Bow Repairing Tech1.
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Bow Repair T  折れた弓の修理 (折れたスティック)

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折れてしまったスティック、割れてしまったヘッド・チップ、壊れたフロッグ・・・などなど、でも、たいていは直ります。

ここでは、そのような弓の簡単な修理を取り上げます。

最初は、自分のもので壊れたものや、あるいは、身近な方で、捨ててしまうような壊れ方のもので試してください。

決して、数十万円以上するものとか、数百万円なんて名弓で試さないでください。
折れたスティック T
折れたスティック U

◇ 折れたスティックの修復 T
楽しみだったその年の音楽祭も無事終了、でも、ひとつのアクシデントがありました。 というのは、終わってから控え室に戻る途中、後輩のAさん(主婦)が、弓をポロリと堅いリノリュームの床に落下。
早速、その場に居合わせた私に「これ、なおる?」と持ち込まれた次第。
今回、ここで取り上げたのは、定価で25,000円程度の、練習生向きのものです。
毛は張ってあったし、打ち所が悪かったのか、当初からの木目が悪かったためか、ともかく首から先がポッキリと、縦に折れてしまったのです。
 誰かが「すみやさんに、すみやさんに・・・」と聞こえたので 戻ってみたら、Aさん、「どうしよう、どうしよう・・・」と、すっかりオロオロ、だったわけです。


見たら杉籐のレッスン生向き、それなら安心して手にかけられます。


 「ボクでよかったら、直しますよ」。

さて、今回のこの割れ方は、一見して『ただ、折れたところを接着して、 糸で縛って補強』すればいいというものではありません。

ヘッド(先端)側の、割れている首の部分の肉が、もうちょっと厚く残っていたら、多分、接着剤だけでもしっかり貼り付けられました。

でも、その首の肉が薄く、たとえ強固な接着剤で貼っても、それだけでは馬毛の張力に耐えられないと判断しました。

なお、程度によってはニカワと細い絹糸をグルグルと巻き付けて修理することもできます。
それで、今回はダボ釘を打つことにしました。

1.5mmのドリルで、2本の穴を空けるが、上下ずれないようにしなければなりません。固定しにくく、きわめて細いところですから、細心の注意をはらって穴あけをします。
それに、同じ直径に細く削った、竹串製のダボ釘で固定するようにしました。もっと丈夫な、鉄かステンレスの釘を切って使おうか・・とも考えましたが、ここはこだわって同じ自然素材、かつ、丈夫な竹の皮に近い部分を使いました。 (とはいっても、バーベキューの串の流用です。 (^^) )

そこまでの準備ができたら、あとはニカワを使って接着(写真・左)。

麻糸で縛ったり、小型のクランプを使って圧着中。馬毛とフロッグは邪魔だし、汚さないためにできあがるまでそっと丸めてポリ袋に収納しておきます。

修理は、「具合の悪い部分をなおして、使えるようにする」だけのことだと思っています。
一方、
修復は「元のようにきれいに現状復帰」がモットーだと私は考えています。


それで、納得するように修復するためには、割れた痕や、接着した所を、

「 いわれなければ分からない」程度にする必要があります。

そこで、目の細かなサンド・ペーパーでその部分を丁寧にならし、 同色になるように、アルコール系の色ニスを薄く、何度も塗って仕上げました。

24.Nov.2003

さて、余談ですが・・・、その年(2003年)の地元アンサンブルでの音楽祭(11月23日)への 出演は、自作(1999年作)のヴィオラで参加。
それまでは、もっぱらセカンド・ヴァイオリン。 ところが、ヴィオラ譜ではハ音記号(アルト記号)。

