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騎士 ニック・パークの作品紹介

ウォレスとグルミット、危機一髪! /
Wallace and Gromit in A Close Shave /
A Close Shave /
Wallace & Gromit: O Fio da Navalha /
Wallace & Gromit - Un esquilado apurado /
Wallace & Gromit: Una afeitada al ras /
Wallace & Gromit - Rase de près /
Wallace & Gromit unter Schafen

Nick Park

UK 1995 30 Min. クレイ・アニメ

声と姿の出演

Peter Sallis
(Wallace - 町の発明家、窓拭き業者)

Anne Reid
(Wendolene Ramsbottom - 毛糸屋の主人)

姿の出演

Gromit
(ウォレスの忠犬、ビーグル)

Preston
(ウェンドレンの飼い犬)

Shaun
(ウォレスの家に迷い込んだ、お腹を空かせた羊)

百匹を超える羊

見た時期:1996年頃

要注意: ネタばれあり!

非常に詳しいネタばれも含まれています。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ ウォレスとグルミット、危機一髪!

2作目は戦前と戦後間もなくの映画のオマージュでしたが、3作目はターミネーターなど比較的新しい SF を取り入れています。

働かず、家賃を取って儲けようして痛い目にあったウォレスは3作目では窓拭き業に乗り出します。マイクロソフトのウィンドウズに引っ掛けて、「ウィンドウズ(窓拭き)は我が社の得意な分野です」などという台詞をウォレスに言わせています。その頃アードマン社は現在の DVD とは違う CD を売っていました。中に PC にインストールできるサウンドが入っていて、ウィンドウを開く時にウォレスに「ウィンドウズは我が社の得意分野」と言わせることができ、デスクトップの絵をウォレスとグロミットにしたりできました。ニック・パークはあまり交渉上手ではありませんが、アードマン社はばっちり儲けていたようです。

ウォレスとグルミット、危機一髪! のシナリオをパーク1人で考えたのかは分かりませんが、この作品も冒険、アクション、チェイス、ロマンスが混ざり、退屈しないようにできています。前回はペンギンがウォレスとグロミットの間に入り込んで来ましたが、今回はウェンドレンという名前の淑女。ウォレスは一目で恋をしてしまいます。下手をするとグロミットの飼い主はウォレスとウェンドレンになってしまいそうな気配。その上ウェンドレンの飼い犬プレストンの態度がでかいので、グロミットは子分にされかねません。

物語はヒッチコックのマーニーを思わせるようなスリラー風の怪しい雰囲気の曲で始まります。

ウォレスは熟睡。寝床で編み物の夜なべをしているグロミット。平和な町の静かな夜に地震のような地響き。

注: グロミットがサイド・テーブルに置いているカップの模様に注目。ドイツでは色はほとんど濃紺に統一されていますが、これと同じような模様のカップや食器をよく見かけます。

怪しげな大型トラックが赤信号でウォレスの家の前に一時停車。そこから1匹の子羊が逃れ出ます。全身真っ黒で、頭と胴体は白いふわふわの毛。トラックの 運転手は羊を追おうと車を降りかけますが、隣に座っていた人物が首を横に振り、止めます。

子羊は掃除屋の看板が出ているウォレスとグロミットの家に入ります。窓拭きサービスで電話番号は2143。信号が青になったのでトラックは去ります。

寝床で編み物を続けていたグロミット。さっきまで足りていたのに、急に毛糸を切らしてしまいます。

翌朝朝刊を見るグロミット。一面トップの見出しは《毛糸不足》。

目を覚ましたウォレスの今日の朝食の希望はオートミール。いつも通り2階から飛び降り、服を着て、待つのは全自動朝食オートミール・マシンから飛んで来るオートミール。ところが機械が狂い始めます。おかしいと思って調べるとケーブルが食いちぎられています。ゴムの木の葉っぱには齧った跡が。 オートミールを作り直そうと思って納戸に入ると、オートミールの箱が食いちぎられています。チーズにも齧った跡が。 グロミットが読んでいた新聞をウォレスが読もうとすると、真ん中に大穴が。一応グロミットに疑いをかけては見ますが、ウォレス自身グロミットの仕業にしてはちょっとおかしいと感じます。

安楽椅子にすわり足を台に乗っけていたはずのウォレスは自分では気づかず子羊の背に足を乗っけます。そして子羊は足の台を食いちぎって中の藁をむしゃむしゃ。

そこへ仕事の依頼の電話が入ります。大家として食べて行くという考えは第2作の終わりで止めにして、ウォレスは窓拭き業者になっています。ハイ・ストリートのウェンドレン・ラムズボトムという女性から仕事を頼まれ、サンダーバードさながら、全自動仕事取り掛かりマシンで出動します。そう言えばグロミットは毛糸を切らしていたっけ。都合のいいことにウェンドレンの店は毛糸屋・・・。

注: 出動シーンは爆笑。ウォレスの出動ぶりは英国の人形劇サンダーバードのパクリ。大げさな事をしてオートバイに乗り込むウォレスに対して、グロミットは全部用意が終わってから悠々と台所のドアを開けてサイドカーに乗り込んで来ます。

