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バックコーラスの歌姫たち /
20 Feet from Stardom /
Twenty Feet from Stardom /
A Um Passo do Estrelato /
A Dois Passos do Estrelato /
A 20 pasos de la fama

Morgan Neville

2013 91 Min. 記録映画

出演者

表参照

見た時期:2014年11月

1年前に書かれた井上さんの記事も参考にしてください。

★ 監督

監督は記録映画を専門にしているようで、マディー・ウォーターズ、キャロル・キング、ジェームズ・テイラー、ハンク・ウィリアムズ、ブライアン・ウィルソン、レイ・チャールズ、バート・バカラック、スタックス・レコード、ジョニー・キャッシュなど扱ったテーマの大半が音楽関係です。

ネビル監督の作品を見るのはこれが初めて。この作品のみの評価ですが、これまで見たいくつかの音楽関係のドキュメンタリー映画の中では弱い方です。見せ場が無く、平坦。原因が扱われる歌手にあるのか、監督の能力にあるのかは分かりません。《淡々と》という手法の地味なドキュメンタリー映画でも、監督が撮る対象に対して持つ温かい目が感じられたり、盛り上がりを緩く取り入れたり、報道的に客観性を重要視したり、冷たい目で正確さを強調したり、まあ、色々な方法があるのですが、扱われている歌手が輝くでもなければ、監督の姿勢が輝くでもありません。それでもしっかり今年のオスカーに輝いています。

全体的には夢破れた人たちの集まりです。物凄いスターと共演した経験を持ち、話を聞く限り一時期は成功した人もいます。夢が破れた時に職業を変え、家政婦になった人もいます。しかし名前は出なくとも普通の職業よりは実入りがいいのでしょうか。戻って来た人もいます。

★ 対象

「普段光が当たらないバックコーラスの歌手たちに注目した作品だ」とオスカー受賞の時から聞いていたので見る機会があればと思っていました。近所の店にDVDが来たので借りて来ました。

オスカーのページにも書きましたが、私はモータウンのドキュメンタリーのような物かなと思っていました。モータウンの話は長々と2ページに渡っての部分を書いてしまいましたが、記録映画として素晴らしかったです。知っているスターや曲が話題になり、「この無名のサクソフォニストが実はあのレコードの録音の時演奏していたんだ・・・」ってな感じでわくわくしながら見ました。いきなり首を切られ放り出された不条理、仲間の離脱、死、紆余曲折にも拘わらず現在も音楽で頑張っている人などが次々出て来て、私はふむふむと納得しながら見ていました。ただ借りて来るだけではなく、家に置いておきたいと思う1枚でした。

あれを見てからもう10年以上になりますが、今でもまた取り出して来て見ようかという気になります。

それに引き換えバックコーラスの歌姫たちからは監督の気合いも扱われた人からの熱気も感じられず、この人たちがバックコーラスにとどまるのにはそれなりの理由があるんだと変に納得してしまう作品でした。

