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南宗寺 門徒会館・納骨堂

西正面の高御位山の稜線と屋根のライン。

北東部上空よりの全景。

納骨堂正面。3段の合成梁が深い軒を形作ります。

東側正面全景。

西側俯瞰。門徒会館の屋根にはパッシブソーラー熱集熱パネルを設置している。

池越しの西側全景。春は斜面を柴桜が覆う。納骨堂の西面には、軸線上に合祀塔を配した。

東側全景の夜景。

納骨堂夜景。トップライトから光が漏れ、籠目の文様がやさしく浮かび上がる。

門徒会館ポーチ。 納骨堂より見る門徒会館。

門徒会館ホール 正面仏間方向。後光が仏間を包み込むイメージで木ルーバーを配した。

回廊から仏間へ。

仏間背面の建具を開放し、高御位山の風景に浮かぶ仏像。 ホール背面。

来館者を迎える納骨堂正面の阿弥陀如来像。

納骨堂内部。障子越しに浮かび上がる籠目の文様。

納骨堂内部。
納骨堂 特別室。上部からはトップライトより、光が降り注ぐ。
 
(写真撮影/松村芳治)
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■主旨
 敷地は播州平野の南端に位置し、ため池の多い風景の中にある。圃場整備された水田を転用した敷地から、西300m先の鼎集落に南宗寺の本堂があり、その延長線上に播磨富士と呼ばれる高御位山が望まれる。
 本堂は古くからの農村集落の中心にある。道路が狭く敷地に余裕のない為、伝統の要としてまた信仰の中心としての本堂はそのままとし、参拝者の為、車による利便の良い集落近くの田圃での納骨堂、門徒会館の新築である。
 少子高齢化、過疎化により大きく変わっていく社会の変化に伴い、先祖・亡き人との関係、弔いの方法も変わっていく。先祖・亡き人との新しい関係を構築するための方策としての納骨堂、また古い本堂を補完し人々が集うための門徒会館、寺院のあり方はどうあるべきかを問いかけながらの計画であった。
 当初、住職より木造で、白と黒の建築にしたいとの要望を頂いた。納骨堂はご先祖が還って往かれた浄土を体現できるような明るい白のイメージ、これと対比する門徒会館は現世として黒のイメージと解釈した。納骨堂は、木の格子と障子を通した光に満たされる白い空間、門徒会館は黒く染色した杉板の木目に囲われた黒い空間として計画した。
 初めて敷地を訪れた時、田植えを終えた稲苗の列が、日没時の水面に反射する光に浮かびながら、西方の本堂と高御位山に向かって一直線に伸びていた。この時、東から西の高御位山に向かう、また仏教での西方浄土に向かうこの軸線をもとに計画すべきと考えた。

■納骨堂
 納骨堂は軸線に沿った方形とし、中央に特別室を設ける左右対称な平面としている。建物東側正面より入ると安置された阿弥陀如来に対面する。また中央に設けた特別室には天窓を設け採光を取るとともに、天空へ抜ける方向性も意識した。納骨堂の西には合祀塔が軸線上に隣接されている。
 木材は丹波・丹後地方の桧の4寸角の構造材を主に使用し、外周部は古来より魔除けになるといわれている籠目の組物で囲う。屋根の組物は3段積み上げた合成梁として、まさに木に囲われた空間となっている。

■門徒会館
 門徒会館は入母屋の大きな屋根が高御位山をトレースするように輪郭を造り、ホールの高い天井を内部に包摂する。深く出た軒が建物の陰影を作り出し、ポーチの独立柱と縦庇の木の柱が木造であることを示している。
 門徒会館も納骨堂と同じく軸線に沿い玄関を東側、西に向かってホール・仏間と続く左右対称な平面としている。玄関からホール・仏間を通り抜け、ため池を通して一直線に西の高御位山に視線が抜ける。ホールには仏画よりイメージを喚起された天井のルーバーを設けた。あたかも西方浄土から現世へと届く阿弥陀如来の後光が、人々を包み込むように、西から東に繋がっていくように。

■設備計画
 この地域は瀬戸内型気候として、平均気温約16度、比較的温暖少雨で、夏は南風、冬は北風の頻度が高い。これを生かす為、門徒会館は冬にはパッシブソーラーにより緩やかに床が温められ、中間期は南北の開放窓により季節の風がそよぎ、夏には深い庇と縦庇で強い日差しと西日を防ぐ居心地の良い建物になるように計画した。
 納骨堂の換気は床下から、床のグレーチングを介して室内へ空気を送り、天井裏をチャンバーとしてダクトで床下に戻し排気している。照明は外周の障子の内側に設けた床の間接照明ボックスからの光が雪洞のように建物を浮かび上がらせることを意図した。

■外構
 造成はできるだけ土の斜面だけの盛土とした。今後、斜面を芝桜に覆われたなだらかな丘に建つ建物となり、ため池、田圃、本堂のある集落と一続きの風景となって、夕陽の沈む高御位山に抱かれながら、帰るべき場所のようにたたずむことを願う。

古田 充





所在地 兵庫県加古川市西神吉町鼎1610

用途地域 市街化調整区域

構造規模 木造 平家建


建物用途 寺院門徒会館・納骨堂


□ 意   匠:褐テ田建築設計事務所
    構   造:木構造建築研究所 田原
   電気設備:GNO設備設計
   機械設備:ウッズ

□ 施   工:ヒラカワ建設
          枝常社寺建築

南宗寺 HP:http://www.bb.banban.jp/nansyuji/


敷地面積           3,021.25u

建築面積   門徒会館   421.36u
          納骨堂   219.04u

延べ床面積  門徒会館   292.50u
          納骨堂   129.96u

設計期間 2017年3月〜2019年 6月
施工期間 2020年1月〜2020年10月


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