皇帝の正しくないチェス

6. 正しいかもしれないオープニング


 チェスというゲームの目的は、勿論相手のキングをメイトすることです。

 しかし、そこに至るまでには長く苦しい道のりがあり(?)、その過程は「序盤(オープニング)」、「中盤(ミドルゲーム)」、「終盤(エンディング)」と大きく3つに区分されています。この章で取り上げるのは、チェスのゲーム初手から、盤面上で実際に戦いが始まるまでの序盤戦の定跡、すなわち「オープニング」です。

 序盤の基本は、おおよそ以下の3つです。

(1) eまたはdファイルのポーンを突くことにより、センター(盤面の中央)を支配する。

(2) ナイトやビショップといったマイナーピースは、クイーンやルークよりも速めに動かす(駒の展開を図る)。

(3) キャスリングはできるだけ早く行い、キングをより安全な状態にする。

 一般的には、これらの最後に、クイーンを1段目から動かすことによって、「ルークを繋げる」ことが出来れば、戦いの準備は完了です。ここで序盤の局面は終わり、中盤戦へと突入します。

 さて、チェスの歴史においては、当然のように上記のような基本をもとにして、「最初にどのように駒を動かすのが効果的であるのか?」という研究が為されています。相手のキングに攻撃を仕掛ける為には、どのように駒を配置すればよいのか。あるいは、相手の出方に応じてどのような駒配置をすれば良いのか。そういった先人達の研究の成果こそが「オープニング」なのです。

 6.1章にECO方式によるオープニングの分類を掲載してみました。とりあえず、「チェスのオープニング」の分類状況に頭を抱えてみてください(笑)。

 こんなものを全部覚える必要は勿論ありません。そんなことしていたら、一生チェスなんて出来ないっすよ。そこで、ICCというチェスサイトにおけるオープニングの使用頻度を6.2章に示すことにしました。
 どういったオープニングが一般的によく使われているか、というデータを見ることにより、オープニングの学び方を考えてみましょう。

 そこで、このICCのデータを参考にして、オープニングを覚えていく一例を6.3章に書いてみました。

 ここで重要なことを一つ。

 いくらオープニングが「先人達の研究の成果」であっても、それをそのまま丸覚えしただけでは役に立ちません。つまり、何故そう指すのかを常に考えることが大事なのです。学んだことをそのまま丸覚えするだけでは、すぐ忘れがちになってしまいます。しかし、「何故」がはっきりすれば、学んだことがしっかりと身につきますから、実戦においても思い出すことが容易になるはずです。さらに上記のような「何故」を少なからず理解できれば、自分が知らないオープニングに持ち込まれたとしても、自分でその対応法を考える力となっているはずです。

 また、そういった思考能力は、オープニングだけではなく、様々な局面に対して応用させることも可能となることでしょう。

 6.4章では、オープニングを学ぶ上で必要な知識である「トランスポーズ」を説明してあります。トランスポーズを理解しておくと、オープニングの学び方にも柔軟性が生まれることでしょう。

 最後に、6.5章では様々なオープニングに対しての基本的な考え方を記すこととしました。しかし、これは考え方の例です。御自分でオープニングを勉強する際には、「おっ、ここではこんな考え方があるんじゃないか?」等々、試行錯誤しながら頑張って頂きたいと思います。

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