皆様こんにちは。 さて、今回は全日本選手権から一局です。
前置きの長すぎた前回を反省して、今回は早速駒を動かしましょう。(^^;
Japan Championshiop (11), 04.May.2002 Analysis by [Tanaka Yuhki]
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【図−15.5.1】 |
皇帝による注:手元のMCOを調べますと、このラインは Symmetrical Four Knights' Variationです。
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【図−15.5.2】 |
・・・とここまで定石です。
全くの対称形から、先手の白が先にセンターをクレイムし、このようなポーンストラクチャーになりました。
白はd5 の升目を如何に使うかがポイントとなってきます。
黒の10…Qa5 は、やや珍しい手で、実の所全く知りませんでした。
ただ、Qa5-Qh5-Ng4 としてキングサイドを攻めようという意思は伝わりますから、何か対策を考えねばなりません。
Ng4に対しh2-h3と受ける展開になると、Ng4-Ne5が、c4の弱点とクイーンをヒットする事になるので放置する訳にはいきません。
といって、あらかじめ c-pawnを守ろうとしてb3では、c3のナイトがg7のビショップに対して浮きます。
そこで・・・、
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【図−15.5.3】 |
白は、11.h3から 12.g4として、クイーンを追い払います。
キングサイドのポーンを突かされ、こちらの守りは薄くなりましたが、相手のクイーンも落ち着きがなく、一長一短です。
重要なのは、自分のポジションの長所が強調される展開に、自分で持ち込むことです。
NCOという序盤辞典によると、この11…Qh5の時点では、11…Be6が多いようです。
対して黒は、12. ... Qe5として、白がBf4-g3として守りを固めるプランを防ぎました。
黒は 13. ... Nd7とすることで、ナイトをd7からc5やe5に持ってくると同時に、白からBd4としてセンターのクイーンを追い払う手を防ぎました。
しかし、この手を見たとき、少し欲張りすぎているのではないか、と感じました。
c8のビショップの展開が遅れる可能性がありますし、d5の升目がお留守になり、白のナイトがタイミングよく飛んでくる可能性があるからです。
そこで、「この手の顔が立つ」前に、少々強引でも主導権をものにする事を考えます。
捕捉ですが、13. ... Bg4には、14.Bd4! Qh5 15.hxg4 Nxg4 16.Rfd1 Qh2+ 17.Kf1+/- として受けきることができます。
14.f4のようなポーンムーブは勿論諸刃の剣ですが、「正しく13. ... Nd7という手の短所を際立たせる」には必要な一手です。
クイーンをセンターから追い払い、押さえ込みを図ります。
ただ、弱体化した自分のキングに危険が迫るような展開にならないよう、注意が必要です。
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【図−15.5.4】 |
白は主導権を握り、黒に「手番」を渡さないよう手を紡ぎます。
17. ... e5 は、手番を戻そうという手で理解できますが、d5のナイトが完全なアウトポストになってしまう事を考えると、必ずしもベストではなかったかもしれません。
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【図−15.5.5】 |
白のナイトは強すぎる感がありますから、18…Nb6から交換に来ました。
その間に白はf-fileを開け、ナイトが交換される時に、f7を攻める体制ができるようにしました。
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【図−15.5.6】 |
21. ... Be6は仕方のないところです。
22. ... Qb6+のところで、22. ... fxe6?では、非常に悪い形のダブルポーンになってしまい、g7のビショップも働きづらくなってしまいますね。
24.Qd5としましたが、やはりここでは、クイーン交換をして、優位をエンドゲームに繋げるのが最も効果的です。
序盤からの、センターにおけるスペースアドバンテージ、センターにおけるピースの支配権の優位から、このようにクイーン交換を強要する事ができたわけです。
黒は、白のオープンキングに対する反撃が楽しみでしたが、こうなってクイーン交換を強要されるところをみると、やはり白のセンター支配の方が一歩まさっていたようです。
