どんな病気? 原因は? 症状は? 合併症は? 治療は? お家ではどうする? 予防は?
インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染で起こる病気。広い意味では風邪の一種といえるが、いわゆる「かぜ症候群」とは感染経路や症状などが異なるので、かぜとは区別される。 かぜよりも感染力が強く、症状が重いため、抵抗力の弱い赤ちゃんやお年寄りがかかると重症化したり合併症をおこすこともある。 インフルエンザの場合、特にかかりやすい年齢というのはなく、ママからもらった免疫も役には立たないので、生後間もない赤ちゃんでも感染する可能性がある。 インフルエンザウイルスは温度・湿度ともに低い環境を好むので、秋の終わりごろから春先にかけて流行する。流行のピークは最も寒く乾燥した時期である1〜2月ごろ。インフルエンザを予防するにためにはインフルエンザワクチンの接種が最も効果的である。
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空気中のインフルエンザウイルスを吸い込むことによって感染する。インフルエンザに感染している人がくしゃみや咳をすると空気中にウイルスが撒き散らされ、そのウイルスを含む空気を吸い込むことで感染する(空気感染)。 空気感染は接触感染などに比べて、広範囲に広がるうえ、インフルエンザウイルスの感染力は非常に強いため爆発的に流行が広がる(=流行性感冒といわれる所以) インフルエンザウイルスには、A,B,C型があり、主に流行するのはA,BでA型の方が症状が強く、世界的に流行を起こす。ここ数年流行しているのは「A香港型」「Aソ連型」「B型」の3種類。違うタイプのウイルスに感染すると一冬に2〜3回インフルエンザにかかることもある。 潜伏期間は36〜48時間。一般にウイルスに一度感染すると体内に抗体ができるので、再びそのウイルスが体内に入ってきても、発病しにくくなる。しかしインフルエンザウイルスは、毎年少しずつ変異しているため、何度もかかることがある。 |
高熱。インフルエンザにかかると大人でも38〜39度の高熱が出る。赤ちゃんの場合にはさらに高く40度以上の熱が出ることも珍しくない。 一般にインフルエンザは急な発熱から始まることが多いが、赤ちゃんの場合は、まず下痢や嘔吐などの胃腸症状が現れてから熱が上がっていくケースも見られる。このためはじめのうちは普通のかぜと区別がつかないこともある。 高熱は3〜4日ほど続き、その後下がるが、1〜2日ほどして再び高くなることもある。 熱が高くなると加えて「頭痛・関節痛・筋肉痛・倦怠感」などの全身症状が現れる。高熱と全身不快感のために赤ちゃんはぐったりしたり、ぐずぐずと泣き続けたりする。 「咳・鼻水・のどの痛み」などの呼吸器症状は高熱や全身症状が治まってくる頃から出てくることが多い。 大体の症状が治るまでに1週間。完治するまでに10日ほどかかる。「抗ウイルス薬」を使うとこの期間を短くすることが期待できる。 |
体の抵抗力が弱い赤ちゃんでは「肺炎」「気管支炎」「中耳炎」などを合併し、入院が必要になるケースもある。これらが命にかかわることはほとんどない。 ごくまれにインフルエンザの発熱から数時間〜1日という短い間に痙攣や意識障害などが現れる「脳症」をおこすこともある。 |
インフルエンザはかぜとの区別がつきにくいことが多い。流行期の境目の時期や他の病気との区別が紛らわしい場合はインフルエンザウイルスに感染しているかどうかを調べる「迅速診断キット」を使って確定診断を行うことがある。この検査キットは綿棒で鼻汁やのどの粘膜をぬぐいとり調べるもので、10数分もあれば感染しているかどうかわかるが、100%正確なものではないようです。 最近までの治療は対処療法が中心で自宅で安静にするのが基本だったが、インフルエンザウイルスに直接作用する「抗ウイルス薬」が開発され2002年の冬から1歳以上の子供にこの薬が使われるようになった。したがってインフルエンザの流行期に発熱などの症状が見られたら早めに受診し治療を受けましよう。 現在抗ウイルス薬として認可されているのは「シンメトレル(塩酸アマンタジン)」「リレンザ」「タミフル」の3種類。これらの治療薬は発熱してから24時間以内、遅くとも48時間以内に服用すれば、発熱・関節痛などの症状をかなり軽減できるようです。この中で幼児や小児に使えA型・B型どちらにも効くのは「タミフル」です。
抗ウイルス薬はウイルス増殖を抑える作用があり病気が悪化するのを防ぐ。薬の効果をいかす為には発病してからなるべく早く薬の投与を開始することが大切。発病当日に投与すると発熱の日数を半分に短縮できると言う報告もある。(新しい薬なので、まだすべての医療機関で使われているわけではない。) 抗ウイルス薬に加えて、熱や咳を和らげるため、解熱剤や咳止め薬なども処方されます。また症状が重い場合は細菌に夜肺炎などの二次感染を防ぐため、抗生物質が処方されることもあります。 |
