2 付き合うって具体的にはどういうことなんだろう。
一緒に帰ったりお弁当食べたり、休日にデートして映画を見たり、キスとか?それ以上とか?
それが付き合うってことなのかな。
「ごめん!今日英語の追試受けなくちゃいけなくて、一緒に帰れなくなりました!」
拝むようにして手を合わせたら、分かった。頑張ってね。と加味遼平は去っていった。
金曜日、週一の部活の休み日。なのに。
なんか違う。と最近和枝は思う。
「和枝の彼って顔もあっさりしてるけど、性格もあっさりしてるねえ」
ある友人がまた加味くんの感想を口にした。
「あっさり?そうかな」
「うん。付き合ってるって感じはしないよね、二人とも。いいよね、重たくなくて」
なんか違うんだと思う。
それがあっさりの彼のせいなのか、自分のせいなのか、環境のせいなのか、全部なのか。
追試が終わって一人で帰る道端で思う。
……毎日一緒に帰っているし、朝だって登校時間を合わせたりするし、休みの日には映画も見に行ったし、キスとか……そう言うのはまだだけど。
加味くんが付き合って。って言ってくれて、私がいいよ。って言った。
あれから三ヶ月経った。
付き合うってどういうことなんだろう。と三ヶ月目にして思った。
「加味くんって私のどこが好きなの?」
昼休み、加味くんをお弁当に誘って屋上に行ったら、思いきり切り出していた。
唐突な問いに加味くんは案の定固まって、和枝を見た。
沈黙に耐えきれなくて、ごめん、なんでもない。ってすぐに言った。
変なことを聞いたって後悔した。
しばらくして、加味くんがお弁当に蓋をしてをコンクリの地面に置いて、視線をこちらに向けないまま、
「マネージャーはさ」
って言ったから、はい。って答えて耳を傾けた。加味くんに。
「真面目だよね、すごく。オレらテニス下手だし、弱いのにいつも一番最後まで残って片付けとか、練習のメニューとかも考えてくれるし」
だって、私マネージャーだし。テニス好きだし。
「うん。オレも好き。でもどっかで諦めてたんだ。こんな所で頑張ったって無駄だ、って。……でもマネージャーが一生懸命やってるの見て、頑張ろうって、オレも」
加味くんのほうが頑張ってたじゃない。と和枝が言おうとしたら、少しだけ加味くんと目が合った。
彼はお弁当を持って、立ち上がった。
授業5分前の予鈴が鳴っている。
「オレ、特別カッコイイわけでも性格がいいわけでもなくて、目立たない奴で、テニス下手くそで。……こんな奴のことを一番知ってる女の子って言ったら、マネージャーだろうなって思ったんだ」
そういうところが好きなんだ。上手く言えないけど。
加味くんは一度も振り返らずに走っていった。
夏が近付く太陽光線をまともに浴びる屋上は、やっぱりすごくキラキラしていた。
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