古民家(主屋:明治40年頃建築)の再生、米蔵(大正7年建築)の曳家、水廻りの増築
□主旨
計画はクライアントの懐かしい建物や植木に対する想いと、古い民家を気に入られている娘さんの熱意により改造前の元の姿をイメージした快適な住まいとすることを目的として、古民家と構造の安全性・機能性・快適性の融合が設計の主要なテーマとなった。
□構成
北側を古い街並みに面した敷地は南北に長く、北側に主屋、庭を挟んで南東部に2階建ての米蔵、南西部に平屋の離れが配置され、庭には枝ぶりの良い松の木と燈篭がバランス良く置かれていた。
ただ、蔵により主屋への通風・日当りが塞がれていたため、離れを撤去し蔵を西側に曳き家し、主屋と蔵の間に浴室等で庭を囲むように増築し、各室が庭に向かって開放的なプランとなり、明るい生活空間となることを意図した。
□主屋
木造厨子2階建て平入り入母屋瓦葺きの主屋は、戦後大きく改造されていた。多くの柱が取替えられ、天井を高くするため差鴨居は一部撤去され、軽量鉄骨の梁で補強されていた。
雨漏の原因であった北側の増築された玄関屋根を当初の平入り屋根の形に戻し、塞がれていた虫籠窓も再現した。北側道路に面した居室には近隣の古民家を参照した細格子を設け、外部よりの視線を遮るように、プライバシーにも配慮した伝統的な外観にしている。
主屋には生活の中心となる部屋を配置し、それに伴い耐力壁である土壁バランスよく増設し、柱の取替、梁の追加・架け替えなどで耐震性の向上に努めた。新しい材料を使用しながらも古材の利用や、隠れていた構造材を現わすことで元の民家の雰囲気を取り戻すよう心掛けた。建具も古い建具をできるだけ利用することにより新旧の調和を図っている。
また、安全で快適な生活が送れるよう床の段差をなくし、断熱材や断熱サッシの使用により断熱性を高め、床暖房やシステムキッチン、ユニットバス、衛生機器などは最新の設備を設け、居住性を高めている。
□米蔵
主屋の日当りを良くする為に曳家改修した米蔵は、外部の板壁や漆喰塗りの補修程度でほぼ既存のかたちを残しながら建築基準法に適合させるためべた基礎の設置や床組の補強などを行っている。また愛犬家でもある娘さん達の帰省時にゲストルームとして利用するため、開口部の設置、滑りにくい床材や床暖房を採用し、コンセント位置など細やかな配慮がされ、倉庫として利用されていた米蔵を明るく快適な居住空間へと再生した。
□水廻り増築部
デッキでの夕涼み、中庭の松を眺めながらの入浴、入浴後庭を見ながら脱衣室のベンチでの一服、その近くで洗濯、日当りの好い室内での物干し等を考えた増築部分。脱衣室の天井には既存離れの広縁で使われていた繊細な化粧垂木の天井を移設し、離れのイメージを残すようにしている。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
上の写真をクリックすると大きな写真で見れます
|
第13回 兵庫県人間サイズのまちづくり賞
「まちなみ建築部門」知事賞受賞
(2011.12.02)
|
|
建築地 兵庫県
地域・地区 第一種住居地域
構造・規模 (主屋)木造・伝統工法 厨子2 階建
(増築)木造在来軸組み工法 平屋建
(米蔵)土蔵造り 2階建
敷地面積 ---.--u(---.-坪)
建築面積 ---.--u(---.-坪)
延床面積 ---.--u(---.-坪)
意匠設計: 古田建築設計事務所 古田充 山本直美
構造設計: ルート構造設計 太田彰
電気・機械設備設計: 環境設計コンサルタント
施 工: すぎもと工務店
時代建具家具: 古福庵
|
□外部仕上表
屋根/いぶし和瓦葺
軒裏/(2階)漆喰塗、(1階)化粧垂木・杉板本実
外壁/漆喰壁、焼杉板(炭付)
腰壁:桧(無節)
建具/アルミサッシ
□内部仕上表
壁/しっくい塗り、土壁
床/栗無垢フローリング、タイル貼
天井/杉板上小節
□主な設備
冷暖房/空冷ヒートポンプ式エアコン
空冷ヒートポンプ床暖房
給 湯/電気温水器(エコキュート)、オール電化
システムキッチン/キッチンハウス
食洗機/ミーレ
ユニットバス/TOTOスプリノ |