★ ラインアップ

関係者の名前をざっと挙げておきましょう。一部は当時の録画、多くは現在の本人たちの様子を撮影したものです。ABC順にこんな感じです。

Lou Adler 音楽プロデューサー
Stevvi Alexander シンガー・ソングライター、ギタリスト 女優
Patti Austin シンガー・ソングライター
Chris Botti ジャズ・トランペット奏者
David Bowie イングランド シンガー・ソングライター、グラムロックの草分け 俳優
Todd Boyd 批評学の教授
メディア・コメンテーター
映画制作者
David Byrne スコットランド トーキング・ヘッズの結成メンバー
Ray Charles ピアニスト、歌手
ソウルとR & Bの草分け
Carole Childs 米らしい ボブ・デュランのガールフレンド
Amy Christian
Greg Clark
Kyliah Clayton
Merry Clayton レイレッツ他のバックシンガー
ギミー・シェルターなどソロ歌手をアシストする歌手
女優
Joe Cocker イングランド 歌手
Susan Collins
Perry Como ソロ歌手
David Crosby クロスビー、スティルス、ナッシュ & ヤングのメンバー
Charlotte Crossley 米国らしい 歌手 女優
Sheryl Crow カントリー系シンガー・ソングライター 女優
Chris Darrow ソングライター、ギター、マンドリン、フィドルなどを演奏 俳優
Paul Epworth 英国 音楽プロデューサー、ミュージシャン、ソングライター
Tabitha Fair バックシンガー、ソロ歌手、ソングライター
Lisa Fischer バックシンガー、ソロ歌手
Danny Glover 俳優
Susaye Greene レイレッツ、シュープリームスのメンバー、ソロ歌手 女優
Mikie Harris ボビー・ビントンで有名な曲をカバーしている。
George Harrison イングランド ビートルズのギタリスト兼シンガー兼ソングライター
Ula Hedwig ディスコ、ソウル歌手、The Harlettes、Mascara、Luther Vandross Singers のメンバー 女優
Judith Hill 日系米国人 バックシンガー、マイケル・ジャクソンの最後の舞台のパートナーのはずだった
Michiko Hill 日本 ピアニスト ジュディスの母親
Robert Peewee Hill バシスト、音楽プロデューサー ジュディスの父親
Cissy Houston 歌手、ゴスペルとソウル・シンガーの大御所 マイケルとウィットニー・ヒューストンの母親、ディオンヌとディーディー・ウォーウィックの叔母
The Ikettes アイク & ティナ・ターナーのバックシンガー、ステージには3人ぐらいが上がるが延べ50人近い
Michael Jackson ジャクソン5、ジャクソンズのリードボーカル、ソロ歌手
Mick Jagger イングランド ローリング・ストーンズのリードボーカル
Fanita James ブロッサムズのメンバー
Elton John イングランド シンガー・ソングライター
Mable John レイレッツのメンバー 女優、Little Willie John の姉
Gloria Jones バックシンガー、ソロ歌手、ソングライター
Tom Jones ウェールズ R&B 歌手
Joanna Kerns 女優
David Lasleyv シンガー・ソングライター
Jo Lawry
Spike Lee 映画監督
Claudia Lennear バックシンガー、アイケッツのメンバー、 ローリング・ストーンズのブラウン・シュガーの元ネタ 女優
Mark Lennon
Jay Leno コメディアン
David Letterman コメディアン
Darlene Love バックシンガー、地理的な関係でクリスタルズの録音の西海岸で行った時の時の歌手の1人、クリスタルズは東海岸にいた 家政婦
Lynn Mabry バックシンガー
Bill Maxwell
Arnold McCuller セッション歌手、ソロ歌手ソングライター、音楽プロデューサー
Bette Midler 歌手 女優、映画監督
Lesley Miller
Kylie Minogue オーストラリア 歌手
Cindy Mizelle 歌手
Jenni Muldaur シンガー・ソングライター
Nia Peeples 歌手 女優
Janice Pendarvis 歌手、ソングライター。デビッド・ボウイ、スティーリー・ダン、オージェイズ、ローリング・ストーンズなどと共演。
Keith Richards イングランド ローリング・ストーンズのギタリスト
Nicki Richards 歌手、ソングライター、音楽プロデューサー 女優
Tiffany Riddick R&B、ゴスペル、ポップス。
David Ritz 音楽関係の自伝作家、ゴーストライター
Sharon Robinson ソングライター、音楽プロデューサー、歌手
Paul Shaffer カナダ ミュージッシャン コメディアン
Phil Spector 音楽プロデューサー 殺人罪で服役中、88歳頃釈放の見込み
Bruce Springsteen シンガーソングライター
Ringo Starr イングランド ビートルズのドラマー
Rod Stewart イングランド 歌手
Sting イングランド ポリスのバシスト兼リードボーカル、ソングライター
Rose Stone スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンのリードボーカル、、キーボード スライ・ストーンの妹
Alan Thicke カナダ 俳優
Jean Thomas
Vaneese Y. Thomas 歌手 女優、ルーファス・トーマスの娘、カルラ・トーマスの姉妹
Ike Turner 歌手、ギタリスト、アイク & ティナ・ターナーとアイケッツのリーダー
Tina Turner 歌手、アイク & ティナ・ターナーのメンバー
Luther Vandross バックシンガー、シンガー・ソングライター、ソロ歌手
Tata Vega 歌手
George Wallace 政治家、州知事、大統領候補
Martha Wash 歌手、ソングライター
The Waters Family 家族合唱団
Julia Waters 歌手。 Maxine Waters、Luther Waters、Oren Waters と一緒に The Waters Sisters、The Waters として活動。
Maxine Waters 歌手。上参照。
Oren Waters 上参照。
バックシンガーとして260枚のゴールド・ディスク、100枚のプラチナ・ディスクを取った作品で歌った
Charlie Watts イングランド ローリング・ストーンズのドラマー
Toni Wine バックシンガー、ソングライター
Stevie Wonder 元リトル・スティーヴィー・ワンダー、シンガー・ソングライター
Edna Wright R&B 歌手。 ハニー・コーンのリードボーカリスト。 ザ・ブロッサムズの歌手。 レイ・チャールズ、ライチャス・ブラザーズなど様々な歌手のバックシンガー。ダーレン・ラブの妹。