*安静を保つ 過ごしやすい環境に整えましょう。部屋の温度は20〜25度に保ち、空気が乾燥しないように加湿器などを使って湿度を50〜60%に保ちましょう。洗濯物を干したりするのも湿度が上がり、インフルエンザウイルスの活動も鈍ります。 空気が汚れていると気分も不快になります。時々窓を開けて換気をしましょう。 *熱に対するケア(保健室〜症状編〜発熱を参照してください) 熱は体内に侵入したウイルスをやっつけるために出るので、熱が高いからといって、解熱剤でむやみに熱を下げるのはお勧めできません。しかし、インフルエンザは高い熱が何日も続くので、赤ちゃんの場合「眠れない、食べられない(ミルクも飲めない)」という状態になり、ぐったりしてしまうこともあります。このような場合には、解熱剤を使って体温を少し下げると苦痛を和らげることができます。食事の前や寝る前に解熱剤を使って、食事をしたり、眠らせたりして体力を養うようにしましょう。 解熱剤は、投与後2時間ほどたって体温が0.5度ほど下がれば効果があったと考えて!平熱まで下がらないからといって連続投与はしないでください。使う解熱剤は医師がその赤ちゃんに処方したものを指示通りに使ってください。インフルエンザにかかっている子供に、アスピリン系の解熱剤を使うと嘔吐や痙攣を起こしたり重症の場合は命の危険のある「ライ症候群」になる可能性があります。現在市販されている小児用の解熱剤にはアスピリンは含まれていませんが、大人用には含まれているものもあります。市販の解熱剤を使う場合は必ず子供用の解熱剤(アセトアミノフェン)を使ってください。解熱剤がインフルエンザ脳症の一因ではないかとも言われています。病院でもらった解熱剤でも、アセトアミノフェン(商品名:ピリナジン、アンヒバ、アルピニー、カロナール)以外の解熱剤は使用しないほうがいいでしょう。 (雑学〜インフルエンザと解熱剤〜も参考にしてください。) *水分補給と食事(雑学〜水分補給〜も参考にしてください) 発熱をすると熱を下げようとたくさんの汗をかきます。また熱があるほど体の水分は奪われて行きます。高い熱が数日続くインフルエンザの場合特に水分補給が重要です。白湯、お茶、赤ちゃん用のイオン飲料などスプーン1さじずつでもいいのでこまめに与えましょう。母乳の子ならこまめに母乳を与えてください。熱で体が熱いので、氷を好む子もいます。 水分が取れない状態が続くと「脱水症」を起こす危険があります。特に嘔吐や下痢を伴っている場合や咳や鼻づまりがひどい場合は要注意です。おしっこの量が少ない、ぐったりしているときは脱水症を起こしている可能性があるので、急いで受診しましょう。 食事が取れるようであれば、やわらかくて消化のよいもの(野菜スープやおかゆ、うどん)などを少しずつ与えます。食欲がないときは無理に食べさせる必要はありませんが、水分だけは十分に取れるように心がけてあげてください。 *咳のケア 咳は肺や気管支に入ったウイルスを体から追い出そうとしているからだの防衛反応です。この反応をとめてしまうと、肺や気管支に入ったウイルスは湿った暖かい体の中でどんどん増えてしまうことになり、結果的に病気を長引かせてしまいます。咳を止めるのではなく、痰が出やすくなるようにしましょう。 乾いた空気では気管が余計に刺激され、咳が誘発されます。部屋の湿度を60%くらいに保ちましょう。水分がすくなるなると痰が硬くなり、咳もひどくなります。痰がやわらかくなるように、水分を十分に与えてください。一度のたくさん飲むと咳き込んだときに吐いてしまうこともあるので、少しずつ、こまめに与えるのがポイントです。 冷たい空気や汚れた空気も咳を誘発します。換気扇を回すなど、常にきれいな空気が入るようにしましょう。 咳がひどく夜も眠れないときは、睡眠を確保し体力を養うため咳止めを使うこともあります。 *鼻詰まり・鼻水のケア 市販の鼻水吸い器を使ったり、親が口で吸い取るなどをしてためないようにしましょう。鼻水も鼻に入ったウイルスを外に出そうとする体の反応です。薬でとめてしまうと鼻づまりがひどくなったり、鼻水を長引かせることになってしまいます。部屋が乾燥していると鼻も乾きやすいので湿度を保つようにしましょう。 *お風呂 熱がある間は入浴を控えたほうがいいです。しかし発熱時は汗も多いし、新陳代謝も激しく汚れやすいです。汗をかいたらこまめに、暖かいタオルで体を拭いたり、お尻だけシャワーで洗うなどして、清潔を保つようにしましょう。 熱が下がってから1日ほど様子を見てから入浴したほうが、熱のぶり返しは少ないようです。 *登園・登校・外出 インフルエンザの感染力は非常に強いので発病したら周囲への感染を防ぐために登園や登校外出は控えます。