最後まで謎なのは、この仕事依頼が偶然だったのかという点。

仕事を依頼された住所に着くと、グロミットは2階から仕事開始。その窓には大きな犬の姿が。2階の店の看板の所からロープをかけ、バンジー・ジャンプをしながら仕事をするグロミット。ウォレスは下の階の店で店主のウェンドレンを姿を見て一目惚れ。サーカスの空中ブランコかと思える巧みさで窓の掃除をするグロミットを放り出して、ウォレスはウェンドレンに話しかけて見ます。奥ゆかしい中年の婦人。横に座っている大きな犬は新聞を読んでいます。《さらにたくさんの羊が誘拐された!》という記事が一面トップ。

恋でぽーっとなっているウォレスに自分の飼い犬を紹介するウェンドレン。犬の名前はニック・パークの故郷の名前、プレストン。ちょっとした事で手を触れ合ったウォレスとウェンドレンは相思相愛の感じ。外に出たプレストンは早速グロミットを苛めてみます。

お互い自己紹介をする2人。ウェンドレンの父が遺した毛糸店を彼女が継いでいます。父親の職業は発明家。それを聞いて「自分も発明をやっているんだ」とうれしそうに言うウォレス。ウェンドレンの言葉にはどこか暗い影が漂います。最近町は羊の失踪事件に絡み毛糸不足だというのに、この店だけは繁盛していました。その事に言及すると、話を逸らすウェンドレン。

その間にプレストンはウォレスとグロミットの家の周りを嗅ぎ回り、子羊の痕跡を発見。ウォレスとグロミットが仕事から戻って来たのを見て地下室に忍び込むプレストン。

ウォレスとグロミットが帰宅すると家の中は大混乱。何もかもが食いちぎられ、散らばっています。そしてウォレスが見つけたのは小さな、シロップまみれの、腹を空かせてふるえている羊。あまりかわいいので家を混乱させたことなどけろっと忘れ、ショーンという名前をつけて家に飼うことにします。グロミットもプレストンとの出会いと違い、ショーンに対しては優しい感情を抱きます。

第1話でロケットを作った地下室へ行くと、そこには新型全自動編み物機が置いてあります。私が子供の頃使った編み物機とは違い、生きた羊を中に入れると、毛を刈られた羊が生きたまま出て来て、別な所では刈った羊の毛から毛糸が作られ、最後はセーターが編まれます。

まずは羊を自動洗濯装置に入れます。グロミットでテスト済みとのことですが、その時のグロミットの表情を見ると、完成までには紆余曲折があったことが察しられます。ここでまた機械が狂い始め、毛を少し刈るはずだったのが、超短く刈る方にスイッチが入ってしまいます。グロミットが止めようとしても間に合いません。自動乾燥機から自動編み物機に送られる子羊。

注: 原題はここに引っ掛けてあります。髭の深剃りでもあり、ぎりぎり、危機一髪という意味でもあります。

機械から出て来た子羊は怪我をし、毛を失って寒さに震えています。ウォレスは子羊にできたばかりのセーターを着せます。

その辺の物を片っ端から齧るショーン。なぜかウォレスもグロミットも怒りません。ショーンの齧りたいように齧らせています。ウォレスはおかしくなった機械の調整。グロミットの読む新聞はまたしても一面トップが羊の事件。

地下室で一部始終を見ていたのはプレストン。ニットマーティックと名づけられた機械の設計図を盗み出します。

ウェンドレンの店の近くで働きたいウォレスは次の日、時計台で仕事をすることにします。あまり機嫌の良くないグロミット。仕事について来たショーン。ウェンドレンの店に入るウォレス。そして2階の窓からグロミットの様子を伺うプレストン。

店の中で発明の話をしているウェンドレンとウォレスをグロミットは外から心配そうに伺っています。

注: グロミットの近くに大型のパン屋の広告が出ています。宣伝主はボブ。このボブは13年後のウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢(次回までリンク切れ)の冒頭で殺されてしまいます。

ニック・パークは1つの作品に次の作品の予告を出したり、前の作品の思い出の写真が壁に貼ったりします。頭の中には色々なストーリーがすでに出来上がっているのでしょうか。

次のシーンでグロミットはプレストンの罠にはまってしまいます。毛糸屋の2階からショーンが顔を出すので梯子で登って穴から顔を突っ込むと、そこを写真に撮られてしまいます。外から見ると何をされたのか分からないのですが、グロミットは肉屋の写真の顔の部分に使われてしまいます。

そのトリックにグロミットが気づいた時、外から悲しそうな鳴き声が聞こえます。声の主はまたトラックに囚われてしまったショーン。ショーンを助けようとしてトラックの荷台を開くと、中からは100を越える羊が飛び出して来て、毛糸屋は羊だらけ。トラックの中に繋がれていたショーンを助けようとしたグロミットは代わりにプレストンに捕まってしまいます。

