Maggini-Model
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まさに、子供がビー玉やメンコを集めるように、マッジーニ・モデルを集めてしまいました。
それくらい、このモデルは私にとって魅力的だったのです。
それは、ある本に、『この作者の楽器は、アマティよりパワフルだ』と書かれていたことがあり、一度はチャレンジしてみたいモデルだったのです。

また、最初にヤフオクで入手したフランス製?の古いものがとてもよく、
その「パワフル」というものを目の当たりに実感したのです。

マッジーニ・モデル 最初の一台 = フランス製?のレプリカ
4周巻いたスクロールは、マッジーニ・モデルの特徴のひとつ。

また、左の写真では分かりにくいかも知れませんが、ダブル・パフリングです。


この個体の詳細はこちら

この楽器が、私にとっては最高の鳴りでしたからマッジーニ・モデルにはまっていったのです。

なお、この個体は、魂柱の調整以外には、ほとんど手入れをしていません。
ラベルは羽ペンのような筆記体で、手書きのように見えますが、これはあくまでレプリカとしてのラベルであり、作者がつけたものではないと確信している。

本物なら博物館入りすべきものだし、古さも申し分ないものと思うが、やはり、アーチングやつくりからして、19世紀のフランスのレプリカだと思っている。

しかしながら、間違いなく、これは私のお気に入りのひとつといえる。
アメリカ(e−Bayで落札した)・・・チェコ製?1877年

リペアーして仕上がり、見違えるように・・・。

工房の刻印?と、Maginiの焼き印がついていました。

この、4周のスクロールは、なかなか彫りの深い表情の、いい感じです。

表板・裏板のエッジ処理は好きなタイプの仕上がりになっています。
エフ字孔は、中央部分にやや開きがあり、
やはり何となく古いタイプの形になっています。
e-Bay 1656年(ラベル表示)

この楽器の修復については、こちらの別ページで詳細を記しています。

ラベルには1656年になっていますが、マジーニは1581 〜 1632年。
だから、死んでから24年経ってからの製作なんてあり得ないわけです。

さらに、この個体は、スクロールのバランスがイマイチ。
少しいびつなのが気になります。

だけど、エッジングとダブルパフリングはシャープです。
e-Bay 1643 (ラベル表示)

このラベルも、前述した理由で、あり得ない年号です。
このネックは、ペグボックスに割れが出て、それを修復した痕跡があるのですが、ご覧のように、側面の正面で胴接ぎ。



欧米のリペアー師の仕事でしょうが、
日本人的な考えでは許しがたい仕事ではないでしょうか。

ここは、できたらネック接ぎのように、
ナットの下、ヒールの裏側からスクロール第一周目の、
木の横目のところまで当て木を伸ばして貼るべきでしょう。
(筆者修復の実例は→こちら)

しかしながら、これはG線のペグ穴も埋め戻ししてあったり、
何代かにわたり愛用していた人は、いかにも長期眼、使い込んでいた、
お気に入りの楽器ということが伺えるものでした。

エッジのチァンネル彫りは、ボタンにつけたテーパーの削りも含め、
独特のシャープさがあります。
e-Bay 中国製新作 装飾パフリング・オールド仕上げ A

アメリカの文化のひとつとして、コロニアル様式というのがあります。
つまり、コロニー(植民地)的な様式という意味で、
17〜18世紀、アメリカの植民地時代に流行った様式のことですが、19世紀の建築や家具などについても、ヨーロッパから移入され、アメリカ化した様式をコロニアル 様式と呼ぶことがあります。 ですから、アーリーアメリカン様式とも呼ばれているものです。

家具なども、新しくつくったテーブルや椅子などでも、あえて金槌でたたいて凹みやキズをつけ、あたかも先代のお祖父さん、お祖母さんから譲り受けたアンティークっぽく仕上げる作り方も存在しているのです。

その意味では、この個体の表板も裏板にも、わざわざ凹みのキズをつけてあり、ニスもそのような塗り方をしてあり、まさに
アーリーアメリカン様式といえる仕上げです。

   
装飾パフリングの技術は素晴らしいものであるが、それに反して、ニス色が少し濃いめで、折角のパフリングが消されているのが残念!
e-Bay 中国製新作・オールド仕上げ B

ボクが持っているマッジーニの中では、いちばんスクロールのバランスがいいと思っています。
e-Bay 中国製新作 装飾パフリング

バックがご覧のように、一枚板の非常にいいフレームのカエデ材。
しかも、パフリングはマッジーニらしい装飾。

できたら、スクロールはやはり4周巻きにして欲しいところです。

装飾パフリングは、アップでみても遜色ありません。
実に見事な細工です。

エッジの処理も、エフ字孔のカットもきれいな仕上げです。
近代中国の新作は、一昔前の「安かろう、悪かろう」とは違い、本来の緻密な作業が得意な民族性ということもあり、つくりは非常にいいものです。

各国、各メーカーの輸入目的や下請け的な指導もあってのことでしょうが、サイトで調べてみると、彼らは彼らなりに研究し、技術・技巧の研鑽を深めていますから、音色も、決して遜色があるものではありません。

レッスン生や、地方オケで趣味として使う分なら、申し分ない『鳴り』であると筆者は断言できます。

ただし、「農薬入りギョウザ」事件や「尖閣列島の漁船衝突」事件など関しては、あくまで『悪いのはそちらだ』と、うそぶく、横柄な態度は許しがたいことである。

私は、そのような政治がらみのことは別にして、いいものはいいとしてお伝えし、ひとりでも、安くて、気楽に、ヴァイオリンを愛する人が増えればいと願う次第です。

スクロールの個性
同じマッジーニ・モデルのネック・スクロールですが、このように別のものを比べてみると、その彫り方、表情に微妙な違いがあります。

いちばん上のものは、2周目と3周目との間隔が狭く、若干、バランスに問題が・・・。

真ん中のものが、4周のバランスがいちばんいいと思います。

下のものは、それぞれ周の彫り方に深みがあり、真ん中と比べるといちばん濃い表情に私は見えるのです。

材の良さではいちばん下のもの。
全体のバランスは真ん中、彫り方はいちばん下、というように、いつも私は自分の好みで評価するのです。
それぞれの個体を数値で示すと、以下のようになりました。
つくられた地域(国)や工房、時代の違いで微妙に異なっています。

古いタイプのものほど、ボディサイズが大きく、そのことが低音特性を向上させ、
冒頭で書いた『パワフル』になった原因でしょうか?

ただし、いちばん下の中国製の新作は、やはり全世界に売るため、現代の標準的なサイズに近いものといえるでしょう。

各個体のサイズ
  ボディの大きさ アッパー・バウツ インナー・バウツ ローア・バウツ リブ幅
1625 368 170 114 210 29〜30
1656 369 170 112 210 30
1877 361 161 105 198 30
C'zecho 365 168 113 208 29〜30
China 356 167 110 205 30
* リブ幅 の、数値が少ない方はネック側やインナー部、大きい方はエンド側です。
用語説明: アッパー・バウツ = 正面から見て、上のふくらみのいちばん幅が広いところ。
インナー・バウツ = 中央のくびれのいちばん幅がせまいところのこと。
ローア・バウツ = 下のふくらみのいちばん幅が広いところ。

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