兄弟がいる場合も過ごす部屋を別にするなどの対策も必要。 登園・登校は解熱後医師の許可が出てからに。体力も落ちているので解熱後2日間くらいは自宅で安静にしていたほうが無難です。 *合併症に対する注意 子供をよく観察して、異変を見逃さないようにしましょう。抗ウイルス薬などを使った治療をしても高熱が3日以上続く・咳がどんどんひどくなるような場合は「肺炎」や「気管支炎」を起こしている可能性があります。耳を痛がるときは「中耳炎」が疑われます。早めに受診して適切な診断・治療を受けることが必要です。 高熱が出てまもなくけいれんや意味不明な言動が見られたら「脳症」をおこしている可能性がいあります。少しでも様子がおかしいと思ったら、夜間でも休日でも大至急医療機関を受診してください。 授乳中のママがインフルエンザにかかった場合、本人がつらくなければ母乳を止める必要はありません。母乳中に混入するウイルスよりも空気中のウイルスのほうが圧倒的に多いからです。市販の風邪薬をママが飲んでいる場合も、赤ちゃんにはほとんど影響がありません。しかし病院で処方される場合は念のため授乳中であることを伝えてください。 |
インフルエンザは予防できる病気です。家族間で移りやすいので、家族全員で日ごろから健康や住まいの環境に注意することが大切です。 疲れて体力が落ちるとウイルスに感染しやすくなるので、バランスの取れた食事、十分な睡眠を心がけ、疲れをためないようにしましょう。 インフルエンザ流行期にはなるべく人ごみを避けるようにする。帰宅したら、うがい・手洗いを徹底する。玄関に入る前にコートをさっと払うのも家の中にウイルスを持ち込まないためにはいいかも知れません。 インフルエンザウイルスは乾燥と低い温度で活発に活動します。特に乾燥はのどの粘膜の活動を低下させるので、湿度は60%前後になるように、気をつけましょう。のどの乾燥を防ぐために、外出時にマスクをすることはいいことです。 冬場は部屋を閉め切っていることが多いためウイルスが部屋中に充満してしまいます。換気を心がけましょう。 インフルエンザウイルスはのどの粘膜の細胞に定着し、細胞内に進入・増殖し、のどの置くの喉頭、気管、気管支、肺まで傷めます。したがってうがいをすることで、のどの表面をきれいにし、湿り気を与えることでのどが持つ免疫機能が十分働くようにしましょう。 <インフルエンザワクチン> インフルエンザワクチンを接種すると「インフルエンザにかからない」あるいは「かかっても症状が軽く済む」という効果が期待できるとされていますが、明らかなデーターはありません。 インフルエンザのワクチンはその年に流行りそうな型を予測して作るので、予想が外れたこともあります。(ここ数年は外れてはいないようです。)しかしぴったりと予想が当たっても、インフルエンザウイルスは毎年変異し、ぴったりの免疫は作れません。 さらに、注射では免疫がつきにくい、 ということからインフルエンザの予防はワクチンだけでは十分ではないという考えもあります。 ただワクチンは自分が感染しないようにする効果に加え、他人に感染させないという効果もあるので、生後6ヶ月までの小さな赤ちゃんがいる家庭では、周りの家族が積極的に予防接種・手洗いうがいなどの予防措置を取ることが、赤ちゃんへの感染予防につながります。 ワクチンの効果は約半年程度。毎年流行が始まる前の10月から12月頃まで接種するのがよいとされています。任意接種のため費用は自己負担。病院施設や自治体によって金額もさまざま。(2000〜3000円のところが私の周りでは多いようです) 大人の場合接種回数は1回でよいが、子供の場合1〜4週間あけて、2回接種するのが一般的。免疫がつくのに約2週間かかる。 接種を受けて免疫がつく頃に、インフルエンザウイルスに出会うことでより高い免疫が得られるので、遅くとも11月半ばまでに受けるのが効果的といわれます。 思い副反応はほとんどないとされていますが、ワクチンには微量の卵が含まれているので、卵アレルギーがある場合は医師との相談が必要。 <問題点> 現在の所… ◆乳幼児に関しては、予防接種の効果が大人に比べて低くなる ◆副反応に対する正確なデータがない ◆ワクチンで確実に脳炎・脳症が予防できるのかまだ疑問が残る などということから医師の間でも考え方に差があります。 受けるかどうか判断に迷うときは信頼できるかかりつけの医師に相談しましょう。 Q:妊婦やインフルエンザ予防接種を受けても大丈夫でしょうか?また授乳中でも大丈夫ですか? A:ワクチン自体は妊娠されている方でも安全です。日本ではあまりポピュラーではないのですが、アメリカでは妊娠中のインフルエンザ感染は母児とも重篤化する恐れがある為積極的に打つべき対象となっています。ところが日本ではあまり経験がないので産科のほうでも積極的ではありませんが、打っても安全です。 ◆国立感染症研究所・感染症情報センター |