくのでサムはロボットから交代要員が来るまで基地で休養するように言われます。少し調子が良くなっても基地内にいるように言われいらつくサムですが、ロボットが会社と直接連絡をしたのではないかと感じます。確か機械が壊れていてできないはずだったんだけれど・・・。ロボットはサムに「会社に事故について(ビデオ・レターで)連絡を入れた。壊れた採掘機の修理のために地球から人が来る、その足でサムは帰還できる」と説明します。

サムは「機械なら自分が修理できる、外に出たい」と言い出し、暫くロボットと揉めますが、結局ロボットを言い負かし、少しトリックを使って外に出ることに成功。現場に行って発見したのは、車の中で意識を失っているサム・・・。

びっくりしてサムを抱えて基地に戻るサム。姿形もそっくりなサムを医療室に運び込みロボットに世話を頼みます。やがてサムは目を覚まします。「僕サム、君もサム」という状況に戸惑う2人。1人目のサムはあまり物事にこだわらず素直な性格。2人目のサムは謎があればとことん解明するタイプで、すぐカッとします。なので2人はそりが合いません。

1人目のサムはもっぱら聞き役、2人目のサムは疑わしい事を次々言うタイプ。2人目の結論は自分たちはクローンだろうということ。すったもんだありますが、結局その説はロボットも確認。それを知った2人は問題に気づきます。

家族である妻のテスと娘のエヴァの夫であり、父親であるサムがここにすでに2人いるのです。2人のサムがご対面というシナリオは元々無かったので地球から作業員が来れば2人とも消されてしまうかもしれない・・・。そしてここに3年ごとに交代する2人のサムがいるということは、他にもクローンがいるかも知れない・・・。長い間機械の故障で地球と直接連絡ができないことになっていたという話は与太かも知れない・・・。こういった謎が徐々に解明されて行きます。

その間に1人目のサムはどんどん健康状態が悪化して行きます。1人目のサムは意を決して地球と直接連絡ができる場所まで遠出して、地球にいる妻に電話を入れてみます。すると電話口に出て来たのはうら若い女性。エヴァと名乗り、母親は少し前に死んだと言います。その上「お父さん、知らない人が電話して来たんだけれど・・・」と後ろの人に話しかけています。あと少ししたら画面に地球のサム・オリジナルが現われそうで怖くなり、月の1人目サムは電話を切ってしまいます。

ここでふと思い出したのはアーノルド・シュヴァルツェンエッガーもクローンを演じていたこと。クローンが出現すると、結婚していた人は余ってしまいます。妻は何も知らない・・・。

現実を受け入れるのを拒んでいた1人目のサムですが、この電話で決定的な事実を知り、覚悟を決めます。「自分は体が弱っており、間もなく死ぬ。2人目の君は生まれたばかりであと3年は持つから、地球に帰るのは君の方がいい」と言い出します。そして旅行がしたいという夢を語り合います。ここはドイツのノッキン・オン・ヘブンズ・ドアのラストをパクったのでしょうか。最初は死にかけの1人目のサムを地球に返すのが自分の役目だと思っていた2人目のサムですが、もう体が持たない1人目の頼みを聞いて自分が地球に帰る(行く)ことに決めます。

最初の作戦ではもう3人目のサムを起こし、そのサムを殺してローヴァーの中に残す予定でしたが、計画を変更して、新しく起こしたサムは基地に置き、死にかけのサムをローヴァーに戻し、2人目のサムが地球へ飛び立つことになります。ロボット三原則に従い、ロボットも2人の利にかなうように行動。三方丸く収まります。

収まらないのは地球の方。最後の最後に地球に帰った2人目のサムが会社のやり方を公にしたというテロップが出ます。そのサムの命も3年のみ。ここはブレード・ランナーのラストのパクリ。しかしそれでも1人目のサムと話した通りきっとメキシコかハワイへ行くのでしょう。サムの会社は株価が暴落。

月に残ったおびただしい数のサムがどうなるのか、月からヘリウム3を今後どうやって取るのかは不明のまま終わり。

★ 何で朝鮮語がと思った初回

初回見た時不思議だったのはテーマになる採掘会社のロゴにハングル文字が書いてあったこと( ちなみに sarang というのは韓国語で愛という意味だそうです)。単純に解釈すると月でヘリウム3の採掘をやっているのが朝鮮半島の会社だということになります。

