cello_repair7-4
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文字通り「総身創痍」のチェロの修復 W HOME
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S氏からの頼みで エンドピンのガタつき エンドブロックの調整
ご覧のように、エンドピンをのソケットが、裏側に、こんなに出てしまうのです。
しかも、ホール自体は結構しっかりフィットさせて空けてあるのですが、
ただ、いちばん奥(先)の方が少しゆるく、爪楊枝が刺さるほどでした。

そのために、ソケット自体が、しっかりと十分保持するだけの深さがなく
ガタついているのです。
小さなエンドブロック
標準の型に合わせてみると・・・ ボディ内に、昨年、チェロをつくったときの内型をあてがったところです。

あれれっー、案の定、ブロックの厚さが標準のやや半分程度。
まっ、足らないものは足せば済むことですから、
それほど難しい作業ではありません。 簡単です!
厚さがない、お情け程度のエンドブロック
足したブロックを圧着
チェロの、表板の切り出しでこんなブロックはいっぱい出ましたから、
スプルース材の材料は問題ありません。
ソケット穴も的確にあける
ソケットの先までしっかりと収まり・・・、
ソケットの深さにもぴったり・・・ ただ、ここではノコギリが使えないので、ノミだけで既存のブロック壁面を
真っ平らにする作業がたいへんでした。

でも、これでソケットもしっかりと収まりガタつきはありません。
細かな欠損を補う
コーナー部突端の欠け コーナー部突端の欠け
平の鉄工ヤスリで削り、接合面を平らにする。
お得意の補填 賢明なる読者諸兄は、平の鉄工ヤスリは、普通、三面にギザギザの刃がついていて、側面の一面だけは刃がついていないことをご存知でしょうか。つまり、カタカナのコの字のように、削るための作業面がついているのです。その、刃がついていないということは、いくらこすっても削れないわけですから、この場合は、削りたくない下のリブ面に刃のない面をあてがって削ります。そうすれば、安心して削ることができます。

補填する部材も、当然、スプルースです。
そして、こんなものでも、極力、木目を合わせます。

こんな小さな部材には、爪楊枝のダボ・ピンが最適です。

そして、白木部分を、周囲の色に同化させて着色。
着色後の様子
年輪2本分でも、欠けは欠け
年輪2〜3本の欠けも、丁寧に、平らに削って下地を調整し・・・、
爪楊枝のピンとニカワで固定

同じ要領で、爪楊枝をダボにしてニカワ付け。
あちこちに細かい欠けも
古さとしての「貫禄」になるか、ただのキズに見えるか?
その辺は、良識で判断して私は決めています。
大きな賭はコクソで

こちらは下の方でしたが、気になる「欠け」でしたから、コクソで埋めました。
こんな、気がつかなかったところにも「垂れ」が・・ このオーバーニスを塗った人は、多分、不器用な外人だったでしょうか?ともかくひどい塗りでした。

この光線状態で分かるように、オリジナル・ニスは地味なアンバー。
問題は、その上に分厚く、下手に赤黒いニスが乗っているのです。
パッチの修復中に気になっていたのが、このトップブロックの隙間。
ネックを持ったときに、柔らかい触感でグラグラしていたのですが、それも、裏を剥がしたり、ただ古いがためのものだと思っていました。
でも、実際にはそうではなく、表板の方まで剥がれていたのです。
トップブロックの浮き・隙間
奥まで空いていました。  結局、リブまで剥がれていたのです。
カエデのリブ材の端材を差し込み・・
隙間にはちょうどいい厚さの、ヴァイオリンのリブ材の端材を入れました。
カットして、ニカワ付け
リブと表板との隙間の接合には、指板の角度も関係してきます。

指板の角度は、操作性や音色に関して、非常に大事な要素。
指板の角度を見ながらクランプ。
指板の角度は正確に・・。 ご覧のような、指板の角度をサポートする治具をつくり、
それをあてがって角度を固定し、リブと表板の接着をしたのです。

指板の延長線が、ストップ(駒)の位置で80〜81mmという数値が標準の角度。・・・ですから、古い駒は少し低めでした。
ペグホールの調整も・・
レタッチの着色とオーバーニスを繰り返し・・・、
ペグホールの調整
この部分の凹みには、コクソで埋めたりしましたから、まだ、その部分にはツヤは有りません。
オーバー・ニスを・・

ずいぶん、きれいになりました。
オーバーニスには、市販の、米国インターナショナル・ヴァイオリンCo.社の、「レッド・ブラウン」の大缶(1pint = 473cc)を使いました。
まだ、裏板は貼っていませんから、合理的にニスを塗ることができます。
だんだんしっとりと・・・、
   

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