+キラキラ+ 1+

 

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 朝だからキラキラしていたのか、キラキラしている朝だったのか、微妙だった。

「マネージャー」
 朝の部活記録をつけていて、呼ばれたから顔を上げた。
 時刻は8時になる所、この辺で朝練習は終わりだった。
「加味くん、お疲れさま」
 加味遼平、2年。我が弱小テニス部において、今年の夏の大会で一回戦を唯一突破した、エースだ。
 エースと言う表現を彼が物凄く嫌がっていることを知っている。
 マネージャーとしての私の見解はこんなものだった。
 と言うよりも、個人的な、そう小嶋和枝としての見解はない、のだった。無、なのだった。
 それが弱小テニス部のエース(笑)とマネージャーとしてでなく、加味遼平と小嶋和枝として話したのは初めて、だったのかもしれない。

「マネージャーさ……・」
「うん?」

「マネージャーは好きな人いる?いないんだったらさ、オレと付き合ってくれない?」

 キラキラしていた。
 加味遼平は高校に入ってからテニスを始めて、お遊び部活の延長線上のような部活だけど、彼は部内一、努力していた。
 朝練だって人一倍一生懸命で、少し汗ばんでいた彼が、キラキラしていたのかもしれない。

 キラキラ。眩しくて。キラキラ。

「で、受けたの断ったの?」
「私、クラクラしちゃって。だって告白されたのなんて初めてだったし」
「で?」
「だって……」

 キラキラしてたんだもの。なんか物凄く眩しくて。

「しかし好きな人いないんだったら、付き合ってだなんて。その加味って男、よっぽど自分に自信がないのねえ」
 友人の言うことがなんだか彼の人柄の的を射ている気がして(大失礼)、なんで?って聞き返してみた。
「だって、はじめっから彼の頭の中には和枝が自分のことを好きって可能性がなかったのよね」
 それは、そうなのよね。
 いや、そのときは実際もそうなのだけども。私も。
「で?」
 と先を聞かれた。
 答えに詰まった。
 考えて、でも割りと即答に近かったかな。

「マネージャー?」
「ゴメン。私加味くんのことそう言う風に思ったことないんだ」
「……そっか」
 いつものように練習後、「おつかれさま」を添えてタオルを渡した。またいつものように彼の顔を見たら。
 たぶん、あっさりと引き返して行ってしまう彼を引き止める手立てがほしかったのだ。
「ゴメンねっ。……ダメだよね、やっぱり加味くんのこと好きなわけじゃないのに付き合ったりしたら」
「え?いいよ」

 お互いビックリしてた。ちょっとの差で私のほうが。

「いいの?」
「うん。それでもいいよ、オレ」

 ……友人曰く、三ヶ月もたない。と。

 本人が一番そう思ってたんじゃ……。いや本人達がか。

 そんな関係はスタートした。

 

 

 

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