長野県千曲市上山田温泉万葉公園の万葉歌碑
長野県千曲市上山田温泉の千曲川沿いにある万葉公園の万葉歌碑を訪ねてきました(2011/6)。下の案内板に書かれているように、万葉公園には、多数の歌碑、記念碑が置かれています。万葉歌碑は7基(8首)あります。なお、この万葉公園のすぐ北側にも2基の万葉歌碑があります。上山田温泉万葉橋の万葉歌碑その1とその2に書いてあります。
以下に7基の万葉歌碑を田村泰秀氏の萬葉千八百碑の記載の順序で記します。
その1
中麻奈(なかまな)に 浮き居(を)る舟の 漕(こ)ぎ去(な)ば 逢(あ)ふことかたし 今日(けふ)にしあらずは (巻14-3401) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 未詳。信濃国(しなののくに)の歌。
(大意) 中洲に浮かんでいる船が漕ぎ出して行ってしまうのと同じように、もし行ってしまったら、逢うことが難しい。今日という日でなければ。
その2と3
右碑は巻5−802で、左碑は反歌です。
瓜(うり)食(は)めば 子ども思(おも)ほゆ 栗食めば まして偲(しの)はゆ 何処(いづく)より 来(きた)りしものぞ 眼交(まなかひ)に もとな懸(かか)りて 安眠(やすい)し寝(な)さぬ (巻5-802) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 山上憶良。
(大意) 瓜を食べると子供のことが思われる。栗を食べるとさらにいっそう偲ばれる。いったい、子供というのはいかなる因縁によって来たものだろうか。目の先にちらついて安眠させてくれない。
反歌
銀(しろかね)も 金(くがね)も玉も 何せむに 勝(まさ)れる宝 子に及(し)かめやも (巻5-803) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 山上憶良。
(大意) 銀も金も玉もなんの役に立とう。優れた宝も、子供に及ぶことなどあろうか
その4
信濃道(しなのぢ)は 今の墾道(はりみち) 刈(か)りばねに 足踏(ふ)ましなむ 沓(くつ)はけわが背(せ) (巻14-3399) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 未詳。信濃国(しなののくに)の歌。
(大意) 信濃路は切り開いたばかりの道です。伐り株を足で踏んでしまわれぬよう沓を履いてください。わが背よ。
その5
韓衣(からころむ) 裾(すそ)に取り付き 泣く子らを 置(お)きてぞ来(き)のや 母(おも)なしにして (巻20-4401) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 国造(くにのみやつこ)小県(ちひさがた)の郡(こほり)の他田舎人大島(をさだのとねりおほしま)。
(大意) 衣の裾に取り付いて泣く子を置いて来てしまった。その子の母もいないのに。
その6
み薦(こも)刈(か)る 信濃(しなの)の真弓(まゆみ) わが引かば 貴人(うまひと)さびて いなと言はむかも (巻2-96) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 久米禅師。
(大意) (み薦を刈る信濃の真弓を引くように)私があなたの心を引いたならば、高貴の人らしくいやだとおっしゃるでしょうか。
み薦刈る 信濃の真弓(まゆみ) 引かずして 強(し)ひざるわざを 知ると言はなくに (巻2-97) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 石川郎女。
(大意) 人の心を引くことをしないのですから、強く迫らないやりかたを分かると言う人はいないでしょうね(強く迫って欲しいのです)。
その7
石(いは)ばしる 垂水(たるみ)の上の さ蕨(わらび)の 萌え出(い)づる春に なりにけるかも (巻8-1418) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 志貴皇子。
(大意) 岩の上を激しく流れる滝のほとりのさ蕨が萌え出る春になったなあ。
所在地
長野県千曲市上山田温泉万葉公園 千曲川の万葉橋西詰南側の堤にあります。地図のマークの辺りが万葉公園です。
行き方
しなの鉄道戸倉駅の西を走っている18号線を南南東へ1kmあまり進んだところに、戸倉上山田温泉入口の交差点があり、そこを右折する(西南西へ向かう)と500m程で万葉橋です。万葉橋を渡った堤の南側にあります。