映画のページ
2017年1月14日 - 15日、2016年12月19日、2017年2月26日
途中まで書いていたのですが、体調が悪化し、休憩を優先しました。遅ればせながら加筆して今日アップします。
夏のファンタが終わって間もなく冬のファンタの連絡がありました。映画館の予約の関係で今年はクリスマスではなく年明けになります。ドイツではその方がいいでしょう。
クリスマスはほぼ国中の全員が個人的な予定を決めていて、都会を離れてスキーに行く人、田舎に帰省するなどスケジュールが満杯。ベルリンやハンブルクに家族ごと住んでいる人でも、家族団らんの時期、日本で言えば新年の7日ほどに似た行事があるので、その時期に他の予定を蹴って1日5本の劇映画を見るのはちょっと大変です。
日本の師走を想像していただければ大体雰囲気は分かると思いますが、クリスマスの3日(12月24日から26日)に備えてプレゼントを買ったり、料理の材料を仕入れたりと、まあとんでもなく忙しい時期です。
その上宗教上の正式のクリスマスは、世界に知られている12月24日前後から逆算して4週間前、11月末に始まります。プレゼント探しも兼ねて毎週末クリスマス市に繰り出す人も多いです。その週末の1回をファンタにというのはちょっとスケジュール的にきついです。加えて映画館の方はジェームズ・ボンドやスター・ウォーズの新作をこういった時期にぶつけて来ます。
ファンタのファンはじっくり映画を見たい人ばかりなので、こういったクリスマスのスケジュールが終わった1月にゆっくりというスケジュールの方がいいでしょう。
ちなみに今年のクリスマスは労働者にとっては不運。イヴが土曜日、クリスマスが日曜日と月曜日。ということはここで休暇を取らない人は1日しか休みがありません。現実にはその前後に有給休暇を取って丸1週間ぐらい休むことがほとんどの会社で認められています。もしイヴが水曜日、クリスマスが木曜と金曜日だと、その後土曜と日曜が休めるので大喜びです。もっとも私の会社のような、毎月決まった仕事をしている人たちには、今年のようなクリスマスの方が助かる面もあります。やって来る仕事の量は毎月同じで、働ける日が少ないと、残業や土曜出勤が増えてしまうのです。勤務日が
1ヶ月 − 土日x4回 = 22日〜24日程度
の方が8時間勤務が多く、体には楽です。休日が多いと私たちは9時間勤務や土曜出勤になってしまうのです。
10月頃から体調が100%ではなく、書き始めた記事の校正が追いつきませんでした。遅ればせながら今頃ご紹介。
この回のファンタではまだそれほど大きな影響は見られないでしょうが、大型ハリウッド映画は今後暫く中国を善良な国と表現する傾向が強くなるでしょう。アメリカのかなりの数の映画制作会社、映画館が中国資本で経営され始めています。親方五星紅旗では親方を悪く描写するわけには行きません。ちょっと前に見たマット・デイモンが他所の星に取り残されるという筋の作品がいい例。
後記: トランプ氏が大統領に選ばれたので将来はこの傾向にブレーキがかかるとは思いますが、ハリウッドという土地は民主党支持者が多く、トランプ氏と反りが合わない人が比較的多い土地柄。暫くは混乱状態になるかも知れません。クリント・イーストウッドは珍しい例外。
追記: 12月の事件
12月19日夜、西ベルリンの目抜き通りから近いクリスマス市の立っている所に大型バスに近い大きさの、荷物満載のトラックが突込み、死者10人以上、負傷者50人近くが出ました。すぐ近くにベルリン映画祭に参加する映画館があり、かつては夏のファンタの会場だった映画館のすぐそばでもあります。
不幸のど真ん中で多少の幸運は、私が通っている大学病院が最近救急専用の大病棟を開業したこと。付近に通常用としてあらゆる科が揃っていて、救急病棟はそのど真ん中に大きなビルとして開業しました。慶応病院や日赤の建物に匹敵する規模です。そこに運ばれすぐ手術となった人もいますが、それでも手当てが間に合わず死亡した人もいます。キリスト教の人も多かったと思うので、よりによって楽しいクリスマスにこんな事をやるのは罰当たりと、キリスト教でない私でも思いました。
ポーランドから来ていた運転手を殺して犯人が乗っ取ったトラックは、カント通りの方向から有名な教会に向かって侵入。ヨーロッパ・センター・ビルの手前で停まりましたが、教会の前後左右はクリスマス市場になっていて、そこを歩いていた人たちと、屋台を出していた人たちが犠牲になったようです。普段は毎週何かの用事で私も通る場所。
もしかしてガス爆発も狙ったのではないかという記事がありましたが、ドイツのガスは爆発しないようになっているので、そこだけは仮にそうだとしてもあてが外れたでしょう。クリスマス市の時だけ人混みを避けて通らないようにしていた私は運が良かったです。井上さんもあと少しのところでサリンの難に遭わずに済みましたが、本当に運が良かったです。