譜面の読み違いがないように音名の仮名をふったり、指番号で表記したり、ずいぶん苦労しました。

低弦でのアンサンブルは初舞台でしたから、新人のつもりで参加しましたが、
やはり、仲間たちとのアンサンブルはいいものだし、ヴィオラの、低音の響きもまた格別です。

後日談 : 12月 3日、この日はアンサンブル・メンバー恒例の「打ち上げ食事会」。
       
メンバーは主婦層が多いので、市内のレストランでの昼食会が慣例になっています。

そこでAさんに、『はい、なおりましたよ』と、修復した弓を渡しました。

『もう、ダメかと思ったのヨー・・』と、Aさん。

さらに、『こんなに、分からないくらいに治っちゃうのネ』と、Aさんには大喜び。

『修理代を・・・?』といわれましたが・・・、実は、そのAさん、レッスンの時間帯が私のすぐ前の時間。

ときおり、ご自宅の家庭菜園で採れる季節の野菜をいただくこともたびたび。

それより10日ほど前にも、カボチャやショウガを沢山いただいていましたし、

逆に解釈すると、これは、非常に珍しい壊れ方の、修理の教材を提供したいただいたようなもの。

それで、『技術料=おいしいカボチャ、手間賃=ショウガ、消費税=チーズ・ケーキ二切れ・・・など、

すべて、すでに小生の胃袋に・・・ですから、お代は済んでいますよ』と、あっさり回答。

チーズ・ケーキも、音あわせの日に彼女自身が手焼きしたもので、練習後の、コーヒー・ブレイクタイムのとき、

こちらもすでにおいしくいただいたものです。そのことで、再び、大喜びしていただきました。

      ◇ 折れたスティック U    

こちらは、遠い北国のチェリスト・Sさんからのメールによる相談。以前、彼からはチェロの修復させていただいた経験があります。

その、彼の先生が使っていた非常にいい弓が折れてしまい、困っているとのこと。

実は、その弓、地方の楽器店に持ち込んで修理をしてもらったらしいのですが、その後、結局のところ簡単に取れてしまったというのです。
◇ 折れたスティックの修復 U
この画像は、ファイル名から見て、彼の携帯で撮したものでしょうか、細かなデテールは分かりにくいものでしたが、 折れた場所が上の例と同じ位置。

弓としては、いちばん細くて、ある意味ではスティックの中では非常に弱い場所です。

その先生が持ち込んだ楽器店では、その折れた場所を、ただ接着し、後から、糸をグルグル巻きにして巻いてあったといいます。


工作好きで、少なくとも模型飛行機程度のものをつくった経験がある人なら、いかに強力な接着剤でも、この切断面だけでの接着だけは、とうてい無理ということが分かるはずです。

少なくとも、焼き鳥に使う竹串程度のダボピンで補強でもしない限りもつわけはありません。それくらい、馬毛の張力は強いのです。
折れた弓U-2
折れた弓U-1  というわけで、自分なら、多分、ホームセンターで市販されている、
アルミの細いパイプとか、
竹串のダボピンを使って補強します・・・と回答。
折れた弓U-3
元々が、S氏のものではなく、その先生のものですから、
このことに関してのそれ以後の問い合わせはありません。
同じ場所の割れでも・・・
割れたスティックV-1 こちらは、分数系の弓、同じ場所が折れたものですが、この場合、たまたま素材の、木の髄線が真っ直ぐではなく曲がっていて、その木の髄線に沿って割れたものでした。

つまり、前者のような「折れ」ではなく、断面は非常に接着面積が大きい
「割れ」でしたので、これなら、ただ貼るだけで対応できます。


貼り終わって修理した後、ペーパーでならしてからの写真ですから、今までのようなビフォー・アフターにはなっておらず、処置後の写真だけです。

ただ、よく見ていただくと、なんとなく、その辺の割れたようすが見えるでしょ。

これくらいの斜めの破断面なら、エポ系の接着剤で十分耐えますよね。

この場合、湿気や温度変化の心配があるニカワよりエポ系の方がいいね。
この後から、うすくニスを塗ればほとんど分からなくなります。

2012/12/29 この項を追記 

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