そして夕刊に載っているのはグロミットが肉切り包丁を振り上げている写真。顔の部分だけがグロミットで他は絵です。新聞の見出しは《キラー・ドッグのグロミット逮捕》。

ウォレスは最初グロミットの有罪を信じて「今回ばかりは君は僕を全く失望させたよ」とのたまう。家の中は羊だらけ。そこへ訪ねて来たのはウェンドレン。気を良くしたウォレスに対して、「全てを許して。全て私のせいよ。グロミットが気の毒で・・・」と言い残して去って行きます。ウォレスは関連が全然理解できずぼんやり。

次の日の朝刊の一面には《羊泥棒犬の裁判続く》。午後の新聞には《「グロミットが噛んだ」とシェパードが言う》。夕刊の一面には《グロミット終身刑》。ウォレス、ショーン、100頭近い羊は目に涙。

一方刑務所ではグロミットがペンギン・ブックにそっくりな文庫本を読んでいます。タイトルは《罪と罰》。著者は Fido Dogstojewskij。そしてグロミットの入っている独房は以前ペンギンが収監された所

これまでいつも助けられるばかり、グロミットのありがたみを考えなかったウォレスですが、今度ばかりはウォレスがグロミットの脱獄を手助け。差し入れとして送られて来た 5000 ピースの羊の図柄のジグゾー・パズルを解くと、脱獄計画《金曜日の夜8時、準備しておけ、友》と書いてあるではありませんか。時計を見るとちょうど8時になるところ。そして窓にはショーンの姿。ショーンが持っていた電気ドリルで格子を切り、グロミットが外へ出ると羊が肩車をしていて、下にはウォレスの姿。

とにかくグロミットを救い出し、郊外の牧場に身を潜めるウォレスとグロミット。そこへ大型トラックが来て、新たに羊を捕まえ始めます。犯人はプレストンとウェンドレン。ショーンを見つけたプレストンはショーンも捕まえようとしますが、ウェンドレンに止められます。ところがウェンドレンとショーンもプレストンに脅され荷台に乗せられてしまいます。その時ウェンドレンは「ドッグ・ミート」と口走ります。

注: ドッグ・ミートはアジアで食用にされる犬の肉。しかしここでは犬に食べさせるための餌缶詰の肉のこと。

ウェンドレンを救うべくウォレスは、そしてショーンを救うべくグロミットはサイドカーつきの赤いオートバイでプレストンを追跡します。ここからは大活劇。途中で蝶番がはずれグロミットのサイドカーはウォレスのオートバイから離れてしまいます。しかしここでサイドカーは飛行機に変身。大戦中のマンフレート・アルブレヒト・フォン・リヒトホーフェン男爵と戦う戦闘機のパイロットになり切っているスヌーピーに負けるとも劣らぬ勇敢さ。いつもは怯え切って震えているショーンもこの時はど根性を出し、がんばります。空からトラックを追跡しているグロミットはオートミール砲で攻撃。

プレストンはウォレス、ウェンドレン、ショーン、たくさんの羊をトラックごと誘拐し、隠れ家に連れて来ます。そこにはウォレスの作ったのと同じニットマーティックが。空ではグロミットがトラックを見失ってしまいます。ショーンは良く分からず計器盤のスイッチを入れます。すると夜空に見えたのは「ドッグフード」のネオンサイン。

注: このあたりのシーンで気になるのは、「何とかして」という台詞。飼い主のウォレスや店の主人のウェンドレンがグロミットやショーンという言わば弱い動物に向かって言います。近年のメンタリティーをあらわしているなあと思います。

プロペラがドリルにもなる飛行機で秘密工場に飛び込むグロミット。プレストンを追い詰めますが、プレストンはプロペラを手づかみ。そのためグロミットが回転してしまいます。これはチーズ・ホリデーでロケットを作っていた時のギャグのリサイクル。ここでグロミットとショーンは最後のがんばりを見せ、ウォレス、ウェンドレンたちを救い出し、プレストンを機械の中に入れます。グロミットはこの時《クローズ・シェーヴ》にスイッチを切り替えます。つまり毛を皮膚ぎりぎりまで深く刈ってしまうということです。

機械からは茶色い毛糸が出て来ますが、機械を内部から殴るプレストン。銅製の機械はボコボコ。それを見て「機能不全だわ」と言い出すウェンドレン。驚くウォレスに「プレストンはサイバー・ドッグ、ロボットなのよ」と説明するウェンドレン。父親がいいロボットとして作ったのに機能が狂い悪魔のロボットになったと言うウェンドレン。それで初対面の時ウェンドレンは口ごもったのです。

機械から出て来たプレストンは着ぐるみが剥げて金属製。自分が作ったマトノマーティック(全自動羊肉処理装置 − 怖・・・)を使ってウォレスたちの肉で犬の餌の缶詰を作ろうとします。グロミットはベルトコンベアーの上でプレストンと対決。最後はショーンの一押しで仕留めます。

一件落着しウォレスの所へ挨拶に来るウェンドレン。連れているのはプレストンを改造した犬ロボット。また普通に動きます。食事に誘うウォレスですが、ウェンドレンはチーズが大嫌い。それを聞いて100年の恋が冷めてしまうウォレス。

居間でビーグル新聞を読むグロミット。一面トップはやっとグロミットの濡れ衣が晴れたというニュース。これでまたウォレスとグロミットの間に平和が・・・。

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