死刑の無い欧州連合。あっと言う間に犯人を見つけ、即座に射殺。確かにこれだけの犠牲者を出した危険な犯人ではありますが、殺された人が真犯人だったのかは本人の口から聞きたいですし、どこの誰のサポートを受けて入国し、逃亡したのかも聞いてみたかったです。しかしその時間はありませんでした。
追記: 2月の椿事
今年のアカデミー賞授賞式は手術の後で、例年のように近所の人と一緒に一晩中見ることはできませんでした。目が見えないだけではなく眼窩の痛みがひどかったので、夜眠ることもできなかったのです。「徹夜でテレビを見るのだから眠ることができなくてちょうどいいじゃないか」などと言わないで下さい。痛くてとても楽しい話をするような状況ではなかったのです。
家にいたのでインターネットで中継を見るのは可能でしたが、それも痛みがひどくて止(や)め。「ベッドで音だけ聞いていればいいじゃないか。英語なんだから」などと言わないで下さい。日本語でもゆっくり音を聞いていられる状態ではなかったのです。
それでも椿事は後から耳に入りました。
受賞作品名を読むのをウォーレン・ベイティが《正しく》ためらったら、フェイ・ダナウェイが間違って読んでしまったそうです。よりによってフィナーレで。私はむしろ御年79歳のベイティが《正しく》不審感を持ったことに驚いています。頭が全然ぼけていない。
ダナウェイは「何ぼやぼやしているのよ」ってな感じ、催促気味の視線を送り、さっさと読んでしまったそうですが、あの場でもちゃんと考えて行動したベイティは立派。
原因を作った会社は私が日本でサラリーマンをやっていた頃頼んでいた会計事務所。普段はきっちりした仕事をやる会社です。各国の最新の法律を把握した上で依頼人の会計検査を行います。例え相手が依頼人でも法律に合わない事とがあると「だめ」と線を引く会社です。 なので、仕事中にツイッターをやった社員がいたと聞いて、ちょっと信じられませんでした。私が知っていた頃は70年代なので、社員が劣化したのかも知れません。
この回のオスカー授賞式では個人名を挙げずに、新しく選ばれた大統領への不満たらたらだったそうですが、最後はオウン・ゴールになってしまいました。リベラル派が新大統領を嫌うのは分かりますが、彼が行った変革がうまく行っているかを確かめてから具体的に批判した方がいいのではないかと思います。まだ変化の結果が分かっていないのに文句だけ言うのでは過激な賛成派と反対派の間にいる多数の支持が得られません。
トランプ氏が仮に選挙に負けたとしても、彼と同じ方向を向いている国民の数が無視できなくなっているのは近年明らかでした。なので私はハリウッドがそれに合わせて方向転換をするのか、そういった中西部の多数派にリベラルの主張を押し付け続けるのかについて関心を持って見ていました。もしかしてハリウッドとは違う動きを始めたのかなと思える若い監督がわずかながら芽を出しています。
私はハリウッドの業界独占に異議を唱えているのではありません。特定の出身の人たちが100年ほど前活躍の場を自ら築いたのですから、ハリウッドに映画人が移り住み、自分の好きな映画を作っても構いません。
その代わり他の都市に考えの違う映画人が集まって別な映画を作ってもいいはずだと思うのです。現在でもニューヨークを中心にする映画人グループがあり、サンダンス映画祭に集まって来るグループがあります。なので、さらに新しいグループが出て来るなら「見てみようじゃないか」と思う昨今です。
では、いつものようにファンタに参加した映画の紹介を。今年は一応映画館に座っていましたが、体調がすぐれず、内容をきちんと理解できない作品もありました。傾向としては1日目はパッとせず、2日目は合格点のつく作品がいくつかありました。
暫く姿を見なかったような気がするニコラス・ケイジですが、出演作が少ないのは2012年と2015年のみで、その後はまた出演作が増えています。2016年と2017年は極端に多いです。
ダフォーも暫く見ていませんが、私が彼の出そうな映画を見ている暇がなかったのが主たる原因。本人は2010年、2011年、2015年の出演が少ないですが、他の年はコンスタントに出演を続けています。
タイトルは食うか食われるかの激しい戦いを表わしています。
あらすじ: ロサンゼルスで出所したばかりの男3人。まともに生きようと努力はしますが、努力かなわず雇われ誘拐者になります。雇い主はこちら側のマフィア、誘拐するのはあちら側のマフィアの子供。計画は番狂わせに・・・。
後記: 体調のせいか話に集中できず、私にはパッとしないように映りました。他の友人たちも褒めていませんでした。
シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイアという抱腹絶倒の作品をファンタに持ち込んだ監督。
不運、不幸を一身に集めたような少年の物語。両親はおらず、里親。問題児で、多くの里親から三行半を渡され、里親のはしご。映画が始まる頃にはようやく落ち着いて暮らせるかも知れない中年夫婦に引き取られます。
ところが里親の女性が心臓発作で呆気なく死んでしまいます。また次の里親に送られるだろうけれど、いずれは刑務所入りになると自分の運命を見通した少年は死んだふり。そのコラテラル・ダメージ(予定外、意図しない損害、巻き添え)で家を燃やしてしまいます。直後にトンズラ。
死んだ女性の夫と少年は反りが全然合いません。彼に見つかり、喧嘩になりますが、彼は道中骨折。嫌々ながら少年は彼を助ける羽目に。
ソーシャル・ワーカーは里親が少年を誘拐したと思い込みます。そこへやって来る3人の狩人。公開手配がかかっているので里親を誘拐犯と考え、とっ捕まえようとします。里親と少年は喧嘩するのをやめて協力して逃げ出します。しかし2人は児童虐待の犯人と被害者と誤解されており大掛かりな捜索活動開始。
ここまでだと以前ファンタに出たカナダ映画と似たコンセプト。児童虐待の場合もあり、子供を強く育てたい親もいるし、たまには子供の悪さがひど過ぎて親が厳しい面を見せなければいけない場合もあるし、子育ては難しいです。
後記: 前作とは全然違う内容ですが、同じぐらい笑えます。いきなり愉快なシーンが出るのではなく、話を追って行く中で抱腹絶倒の笑いを取っています。観客が登場する人物のキャラクターと知り合いになる時間を取った上で珍事が起き、観客が笑うという手法です。
足が地に着いた筋の運び、俳優の演技、土地の描写と3拍子揃っており、オスカーに値する出来です。と言うか、オスカーにはもったいない作品です。
少年と里親の親父さんが逃避行に入ってから、あっと驚く事情が明かされ、おばさんが死んでしまうまでの夫婦の関係に別な光も当たります。最後はそれなりに丸く収まるのですが、そこに至る過程が見所です。すばらしい。
普段のファンタ作品と違い、心温まる人間の絆がテーマです。一般向き。
監督は長編デビュー。バンパイア映画。
後記: 現代のアメリカに暮らす14歳の黒人少年が、バンパイヤ。両親の姿は無く、長兄と2人暮らし。学校ではフリークと呼ばれ、苛めの対象。古いビデオで吸血鬼の映画を見るのが趣味。その影響で人の血を吸うのか、元々彼が吸血鬼だったのかはどうでもいいようです。
彼の近所に女の子が引っ越して来ます。それで少年の人生が大きく変わります。ちょっと思い出すのが2008年のファンタに参加したぼくのエリ 200歳の少女。吸血鬼の生活を人間関係中心に描く点と、静かな進行が似ています。
大きな魅力は感じませんでした。
またしてもホセ・コロナードが出演。またコロナード、またスリラー、でも 飽きませんよ。お薦めです。監督はロスト・ボディを作った人。この2人のコンビだと期待しちゃうなあ。
ホテルで目が覚めたら近くに死体があったというストーリー。死んでいるのは彼と不倫中の恋人。割とはっきりした事件だったので彼はすぐ被告に。助かるには仕事熱心な弁護士が必要・・・。そして実際に敏腕弁護士が公判直前に事件を引き受けます。まあ、欧州に死刑は無いので、何とかなるでしょう。
後記:ネタバレします。読みたい方は左マウスをクリックしたまま以下の行をたどって下さい。
簡単に言えば被害者の遺族夫妻がスパイ大作戦方式で加害者を追い詰める物語です。コロナードはロスト・ボディの時にも妻を失い、娘と結託して犯人を追い詰めましたが、今回もそのパターン。でありながら最後のシーンで真相を明かされるまで観客は気づきません。伏線を確かめるためにもう1度見たいなあ。
最後に真相が明かされてあっと驚きます。
主人公をド壷にはめるのがうまい監督兼脚本家。前作と全く同じコンセプト、同じ俳優を使っても観客はまんまと引っかかります。
スクリームとホーム・アローンを混ぜたような作品だそうです。郊外の静かな町に住む12歳の少年を17歳のベビーシッターが護らなければならなくなります。家に押し込み強盗が入った様子。Safe Neighborhood という言葉自体はアメリカ法務省の PSN と一致します。プロジェクト・セイフ・ネイバーフッドという銃規制関係のプロジェクトです。関係があるのかなあ。
後記: 体調が悪い時に見ると疲れます。17歳のベビー・シッターはまともな考えの女性。12歳の少年はとんでもない悪魔。悪餓鬼どころの話ではありません。スペインの Fill de Caín の主人公ニコといい勝負。