かなりの有名人がずらっと並んでいますが、中心に置かれているのは数人のバックシンガー。この人たちがこの作品の中心人物で、職業は皆歌手。舞台で歌う人もいればレコーディングで歌う人もいますが、多くは両方やっているようです。それがなぜか上手くないのです。

★ 上手くないスタジオ・ミュージッシャン - ありえねえ〜

今は昔、70年代の事ですが、東の京、東京に住んでいた頃、時々友達よりずっと少ないお小遣いをしっかり貯めて厚生年金ホールのような所で催されるコンサートに出掛けて行きました。未成年だった時には親同伴。ただ、私がお小遣いを貯めて見に行くので、スターは自分で選ぶことができました。

それで行ったのがバート・バカラックやディオンヌ・ウォーウィック。そしてなぜか駐車場でスターに出くわすという幸運に何度か恵まれました。ウォーウィックはその時恐らくはウィットニー・ヒューストンだったのではと思われる幼児を連れていました。「あなたの娘か」と学校で習っただけの英語で聞いてみたら「違う、身内の娘だ」と言っていました。どういうわけか髪が染めたわけではないのに非常に明るい色だったのを覚えています。かわいい、お人形さんのような子供でした。

確かバカラックのコンサートの後だったと思いますが、やはり帰り道に同じ駐車場を横切っていたら、太った、中年と言うにはやや若い、黒いスーツを着た男性にぶつかってしまいました。小柄な私が上を見上げると、丸顔の男性がにこにこしていて、少し話し込みました。今思うとあんな、学校で習っただけの英語でよく通じたものと思いますが、彼は「アメリカではエルビスのステージのドラマーをしている。普段はカリフォルニアでスタジオ・ミュージッシャンをしている」と言うのです。

「へぇ、そうなんだ」と思って暫くして、エルビスのドキュメンタリー映画を見に行ったら、本当にドラムをたたいていました。彼とは文通をすることになって、手紙の行き来が2度ありました。宗教の関係でお酒とたばこをやらないらしく、エルビスとドラッグについて聞いたら、イエスともノーとも言いませんでした。後から考えると、「そりゃそうだろう、自分の仕事をくれる人の事は明かせない」となるのですが、当時はまだ子供でそこまで頭は回りませんでした。

その人が当時一緒に仕事をしていた人たちもほとんど世間では名が知られていませんでしたが、スタジオ・ミュージッシャンとして有名人の録音の時に声がかかっていたようでした。レコードとして残るので何度もテイクをして全員の息が合ってようやく仕上げとなるらしいのですが、長引くと人件費がかさむので、スタジオで演奏する人たちはかなりの実力があり、どんな要求にもすぐ適応できたようです。

長い年月の間に有名か無名かに関わりなく、いいミュージッシャンや歌手と、ダメなミュージッシャンや歌手を聞き分けることができるようになりました。

ドイツに来てからは路上の演奏家からフィルハーモニーの演奏家まで、場所はピンからキリまで、そして腕もピンからキリまで、日本にいた頃よりは頻繁に聞きに行く機会がありました。あのカラヤンが不在のフィルハーモニー・オーケストラが物凄いいい音を出したところに居合わせたこともあります。その気になれば無料のコンサートもあるので、来年は時々そういう所に行ってみようかとも思っています。これまでは入場は無料でも交通費がかかるなど、失業者特有の悩みが多かったですが、今後は低賃金とは言え、これまでのゼロよりはましな収入があります。今月の音楽情報を見ると、ゴスペルのコンサートをやる教会がやたら増えています。こういうのもおそらく入場無料でしょう。

さて、バックコーラスの歌姫たちですが、音を聞いて「ありゃ、ダメだ」との結論。大勢の歌手が登場するので中には上手い人もいるのではと思って最後まで見ましたが、「あっちゃ〜、ダメだ・・・」のままでした。

私はアイク & ティナ・ターナーやアイケッツが現役の頃、日本のテレビで見ていたので、あの頃のステージがすごくかっこよかったこと、人に色々批判されていたけれど、あの頃のメンバーがすごく輝いていたことを覚えています。個々の歌手の歌が上手いか下手か判断することができないほどアップテンポで全体のまとまりが良く、見ていてわくわくしたものです。

