ここの背景画像はまりまりさんの「いろいろ素材」からお借りしました。
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● はじめに ● 「年表」 ● 人に歴史あり ● 演説 ● 取り巻く人々
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● ギャラリー
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私がサン・ジュストを好きになったのは、高校生の時でした。澁澤龍彦さんの「異端の肖像」を読み、早い話、「革命の大天使」と言われる美貌に惹かれたのです。典型的なミーハーです。尤も、「異端の肖像」のみではサン・ジュストが本当に美形かどうか不明でした。
ところが、ある日、本屋さんで「ロベスピエール」という大きな本を見ました。もちろん、サン・ジュストを探しました。そうしたらあるではありませんか。羽根飾りのついた帽子をかぶって目いっぱい気取っているサン・ジュストが。その絵で彼の美貌を確信しました。…が、顔だけではありません。顔だけが好きならとっくに飽きていることでしょう。その本のもう少し先に、テルミドール九日でロベスピエールたちが市役所で逮捕された後の絵があったのです。 そのサン・ジュストは確かに美形です。でも、そんなことなんてどうでもよくなるくらい、皆と少し離れたところで椅子に座ってこちらを見ている彼の顔は静かで、悲しいくらい諦念に満ちてました。 彼は、国民公会でタリアンに発言を遮られてから、何一つしなかったのです。ロベスピエールは何度も発言しようとしました。また、市役所ではロベスピエールの弟は二階から飛び降り、ルバはピストル自殺をし、ロベスピエールは自殺しようとしたのか、あごをピストルで負傷しました。でも、サン・ジュストは…なにもしません。本屋さんで見たその絵は、そんな「何もしない」サン・ジュストを的確に表していました。他の人の顔には表情があるのに、彼にだけ何の表情もないのです。 その静かな諦め、深い絶望。私がサン・ジュストを好きなのはまさにここです。そして、もう一度「異端の肖像」を読むと、澁澤龍彦さんも私と同じ理由でサン・ジュストに惹かれていたのでした。サン・ジュストは革命そのものに絶望していたのです。理想ばかり追う夢人と言われればそれまでですが、彼は「金持ちも貧乏人もいない世界」の樹立に向かって、心血を注いでいたのです。しかしながら、共和国に対する真摯な思い入れは、私利私欲に固まった人々やどうにもならない現実を目の前にして、段々薄れていったようです。最後にはロベスピエールとも意見を異にしました。 サン・ジュストの最期の言葉は、ロベスピエールに向かってのたった一言「アデュー」だったそうです。彼は断頭台に登らなかったとしても、ロベスピエールと革命に訣別したのかもしれません。
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