もう少し私の方に余裕があればそれなりに楽しめたと思います。
保安官が森の中で血だらけの男に出くわします。すぐ病院に収容。病院は間もなくカルト集団のような人たちに包囲されてしまいます。その後怪しいハンターが登場。話はエイリアンの方向に発展。斧を持った男やクークラックスクランのような服装の人間、ピラミッドのような物などシンボリックな場面がトレイラーに出て来ます。
後記: ジョン・カーペンターを意識して作られたようです。ただ、私は低予算ではあってもカーペンターを抜くような作品は見たことが無いので、この作品は、オマージュと受け取ることにしました。
監督としてはコスタンスキーの方が作品数が多いです。The ABCs of Death 2 の W を担当しています。ギレスピーと組むのは2回目。
疲労困憊状態だったので、全体を監督の思った方向に解釈するまで行かなかったかも知れません。なので私の感想に惑わされず、見たい人は見て下さい。
山の事故で夫を亡くした妊娠7ヶ月の女性。頭がおかしくなって、お腹の子供が彼女に殺人の命令を出していると思い込み、人を殺して回ります。夫の死に責任のある人が数人いました・・・。
後記: 監督が女性であることもあり、新しい女性の姿を盛り込んでいます。昔だと殺人鬼、頭のおかしい人物の連続殺人と言えば、犯人はほぼ9割以上が男性でした。
女性解放運動が進み、職場などでも女性の進出が著しいですが、40年以上経った現在でも、「男性のいる場に女性が進出すればいい」とか、「数を合わせればいい」という解放運動家が多く、女性の特性を生かしたまま社会に進出する道はまだかなり閉ざされている感じです。ドイツにも勘違いをしている解放運動家がまだ多いと思います。
その点、この作品はただ女性を頭のおかしい殺人鬼にしているだけではなく、女性らしい特性はキープしています。この《女性》がなぜこういう行動に出たのか、出ざるを得なかったのかに納得が行くような作りです。 そういう作品を女性の監督が作ったという点ではようやく1歩先に踏み出したかなという気がします。
とは言っても、こんな女性に出くわしたくないですが。
英国人特有の乾いた物の言い方と、ごく普通の日常描写、そこに頭ががイカレた女性が混ざり怖い脚本に仕上がっています。それを演じている俳優の力量もいい線行っています。コメディーのカテゴリーに入っていますが、かなりブラックです。
ネタバレ的付け足し: 読みたい方は左マウスをクリックしたまま以下の行をたどって下さい。
描写に優雅さが欠けていますが、主人公の行動の動機は黒衣の花嫁に似ています。黒衣の花嫁の著者は男性ですが、女性の心情を女性らしく表現するのが上手なコーネル・ウールリッチです。
体調不良のためフィーリング的には楽しめませんでしたが、客観的な見方をしただけでも、いくつかの注目点があります。
増え過ぎた惑星植民地の人口を減らすためにモンスターを作り、口減らしをする企業に勤めている男が主人公。
後記: 体調不良のため筋を追うのもままならず、見ていないのと同じ状態でした。失業対策ではないかと疑われるほど大勢の人が出演していますが、作品は低予算でできたそうです。
夜警になったばかりの青年。新人苛めの先輩に囲まれ、やる気ゼロ。先輩も変な男たちばかり。警備する建物は大きく、会社の編集部では夜勤の美人記者が仕事中。地下のガレージには所有者不明の怪しい棺桶が・・・。中にはバンパイアが・・・。道化の衣装を着ている・・・。
監督はブッチャー兄弟として知られる監督のうちの1人。出演者の役名が一部俳優名に近いのはご愛嬌。
後記: 体調不良で筋を追うこともできませんでした。悪しからず。
カザンはエリア・カザンの孫。
だらしない母親、母親の世話をせざるを得ない娘。生活が成り立たないので、渋々母親は娘を別れた元夫に譲ることを決心。その道中車が狼にぶつかります。車はエンスト、2人は軽症。救援を頼み、待っている時に死んだはずの狼が消えている・・・。この後は仲の悪い母娘が協力してサイバイバルアクションへ。
後記: 母娘の相互依存状態の描写が長いです。ホラー映画の衣を着た社会ドラマ、家族ドラマと言った方がいいかも知れません。
体調不良でエンジョイで来ませんでしたが、元気な方にはいいかも知れません。
全体の後記:
体調不良で、本当はいい作品かも知れないのにエンジョイできなかった物が多いです。その中でもお薦めの佳作は
・ Hunt for the Wilderpeople
・ 悪魔の証明
私の趣味ではないけれど、うまく作られていると言えるのは
・ Prevenge
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