普段朝鮮半島は日本に追いつけ追い越せとやっているので、近未来のいつか朝鮮半島のいずれかの国が科学技術の発展に伴い、月からエネルギー資源を地球に送る仕事を請け負ってもおかしくはありません。2012年現在考えると、空に物を飛ばしたがるのは北朝鮮、車などを開発したがるのは韓国。近未来に両国で何かしら話がついて統一朝鮮とか統一韓国という国ができているかも知れず、そうなるとロケットを月に飛ばし、ローヴァーは現代製などということも考えられ、あり得ない話と笑い飛ばすことはできません。

しかし引っかかったのは、それなら別に韓国や北朝鮮でなくてもいいじゃないかというところ。無論日本の会社との設定も可能ですし、もっと前にアメリカとか、ロシア、EU など候補に挙がりそうな国が色々あるからです。2001年宇宙の旅は当時羽振りの良かったアメリカやイギリス風。他の SF には時々ロシア人も出て来ますし、EU も宇宙開発は無関心ではありません。アジアでも中国やインドがやる気を出しています。日本はすでにハヤブサを送り出すだけではなく、帰還にも成功しています。

ファンタで見た時から頭のどこかに引っかかっていたのですが、2012年に改めて見てようやく思い当たりました。私の頭は蛍光灯。暫く時間を置かないと思い当たらない時があります。

報道されている物はザーっと何でも目に付いたものから読むのですが、2005年頃1度「おやっ」と思うニュースを見たことがあります。韓国の黄という学者が ES 細胞と呼ばれるものの研究に成功したというのが発端。人間の細胞の研究で、ノーベル賞クラスの成果を挙げたと書かれていました。ノーベル賞が日本に集中する必要は無く、たまには韓国から受賞者が出てもおかしくないので、そんなものかと思いながら読んでいました。ところが暫く経ってこの話が全くの捏造だという話に変わり、黄という学者は当局に取り調べられるわ、メディアからバッシングを受けるわで大騒ぎになりました。

難しい境遇ながら出世し、本人も大学者になる夢を持っていたそうですが、一気にマッド・サイエンティストか詐欺師かという話になってしまい私は目を白黒。牛のクローンなどには成功しており(と言われていましたがこちらも後で疑惑発生)、名声が全部空っぽと言うわけではなかったようです。ES 細胞は当時新聞でも時々報じられた流行のテーマ。人間の細胞を使ってその人本人の治療に使え、自分の細胞だとレジスタンスが生じないので注目の分野です。私が知っている範囲では重症火傷の面積が広く皮膚移植が間に合わない時に本人の細胞を培養して本人の破壊された部分の再生に使ったりします。理論的には全く同じ人間、つまり人間のクローンを作り出すことも可能だと言われていました。

黄という学者は2004年に「僕やっちゃった」と雑誌に発表。人間が作られたのではなく、その前の段階だったようですが、世界初の快挙と報じられていました。次の年にも実用化に向けてさらに進んだ研究発表が行われました。私はこのあたりの報道を普通の新聞の記事として読んでいました。

話がガラッと変わったのは2005年の暮れ。子供が授からない人たちが闇のルートで人工授精などをしていたらしく警察の手が入り、その一環で黄の名前が捜査上に浮かび、評判に傷がつき始めました。私は最初黄という学者がきちんと作り、その細胞が闇取引に流れて他の人が悪用したか、まだ許可が下りていない物を使ったのかと思っていました。この頃暫くは毎日のように報道されていました。

その話はいつの間にか研究成果が正しくて、使った場面が間違っていたという話ではなく、研究成果がでっち上げだという風に変わって行きました。ついには本人が論文をでっち上げたと認めたので私もびっくり。翌年の正月までに判定がつき、幕。クローンは可能になったが、まだ人間、猿などややこしい動物では成功していないという結論になりました。その上韓国で成功していたとされている家畜のクローン成功説にも疑問が発生。