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【図−15.5.7】 |
26.Rd7とルックを7段目に侵入し、f6を突かせました。
この主導権をどう生かすかですが、こういった局面で肝心なのは、カウンターを許さない事です。
今、黒からは Ra6 としてa-pawnを攻撃するか、守られた場合にはa3 への浸入を図る手が目に付きます。
そこで、Ra6 を無力化する手を考えます。
そうして考えたのが、g4-g5として、Bg7-f6-e5という斜めの守りの鎖を断ち切ると同時にf-fileのルックの活用を図る手でした。
その時、ポイントとなるのがb8のルックとg7のキングへのビショップによるダブルアタックの筋です(下記)。しかしながら g4-g5 に f6-f5と返されては面白くありません。
そこで e4 とついてそれを防ぎます。
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【図−15.5.8】 |
27. ... Ra6?!ですが、この後出てくるルックエンディングはどうも辛そうですから、ここでは 27. ... h6としてg4-g5を防いでおくのが正着だったようです。
一例を挙げておきます。
27. ... h6 28.h4 g5 29.hxg5 hxg5 30.b5 Bf8 31.Bb4 Rc8 32.Rxb7 Bxc5+ 33.Bxc5 Rxc5 34.Rd1 Re8
白ルックはアクティブで、主導権を握っていますが、キングの前のポーンカバーが全くなく、ポーンが弱いですから、メイトやパペチュアルと絡めた強烈なカウンターを食らう可能性が残されていて、まだ勝てるかどうかというと難解なポジションです。
28. ... Ra3ですが、28. ... fxg5?とすると、29.Rxg7+があります。
31.Rff7の局面ですが、このエンディングは、ルックを一つ交換し、ただのルックエンディングとなったとき、黒のキングが8段目に Cut off されているのが非常に辛く、どうやら白勝ちのようです。
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【図−15.5.9】 |
32. ... Kh8のかわりに、32. ... Kf8としても、素直に 33.Rxh7 として、手がつながりそうです。
黒のキングは幽閉の身ですが、こちらのキングは大切な戦力、33.kg2として積極的に活用します。
35.Rdg7+の手を挟んでおくことで、次のRxb7はMate in One のスレットとなり、黒に暇を与えません。
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【図−15.5.10】 |
37. ... Rxb7 38.Rxb7 Ra3+ 39.Kg4 Re3 40.Kg5 Rxe4 41.Kxg6 +-
の方が読み筋でしたが、やはりキングポジションの差が響き、メイティングスレットをかけながらキングをc-fileに運べば白勝ちです。
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【図−15.5.11】 |
図−15.5.11の局面で、42. ... Rxb5?と取ると 43.c7 と突かれてポーンが止まりません。
本譜は、42. ... a5と続くわけですが、同じ理屈で ba6 と取られた後、どちらかのポーンが止まらなくて白勝ちですが、この時点では、Kg7 と粘っても助からないようです。
ルックが動くとe-pawnが取られるため、キングが動くしかないのですが、黒キングが退いた分、白キングがニョロリと侵入します。
42...Kg7 43.Kg5(ニョロリと) Kf7 44.Ra8+- となり、為す術がありません。
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【最終図】 |
Black Resigned
Result: 1−0
どうだったでしょうか。
次回は、・・・ええっと次回は・・・、次にでる大会がまだ決まっていないので未定です。
もしかすると、8月の大会まで出ないかもしれません(汗)。
その時は、皇帝がスピーディーに全日本自戦記を完成させてくれるでしょう。
何せ全日本では、超大物を含むいろいろなひとにプレッシャーをかけられていたようですし(^^;
・・・(汗)。
などと言う間に、もう8月末(冷や汗)。
全日本の自戦記もようやっと半分。8Rと12Rは、それぞれ対戦相手のKさんと千歳から原稿を頂いています。
ヒー、頑張りまーす。
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