ローリング・ストーンズのギミー・シェルターはラジオから流れて来たりして音だけ聞いていましたが、ミック・ジャガーと声を絡ませた女性は凄いなと思った事も覚えています。その女性もバックコーラスの歌姫たちで取り上げています。年齢には勝てないのか、1回切り、その時の録音が良かったのかは分かりません。スタジオ・ミュージッシャンとして活躍する歌手なら、何十年経っても実力を備えていると思っていましたが、衰えが見えると言うべきなのか、あまり実力が無かったと言うべきなのか・・・。

ある家で男性や女性が集まって話しているシーンがあり、おそらくは The Waters Family だと思うのですが、このグループだけは上手でした。派手さはありません。バックコーラスをやるのが仕事なので、メンバー同士の息が合い、良いハーモニーを作る必要があります。その条件を整えたグループでした。

★ ソロを目指したらダメ・・・かもしれない

バックコーラスの歌姫たちに言われるまでも無く、多くの歌手はソロ歌手を夢見、そこへ至る道として取り敢えずバックコーラスから始めるケースが多いです。私の夢とは全く違い、私は長い間それが理解できませんでした。数年前にかかったインフルエンザが喉を傷めるきっかけになり、声がつぶれてしまったので、今後可能性がゼロになってしまいましたが、私は趣味としてバックコーラスをやりたいと思っていました。

ベルリンには趣味でソウルを歌うアマチュア・グループもあり、カルチャー・センター的な場所や教会で練習する道があります。

例えばあのセサミ・ストリートの後ろの方で「イェ〜イェ〜イェ〜」と歌っている、あんな感じで歌ってみたかったのです。ソロのシンガーに茶々を入れる、いえ、合いの手を入れるような歌い方です。民謡などでも「は〜、こりゃこりゃ」とやっている、あれです。

それからリードボーカルが歌うラインの3度下とか、上とかでハモを入れたりもしてみたい、そんなことを思っていました。

ところが現実には「凄いバックコーラス・シンガーになってやろう」と夢見る人はまずいないらしく、殆どの人がソロを目指しているようなのです。それで私の頭は疑問符だらけになっていました。

ちなみに「凄いスタジオ・ミュージッシャンになってやろう」と考える人はいるらしいです。有能なミュージッシャンであっても家族がいたりしてしょっちゅう公演旅行、ホテル住まいをしていられない人もおり、「素晴らしい音を出してやろう」と思いながらも、バンドのメンバーとして活躍しようとは思わない人がいるようです。

話を歌に戻して、プロの歌手や俳優は毎日発声練習をしているようなのですが、リード・ボーカルやソロの歌手が求められる能力とハモを入れたり茶々を入れる歌手に求められる能力は全く違います。バックの歌手は絶対に音をはずしては行けません。声は目立ち過ぎても地味過ぎてもダメ。その上、ソロ歌手、リードボーカリストの声に似合うような声質でないとダメ。例えばアストラッド・ジルベルトの曲のハモにジョー・コッカーのような声ではダメ。逆はいいかも知れませんが。

サム・ムーア、ルー・ロールズ、ジェームズ・ブラウン、ダイアナ・ロスのような非常に目立つ声の持ち主は、ソロをやった方がいいと思いますが、例えばサム & デイヴのデイブやライチャス・ブラザーズのボビー・ハットフィールドがもし相棒のサポートに徹底し、あまりソロを目指さなければグループとしてもっと長い間成功したのではないかと思います。一種影武者の役目です。出しゃばりが多い芸能界で影武者をやれと言われると不満なのかも知れませんが、何曲か相棒にリードを取らせ、時たま影武者がちょっと表に出て来るというのもいいのではないかと思います。リードを取る人が威張り腐らず、やればザ・ピーナッツのように長く続いたと思いますねえ。その延長として3、4人のバックシンガーいれば、主演が映えるし・・・。

ま、私が独断と偏見で出した結論は、バックコーラスはソロと目的が違うんだから、別々に考えた方がいいのではということ。それにしてもバックコーラスの歌姫たちに出て来た人たちは下手で、見ている間曲が楽しめませんでした。

★ 蛇足 1

皆がどうしても前に出たいのなら、ビーチボーイズ、テンプテーションズ、フォー・トップス的な解決法がありました。皆が一緒にハモをやるか、しょっちゅう交代でソロを取るか、子供時代からの友情を一生壊さないか。