当時この事件を報道のみで見守っていた私は、2つの考え方 - 報道が本当だというのと、嘘だという可能性 - の間で結論が出せませんでした。

韓国ともあろう国が、ちょっと他の国の同業の学者が検査すればばれるような嘘をつくのだろうかというのが、その時持った1番の疑問でした。自国の誇りになる話を大々的に鐘や太鼓で報じる国もあれば、静かに淡々と研究を進め、後で「ああ、なるほど」と感心する国もあります。しかし嘘をついて後でばれれば赤っ恥なので、そうそう無茶はしないだろうと思ったのです。韓国は当時すでに科学技術はそれなりに進んでおり、自動車産業、コンピューター産業などで世界に知られた国。私は親韓派でもなく、反韓派でもなく、いい物は使うという方針。なのでうちには韓国製の台所で使うプラスティックのボックスがたくさんあります。ドイツで売っている同種の製品の中で韓国製が1番良かったから買ったのです。逆にカレー・ルーは日本製が贔屓。味が違います。冷蔵庫はドイツ製、モニターはオランダ製といった具合に、何かを買う時はその時に売っている各国の製品を比べ、1番良さそうなのを選びます。韓国はきちんとした製品も作っている国。なので時々候補に入って来ます。そういうレベルの国なので、学者の捏造疑惑には暫く疑惑を持っていました。

その時私が可能性として考えていたのは、キリスト教徒の多い韓国で学者が人間のクローンを作ってしまったら、日本より大きな問題になりはしないかということでした。人間を作っていいのは神だけだからです。となると研究発表が早過ぎて、圧力がかかったのかなという話です。本人が捏造を認めたため、公にはそれで決着。黄は名誉を失い、その後話は聞こえなくなりました。研究は日本でも行われており、その次の年には日本の研究成果が発表され、この方面の仕事は世界のどこかでは進んでいるようです。

後になって分かったのですが、韓国人の同業の学者も黄の研究に疑問を持っていたそうで、捏造説が有力です。話が馬鹿でかくなってしまったのはメディアが煽ったからのようです。私も捏造説に傾いているのですが、その理由は牛の段階ですでに疑惑が生じているから。黄はその後後援者を得て研究を再開。司法は研究にまつわる不正なお金のやり取りについて有罪にして、執行猶予。

ちょっと考えればばれる事を押し通したこと、メディアを始め国が大きく後押ししてエスカレートした点に呆気に取られながら報道を見ていましたが、結局韓国の国益を大きく損ない、自分で始めた話で自分が大損したと思います。気の毒なのは韓国でちゃんとした機械製品や車を作っている企業や産業。

★ 何となく納得した2回目

こういった背景がもやもやと頭の中にあったのですが、最初に見たのはファンタで、ファンタ中は友達とおしゃべりをしたり、色々楽しい事が連続するため、1つの映画についてゆっくり考える暇がありません。何しろ映画と映画の間の休み時間は15分から30分。その間にトイレに行き、何かを食べながら友達とも意見交換。

2度目に見た時はサッカーに気を取られたとは言え、筋は大体分かっていたので、ドイツ語で細かい所を確かめながら見ていました。デビッド・ボウイの息子(監督)は子供の時から色々な SF を見ていて、有名な作品からは影響を受けていると語っていますが、月に囚われた男アイアン・スカイに影響を与えています。2009年の映画が2012年にはもう他の映画に影響を与えているのは立派。

ファンタでは次の映画で会場を移動することもあるので最後のテロップを見逃したりします。月に囚われた男もその1つで、重要な結末がついていました。

★ 出来はよかったが、興行成績は控えめ

作品を見た人はほとんどが褒めているのですが、興行成績はぎりぎりのプラスでした。低予算で作るために色々工夫しており、サンダンスなどインディペンデントの映画祭に出品されています。配給はソニーで、最初はいきなり DVD という話もあったそうです。月のシーンはやはり大きなスクリーンで見た方が良く、数が限られていたとしても劇場公開があったのは幸いと言えます。

出演者はほぼ1人。サム・ロックウェルと彼のクローンを演じるロックウェルに見える俳優。台詞の部分は全てロックウェルで、もう1人の俳優は同じ場面に体が2つ映らないと行けないシーンに使われます。ロックウェルは余力を残し、ここでは体当たり演技と言われるような力の入れ方をしていません。その方が役に良く合います。クローンズのマイケル・キートンと同じく、全く同じ人間を3通り、4通りに演じ分けなければ行けないので非常に実力を問われる役ですが、やるぞやるぞと頑張ってしまうとやり過ぎになってしまう危険があります。観客がロックウェルの演技に目がくらんでしまい、ストーリーを忘れてしまっては困るのです。ロックウェルは適度に肩の力を抜いており、さじ加減は合っています。

ケビン・スペーシーがロボットの声を引き受けていますが、2001年宇宙の旅のダグラス・レインには負けています。HAL(レイン)は誰の味方をしているのか分からない怖さがありましたが、ガーティ(スペーシー)はロボット工学三原則をきちんと守っているので、ロックウェルの味方をします。ここをもう一捻りしたら完璧だったかも知れません。

