+お隣さん+
2 担任の鈴木は、盛大に顔をしかめた。 「理由は?」 また墓参りか、と。 「父親思いなのは大変に、結構なことだがな。そのせいで息子が毎日遅刻してたら……お父さんも、悲しむと思うぞ」 「すいませんでした」 父親が死んだのは、今から二年くらい前、穏やかに晴れた日で。 交通事故だった。 飲酒運転が原因だと聞いて。 死んだにせよ、殺されたにせよ、なんにせよ。 |
「コメヤー、また遅刻かぁ?」 どうやら一時間目は、すでに終わってしまったらしい。 遅刻をからかうクラスメイトと適当にじゃれながら、自分の席にたどり着いた。すると、客がいた。 「もしかして、コメヤって、お米屋さんって書いて、コメヤ?」 聞き覚えのない声が、オレの名前を呼んだ。 「なに?アマガイって、米屋と知り合いなの?」 一個前の席の久野が、意外そうに聞いた。アマガイに。 「雨の貝って書いて、アマガイ?」 雨貝はその通りだと、頷いた。 チャイムが鳴った。二時間目が始まる。 「……単なる、お隣さんだ」 ふーん、と久野が呟いた。 |