配分が上手く行かずに失敗したのではと思えるのがグラディス・ナイト & ザ・ピップス。元はただのピップスだったのですが、グラディスが前に出るようになり、ピップスはただの引き立て役になってしまいました。彼女がヘビー級の声の持ち主だったためにグループは成功したのですが、その後ステージの上で身内同士が当てこすりを言い合うシーンを見てしまいました。一緒にいるべき人たちを争わせるのはプロデューサーやマネージャーのせいなのか、それとも心に浮かぶエゴを本人たちが押さえられないのか、その辺は分かりません。幼馴染や家族なら、1人が目立っても皆で引き立てて、皆で成功すればと思います。きっとギャラを山分けする時に揉めるんでしょうね。

★ 蛇足 2

競争の激しいアメリカでは勝ち抜けなくても、ドイツではソロ歌手として成功する道があります。アメリカでバックシンガーをやって誰々と共演したことがある、同じステージに立ってバックをやっていたと言えば、ドイツでは比較的すんなり受け入れられます。

80年代、90年代にあるドイツ人のシンガー・ソングライターを知っていたのですが、その人が自分の1曲のためにアメリカから来た女性を舞台に上げていました。レコードでもこの女性がローリング・ストーンズのギミー・シェルター的にリードボーカリストの声に絡めて歌っていて、とても良い感じでした。私は彼女とはその頃は直接会った事は無く、ステージで歌っているのを見ただけです。

後にちらっとだけ知り合いになったそのドイツ人のシンガー・ソングライターがその後メディアに出なくなりました。人気が落ちてという話ではなく、この方面より、文筆業か他の分野への興味が強くなり、歌手としてあまり表に出たくなかったのではないかと推測しています。それから数年してある日町で物凄く大きなポスターを見ました。あの時の女性がソロの歌手としてコンサートをやり始めました。それからは毎年、今年もやっており、大きなポスターが出ています。初めて歌声を聴いてから10年以上経っており、彼女もやや年を取りましたが、私はその彼女と全く別な場所で出会って話したことがあります。

モータウンの映画を公開当時映画館に見に行きました。満員になるだろうと思って行ったのですが、がらがら。私自身はとても楽しみにしていたので、大喜びで出かけて行き、人がいない事をいいことに、映画と一緒に歌を歌ったりもしました。映画が終わり館内が明るくなり、席を立とうとした時私の真後ろから歌声が聞こえて来ました。音を外すことなく、非常にプロっぽい歌い方だったので思わず振り向くと、そこに座っていたのが上に書いた彼女だったのです。私は男性歌手が知り合いの知り合いだったため彼女を身近に感じましたが、彼女は私の事は全く知りません。で、私は彼女に「あなたは〇〇さんの舞台に立っていたでしょう」と言ったら、それを知っている人間に出会ったことに喜んだのか、とてもにこやかに相手をしてくれました。多くは話しませんでしたが、2人ともこの映画が気に入り、同じ波長の人間だという感じでした。もっとも私は観客としてで、彼女は歌手としてですが。

ドイツやベルリンのいい所は、大スターや芸能人でも一般人はそっとしておくので、たまにその人物を知っている人が静かに話しかけると、嫌な顔をせず、静かに応対してくれる所です。ブルース・ウィリスのような大スターでも記者会見が終われば徒歩で買い物に出られるような町です。そう言えばウィリスもソウル・シンガーでした。

★ 蛇足 3

ここまではバックシンガーの話ですが、バック・ダンサーも似たような境遇のようです。先日招待であるショーを見に行ったのですが、歌手を除く出演者全員がボリショイ・バレーとボリショイ・サーカスの厳しい訓練を受けたような実力者。ところが歌手で言えばソロに当たる自分だけの演技をする時間を貰える人の他に、物凄く達者な人が山ほどいて、その人たちが実力を発揮できるのは右から左までずらっと並んだラインダンスなど、個人が目立たないシーンばかり。

私の趣味とは違うタイプのショーではありましたが、実力があるという意味では見ごたえのある人たちの集まり。ダンスのポジションのトップを得るだけでも厳しい競争があるんだろうなと想像。恐らくは東欧、ロシアあたりの人たちではないかと思われます。ちなみにそのショーでソロを取れた歌手はへたくそでした。アクロバットをしたアーティストが引き立つようにあまり上手くない歌手を連れて来たのかなと勘ぐってしまいました。

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