★ 話を表にすると・・・

1人目のサム 2人目のサム 3人目のサム 実際の出来事
存在しない 15年以上前、サム・ベルは既婚で娘が生まれる。
クローンが作られる サム・ベルはルナ・インダストリーズという月の資源採掘会社に細胞を提供したか、会社がサムの細胞を盗用した。
保存中 保存中 保存中 ベル一家は月の事を知らないか、考えずに地球で暮らしている。
娘はティーン・エイジャーに育つ。
会社の3年契約で働き始める。
任務: ヘリウム3を機械に発掘させ、サムがロケットに乗せて地球に送る。
地上とは機械の故障で直接の連絡が取れず、家族や会社との連絡はビデオ・レターで行う。
・・・と本人は信じる。実際は保存箱から取り出され、再生。何代目かは不明。
保存中 保存中 ベル一家の妻が死ぬ。
3年契約の終わりに近づき、地球への帰還を楽しみにしている。 保存中 保存中 ベル一家は月の事を知らないか、考えずに地球で暮らしている。
体調が悪くなる。 保存中 保存中
採掘場で事故を起こし立ち往生。気を失う。
(手に火傷を負っている。)
保存室から取り出され、サムの住居で目覚める。
ロボットから「君は事故で頭を打った。記憶が定かではない」と説明を受ける。(火傷をしていない。)
ロボットは内密に地球の本社に直接連絡を取り、1人目のサムの後始末の手配をする。3人の社員が月に向かって出発。2人目のサムには間もなく地球から修理要員が来て、その足でサムが帰還の予定と説明。
保存中
事故現場の車の中で意識を失ったまま。 日常生活開始。次の要員との交代を待つ。 保存中
地球と直接連絡が取れないため、チェックのために外に出る。
ロボットは、救援隊が到着し1人目のサムを始末するまで2人目のサムを外に出さないよう試みるが、言い負かされる。
保存中
採掘場で怪我をしている1人目のサムを発見。基地に運ぶ。
ロボットは2人目のサムから「これは何事だ」と質問を受け、「クローンだ」と答える。
保存中
意識を取り戻す。
2人目のサムとそりが合わない。
自分たちがクローンだと信じることを拒む。
最初は1人目のサムがクローンで、自分が本物と思いたがるが、間もなく両方ともクローンだと考える。 保存中
月面、基地内を捜索し、自分たち以外にも大量のクローンが貯蔵されていること、無線連絡が故意に遮られていることを確認。 保存中
地球へ帰る計画を練る。1人目のサムがヘリウム3輸送用のロケットを使って地球へ帰り、3人目のサムを起こして殺し、ローバー内に死体を置いて、修理のクルーの目を誤魔化す計画。 保存中
無線妨害の範囲外に出て地球のサムの家族に電話を入れる。   保存中 娘が電話に出て来て、テスが死んだことを伝える。娘が父親に妙な電話がかかっていると言った時に、サムは電話を切る。
体調がさらに悪化。地球に戻るのは無理と判断。死ぬ頃にローバーに戻る決心。 1人目と相談の上2人目のサムが地球に帰ることになる。 3人目のサムを覚醒させる。2人のサムは3人目を殺すのは止めて、基地内に寝かせておくことにする。  
2人目のサムが飛び立ったことを見届けて死ぬ(泣)。 ロケットで飛び立つ。 何も知らずに寝ている。
ロボットはロボット三原則に基づき2人の計画に協力し、後で証拠が残らないようにデーターを消去し、リブートする。
修理要員到着。
 
死亡。 地球で会社の仕事方法を公表。会社の株価暴落。
生きられるのはあと3年。
恐らくはハワイかメキシコへ旅行。
3人目とその後に続くクローンの行く末は不明。 月の事に気付いたかは不明。

ということで話は終わりますが、その時の地球のエネルギーの7割近くを賄っていた会社なので、ヘリウム3の採掘を止めることはできません。何らかの方法で採掘は続けなければなりません。そしてもうできてしまったクローンをどうするのかも問題。そのまま廃棄してしまうのも問題。生かしておくと何十、何百ものサムが生まれてしまうので、どうするんだろうと考えたのは私1人でしょうか。

ちょうど今妙な形でエネルギー問題と向き合っている日本には考える材料を与えてくれる作品かも知れません。

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